君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二十四話 「I guard you3」(後編)

2012-01-14 01:55:00 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)二十四話話

   Epilogue Bridge「I guard you3」(後編)  
※「君の存在」の完成版です。
☆ソルジャーズのブルーとの表記は前編の1行目だけで、後は省いています。
  現在・Sumeru
  数日後
「ジョミー、ブルーに何を教えてるんですか?」
 そう言って僕の部屋に飛び込んできたのはシドだった。
「何って?」
「彼にキスを教えたんじゃないですか?」
「え、あぁまあ、キスくらい…問題は無いでしょ?」
「知らないんですか?彼、カナリアの女の子に人気あるんですよ」
「え、そうなの?」
「そーですよ」
「カナリアも年頃だからなぁ…」
「彼の子でもできちゃったらどうするんです?」
「ちょ…それは飛躍しすぎじゃ…」
「彼は上手いですよ」
「ん、え?…何が?」
「えっと、あの、キスが…」
「えーっと、…もしかして、シド、君が…キスされたの?」
 と笑った。
 笑わないで下さい!とシド。
「朝の挨拶に来て、なんかそのまま…だから、キスがって言うより。ふ…雰囲気を作るのが上手いんですよ。きっと、そう、だから…それで……」
 シドはブルーの力に呑まれたんだなと僕は思った。
「で、それを…僕が教えたってブルーが…言ったのか?」
 まだ笑えて上手くしゃべれなかった。。
 憮然とするシド。
「と…ともかく、何か問題が起きる前に止めないといけないね」
 ジョミーはブルーを探し「僕の部屋に来て」と呼んだ。
「どうしたの?何か用事?」
 ブルーが入って来る。
「ブルー、キスして回ってるの?」
「え、そんなのしてない」
「でも今朝、シド以外の誰かにキスした?」
「カナリアのマリナ」
「…彼女だけ?マリナの事を好きなの?」
「マリナだけだよ。別にそう…好きってのでもないけど」
「…じゃ、なんでしたの…?」
「なんか、今日はかわいく見えて、かわいいねって言ったらマリナが急に…」
「彼女からか…」
 ジョミーはため息をついた。
「わかった。とりあえず、キスは禁止だよ」
 とブルーに指示をした。
 ブルーは文句も言わずに部屋に戻って行った。
「ブルーは見た目は十四歳って言っても、中はまだ五歳くらいの子供だからなぁ…。マリナは実年齢で十六歳。成人している。だけど、カナリアだし…。第一、ブルーが本気じゃないなら…しばらくココを離れるしかないのかな」
「マリナって優秀でおとなしい子ですよね」
「うん」
