君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十二話(Messiah/現在)

2011-10-31 02:30:15 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十ニ話(Messiah)現在 開戦
 惑星メサイア上空
 人類の戦艦が集結しつつあった。
 旗艦ネメシスのセルジュはメギドの出現座標を見ながらつぶやいた。
「…少しメサイアに近いな。地表の平射板だけで内部への攻撃を止められるものではないだろう…」
 少しずらすか…。ワープ中のメギドとそれを操る戦艦に外部から操作を試みた。
「誤差修正の範囲内でしかずらせないが…10キロか20キロは後退させられる。そんな程度でもないよりはまし」
 そして、彼は眼下の星の無事を願った。

 同じ頃、惑星ノア上空
 終結する艦隊 旗艦ゼウスのキース

 再び メサイア上空
 ネメシスの艦橋に「巡洋艦2、駆逐艦3」の声が響いた。
 メギドより早く現れてきた敵の戦艦と開戦するネメシス。
「メギド出ます」
 そして現れるメギド
 メサイアの衛星ステーションで上空を見ていたジョミーが跳ぶ。
 不気味な十字架の形をした最終兵器を間近に見る。
「これが…」
 その中心部に戦艦エンディミオンが納まってゆくのが見えた。
 何もかもが「ナスカ」の再来だった。
 違うのは、星を守ろうとしているタイプブルーが僕だけという事と、敵に二人のタイプブルーがいる事。
 ネメシスの艦隊と敵が交戦する中をジョミーはメギドに向かった。

 メギドに着くとすぐに声(テレパシー)が送られてきた。
「さすがですね。予測されてましたか?まぁ、あなたが来る事はこちらも予測範囲内ですが、でも、お一人なんですね。まぁ、それもいいでしょう。では、指示に従って上に来て下さい」
 指示通りに進むと大きな倉庫のような空間に出た。
 こんな所はメギドにはなかった。
「ここはスタジアムです」
 さっきの声と違う声がした。
「スタジアム?君達の事は知らないが、僕は競技するような技など持ち合わせていないよ」
「そうですね。戦う力ならあると言う事でしょうか?」
 反響するように聞こえる声。
 機械的に変換されているが、声の主は誰か、ジョミーにはわかっていた。
「いいや違う。僕は君達と戦おうとは思っていない。交渉をしないか?」
「交渉?取引でもしようというのか?」
「ああ、そうだ」
「この場は圧倒的に我々の方が勝っているのに、何で取引できると思っているのですか?」
「そうだな。君達の命かな?」
「!? 僕達の命?」
「何をバカな」
「君たちを助けてあげるから、やめないか?と言う事だよ」
「なんで、そんな事を。僕らがお前に負けるというのか?」
「そう」
「お前の仲間の…惑星メサイアの全員が僕らの手の内にあって。お前は何も出来なくて、僕らに殺されるだけなのに?笑わせてくれるな。僕らの命?おまえに何が出来る?」
「手の内にある?何がだい?脅しにもなっていないね。最初からこのメギドを使って、メサイアのミュウ全員を殺すつもりでここに来たのだろう?」
「なら、お前も、取引などする必要はないじゃないか?」
「ミュウの命を掛けて、戦えばいい」
「だから、助けるのは君達の命だと言っている。知らないのか?僕達は逃げるのは慣れているんだ」
 とジョミーが言うと同時に、眼下のメサイアから無数のシャトルが一斉に発進していった。
 軌道上の衛星ステーションからも船が出てゆく。
 ジョミーはどこかでモニターを見ているであろう相手に言う。
「これでどう?こんな馬鹿げた脅しには乗らない。僕の仲間をなめてもらっては困る」
「こんな短時間で逃げれる訳がない。はったりだ」
「なら、メギドを撃ってみればいい」
「言われなくても、とっくにメギドはカウントダウンをはじめている」
「そうか。ならば」
 青く光りはじめるジョミー。
「行かせてもらうまで」
 ブリッジに向かって走り出した。
 ジョミーの脳裏にカウントダウンの数値が送られてくる。
 70、69、68、67、、、
「リミッター解除かな…」言うとグンと青い光が強くなる。
 そして跳ぼうとした時。
「行かせない!」
 目の前に現れたのは金髪の少年 14歳の僕だ。
「……」
 そう、さっきまでの声は彼じゃない、もう一人の方。
 自分ならば手加減する事もないと睨みつける。
「時間がないんだ。やらせてもらうよ」
 右手に光の玉が現れる。
 勢いをつけて少年に飛ばすと彼も同じように光を作り応戦してきた。
 立て続けに攻撃しその手を緩めないジョミー。
 やがて対応に追いつかなくなって少年は弾き飛ばされた。
 ジョミーは、そのまま彼を追った。
「シールドを張れ。でなきゃ死ぬぞ」
 と言うと、再び光の玉を作り彼にぶつけた。
 壁際で白煙が上がっていた。
 それが止むと…少年の左肩には青い細い剣が刺さり、その首に剣を向けるジョミーがいた。
「動かないで…。ソレを抜こうとしたり、力を使うとその剣は爆発するよ」
 と剣を向けたまま、彼の側にしゃがみ話しかける。
「君は…僕のクローン…だよね?」
 苦痛に耐えながら少年はうなずいた。
「浅はかな事を…。…十四歳の君に僕がやられるはずがない…」
 ジョミーが少年に刺さった剣に触ると、腕の痛みが和らいだ。
「…なにを…」
「後で動かなくなるような刺し方はしていない筈だから、安心していいよ」
「……」
「では、このまま待ってて」
 そう言って出ていくジョミーを見ながら少年は、さっきの「浅はか」が、僕に言ったのか、或いは僕を作った人間に言っているのか、どっちなのかを考えていた。

