君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十話

2014-12-12 02:22:47 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
※少し書き加えました。
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十話

  太陽系 木星のメティス(異空間)

 ハッとなるジョミー。
「続けて…」
 とキースが顔をよせて囁く。
 何者かの気配が近くにあるのを二人は気が付いていた。ジョミーにミュウの力があれば気配を読むのも簡単だが、今は何も出来ない。この気配を少しでも長くここに引きつけるしかなかった。
 ジョミーはキースの目を見て小さくうなずいた。
「僕は君に本当の事を言わなきゃいけない」
「…ジョミー?」
「僕はあの頃、君の記憶の欠損に気が付いた時。気が付いたけど…聞けなかった。僕は怖かったんだ。何を忘れ何を思っているのかを君に問う事が、確認する事が怖かった…」
「確認するのが怖かった?」
「僕が記憶を失っている時のキースもそうだったよね?覚えてる?」
「ああ」
「何度も確認してきたね」
「そうするしか何も出来なかったからな。とても不安だったのは覚えている。だが、思い出せないんだ…」
「僕は…、わかったよ」
「……」
「キース。君は僕の記憶を失っている。その欠損部分を置き換えられているんだ。そう…そこは、マザー信奉者と人間に対する不信を植え付けられている」
「どうも、そのようだ…な」
 キースが苦々しげに答えた。
「君が未だにマザー信奉者がいる事をどう思っていたかを教えるね。消えゆくものならいつか自然淘汰されるだろうって言っていたんだ」
「そう…なのか?」
「今は?」
「今すぐに排除するべきだと思っている。彼らは忌むべき存在。人類には必要がないと、思う気持ちはある…」
 ズキンとジョミーの心臓が疼いた。
「…大戦から二十年。彼らは消えていないし、彼らはもう根強く入り込んでいる。元より、権力者や科学者・研究者に多かったからね。彼らを殺す事は多大な損失なんだ。そして、彼らは君と同じ人間。僕らと同じ人類なんだ。もう排除できないんだ」
「それでも…」
「それでも?…記憶を操作する事の怖さを思い知らされたよ…」
「……」
「では、キース。君はクローンをどう思っている?」
「…それも、忌むべき存在だ。クローンは必要ない」
「君の船。ゼウスに乗艦していたのは二百人足らず、彼らは実験体の生き残りどよね?人間として生きる事は出来たていた者たちだ。それはもう、普通の人間だったんじゃないのか?」
「要らない者たちだ」
「…今すぐに、君の洗脳を解きたいな…」
 と、ジョミーは小さくため息をついた。
「ジョミー」
「例え、君が洗脳され何者かに動かされていたとしても、君のした事を僕は許さない。それを止める事が出来なかった僕も許せない」
「…承知している。俺は罰せられなければならない」
「ああ」
 暖炉の灯がゆらゆらと不安げに揺らめいた。
「じゃあ、最後の質問だ。君はミュウをどう思っている?」
「え?」
「人類の進化の過程に必要でないなら、自然淘汰されるもの。人類の敵。忌むべき存在。排除、根絶やしになければならない?」
「ああ。そうだ。…いや。違う!そうは思ってはいないと…思う…が…」
「このままだと…君がニュクスで生き残るような事になったら…君は多分ミュウに殺されるだろうね…僕は君を守らない…」
「…そう思っていないはずだ…」
「前と同じように…僕が君を殺せって事だ…。僕が殺せなかったら君は僕の仲間に殺されるという筋書き…。そのついでに邪魔な巨大戦艦を沈めて、マザー信奉者とクローンを殺し、あの呪われた星を破壊させる。キースを失った人類は、ミュウとの戦いへ駒を進める…」
「……」
「大戦を再び起こそうとしているんだ。人類は最新鋭艦プロメテウスを失った。今はもう戦う訓練をされていない牙を抜かれた人類。でも、ミュウも同じだ。戦闘力が高いのはトォニィだけだ。すぐに戦いは膠着し、お互いに疲弊する。そこに、絶大な力で現れる…」
「……」
「邪魔なトォニィを殺し和解の道を絶ち、メサイア、スメールを破壊し…たった一人残ったミュウが力で世界に君臨する」
「俺がそのきっかけを作ったのか…」
「…うん…」
「ジョミー」
「…これは君だけの責任じゃあない。そう…僕は幸せにうかれて、彼の危うさを忘れていた。自分の事ばかり考えていた…僕は…ニュクスの機密さえ外に漏らさないようにすれば、止めてくれると思っていた。どうしようもなく甘い考えだった。彼は知っていたんだ。僕は彼ではなく、君を守る事を優先すると、彼はそれも見越して…計画し実行した…決着は僕しか付けれないね…もう、逃げれない…」
 下を向いて呟くように話していたジョミーが顔を上げた。
 ジョミーは立ち上がりキースの真正面に立った。
「キース。僕は忘れられている事実に馬鹿みたいに傷つき、あの頃、君に『僕を覚えているか?』とどうしても聞けなかった。僕は…君を失いたくないと思っていたのに…。ブルーに襲撃されたのも、海賊の時も、学園での事も、全て僕の所為だ。だから、僕は君が僕を忘れてしまうのなら、それも良いと、もう君は巻き込まれなくて済むんじゃないかと、そんな都合の良い、虫の良すぎる事を考えたんだ。それは…、それは間違いだった。本当に僕は愚かだ。僕は君を守り続けると誓ったのに…。それは…人類の側に付いて、いつか、ミュウを敵にする事になるのかもしれない事実を。いつか…、ブルーを殺さなくてはいけない事を、見落とした…。でも、それでも僕は思ってしまうんだ。それが本当の解決になるのだろうかと…」
「ジョミー」
「僕はもう何者もミュウの力で傷付けたくない…だけど、これが運命なら進むしかない…」
 そう言うとジョミーはキースに向かって手を差し出した。
「屋上へ行こう」
 二人はビルレストの屋上に向かった。




 続く






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