君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 三話(※BL風味)

2014-01-20 01:23:19 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
  <人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 三話

  二日前
 ジョミーの許(端末)にセドルから通信が入る。
 人類の戦艦の中という状況下の為、個人の通信は制限されており画像は無く、音声のみだった。
「ジョミー。会いたかったのに本当に残念だ。ジョミーもだろう?」
「僕も、と言わないのは知ってるくせに」と笑う。
「何を照れてる?そんなに抱かれたいなら俺がいつでも行ってやるのに」
「どうしてそうなるんだか…。君はいつもそう言うけど、僕の事など興味もないくせに」
「いやいや。もうすごく興味があるさ。あんなに良い女なら俺はいつでも、どこでも飛んでゆくぜ」
「僕は男ですけど?」
「ま、なんでもいいさ。でも、もしまた使うなら俺にしろよ。俺は知っている。あの時、良い思いをしたのはお互いだったんだからな」
「いいや。残念だが、それは無い。あれは危険だ。ノアに持ち込む気なら…僕が動くよ」
「了解。ソルジャー・シン」
「それ、ミュウじゃない君に言われても、ありがたみを感じないね」
 と、二人の通信は終わる。
 確かに、あの時、思念体の僕は彼の思いのままに女性の体になった。
 後で思えばあれは薬の所為だったのだが、その時は何故そうなったのかわからなかった。
 女としては心が男だから不完全なんだけれど、僕はその状態に興味が湧いた。
 自分がどう感じるのかが知りたくなった。
 快感だけでない感情からのセックスとは、どういうものかが知りたくなった。
 それは自分が自分ではないどこか狂っているあの時でしか味わえない感覚だった。
 セドルが言った「良い思いをした」のは間違いではない。
 けれど…。
 セドル。君の本当は何処にあるんだ。
「キース。僕たちの闇はどこまで深いのだろう…」