 走りながら「ミュウにはミュウを。か…」とジョミーはごちる。
 マザー信奉者にも、権力を狙う者にとっても僕らは邪魔だと言う事だ。
 スタジアムを抜けて艦橋に向かう僕の前にさっきの声が届いた。
「十四歳でもお前が、十四の時よりは戦えただろう?」
「そうだね。少なくとも殺すと言う気ではあったみたいだね」
「今度こそ僕が殺す」
 相手の声のトーンが下がった。

「いいだろう。戦おう。ソルジャー・ブルー」

 ブルーが待っていた所はメギドの動力部近く…そこはかつてブルーがキースと対峙した場所だった。
「ここを用意したのか?趣味がとても悪いな」
「良い趣向だと思うけど、お気に召さなかったかな?」
「無神経なヤツだ。ここで戦うのはマズイんじゃないのか?」
 とジョミーは聞いた。
「別に」ブルーが答える。
「そうか…ならば、遠慮なく」
 再び、輝き始めるジョミー。

(ブルーが相手だと…、手を抜いていられないな)
 胸の中を緊張感がはしる。
 それとどこか自分の中から、高揚感もやってくるのが感じられた。
 心置きなく力を使っても大丈夫な相手が目の前にいる。
 しかもそれは彼だ。
 今の僕なら彼と戦っても…。見劣りはしないだろう。
 今度は光る玉ではなく青い剣を作るジョミー。
「近接?でもないか…」とブルーが言った。
 お互いがお互いの間合いを計っている。
 だが、僕には時間がない。
 早くブリッジに行ってメギドを止めないといけない。
 そうは思っても心が高まってゆく…。
 思わず本音が出る。
「戦いたかった」
 ジョミーが言った。
「僕も待っていた」
 ブルーが言った。



   続く




『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十一話(Messiah/現在)

2011-10-28 01:33:43 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十一話(Messiah)現在 
 惑星メサイア
 あれから半年が過ぎた。
 敵の動きは無かった。
 キースが惑星ノアの大統領選に勝利し、元首となり、やがて、ノアでは共和制がしかれた。
 大きな問題もなく少しずつ人類が変わりだした。
 何年もかけてキース達が準備していた事が、今やっと芽を出しつつあった。
 惑星ノアは人類の首都星だが、メサイアから近い事もあってミュウが多く移住していた。
 その為、ミュウの戦艦の三隻の内、戦艦エラはノアに常駐していた。
 アルテメシアには戦艦ブラウが常駐。
 太陽系、木星上空の衛星都市メティスに戦艦ゼルが配置してあった。
 スメールで暮らすジョミーの元に、トォニィから空港の完成とツェーレンの妊娠報告がきていた。
 そんな嬉しい報告の中、ジョミーはメサイアを赤く染める炎の悪夢を毎晩見ていた。
「まるでナスカのような…」
 予知能力はフィシスに渡していてもう無いのに、あの悪夢が浮かぶ…。
「これは、ただの夢だ。僕の不安が見せる夢。予知などでは無い…恐れるな。起こさせやしない。必ず止めてみせる」
 そう僕は自分に言い聞かせた。