「ブルーは天性のたらしとかなんかですか?」
 …たらしって…。
「んー、多分、あのね」
 とジョミーが、シドをじっと見つめる。
「どうしたのですか?」
「シド、二人の時は言葉使いを普通にしてと言ったじゃない?」
「あ、はい。でしたね」
「違うよ。そこは…」
「……」
「だから…うん。でいいんだって…言ってみて」
「うん」
 ジョミーがパチンと指を鳴らした。
「え?」
「わかった?」
「一種の暗示か催眠術に近い感じかな?」
「これってタイプブルーの能力なんですか?」
 と言うシドをつまらなそうな目でジョミーが見る。
「…タイプブルーの能力なのか?」
 と言いなおすシド。
「ううん。皆、誰でも持ってるけれど、僕たちのはパワーが違うと思う。僕達でもそれぞれ出来る種類も違うし」
「種類?」
「トォニィは戦いたい時に使うから、彼から本気で挑まれたら受けない訳にはいかなくなる。僕のは甘言。つまり言葉でこっちのペースにするってのかな?ブルーは恋愛モードってなるのかもしれないね」
「じゃあ、ジョミー。君も彼の暗示にかかったって事?」
「キスを教えた時?んー、そうなるのかもね」
 あの時、ブルーは何も言わなかった。
 むしろ僕の方から言ったんだ。
 だけど、何故急に一人で僕の所に来たのだろう。
 僕が彼を呼んだのかもしれないな…。
「でも、なんでブルーは君の所に行ったのだろう?」
「さあ…」
「で、なんでそんな雰囲気になったんだ?」
「いや、僕もそれはよくわからなくて…」
「シド、君で試してみようと思ったのかな?」
「え?試すって何を?暗示を?」
「そう、相手を喰う方法をさ」
「喰う…」
「ブルーのは、言葉よりも目と纏ってる空気が違ってきて、呑まれると知らない内に、こちらから動かされる事になる」
「カリスマ性に近いものがありますね」
「否定してても、ブルーはブルーって事だね」
「…ですね」 
「しかし、ここを離れるいい時期かもしれないけど、離れるとなるとどこに行こうか?」
「…ソルジャーズのジョミーは、どうします?」
「彼はフィシスと居ると言うかもね」
「ソーシャラーになりたいんでしたっけ?」
「ヒーリングに興味があるみたいだね。だけど、まだ僕の側に置く。彼らに色々見せたいんだ。そうだ。四人でいろいろな所を旅して回ろう。きっと楽しいよ」
「そうですね。了解。ジョミー」
 そういうと、シドがジョミーを見つめて
「けど、ジョミー。彼のキスは本当に上手かったんですよ」
「…そう?」
「だから、僕にも教えて下さい」
 ジョミーの腕をつかみ身体を寄せてくるシド
 唇が次第に近づく…。
「残念」
 ジョミーが笑い出す。
「効いてないよ」
「全然ですか?」
 がっくりするシド。
「君は君の方法を見つけないとね」

