君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」閑話 ※ギャグ風味

2011-09-05 00:45:08 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」閑話 ※閑話はギャグ風味でお送りしています。

 木星のメティスを出てスメールに着いたジョミー。
 カナリア達のパパとなった。
 フィシスがミュウの服のままだったので、ジョミーもここの研究者の服を着る事なく、ミュウの幹部の服を着ていた。
 肩に付いているマントがソルジャーの時と同じ赤なので、もう少しくすんだ色にしようとか、それとも少し濃くしてエンジにしようかと考えていた。
 それをフィシスに相談をする事にした。
「そうですわねぇ…」と答えていた彼女が、
「マントだけでなく、もっとこう男っぽくっていうのかな?大人っぽく顔とかも年をとっていった方がいいかもね」と言うと、
「ダメです。絶対ダメです。ソルジャーは若くないと!」
「わ、わかった…よ」

 なんとなく、長老たちがそれなりに年をとっていたのに…。
 ブルーが若いままなのが理解できた気がした。



  「湖底の城」閑話 
 僕がここに来てから、ミュウと人類との通信も整備されるようになった。
 そして、何故か、キースと連絡を取るようになったフィシス。
 午後、庭園でのティータイム中にこんな事を言い出した。
「ジョミーは出会った頃、わたくしを好きでいてくれたのですね」
 と嬉しそうに言った。
「パパとママだから、それは丁度良いですね」
「夢で見たんだ」
 その話、誰から聞いたかって多分キースだろう…。
 一体、彼はどんな顔してそう言ったのか…などと考えていた。
「ジョミーはブルーが好きだと思ってましたわ」
「ええっ!なんで?そう思うの?」
 僕は、紅茶を吹きそうになった。
「え、あら、見ていればわかります」と…。
 これもキースか…?
 ダメなんだって…フィシスは聞き出すの得意なんだから、いくらDNA上の母だと言っても…。
「ああ、もう。話過ぎだよ。キースに文句言ってやる」
 僕は立ち上がった。、
「キースにも言えたらいいですね」
「え…何を?」
「好きだと」
「ええーー!!?」
「自分の意識を残してまで彼を指名した。あれはそういう事ではないのですか?」
「………!」

 まさか、そういう事だったのか?
 いや、きっと違う。
 そうじゃない。
 ああ、でも。
 キースにも、の『にも』って…、のが気になる…。
 ブルーとの事が…バレてるのか…。

 本当にフィシスにはかなわない…な…。



  終わり



『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」八話(Sumeru) 終

2011-09-04 02:14:09 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」終

  八話(Sumeru)現在
 その後、ジョミーとキースはビルレストから「無事、蘇生」との報告を受けて、カナリアの少年を連れてくる為に、一旦メティスに戻る事となった。
 (キースの私設船)人類のシャトル内
「カナリアが来た時は、チャンスだと思ったのに…」
 ジョミーがため息混じりで言った。
「結果、統合は完了されなかった。カナリアもお前も、敵の手に落ちていない」
 キースが答えた。
「やり方は半端だけど、まさか、カナリアの統合があんなに強力だとは思わなかった。うまくいったら操られたふりをしてやろうと思っていたのに…」
「それは、無理だと言われただろう」
「僕の計画があまりに無謀だとあの子が言ったのが、今はわかる。一度、統合されたら戻れないと…精神がリセットされたみたいになって…またそこからはじまると言ってたね…」
 それはまるで、あの成人検査のようじゃないか?と思うジョミー。
 そんなジョミーの考えを継ぐように「カナリアは、マザーが作りし者だからな」とキースがつぶやいた。
「彼を殺して良かったのかな…」
「何者かの攻撃で、精神が崩壊する前に、仮死にする事でぎりぎりで止めれたのだから。良しと言える」
「あの子を僕が殺したと思わせるのが一番だった…」
 ジョミーもキースも大義名分も無しに人は殺せるということを実際に体験してきていた。
 そんな思いが立ち込めるのを振り払い、キースは話を戻した。
「意思統一だが、あれは自分で自分に攻撃しているようなものだろう?屈してしまうのは仕方が無い」
「そうだね。だけどまさか、自分を割らないといけなくなるとは…思わなかった。そうでもしないと逃げきれなかった」
 ジョミーが悔しそうに言った。
「カナリアを政府側から説得し収め。敵の出方を探るの計画だったが…。操るつもりのお前が二つになって能力がほとんど使えなくなった事。それらは敵も予想外だったのだろう」
「…そうだね…」
 そして、今度はジョミーが話題を変える。
「キース、予想外と言うと、もう一つ。残った僕が君を潜らせるとは思っていなかった。キース、君に何かあったらこの計画も消えてしまうのに…。カナリアに呑まれる時に君に心を残してしまったからなのか…何故、僕はそうしたのだろう…」
 自分の甘さを悔しがるジョミー。
「それだけ気がかりだったのだろう?計画に支障は出ていない。予定通りにスウェナは私の元に来る事となった。こちらの、特にお前の弱味になるような物は、引き入れた」
  ついでに敵の姿を拝みたかったが…とキースは言った。
「IDを持たないカナリアがどうやってビルレストに来れたのか。セルジュに探らせたが、手引きした者が特定できない」
 キースが苦々しく言う。その、重い口調のまま話を続けた。
「…俺は軍に戻る事にした、こんな私設ではなく軍部を動かせる地位までいくつもりだ」
「わかった。その方がいいだろうね」とジョミーが答えた。