 やがて彼女がタロット占いをはじめる。
 ジョミーとフィシスはスメールを飛び立ちメサイアへ向かった。
「メサイアを守って、フィシス」
 キースは星間での不穏な動きを察知して軍を動かし始めた。
 メサイアを目前にしてジョミーは思う。 
 問題はメギドを使って我々ミュウをまた虐殺し、再び混乱した世界を敵がどうしてくるか…。いいや違う。そうなってはいけない。
 やっと安定し始めた世界を再び動乱の渦に巻き込ませてはいけない。
 僕らミュウが虐殺される事、あの星メサイアがメギドで焼かれる事、それがもし起きてしまっても、それはほんのきっかけでしかない。政府転覆を狙う彼らはその先を混沌へと落としてしまう。
 メギドを撃たせてはならない。そうなったらもう遅い、それを止めるその為に、僕らは今まで探ってきたんだ。
 きっとキースは不安の種を見つけてくれる。
 キース、人類は任せた。
 敵がメギドを盗んだ訳は、敵として「やっかいなミュウ」の目をそこに向ける為。
 メギドは「僕」を釣る餌だ。
 メギドが動く時、それがこの戦いの始まり。
 大丈夫だ。キース。
 僕は今度はちゃんと彼らの罠にかかるから、僕はここで起きる悲劇を止める。それが僕の役目。
 メサイアのフィシスの予言によって、トォニィがミュウ達の避難を秘密裏に進める中、軌道衛星ステーションにいる僕にセルジュから連絡が入った。
「お久しぶりです。ジョミー。至急お知らせしたい事があります。惑星ノアでメギドの痕跡がありました。敵の本当の狙いは、やはり首都ノアと予想されます。メサイアの方はどうですか?」
「避難をはじめています。ミュウはトォニィに任せましょう」
「はい。了解しました。それと、今回発見されたのですが…。知っていると思いますが、ノアにはミュウを研究する機関のありました。大戦後、そこは破棄されました。ですが、一部の研究者はそのまま研究を続けていたようです…それで…そこには、戦時中医師として参加していた者がいたという事です」
「セルジュ。それは僕のDNAをそこが入手していたって事ですね。五年前のあの時に」
「そうなります」
「彼のもでしょうか?」
「はい。多分」
「わかりました…予測通りですね」
 ジョミーは諦めたように目をふせた。
「あの、ジョミー」
 セルジュが心配そうに声をかける。
「…セルジュ」
「……」
「セルジュ。敵の旗艦がこちらに着く時間の計算をお願いします」
「それは彼等がメギドと共にそちらに向かうという…」
「はい。メギドは僕らミュウがとても恐れる兵器です。脅しであればいいが、多分撃ってくる。それでも、メギドと彼らは僕が止めます」
「あの…本当に一人でですか?彼らはタイプブルーなんですよ」
「今の僕にとってはタイプは、そう問題ではないんです。問題は、彼等がどう生きているか、彼らが何を思っているかです。そこを思うと人類が到底、無事に扱える代物とは思えない。まぁ、直接会ってみない事にはわかりませんが…」
「…了解しました。くれぐれも無理はしないようにして下さい。無事を祈ります。メギドの計算gs出ました。推測ですが、最短で十五時間後に到達します」
「十五時間…。ありがとう。僕は大丈夫だ。心配はいらない。セルジュ。君は君達の人類を守ってくれ」
「了解しました」
 通信はここで終わった。
 キースの言った通りにメギドは空港がありメサイアの首都で一番人口の集まるこの場所へ衛星ステーション上空に現れるだろう。
 僕は衛星ステーションから下を見下ろす。 
「避難はギリギりか…」
 今すぐにでも降りて行って一人でも助けたい気分に駆られる。
 敵のミュウなら、僕がどこに居るのかは感知出来るはず、僕はここを動けなかった。
「トォニィ、皆を頼む」
 ジョミーは祈った。