  現在 惑星スメール 
「ジョミー?セドルの事を思い出しているのですか?」
「ああ、ごめん。シドが来る前に知らせがあってね」
「何を話したのです?」
「普通にただの報告をしてきただけだよ」
「何か言ったでしょ?薬は…」
 シドの脳裏に不意にセドルの言葉が浮かんだ。
「薬の所為だって言えばなんだって許されるさ」
「お前、追っても手に入らないものを追ってるだろ」
 長い間、ジョミーを好きだった。言葉に出して言いもした。でもジョミーの答えはいつもNOだ。
 彼の力になりたいだけなのに…。彼の一番側で助けたい。
 自分だけを頼って欲しい。
 俺を好きになって欲しい。
 一度だけでもいい振り向いて欲しかった。
「薬?ここの研究員に渡したのだろう」
「あ、ええ…はい」
 確かに二個は渡した。
 一つ残っている。どうして全部渡さなかったのだろうとシドは思った。
 思考力が落ちている気がする。疲れている所為か…。
 どうしてしまったのだろう。
 シドは重くなってきた頭で、何とか話題変えようと考えていた。
「そう言えば、ジョミー。ここでのブルーのキス事件を覚えていますか?」
「何をいきなり言い出すんだ?」
「僕はあまりここには来ないし、ここがスメールなのでちょっと思い出しただけですよ。あなたの記憶にはありますか?」
「記憶はあるよ。だけど、後付けだと思うが…」
 記憶の後付けこの言葉にシドは思い当たるふしがあった。
「そういえば、前に記憶の事をブルーが言っていたけれど、自分は記憶があやふやになっている部分が多くあるからどうも僕の記憶は後付けみたいだって、彼はとても悩んでいました」
「記憶の後付け。それは覚えさせられたって事?」
「そうらしいですね」
「彼でさえそうなのか?」
「彼でさえ?」
「ああ、いや。その話を知らなかったから驚いたんだ」
「あなたの記憶はどうなっているのですか?あの事件は後付けなんですか?」
「キスの事は…あれは、ここに住んでいて、まだミュウの力で生かされていた頃、倒れる前…。概要はわかる。ミュウの能力で記録は残っている。だから…」
「覚えてはいるけど、その時の感情までは覚えていない?」
「ああ、そうなるのかな。前後の記録を見てこう思っていただろうとは推測は出来るから心配はいらないよ」
「それなら、何故、彼にキスを教えたのかをはっきりと覚えていないと?」
「多分、予想はつくが…」
「教えてあげましょうか?」
「…シド?」
 何を言おうとしているのだろう?
 僕たちが何者でもかまわないと、ただジョミーの傍に居られればと、諦めたはずだった…のに。
 そんなに簡単に諦めて、想いきれるものだったら、こんなに何年も悩まない。
 こんなに苦しいのに…。
 どうして…こんなに悲しいんだろう…。
 微妙な違和感がシドから発せられている。
 それは、現実はこうして目の前に居るのに、自分から急速に遠ざかってゆくシドを感じた。
 行かせてはいけない。そう思えた。
「シド。まって」
 ジョミーはシドが話すのを止めようとしたが、その手を払いシドは続けた。
「あなたはクローンだとわかっていても、彼への気持ちを抑えられなかっただけです。だから、キスをした。でも、それで気が付いてしまったんでしょ。彼は所詮クローンだと」
「シド。僕はわかっているよ。言われなくても知っている。僕はソルジャー・ブルーが好きだ。そんな事は僕が一番わかっている。僕が彼にクローンのブルーにした事は罪だった。それもわかっている」
「ジョミー。その遂げられない思いをクローンにぶつけて楽になりましたか?」
「遂げられない思いをって…シド」
「楽になったのですか?」
「…それは…」
「記憶が無いから覚えていないと言うのですか?」
「違う。それは違う…答えられないだけで…覚えていない訳じゃない…」
「それじゃ、キースはどうなんです」
「キース?ちょっとまって、シド」
 ジョミーは何故ここでキースが出てくるんだ?と思った。やはりシドの様子がおかしい。
「僕は気が付いてしまったんです」
「何に…」
 さっきからずっとシドから感じる違和感と不協和音で、背中に悪寒が走る。僕を見るシドの目が不気味な光りを帯びていた。
「あなたはメサイアで、彼に抱かれたでしょう?」
 冷たく抑揚の無い声で言い放つ。
「…シド?」
「ですよね?」
 シドはじっとジョミーを見つめている。妖しい色を持ったままだったが、その瞳は真剣だった。
 有無を言わさぬものがあった。ジョミーは小さく息をついて、ゆっくりとした口調で答えた。
「ああ、やはり気が付いていたんだね。認める…よ」
「僕があなたにこんな気持ちを抱くようになったのはあの時から…あの日、ジョミーはとても幸せそうで。僕は凄く悔しかった。あの笑顔をどうして僕らは与えてあげられなかったのかと、とてもとても悔しかった」
「ごめん」
「そして、憎かった。何故、キースなんですか?どこが、何が良いというのです!」
 シドの目には涙が浮かんでいた。
 ジョミーはシドのまっすぐな視線を見つめ返し答えた。



  続く




『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二話

2014-01-15 02:50:25 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠編 「暮れゆく宇宙」二話