 キースはテーブルの向こう側に座るジョミーを見据える。
「その前に確認しておきたい。ジョミー。何を隠している?」
「やっぱり気付いていた?別に…何も。と言っても無駄だよね…」
「あぁ、無駄だ」
「スメールで会った時に言ったけど、怒ってるのは当たってたね」
「いいから、全て話せ」
「精神統合攻撃で…カナリア以外の声がしたんだ。それも、とても強力な力だった。だから僕は心を分けないといけなくなった…」
「やはりそうか…」
「それは最初から感じてた事なのか?」
「最初から?」
「メティスから感じてたのだろう?」
「あの子が急に怯えだして、錯乱したのを見て…だけど…あの時は、はっきりと感じてなかったけど不安感はあった」
「だから結果を急いだ。そうなのか?」
「……」
 唇を噛んで、答えないジョミー。
「…一人で動かないようにメティスで言われたのに…こんな事になって…敵の足取りも掴めないなんて…」
「お前のメティスでの説明も統合時のお前も違和感があり過ぎで……」
 キースは小さなため息をついた。
「いいかジョミー。お前は言ったな。俺がいないと計画が成り立たないんじゃない。俺もお前も、何も知らないまま協力したトォニィも、セルジュもいないといけないんだ。皆の努力をふいにするな。一人で動くなとは、そういう事だ」

 どこかで何かが動き出している。
 この世界に二度の動乱はいらない。
 それを防げなくて何の為の地位だとキースが言った。
 ジョミーも何の為の力だ。と思うのだった。



   「湖底の城」 終



『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」七話(Sumeru)

2011-08-28 18:42:29 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


  『君がいる幸せ』

   二章「湖底の城」

  七話(Sumeru)現在
 キースが連れてきた太陽系の私設の兵士達がスメールの宇宙港へと引き上げてゆく。
 トォニィはシャングリラを空港上空の宇宙に待機させていた。
 今回のスメールでの事は、外部には漏れていなかった。キースがあの放送の後、空港を閉鎖し、この空域への渡航を禁止していた。
 それでも、太陽系にいたキースが動いた事、シャングリラがスメールに向かった事は軍部の知る所となった。太陽系に残したセルジュに指示をする為にキースが部屋から出ていった。
 『スメール事件』は全てジョミーが単独でした事と処理された。
 スメールだけの事件という事で大きな問題にはなっていなかった。
 太陽系にいるとはいってもまだ大きな影響力を持つ、キースがそう処理させたのだった。

 フィシスは、ジョミーが無事だったのを喜び、トォニィとキースに感謝した。
「ジョミーは僕のグランパだから当然の事をしただけ。それに僕一人では出来なかった。フィシス。ありがとう」
「トォニィ」
「それと、僕は今まで貴女に酷い事をしてきた。貴女も長く大変な思いをしてきたのに、僕は甘えてばかりで…ごめんなさい」
 ゆっくりと優しくトォニィは言った。
 彼女への感謝の言葉をあのナスカから口にした事の無かったトォニィ。心ではもう許していても言えずにいた事はジョミーも知っていた。
 やっと言えたんだね。メサイアへと旅立った事はトォニィを一回り大きくしたようだった。
 この先、僕が傍に居なくても、もう大丈夫だろう。
「残る問題はカナリア殺害だけか?」
 キースが部屋に戻って来る。
「フィシスに聞いたけど、カナリアの子供の事でしょ?もう蘇生されてるんじゃない?」
「蘇生?」
「前に僕がが仮死状態になったのを真似したんだよね?ジョミー」
「やはりそうか」
 キースは説明を求めるようにジョミーに詰め寄る。
「騙していた訳じゃないよ」
 と、説明していい?と言って、皆に話はじめた。