 一時間前、フィシスの予言が出た頃に、キースから通信があった。
「ノアは敵の主力がくる可能性が高い。ノア空域には私が出る。メサイアにセルジュを行かせよう」
「ペセトラ基地でも何か起きるかもしれないのに彼を出しては手薄になってしまう。ミュウが逃げおおせても、人類が崩れたら、勝利はない」
「大丈夫だ。心配はいらない」
「キース。ペセトラには戦艦エラがいる。参加させて欲しい。敵に睨みくらいは利かせられるだろう。こちらは地球の空域にゼル、アルテメシア空域にブラウを配置した。この拠点はこちらで必ず守り抜く。出せる戦力が少なくて申し訳ない…」
「了解した。戦力に関してはお前が謝る事ではない。お前達は戦う為に存在する(いる)わけじゃない。せっかく安定してきたメサイアを捨てるような無理をさせるのはこちらだ。これはもともと、人類の争い。彼等は、ミュウを排除すれば自分達の勝利だと誤解している。そう思われていた方がこちらは動きやすかった。そこを利用させてもらっただけだ。ミュウやお前を囮に使ってすまない」
 ジョミーが人間側で暮らして五年。
 特に軍事関係に所属してみて思ったのは、大戦中、僕達の時もこうして隠れながら動いていた事が全部では無いにしてもわかっていたんだなと言う事と、宣戦布告をして布陣を広げる僕らに対してそれを打開する手立てもあったという事実。
 それをしないで「地球」での総力戦に持ち込んだのはキースの覚悟だっだ事がわかった。
 キースは、あの戦いで人類にどう生きていくべきかを教えた。生きる事を自分達で考えるようにと、戦争という残虐な陣取り合戦の末に、自分達の命の価値を知って生きていけるようにとしたんだ。
 でもそれは容易ではなく…、結果として僕達の事を戦いの必然性をマザーの意思であると公表したんだ。
 『人間はこのままではいけない』と知らせた。
 大戦から六年、人類はいまだ混乱の中にある。
 マザーという支えをなくし、ミュウはもう人類の敵ではなくなった。
 急激過ぎる変革の前には政局を握ろうと思う者が出てくる。
 そういう者達が「マザー信奉者」を煽っているのもわかっている。だから綿密な包囲網が必要だっだ。

 しかし、キース。
 戦況は蓋を開けてみないとわからない。
 前の大戦時にスウェナがやっていたような地下放送で人類が蜂起したように。
 マザー信奉者がこちらの読みより多かったら、戦場で勝っても負けた事になる。
 そうなったら、彼等に組する空域も出るだろう。
 何も知らずに、変革を望まぬように飼い慣らされた人類は元の体制に戻る事を選ぶのか。
 再び自分達で歩き出すのを選ぶのか。
 人類は僕らを受け入れた。
 今度はどう生きるのかを選ぶ時だ。
 僕達はそれを見守るだけ。
 僕達ミュウは囮の役を果たしたら、ただ自分達を守って無事に逃げ切ればいい。
 そうさ、僕らは逃げる事には慣れている。
 人類が逆行するなら僕達はまた逃げるだけ…。
 何か不測の事態が起きてもソル太陽系「地球」は抑えてある。
 また僕らは「地球」を目指せばいい。
「薄情かもしれない。だけど、キース。僕は…」

 的確なフィシスの予知に助けられて避難が進む惑星メサイア。
 僕は前のソルジャー服に着替えた。
「そろそろか…」ジョミーはつぶやいた。


   続く





『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十話(Messiah/現在)

2011-10-25 02:01:05 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十話(Messiah)現在  ※この章は流血もBLもあります。ご注意を!