  その二日前
  惑星ノア 上空衛星ステーション
「ジョミーはペセトラだったっけ?」
 セドルが聞いた。
「ええ、大事な会議に出ています」
 とシドはそっけなく答えた。
「ふーん。会議か。そんなの誰か他のに行かせればいいのに。俺を優先してくれないなんて冷たいねぇ」
 と見下したようにシドを一瞥するセドル。
「セドルさん。これはノアに住むのに必要な書類です。目を通して頂いて。ここにサインするだけにしてあります」
 と、セドルにデータを送る。
 ざっとデータを見てからサインをしたものを何も言わずに転送してセドルが言った。
「教えてくれないか。ジョミーは本当はどこにいるんだ?」
「ペセトラですよ」
 シドは確認をしながらそっけなく答えた。
「そうか…まあいい。ところで、お前はこの薬に興味はあるか?」
「僕は興味などありません」
 セドルが持つカプセルを見てから彼の顔を見て、そのしたり顔を睨んだ。
 シドはこの横柄な礼儀知らずが嫌いだった。一秒でも早くここから出たかった。
 二人の身長はそう変わりはなかったが、セドルは身体が良く鍛え上げられていて大きかった。その大きな身体にドアを塞がれた形になっている今、彼をただ睨み返すしかなかった。
「そうか。でも俺は、この申請が思ったよりずっと早く通ったのと、無事にラインを超えさせてくれたのはジョミーだからお礼がしたいと思ってね」
 無事になんかじゃない。彼にはずっと待ってもノアに入る許可なんか下りる筈もないと思いながらシドは答えた。
「それが礼になるとでも?」
「ミュウの力で簡単に手に入るとでも?」
 自分の言葉尻をそのまま返されたシドはむっとした。そして、セドルを見返し言った。
「それを僕が力を使って盗むとでもいうのですか?そんな事はしません。もう、どいて下さい」
「この薬の価値を知ったら興味が出るんじゃないかな?」
「とにかく!ここはもう首都星ノアの圏内なんですよ。非合法の薬なんか持ち込まないで下さい」
 彼の商売は貿易商だ。
 交易は政府が管理していたが大戦後は商売として一般が請け負う事も多くなっていた。それで貧富の差が出始めているのも問題視されていた。
 そんな中、非合法の薬や、武器などを人知れず運搬するのが彼の裏の商売だった。
「わかっているよ。まぁ、いいさ。何にしても、俺がここに入れるのはジョミーのおかげだ。こうして来てくれた礼だ。お前にやるよ。お前たちで調べればいい」
 と小さなカプセルをシドの顔の前に三個ぶら下げた。
「……」
「いいか」
 セドルが顔を寄せてひそひそと言う。
「…?」
「いいか。これはな、あの時、ジョミーを自由に操った薬だ」
「え?」
 あの時とは、アルテメシアでの事だ。
 昏睡状態のセドルを救いに深層まで潜ったジョミーが戻れなくなった。あの時の…。
 アルテメシアでの一件はシドは詳しくは知らなかった。意識の中で自分の理想の女性へと変化したジョミーに心奪われた。とセドルは言ったが、ジョミーは「彼にはそう見えたのだろう」と否定をしなかった。
 だから、あの時のシドの疑問はアルテメシアに居合わせたキースが二人を起こした。という事だった。
 キースが何故あんなにも早く動いたのか…。だが、確かに、ジョミーにあの時、何かがあったのは事実だ。今の言葉はジョミーに飲ませる為に作られた薬ような響きがあった。もしそうなら、ジョミーが戻れなくなったのはその薬の所為になる。
 この薬があるからジョミーは彼に興味を持ったのか? 
「気になるか?」
 じっと見下すような目でシドに聞くセドナ。
「…いいえ」
 薬を調べれば、何かわかるかもしれない。そう思ったシドだったが、この薬には手を出してはいけないような気がした。
「俺はミュウじゃないから操れたのは、お前たちの言う思念体だけだったが、お前なら何でも出来ると思うぜ」
「……」
「三個やるから、全部分析してもいいし、一つくらい使ってみるのもいいんじゃないか?全てお前の自由だ…」
「…どういう意味ですか?三つ共分析するにきまっているじゃないですか!」
「そのままさ。これはな、前のは研究途中の物だった。あの時は、実験のつもりだったが、あんな風になるとは予想していなかった」
「ジョミーは、人類の薬には過剰な反応をしてしまう体質で、彼が特別なんです」
「あれからもっとずっと改良もされているがな。ジョミーがそんな体質なら、今使えばもっと面白い物が見れそうだな」
「ジョミーに何かする気ですか?」
「俺が?あいつに?」
 とセドルが笑いだす。
「俺じゃない。どうするかはお前次第。意地を張らないで、ジョミーに使っちまえって…薬の所為だったって言えばなんだって許されるさ。無味無臭で全く気付かれないぞ」
 シドの目の前でカプセルをひらひらと揺らせるセドル。
「何故…そんな事を言うのですか…」
「俺とお前は似てると俺は思ったが、違うか?」
「似ていません」
「お前、追っても手に入らないものを追ってるだろ。けど、俺の方がお前より勝ってるぜ。あの時、ジョミーは俺に何でもしてくれた。それこそ、なんでもな…」
 その下卑た意味合いを含んだ言葉に嫌悪感を露わにしながらもシドはセドルの手からカプセルをひったくると、何も言わずにセドルを押しのけ部屋を出た。

 今、自分の手の中にある小さなカプセル。
 これで、ジョミーに…。自由に操れる。そんな事が可能だろうか?タイプブルーであるあのソルジャーズのブルーになら出来そうだが、それほどの力(効果)がこの薬にはあるのだろうか?