 ブルーとマリナのキスの話題はカナリア内ですぐに広まってしまい、ジョミーはフィシスに軽はずみな事をしないでと叱られた。
 そんな淡い恋愛問題を残したまま、それから間もなく、四人はスメールを旅立った。




  四章エピローグブリッジ(Epilogue Bridge)「心のままに」 
  「I guard you3」 (後編)    終
    五章「星の在り処」へ つづく

後書き※問題の四章のUPが無事終わりました。
次は五章「星の在り処」です。五章の後に終章がありますが、話数が少ないし、
閑話扱いっぽいギャグテイストなので、実質、五章が終章になります。
終わりまでよろしくお願いします。



『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二十三話 「I guard you3」(前編)

2012-01-11 02:21:02 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)二十三話

   Epilogue Bridge「I guard you3」(前編)  
※「君の存在」の完成版です。
☆ソルジャーズのブルーとの表記は1行目だけで、後は省いています。
それと書いていませんでしたが、クローンの方は金髪碧眼です。
この二人だと違いが目の色だけになりますね。

   現在・Sumeru(メサイア襲撃から約半年)
 ノアでの公式行事の後、ジョミーの部屋にソルジャーズのブルーがやって来る。
「僕といるとどうしてそうなの?」
 ソルジャーズは彼ら二人一緒に行動する事が多いので、こうしてブルーと二人きりになる事は珍しかった。
「皆といる時と態度が違うよね?」
 部屋のドアの前で確認するように聞いた。
 スメールのジョミーの部屋は皆が集まれるように広かった。
 窓際に丸テーブルの応接セットが一組と壁にカウンターがあるだけで他に家具は無かった。
 ここにカナリア達が来る時は、敷き詰められているやわらかい絨毯に皆で座って話すようになっていた。
 ドアの前から動かないブルーは、挑むようにじっとこっちを見ているだけだった。
 公式行事後なのでミュウの幹部服のままのジョミーも、ブルーと同じようにカウンターの所から動かなかった。
「僕が怖い?」
 とブルーが言う。
 静かに彼を見つめるジョミー。
「ああ、怖いよ」
 とジョミーが答える。
 その答えにブルーは少し諦めたような顔をした。
「…どうして?ジョミーの方が強いのに!」
「君がブルーだからさ」
「……」
 その言葉にブルーが怒りを露にする。
 けれどその怒りを抑えてじっとジョミーを見た。
 僕には彼の青い目が青みを増したように見えた。
「でも、ジョミー。僕はデータだと…」
 ジョミーのいるカウンターまで進んで、目の前にソルジャー・ブルーのデータを出す。
「…ずっと弱いし、だから…怖がらないで欲しい」
 横に来たブルーをじっと見てジョミーが言った。
「でもこれは君の本気じゃないでしょ?」
「違う。これが僕の…」
「君は、あの子、ソルジャーズのジョミーに合わせてくれているね」
「……あいつ、遅いから」
「優しいね。君は…」
「そうしないと、あいつは、ジョミーは生き残れなかった…。僕と違い過ぎると不良品って…処分って…なってたかもしれない…」
「彼から聞いているよ。やっぱり君は…優しい」
「…違う。僕は優しくなんかない。沢山の自分を蹴落として生き残ったんだ!そんなのは優しくなんか無い!」
「君は君が思うより…ずっと優しいと思うよ」
「優しくなんかない。だって、僕は…」
 言葉を切ったブルーはジョミーを見返した。
「ブルー?」
 ブルーのデータが消える。
「だって、僕は…」
 ともう一度言いかけて、ブルーはまた言葉を飲み込み言い変えた。
「ジョミー。僕をどうして恐れるの?」
「それは、君がブルーだから」
 その言葉にブルーはまた不機嫌になった。
 ジョミーは優しくブルーを見た。
「全く、わかりやすいね。怒らないで…ブルー」
「…ジョミー?」