 メサイア空港
 結婚式の後、トォニィは一年半前の「カナリア事件」の真相と、本当のその始まりをジョミーとキースから聞く事となった。
 今から五年前(大戦中)キースは破壊兵器メギド六基でミュウを殲滅しようとした。
 その六基は多くの犠牲の下、破壊されたがそれ以外に大戦中は未完成の一基があった。
 『ミュウにとっては忌むべき兵器メギド』
「メギド?まだあんな物を人は作ってたの?」
 不快極まりない顔をしてトォニィは言った。
「戦時中に製造中だったものが一基あり戦後、それは処分される事になっていたが運搬中に盗まれた」
 表情も変えずにキースが答える。
「そんなの。さっさと壊せばいいのに」
「それは、未完成のまま、戦争終結の式典で壊す計画で運ばれていたんだ」
 とジョミー言った。
「式典…?そんなもの」
 憮然となるトォニィ。
「トォニィ。そういう行事は人類には必要なんだよ。それは僕らミュウにもね」
 盗まれたメギドは未完成であっても指揮系統にエンディミオン級の戦艦さえあれば起動はする。
「あれは、後少し手を加えれば十分な兵器になる」
「もう二度と地獄の業火と呼ばれるものを撃たせてはならない」
 ジョミーが静かに言った。
 二人の話では、今から五年前、戦後の混乱期にメギドは盗まれた。
 もちろん、人類はメギドを捜したが見つからなかった。その上、盗んだ者が何者であるか、メギドをどうしたいのか等、全てがわからなかった。そんな不穏な空気を含んだままで月日は過ぎていった。
 やがて、「カナリア事件」が起きる。
 渡航IDを持たないカナリアが一人で遠いメティスまで来れるはずはなく、誰かに連れたのは明白だが、犯人は見つからなかった。
 少年にジョミーの所へ行くようにと命じた者は?
 カナリアの意思統合でジョミーを操ってどうしたかったのか?
 この正体不明の敵の初めての接触を取り逃がしてしまう事となったが、攻撃で敵にとても強い能力者がいる事はわかった。
 能力者の存在、それは未分化のミュウなのか、何者かに作られたものなのか?
 戦後ミュウに関する研究施設は閉鎖されているが、ここ何年か研究者だった者たちが失踪している事。
 そして、最近また増え始めている各地の紛争。
 マザー信奉者の上層部への脅しや暗殺。
 これら、色々な情報を総合すると繋がっている事がわかった。
 さまざまな事を効率よく収拾する為と、軍部をいつでも動かせるようにとキースが軍部を統制した後、政界に戻ると決めた事や、再びカナリアを利用させないようにとジョミーがスメールに来た事などを知らされた。

「マザー信奉者が狙うのはミュウだ。惑星メサイアの護りを固めてくれ」
 とキースが言った。
「またミュウがメギドで狙われる確率は高い。人類との信頼関係をもっと強くして。人類は僕達ミュウがメサイアに行ったことをちゃんと評価してくれている」
 とジョミーは言う。
「だけど…トォニィ。僕は敵が布陣を張り終えるのを待つつもりも、彼らに時間を与えるつもりも、もうない。こちらから罠を仕掛けた。でも、トォニィにはまだイレギュラーでいて欲しいんだ。
「それは…僕達、ミュウを囮に使うつもりだね?」
 トォニィが答える。
 敵がメギドで再びミュウを狙うのなら…狙いやすいようにメサイアに舞台を作って掛かるのを待ち、敵を殲滅するという事だった。
 確かに軍事力も人類の情報網もかなり必要そうだとトォニィは思った。