「あの時は…、メティスでカナリアの少年に会った時は、あの子は統合される事にとても脅えていたんだ。僕はフィシスに聞く前からカナリアの事は知っていた」
 あの時ーー。
「僕は統合を止めてみせる。だから、君達の所に行かせてくれないか」
「それは絶対に無理です。統合は止めれません」
「必ず止める」
「いいえ。僕達、カナリアだけの力なんです。ジョミーがスメールに行ったら始まってしまう」
「だから」
「無理です!統合なんてされたくない!僕は嫌だ!」
「ここまで影響があるっていうのか?」
「ええ、多分。そう言われた。もしも、無事でも。皆は、二度と僕を見なくなる」
「だったら一緒に戻ってもいい。絶対統合はさせない。皆を守ってみせる」
「いいえ。無理です。もう僕を殺してください!」
 
「あの子は錯乱したようになって死のうとしたんだ…。だからそれを止める為に、トォニィのように心臓だけを狙い遅くさせて…仮死に…。コールドスリープ状態なら、ミュウの技術で蘇生できるとスメールに着いてすぐにトォニィを呼んだ」
「…だから早かったのか…」
 キースはミュウの信頼関係をうらやましく思った。
 太陽系を出たジョミーには軍部からの追手が付いていた。
 自分のシャトルや民間船を乗り継いでの移動に時間がかかり、結局ジョミーとキースは同じような時にスメールに着いた。
 この頃、人類とミュウとの通信は連絡が上手くいっていなかった。メサイアに直通で連絡が取れるのはスメールとノアくらいだった。
「フィシス。僕を攻撃してきたってのは嘘だ。死んでもいない。貴女にとても心配させてしまった…ごめん」
 いつもとは反対にジョミーの手をとりフィシスが微笑みを浮かべて言った。
「私が心配していたのはジョミー、あなたです。無理はしないで」
「僕は何もしていない…皆に助けられただけだよ」
 とジョミーは優しく微笑んだ。
「ジョミー。僕からも質問」
 トォニィが言いだした。
「自力でもカナリアから出れたのにどうして出なかったの?」
「待っていたんだ。トォニィ。君とキースが来るのを」
「そんなの待ってるから心を持ってかれちゃうんだよ」
「あれは…持っていかれたのではなくて自分の意思で分けたのでしょう?意思統合をするには最初に自我をなくさせる必要があって。その為にその人の弱点を狙って精神を攻撃するのです」
「…心理的な僕の弱点を攻撃か…あの時かカナリアが知る筈もないナスカの事を言われたよ」
 ナスカで救えなかった事が自分の中でまだそんなに…と、複雑な思いでフィシスを見るジョミー。
「消えない傷でいいのですよ…」
「それは、手厳しいな」
「それがきっと私達への罰なのでしょう」
 彼女はとても強い…。
 僕は勘違いをしていたのかもしれない。
 どこまでも抱えていくのが僕たちの責任なのかもしれないと思うジョミーだった。

「でも、どうして深層にミュウでもないキースを送ったんだ。危ないのに」
 と今度はジョミーが皆に聞いた。
「それは、深層に潜るには最低でも二人必要だよね?潜るのと補助と」
 とトォニィが答えた。
「補助をトォニィがするなら潜るのはフィシスじゃないのか?」
「補助は僕だけど、実際はもう一人のジョミー。あなたが願ったんだ」
「僕が?」
「意識が残ってた。キースに潜って欲しいと言って。一緒に潜ったんだ。だから、キースがミュウでなくても潜れて、たどりつけたんだ」
「…何故、キースを?どうして僕がそんな事を…」


  続く




『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」六話(Sumeru)