  続く







月イチ雑記・1月「書かないと書けなくなる」「ボディタッチ」

2014-01-09 02:40:07 | 月イチ雑記「青い星」
☆月イチ雑記・2014年1月分です。
先週一話をUPしましたが、、月イチ雑記です。
「タイトル」書かないと書けなくなるってのは本当です。
文が浮かんでこなくなるんですね。
今回、半年近く休みました。
その間、問題が起きたりしたので、文がぎこちないです。
どう書こうかと迷ってばかりいます。
前はもっと思い切りが良かったな、とか思ってしまい、、。
それはもっと面白くしたい。と言う気持ちからですけど、
本当にこれで面白いのかな?とか色々><。

今は、悩んでもいいから書こうと思っています。

先日、ちょっとした記事を見て、考えてみました。
「部屋が汚いかどうか?」ってな感じの性格判断だったと思うのですが、

「部屋が片付いている」キャラはジョミー・キース・ブルー
「趣味の物が多い」のは、セルジュ・シド
「片付いていない」のは、トォニィ・クローンのブルー

と、こんな感じかな?と思いました。
セルジュは捨てられない物が多い感じで、シドは本が多い。
同じように捨てられない物が多くて(何でも保存)ってのはトォニィ。
クローンのブルーも捨てられない(何でも拾ってくる)

片付いている キースは物が出ているのが好きじゃない(所定の場所がある)
ジョミーもそれに近いけど、物が少ないからかろうじて片付いてる。
ブルーは物が少ない。(あまり執着しない)

こんな風になりました。
性格判断の記事を詳しく読んでいないので、
書かれた性格が皆にあっているかどうかはわかりませんが、
こんな風にキャラを分けた事が無かったので、楽しかったです。

さて、今はラブシーンを書いているのですが、
相変わらず、やんわりとした感じです。
先日、別にHな意味ではなく、ボディタッチの必要性を感じた事がありました。
相手に触った方が心が通うって事です。
なるべく触りましょう。
長らく会っていなかった友人に先日京都で会ったのですが、
一応、四人ともにちゃんと触ってきました(笑)
ハグしちゃった友人もいます^^;


メールでは無く電話。
電話では無く会う。
会ったら相手に接触する。
そうすれば心は通ってきます。







『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 一話

2014-01-02 03:56:20 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
☆新年明けましておめでとうございます。年末UPが出来ませんでした><;
松の内UPと言いましたが、4日~5日が不在となると日にちが無いのでUPさせます。
時間軸は「伝えたい言葉」の直後か少し重なっています。
Hっぽい部分を引き受けてくれる新キャラが登場しています。

※流石に長くなってきているので、2013,12,07の三部までのあらすじを読んでからの方がわかりやすいと思います。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
惑星アルテメシア ジョミーの第二の故郷 ここの教育衛星で学園生活を送る
ジュピター キース警護時ジョミーのコードネーム(シャトル所有↓)
ベルーガ2 ジョミー所有の小型医療用シャトル(ワープ可能、ステルス機能)
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 一話


 宇宙(そら)を滑るように進む一隻の白い船。その中にはジョミーとシド。そしてミュウのクルーが乗っている。
「急いで。間に合わなくなる」

 その約一か月前
 惑星スメールに到着するジョミーのシャトル「ベルーガ2」
 カナリア達の居る研究育英センター
「お疲れさま」
 とシドをジョミーが出迎える。
「無事、終わりました」
 無事に済んだと言うわりに不機嫌そうにシドは答えた。
「シド、何か言いたい事があるみたいだね。僕も聞きたい事があるけど…僕の部屋で話そうか」
 惑星スメールでのジョミーの部屋はカナリアの子供たちが集まれるようにと広いリビングのような部屋になっている。
 床に優しいクリーム色のふかふかの絨毯が敷き詰められていて、奥にカウンターがあった。
 ジョミーはカウンターではなく窓際のフィシスとのお茶の時間に使っている小さな丸いテーブルの方にシドを招いた。
「今日はクッキーを焼いたんだ。だから、紅茶でいいよね」
 ジョミーは用意していたティーセットをカウンターから運んで来た。
「クッキー、久しぶりですね」
 そう言ってシドはクッキーを一枚取って食べる。おいしいですよと言うシドを嬉しそうに見ながらジョミーは彼のカップに紅茶をいれた。
 しばらく談笑をしてからジョミーが切り出した。
「シド。僕に言いたい事があるだろ?」
「あ…いいえ。さっき言ったように彼のノアに来る手続きは何も問題無く無事に済みました。ただ、ちょっと」
「何かあったの?」
「ん、ちょっと…あ、別に、手続き上は何も起きていません。僕が彼の事で個人的に気になるだけで…」
「……」
 質問を待つジョミー。
 だがシドは何も言ってこなかった。
 少ししてからシドが「それより、ジョミーは何が聞きたいのですか?」と聞いてきた。
「んーと、多分、君の気になっている事と同じじゃないかな。いつも一緒に行くから、彼にシドは単独で会った事が無かったね。だから、どんな感想を持ったか知りたいんだ」
 さっきからでてくる彼とは、教育ステーション落下事件の後の休校中にアタラクシアで会ったあの青年だ。
 昏睡状態になっミュウがいるので助けてあげて欲しいとスゥエナに頼まれてジョミーが彼の深層心理に潜って助けたあの男。
 彼の名はセドル。
 あの事件後彼はミュウではないという事がわかったが、あの出会いで彼に興味を持ったジョミーが親密に接触するようになって一年以上が過ぎていた。最近、セドルが惑星ノアに居住権を申し込んだ。だが、許可が下りなかった。それで彼は、ジョミーに協力を頼んだ。許可が下りないのは彼の経歴に問題があるからだった。ジョミーは、問題のある部分を改ざんさせて彼の許可を通した。立場的に表だって動けないジョミーに代わって、その手続きに行ったのだった。シドは彼が星に住む事が出来ようが出来まいがジョミーが関与する問題ではないと思っていた。シドはジョミーが何故セドルにそうまして関わるのか不思議でならなかった。