「でも、一番問題なのは、僕たち…?」
「そう、ナスカの時のようになってはいけない。何か起きた時に、皆が君の言う事を聞いて無事に逃げおおせないといけない」
「そんなの無理だ。いつそうなるかわからないのに」
「しなきゃいけないんだ。僕はそれが出来なかった。僕じゃなくて、ブルーがもう少し早く起きて言ってくれてたら…と思った事は何度もある…。でも、僕が出来なかった事だけど君になら出来る」
「それはジョミーが言ってくれた方が皆は動くんじゃない?」
「ううん。僕はそれは出来ないんだ。それは君の役目で、僕は僕でやる事がある。だから、トォニィ。君は不安に思わないで欲しい。君には出来る」
「ジョミー」
「大丈夫。僕の予知能力をフィシスに渡してある。彼女は正確に場所と時間を当ててくるだろう。でも今は、負担になるから、その時まで能力は眠らせてあるけどね」
 ブルーがしたように、自分の能力を他人に渡すなんて…。
 それはジョミーがブルーのようにフィシスをとても信頼しているから出来るのだろう。
 そしてこの計画の重さを感じるトォニィだった。
「狙ってくるなら…ここだろう」
 とキースが上を指す。
 そこには軌道衛星ステーションがあり下には首都にあたるここがあった。
 上を見上げたトォニィは、今にもメギドが現れて業火を放ってくるような錯覚が襲われ震えた。
 こんな恐怖を何年も前に知っていて、その対策を練ってきていた二人が怖くなった。

 だから、ジョミーは自由に動ける存在になる為にミュウから離れたのか?
 キースは、罠を張りやすいように近くに他の都市の無いこの惑星を選んだのか?
 そしてこの星は地表に露出するように建物が建っていない。
 すべて地下になっている。
 もし業火を防ぐ事が出来なくてもその構造上で逃げる時間を稼げる。
 各地に脱出用にシャトルを用意してもその時までそれを隠す事も出来る。開発中の星には、それを作れるくらいの技術を持った人間たちが沢山いた。
 キースとジョミー。
 人間とミュウが手を取り合った図がここにあった。

「今、セルジュはエンディミオン級の戦艦が消失した事件を調査中だ」
「小さな物を隠すには宇宙は広過ぎる。問題はそこと、敵のミュウだ」
 トォニィはハッとなった。
「さっき、ジョミーが言ってた。自分のやる事って、そのミュウと戦う事?」
 トォニィは止める事?とは言わずにストレートに聞いてきた。
「戦わずに止めれればいいんだけどね」
「どうなの?カナリア事件で強いミュウがいるのがわかったのなら、統合の攻撃でしょ?やれそう?」
「実の所、わからない。だけど、負ける訳にはいかない」
「そうなったら、僕も行くからね。グランパ!二人なら負けないよ」
 トォニィが好戦的なのは相変わらずだが、それもソルジャーとしての大事な資質だと思うジョミーだった。

 世界には、勝たないと守れないものはある。



  続く




『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」九話(Messiah/現在)※BL風味

2011-10-19 02:43:43 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  九話(Messiah)現在 
※この章は流血もBLもあります。ご注意を!
※九話は閑話扱いでしたが、本編に組み込みました。なのでギャグ風味です。

  メサイアの空港
 祝宴の行われている空港の第二棟までの誰もいない長い廊下を、ジョミーは少し回りを気にしながら歩いていた。
「……。これからまだ皆に会わなきゃいけないのに。トォニィにも大事な話があるのに…」
(こんな大事な日なのに…何をしてるんだ僕は…)
 と一人ごちる。
 エレベーターホールまで来ると、窓があった。
 そのガラスに自分の姿を映して見る。
「まったく、こんなにつけなくても…」
 と、首を傾けて、指で襟を少し広げガラスに映した。
 そこにはキスマークが残っている。襟を戻すと、見えなくなった。
(…この服、露出が無くて良かったな…)
「悔しいな。ヤラれた感があるんだけどなぁ…何だろう…。満足してない訳じゃないのに…」
 ジョミーは「うーん?」と考えながらロビーへ降りる為にエレベーターに乗り込んだ。
 乗ってからもまだ何が気になっているのかを考えていた。
「もしかしたら、まだいたかったって事になるのか?離れたくなる程に…僕は…」
 ロビーに着く直前にそう答えが出てしまった。
(か、彼が上手すぎるんだ…。きっと…そうだ。その所為だ)