2011-08-23 03:19:32 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  六話(Sumeru)現在
 キースは人の深層心理になど潜った事はないし、それをする気もなかった。
 だが、今はトォニィの力でジョミーの心理に潜っている。
「!?」
 深く暗い水底のような、ゆらゆらと淡い光が射す何も無い世界。
 ゆっくりと下へ下へと降りてゆく感覚があるだけだった。
 キースの不安を感じ取ったのか「そのままで…あわてないで」フィシスの声がした。
(ジョミーを探して、お願い)
 ジョミーを探す?
「どういう事だ!さっきまでのはジョミーではないのか?」
(ジョミーです。 ですが…どこかに心が…)
「心が欠けたまま?戻っている?」
(カナリアの統合で分かれてしまったのです)
 意識統合の事はキースも聞いていた。それはカナリア達だけに起こる事だとされていた。なので、研究者たちはその部分は重視せず、彼らの寿命を延ばす事を最優先にしていた。その能力が何故、ジョミーに影響をしたのかわからなかった。それは本当にカナリアの所為なのか?
 それと、心が欠けるとはどういう事なのか?
 そんな様々な疑問が頭に渦巻く。
 今は、その全ての疑問の答えを持ったままどこかに行っているジョミーを探し出す事。
「まずは、それからだ」
 水底のような深く暗く静かな場所…。
 ジョミーがここの何処かに居るというのか…ここが本当にあいつの心の中なのか…。
 こんな暗い世界が…。
 やがて、降下が少しずつ緩やかになり静かに停まった。
 底に着いたという感覚はしなかった。そこで止められたような感じだった。

 僕の心の中に…声が入ってくる。
「ジョミー、聞こえるか?」
 トォニィではない…少し低い。これは…キースの声だ…。
 キース…?
 それは…何者なんだ?
「誰?」
 ジョミーから答えがきた。
 声の方へ向かいながら、キースは考えていた。
 この事件の最初のビルレストでの事を「こんな事は予定外だ…」と…。
「…!」
 突然、空気が振動する。
 殺気が感じられる。
 ミュウの、ジョミーの攻撃だった。
 最初のはよけたが次から次へと襲ってくる。
 反撃する手段もなく避けきれず頭をかばっていると真上で青いサイオンがはじけ飛んだ。
 トォニィが攻撃を防いでくれていた。
「もし、攻撃された時には僕が防ぐ。深層へ送る事、戻る時に迷わずに帰れるようにする事だけが補助の役目じゃない」潜る時にトォニィは俺にそう言った。自分の周りに何かバリアみたいなものが施してあるらしかった。
 キースは何もない暗い水底を殺気のした方へ歩き出した。
「どこにいる?お前はどうしたいんだ」
 何かが微かに聞こえた気がした。
「…これは…」
 気がつくともっと暗く深い色に変わっていた。
 後悔や懺悔。そして償い。そんな感情が流れているのがわかった。
 この息苦しく重苦しい感情は自分にもわかる。
 俺たちはこれに潰されてはいけない。
 キースは叫んだ。
「まだ全てを救いたいと思っているのか?」
「キース。君か…。思わないよ。僕は偽善で欺瞞。全てに嘘をついて、いい人ぶっているだけ。本当はもっとずっと汚れているのに…」と声が聞こえた。
「俺もだ。俺も同じだ!それでも、我々は生きないといけない」
「なぜ?」
「今、生きているだろう?俺のこの命はお前が守ったものだ。お前も誰かに守られた事ぐらいあるだろう。俺はこの命をもう無駄にはしない、あの時、お前も自分の意思で生き残った。だから、生きて、どんなに苦しくても必死に生きあがいて。俺達はその先を見届けないといけない。この先、何がどうなるのかはわからない。でも進むしかないんだ」
 ジョミーの姿は何処にも見えない。
「ここから出て、カナリアたちを助けろ。お前になら出来るはずだ。彼等は色々言っているが、その実、守ってくれる何かが…そう親が欲しいだけだ。俺も…俺も同じ実験体だからわかる。そう…俺も彼等と同じだ」
「…カナリア…」
「俺の手を取れジョミー」
 とジョミーが何処にいるのかわからないまま、キースは手を伸ばした。
「キース。この先は…未来は何がどうなるかわからない?」
「ああ」
「進んでみないとわからないって…?」
「そうだ。お前もそう思っていただろう」
「そう…だったね」
 先は進んでみないとわからない。それを君が言うんだ。それは…僕が言われた言葉。
「ジョミー、どこだ」
「僕を許してくれる?」
「お前も俺を許してくれるのか?」
 いや違う、ここは俺の心じゃない…お前は何に許しを請うと言うのか…。
「俺は大丈夫だ。許している」
 キース…。
「確かに戦争で沢山死んだ。だがあの戦争で人はちゃんと生きられるようになったんだ。だから戻ってこい!まだ残っているだろう?やる事が。カナリアをこのままにしておいてお前は後悔はしないのか?」
 やがて、
 キースの伸ばした手の先に静かにジョミーが現れる。
 逃がさないとジョミーの手を取った瞬間、深い水底に明るい光が射した。