「僕はね、彼を、本当のブルーをよく知らないんだよ。僕がミュウになった時に、僕の所為で彼は無理をして眠りについてしまった。だから、彼の事は仲間から聞いて覚えた。戦い方も真似したし、どう考えるのだろうとかもね。いろいろ考えて僕は「ソルジャー」になった。僕が彼の事をいろいろ知っていると思われているのはその所為、でもそれは間違いなんだ。確かに、彼の近くに居られたのは僕なんだけど、僕は知らないんだ。だから…そこが君を怖いと思ってしまう所なんだよ」
「わからない。僕はジョミーが僕を怖がらないでいて欲しいだけ。僕の本体なんて…知らない!」
「だから違うんだ。ブルー。ちゃんと最後まで聞いて」
「え?…」
「僕が怖いと思うのは、君がソルジャー・ブルーと同じだと思っていないからだよ。安心して。僕は君を彼の代わりとは思ってはいないんだ」
「なんで、皆、僕をブルーの代わりだと言うのに」
「僕は彼を怖いと思った事は一度もない。いきなり目の前に現れてあんな力を使って戦ったのを見て、驚きはしたけど不思議と僕は彼を怖いとは思わなかった。きっと、出会った時から惹かれていたんだ。でも、僕は君を怖いと思う。それは、どうしてだと思う?」
「わからない。どうして?」
「さっき言ったよね。それは、君だからだよ…」
「……」
 ブルーはジョミーから目をそらした。
「…ジョミーはどうして、いつも、僕が欲しい言葉を言う…んだ」
「僕も同じ経験をしていたからかな?何年経っても、ずっと比べられていたからね」
 やがて、下を向いていたブルーが顔を上げた。
「ジョミー。僕が怖い?」
 そう言ったブルーはさっきまでと印象が違っていた。
 声のトーンも下がって、挑むような眼差しだった。
 その違いにジョミーは少しうろたえ身構えた。
「怖い?」と再びブルーが聞いてくる。
 ジョミーは諦めたようにため息を一つついて答えた。
「あぁ、怖い」
「どうして?」
 その問いはさっきと同じ答えを求めていなかった。
「君は…彼より若くて狡猾だ…から」
 すぐ隣にいるブルーが少しずつ側にくる。
 対峙する形になった。
「僕は、全てを持っていかれそうに…なるんだ…」
 言いながら、ブルーを睨むジョミー。
 カウンターに手をかけてブルーが身を寄せてくる。
「そんなに構えないで…」
 ほぼ同じ身長の二人、すぐ近くに長い睫毛の青い瞳があった。
 金髪と青い目が本来の彼の姿なのだが、銀髪、紅玉の瞳の方が彼らしいと思えた。
「ジョミー」
 と一言問う様に言ってから唇を合わせてきた。
 されるがまま応じていると唇が離れ「目、閉じて…」と言われた。
「……」
 僕は綺麗な青い瞳が閉じるさまを見ていた自分に気が付いた。。
「近くで見ると、キレイだね」
 と言うと、瞳が少し寂しい色に変わった。
 そして、身体を離しこう言った。
「アルビノの方が良いと思っているんだろ?」
「…僕や仲間はそうでしか知らないからね」
「お前、髪や瞳の色を変えれるんだったっけ。僕のも出来ない?」
「出来ない事はないと思うけど、そうしたいの?」
「別にしたいとは思っていない…」
「ならそのままで良いよ」
「ジョミーがそれを見たいのなら変えてもいいかと思っただけだ」
「僕はしないよ」
「……」
「君は君のままで、金髪で青い瞳がいい」
「もういい…。ジョミーはズルイ…」
 ふて腐れたようにプイッと横を向くブルー。
「僕達がミュウの皆から奇異の目で見られてると、こうしてスメールに来るようにしてくれて。僕がブルーとは違うんだと思っているとブルーと違う。と言ってくれる。そして僕のままでいいと言う。ジョミーはズルイ」
「ブルー?」
「僕は…もう何も出来ない。ジョミーがそうしたいと望めば、僕は何でもするのに。辛いとか、悲しいとか、寂しいとか、愛して欲しいとか、言ってくれれば、僕は何でもするのに。ジョミーは何も言わない。それなのに、そんな僕の欲しい言葉ばかり言われて…。でも、僕からは何も出来ないのに…何もしてあげられないのに…」
「僕は君たちが、人間にもう二度と利用されないように連れてきた。だから、君たちの事ばかりを考えてた訳ではないよ。だけど、ミュウになっても君はブルーの代わりで、彼は僕の代わりでしかなかった。君たちは自分の意思で生きていいんだよ。自由なんだ。僕はそれを守る。守らせて欲しいんだ。それが僕の願い」