 静かにエレベーターがロビーに着いた。
 降りて左に少し行くと広いコンコースに出た。
 メサイアは今日は祝日扱いになっているのでコンコースは混雑していた。
 人類のスーツではないので、以前のソルジャー服はやっぱり目立ってしまう。
 そこにいるミュウ達が「今日はおめでとうございます」「ソルジャーお久しぶりです」「ジョミー元気でしたか?」と声をかけてくれる。
 それに答えていると、「ソルジャー・シン。こちらです」と迎えに来たシドが少し離れた場所から声をかけてきた。
 人の輪を抜け、歩いてくるシドの方へと歩いてゆく。
 ジョミーは手を上げて彼に挨拶した後、少しうつむきがちに口元に手をあて考え事をしたままだった。
「何かあったのですか?」
 平静を装おうとしていたジョミーだが、このシドの質問で一気に色々と思い出してしまった。
(あちゃ、これはマズイな…)
「ちょっとだけ、こっちに来てくれる?」
 とジョミーは下を向いたままシドの手首をつかみ、人々を避けながらコンコースの先にある外が見える所まで引っ張って行った。
「え、ジョミー?」
 コンコースは地下なので、窓にはメサイアの市街地が見えた。
「シド。胸を借りるって訳にはいかないから、少しだけ背中貸してくれる?」
 とジョミーは言った。
「え?」
「少しの時間でいいから、僕が落ち着くまでそこに向こうむいて立ってて」
 あぁ、とシドは思い出した。
 昔、まだ心理遮蔽が上手く出来ない頃のジョミーは、たまにリオに壁になってもらってたっけ。
「わかりました」
 とそこに立つシド。
 その背中にトンっとジョミーは自分の背中を預けて目を閉じる。
 背中から伝わる体温が暖かかった。
 人の体温って、安らげるんだと…。世界に一人ではないと思う事は、強さになるなぁ。
 だけど、だけどもだ。
 やっぱり、感情のままはダメだったかも…しれない。
 ああいう事は時と場所を選ばないといけなかった。
 だけど、まさか、そうなるなんて思いもしてなかった。
 僕は…どうして、あんな。
 あんな事を…。
 体温が上がったままで、気持ちが全然安定しない…。
 両頬を手で押さえてほてりを涼めようとするがなかなか下がらない。
 で、しかも、僕だけこんなになってるのに、きっと、キースは全然平気な顔で出てくるに決まってる。
 と思うと、段々、悔しくなってきた。
 ジョミーがぐすっと鼻をすすった。
「ジョミー?」
 それに気づいたシドが心配して様子を見ようと動く。
「おわっ?急に動くなよ」
 それで、背中に体重をかけてたジョミーが転びそうになった。
 あわててシドが抱きとめる。
 背中から抱き止められ至近距離で目が合う二人。
「す、すみません」
 とジョミーを立たせるとシドはまた背中を向けた。
「……」
 無言で背中を合わせるジョミー。
 泣きそうな顔だったとシドは思う。
 泣きそうになってた顔を見られてしまったとジョミーは思った。
 しばらくすると、
「落ち着いたよ。シド」とジョミーが言った。
「いえ」
「ところで、シドは好きな子はいるの?」
「え、はい。います」
「そうか。結婚する時は呼んでね」
 と背中を離した。
「行こうか?」
 と歩きだしたジョミー。
 そこに居るのはもう普段のソルジャー・シンだった。
 今の言葉からするとジョミーは今、辛い恋をしているか?
 別れてしまったか?のどちらかだとシドは思った。

 会場に着くと、トォニィが待っていた。
「それでは」離れてと行こうとしたシドが戻ってきてジョミーに声をひそめて言った。
「泣きたい時は言って下さい。いつでも背中貸します」と。
 良いヤツだなぁ、とジョミーは思いながら見送った。
 シドは目が合った時に一瞬ときめいた自分を自覚していた。



   続く



『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」八話(Messiah/現在)※BLあり

2011-10-17 02:07:20 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  八話(Messiah)現在  ※この章は流血もBLもあります。ご注意を!