 世界が戻った。


「ジョミーがパパでフィシスがママなの?」
「そうだよ」
 カナリア達の歓声があがる。

 ジョミーはフィシスのようにここで彼等を見守る事となった。



   続く


『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」五話(Sumeru)

2011-08-18 02:05:34 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  五話(Sumeru)現在
「ジョミーいい?」
 カナリア達が事の急変にあわてはじめた。
 トォニィがミュウである事はその服装からわかる。そして、彼が強い事も感じ取っていた。
「戦うの?」
 とカナリアのジョミーの問いに「そうだね」とジョミーが答えた。
「危ないから下がってて…」
 カナリア達をフィシスに託し、部屋を出て中庭に向かうジョミー。
「ジョミー。報告。ゼルはメティスに着いたよ」
 カナリアのジョミーからは返事はなかった。
 一瞬だけジョミーの目が優しくなったようにトォニィには見えた。
 だが、すぐに戦闘態勢に入ってしまった。
「ふーん」
 トォニィが先に仕掛ける。
 青い光が弧を描いてジョミーに向かった。前の時のように相殺するとトォニィは思っていた。だが、身体をひねり避けるジョミー。彼の後で爆風が上がった。
 カナリアの施設は無傷だった。シールドがはってある。
 ジョミーはそれを目で追った。
「二重?」
 トォニィはあきれたようにジョミーを見る。
 一つはミュウのシールドで、もう一つはジョミーのシールドだった。
「やめ、やめ。こんな事しても僕達にはなんの利益もないもの」
「君がジョミーと戦いたそうに見えたから」
 と冷たく笑うジョミー。
 それに向き直りトォニィは言った。
「そうさ。戦いたいさ。このガキめ!今は僕がミュウの長なんだ!いくらジョミーでも、勝手にソルジャーを名乗ってもらっては困るんだ」
 言いながらジョミーに詰め寄った。
 トォニィを睨み返すジョミー。
 その目を見下し「なんなら、実力で叩き出そうか!」とトォニィが凄んだ。
「……」
 急にクスクスとジョミーが笑い出した。
「わかったよ。トォニィ。僕が彼等を説得するよ。もう十分、脅えているから、もうやめてくれないかな?」
 そのままジョミーは(彼の中の)カナリアと会話をはじめる。
 その話し合いはすぐに終わり、ジョミーはカナリアの呪縛から解放された。

「カナリアは自分達の存在をちゃんと知って欲しかっただけなんだ」
 ジョミーに交戦の意思がない事がわかり施設は開放された。カナリアとフィシスは自由になった。
「すぐにでも戻れるくせに力も使えるのになんで使わないのさ」とトォニィがすねていた。
 一時は本当に使えなかったんだとジョミーが答えた。
「大人しくなってしまったミュウを再び表舞台に引っ張り出すには良い機会だと思ってね。軍部にも対処しないとミュウの皆はいつまでも阻害されたままだよ」
「軍部にいるミュウの事?」
「それだけじゃないよ。もっと広く見るんだ。でないと…」
「戦争を忘れられないようにたまには脅すと言うのか?」
 キースが施設内に入ってくる。
 その声に思わずトォニィがジョミーを庇った。
「ああ、やっぱり怒ってる?」ジョミーはキースの傍に進む。
「ジョミー」キースがジョミーの肩に触れたその時。
「そのまま離さないで!」とトォニィが叫んだ。

 遠くから祈るようにフィシスが見ている。
 事の次第がわからないまま、肩を掴んだ手を離さないでいるキース。
 そして、ジョミーはそのまま深い水底に落ちてゆくような感覚に襲われていた。



   続く