「ジョミーは僕達の事を好き?」
「ああ、大好きだよ」
「怖いのに?」
「怖くても…さ」
「それなら、もういいや。さっきのキスを無視された事を許すよ」
「さっきのって、挨拶程度だったじゃない…」
「だって、初めてだから…」
「教えてあげようか?」
 ブルーの目が妖しく光る。
「あ、やめた」
 と笑うジョミー。
「どうして?」
「僕は君を子供みたいに思っているのにと思ってさ」
「そんなルール僕らには関係ないじゃん……」
「そう…かもね…」
 僕らはこの行為がお互いに間違っているのを気づいている。
 それでも、この想いを埋める日は来ない事も気づいている…だから…。
 今、だけでも。
 せめて、今、次の朝が来るまで…。
 こうして、二人でいたかった…。




  「I guard you3」(後編)へつづく




『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二十二話 「シャトルの名前」(読切)

2012-01-09 02:47:57 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)二十二話

   Epilogue Bridge「シャトルの名前」(読切)  
  現在・Sumeru
 ジョミーとシドとソルジャーズの二人の四人で、新しいシャトルに名前をつけようという事になった。
「ジョミーは前のになんて付けてた?」
 ソルジャーズのブルーが聞いてきた。
「シャトルに?別につけてないよ。船体番号があるから、そういうの必要なくない?」
 とジョミーが答える。
「あった方がいいと思うけど、愛着も沸くし」
 とソルジャーズのジョミーが言った。
「この4人が乗るのですから、有った方が良いですね」
 とシドが言った。
「ジョミーはネーミングセンスが無いからつけない方がいいんだよ」
 とブルーが言う。
「……」
「じゃ、何がいいの?」
「モビーディック」
「ダメですよ。それシャングリラの別名でしょ?」
「思いつかなくて…」
「シャングリラが鯨なら、これは鰯じゃん」
 とブルーが言う。
「それじゃ、鰯(サーディン)でもいいんじゃ?」
「ダメ!」
 と三人が一緒に言った。
 え?それ舐めてんの?人類を?とブルーがあきれる。
「ミュウ、最強と言われるジョミーとタイプブルーが他に二人も乗った船を最弱って呼ばせるの人類に?」
「言い過ぎだけど適切な発言だねぇ…」
 とシドが苦笑いをする。
「それじゃ、あれは。鯨の別の…」
 とソルジャーズのジョミーが言う。
「ホエール?」
「ううん。白鯨(ベルーガ)は?」

 新しいシャトルの名前はベルーガと決まった。
 翌日には船体にかわいいベルーガのイラストが描かれた。
 どうやらシドの考案らしい。
 ほとんどステルス飛行になるのに…と見上げる。
 でもこれも悪くない。
 と思うジョミーだった。


  おわり


『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二十一話 「Rebellion」(一話読切)

2011-12-30 23:58:36 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)二十一話

   Epilogue Bridge「Rebellion」(一話読切)
  
 僕はそのままキースの元に居続けた。
 ノアでの事を追求されてからもう十日になる。
 大戦後の…四年前の事件の頃の僕は、皆には「ソルジャー・シン」として取り繕っていても、中身はまるで抜け殻のようだった。
 自分が生きている事すら罪悪な気がして…運命を探しながら、その運命に身を任せる事もせず、それでいて逃げ道のように「死に場所」を探していた。
 僕を恨む人々に殺されるならそれもいいと思っていた。
 そんな状態で僕は人々の中に居た。
 キースはそんな僕を見抜いて、捨てていってもいいような僕を自分の下に置く事で守ってくれた。
 なのに僕はいつまでも悩み続けていた…。
 あの時、力が使えなくなったのは僕の所為だったのかもしれない。
 コンピューター・テラを探り、その謎が埋まる度に、僕は自分の存在を否定した。
 その結果、僕は僕を封じてしまった。
 必要最小限の「自分を生かし動かす事だけ」にしてしまったんだ。
 それで、あんな事になって…。
「自分はあんな目に遭ってもまだ生きようとしているじゃないか」と思い知った。
 まだ生き足掻けと…?
 まだ生き続けろと…。
 自分がそれを望むのか?
 生きたいと?
 だから…僕は…。
 僕自身が忘れようとしていた過去を無かった物として流さずに、ちゃんと見て前に進めと。
 そして、僕達は二人で悩み苦しんだ。
 あの事は僕には必要で、僕らの繋がりを強くしてくれたと僕は思う。
 僕達はまた一つ障壁を越えたのだろうか?
 人と人の間にはいくつ壁があるのだろう。
 それはきっと崩したり創ったりしながら進んでゆけばいいのだろう…。