  メサイア空港の一棟 特別室 
 大きなベッドの上で毛布にもぐっていたジョミーが頭を出すと、それを待っていたかのようにキースが頭をなぜた。
「前から触ってみたかったが、細くてやわらかい髪だな」と言った。
 僕の髪にさわった事くらいあるはずなのに…。
 だけど今、そう言われると何故か嬉しい気持ちになるのはなぜだろう?
 僕はキースの髪も触ろうと毛布から手を出そうとして、自分の腕に気づき手を引っ込めた。
「シャワーを浴びてくる」
 大きな毛布をすっぽりと被ったまま、ジョミーはベッドを降りてシャワー室に向かった。
 シャワー室から戻ると入れ違いにキースが入っていった。
 僕は腰にバスタオル一枚の状態で、ベッドに座ってぼーっと部屋を眺めていた。
 椅子にかかったキースの制服が目にはいった。
 床に無造作に散らばった二人の服を拾ったついでに、キースの軍服を持ち上げ眺めてから腕を通してみた。
「大きいな…鍛え方が違うか…」
 腕回りや長さ、肩の厚みやもちろん身長も全然違っていた。
 自分の乾いたばかりの髪からシャンプーの香りがする。
 真新しい服からはキースの香りがするのだな。と思っていると、急に肩を引かれてベッドに横になってしまった。
「?」
 僕は、キースが戻って来た事に全く気がつかなかった…。
 キースが僕を見下ろしている。
 その視線をうけていると、自分が彼の服を着ている事がすごく恥ずかしくなってきた。
「あの、これは着てみたかったと言うか、じゃなくて、髪からシャンプーの匂いがしたから、それを消せないかな?とかとも思ったし…」とあわてて訳のわからない言い訳をしてしまった。
「着たかっただけで他意はない」とかも言ったと思う。
 でもキースは、寝たままでしゃべる僕を無言でただ眺めていた。そして、
「扇情的だな」と言った。
「え?あ!」
 そこで僕は自分の姿を思った。
 タオル腰に巻いてはいるが、ほとんど裸で大きな軍服。はだけた胸。
 そして身体に残るさっきまでの痕跡。
 これは、確かに誘ってる感じだ。と自分でも思った。
 一気に上がる体温。
 耳まで真っ赤になってるいのがわかった。
「あの…!」
 僕はあわてて起き上がり、キースの軍服を脱ごうとした。
「いいから。俺が着るまで着ていろ」
 その命令口調が気に入らなかったが、それでもその言葉に従いそのままにした。

 けだるさが僕を眠りに誘っていた。
 頭の芯が緊張から解かれてゆく…。
 景色すら薄ぼんやり見える気がした。
 精神を飛ばすのでもなく…、
 留めるのでもない…、
 そこで遊ばせるような…。
 今は…、、もう何も考えなくていい。
 僕は…全てを騙している。
 罪ばかりが増える気がする。
 だけど、今は…。
 今だけは…。ただ自分の命の鼓動だけを感じていよう。
 何故だろう…。
 とてつもない安心感がそこにはあった。
 こんな感情はいつ以来だろう…。
 泣いてしまいそうだった…。
 何故、そうなるのかすら、よくわからないまま僕はその感情を楽しんでいた。

 ベッドに座っていたジョミーがころんと横になり、そのまま丸まっているので、寝てしまったのかとキースは覗き込みこちら向かせようと肩に触る。
 すると、眠そうな目でジョミーはこう言った。
「僕はすべてをかけるからね…。…最高だったよ…」と。
 これにはキースが赤くなる番だった。

 そんな、時間が止まったかのような時は過ぎるのが早い。
「俺の傍は安心できるか?」
 の声で目が覚めたような感じがして…。
「だが、そろそろ時間だぞ」
 と言われて意識がはっきりしてくる。


 現実の時間が流れはじめた。
 キースに服を返すついでに従者のように彼に着せてみるジョミー。
「お前の服も俺が着せようか?」
 とキースが言う。
 それを丁寧に断り、自分も身支度を済ませて外に連絡をつける。
 時間的に僕が早く出る事になったので、
「後で」
 と部屋を出ようとすると、
「待った」
 とキースが僕の腕を引いた。
「……」
 引き止めたのはキースなのに、何も言ってこない。

「月並みな言葉や行動は無しでいいよ」
「そういうのしか出てこない」
 と答えがかえってきた。
 彼の困っている姿をひとしきり楽しんだ後で、
「ここでいいよ」
 と僕は自分の唇に指をつける。

 二人の重なった影に、惑星メサイアの夕日が落ちていった。


   続く