「僕の印象は見たままです。あなたが居ないから余計に見下されている気はしましたが、いつもの通りの自信家で話すのは自分の自慢ばかり。必要以上に馴れ馴れしくて、言動が粗野で野蛮で。長命なミュウですから、僕らの年齢をとやかく言うつもりはないですけど、いくら若く見えるからって敬う事もしない。とても無遠慮で無神経で無礼な男です。出会った時は大人しそうな普通の青年に見えましたけど、まぁ、僕が見ていたのは寝顔でしたけどね」
 あからさまに不快を露わにいるシドだった。
「そうだね。確かに、とても礼儀を知らないね。ごめん。許してあげて。もう一人で会う事はさせないから」と彼に替わって許しを請うようなジョミーを見てシドの怒りの矛先がジョミーへと移る。
「何故、あんな野蛮で危険な男にあちこちに手回ししてまで、ノアに住む権利など与えるのですか?」
「頼まれたから動いたまでだが、そこまで危険な男ではないと思うよ」
「危険極まりないでしょう?彼の扱うものは…危ないし、彼はあなたを狙ってるのですよ。自覚して下さい」
「それは…そうだが」
「あんな下品な」
 とシドは彼に初めて会った時の事を話し出した。
「覚えているでしょう?あの救出した時、救ってもらった恩も忘れて、思念体のあなたが自分の好みの女性になったって吹聴して回って、あげく俺の女になれって強制して結婚を迫ったんですからね。全く信じられない。あの時は本当に腹が立った」
「あれは、彼のちょっとばかり過激な社交辞令だよ」
「何故、庇うんです。あいつの暴言をジョミーが許したからっていい気になって、今度はまるでストーカーみたいに付け回して、どこにいるのか調べあげて、それなのにいちいち何をしてる?なんて聞いてくるヤツなんて…相手にしないで無視すればいいものを。何故、相手をするのですか?どうして、あなたの方も彼に興味など持つのです?弱みでも握られたのですか?」
「まあね。怒らないで、シド。弱みなんて握られていないよ。ただ、何度も好きだ。好きだ。と言われれば少しは気にはなってくるよ」とジョミーは笑った。
「冗談はやめて下さい」
「まぁ、好きかは別にして。彼が気になる。興味があるんだ。強い個性にも惹かれている」
「だからどうして」
「彼はとても野心家だからさ…」
「野心家?」
「そう、あの出会った時、資産家に取り入り、スウェナまで動かして僕に会えるようにと完璧な口実を作った。そしてその上、僕の思考の上をいったんだ」
「昏睡状態だったのが自作自演だったとは聞きましたが、何か薬で眠っていたらしいですね」
「眠っているのが薬の所為だと人類の医学は答えを出せなかった。彼の中には人類とは別の何かがある。医学も化学も恐ろしく違っているようだ」
「医学と科学ですか…」
 シドは自分のポケットの中にある小さなカプセルを思い出していた。それはセドルから渡されたものだった。



   続く