  数日前
「あの日、俺の心を読んでいただろう」
 とキースが聞いてきた。
 そう、あの日の僕はここに入った時から彼の心を読んでいた。
「ノアのあの事だと思いあたってからずっと…不安だった。君の前に行く事もしたくなくて、けれど、逃げる事も出来なくて、部屋に入ってキースを見たら…僕は勝手に君を読み始めた…」
「わかっていた」
「一度、そうなったら、もう止められなくて」
「弁解をしろ。と俺は言っていたんじゃないか?」
「そう。でも僕は謝らなかった。君に嫌われるのが嫌で不安で仕方なかったのに…どうしても言えなかった。それでも、断片ではなく…知っていて欲しくて…」
「俺がお前に自分で説明すると言わせてしまったんだな」
「説明すると言った事で、僕は君を落胆させてしまった」
「そうかもな。お前の口から事件のあらましなど聞きたいとは思っていなかった」
「心を読む事が止めれなくて…読む度に君が混乱していくのがわかって…。言ってしまったのに言えなくて。本当に殺してしまおうか?と思われて、でもそれを僕は嬉しかったんだ」
「……」
「君にしか僕を殺せないんだ。そう思っていたい」
「…強引だな…」
「手荒な事も嫌いじゃないよね」
「では、俺を殺すのもお前ただ一人だと思っていいか?」
「人間のくせに。僕に殺されようと言うの?」
 と少し微笑んだ。
「思ってていいんだな?」
「…傲慢だよ…」
「それでいいんだろ?」
「いいよ。君は僕にしか殺せない」
 その望みは、叶わない。
 そんな事は二人共承知の上だ。
 そう。
 これは、ただの言葉遊び。
「そんな傲慢なキースに質問」
「いまさら何を聞くんだ?」
「君は僕の過去ばかりを引き合いに出すから、僕も君の過去を聞きたくなった」
「俺の過去?」
「何人と付き合い、何人と寝た?」
「んー」
 と数えだすキース。
「あー、…人数はいいよ。もう数えなくて…」
「今、そう聞いただろ?」
「多いのはわかった。だから、質問を変える。僕みたいなミュウとは付き合った?」
「……」
 立場的にも、そこは無いと答えるべきでしょ?と思いつつジョミーはまた質問を変えた。
「…変えるね。初めての事してみたいと思わない?」
「何だ。それは」
「君はミュウは禁欲だと言ったけど、僕達はそういうのはあまり必要ないんだ。ミュウはね。精神的に一緒になれるから」
「どういう事だ」
「もうわかり始めてるくせに。教えて欲しい?」
「ああ」
「じゃ、同調させて…」
 と両手の手のひらを合わせた。
「初めてだとあわてちゃうから…優しくしてあげるよ。でも、先にイカないでね…」
 精神世界に引き込まれてゆくキース。
 ジョミーの父性とも母性とも取れるような暖かな世界が拡がっていた。
 それはマザーイライザの作る世界と似ているようで、それでいて、もっと安心できる世界だった。
 そうか、これは俺が望む世界。
 精神的にね。
 とジョミーの声。
 このまま君に圧力をかけるよ。心を開いて…。
 僕に全てをまかせて…。怖くないから…。
 不安はない。
 とキース。
 本当に君は素敵だな…。
 とジョミー。
 それは、俺がお前を愛していて、お前が俺を愛しているから…そうだろう?
 どこまでも…傲慢だね…。大好きだよ。
 二人の心が本心を語る。
 キースの心を引っ張ってリードするはずが、いつの間にかすぐ隣に居て一緒に行こうとする。
 ちょっと…待って。もう少し…僕が辛い…。
 とジョミーが根をあげた。
 急がないで、ゆっくりと。…そして、このまま…。
 このまま?
 このまま肉体的にもしたら…最高なんだよ。
 とジョミーが言った。

「居続け…か…」
 それって、遊女の所に客がずっと居るって意味だっけ?
 なら今は、客の所に遊女が長居してる感じだなと思いつつ彼を待つ。
 キースがここに居るように言った訳ではなく、僕がここに居たいと願った。
 会議が終わるまでの間だったけれど僕はミュウとして参加出来そうな議案に参加しながら日々を過ごした。
「関係を継続させるって難しい事じゃないんだね」
「お互いがここから出てここに戻る。それが毎日続いてゆけばいい」
「まるで家だね」
「お前は子供時代の記憶があるのにそれをわかってなかったのか?」
「子供だった僕は、ミュウになり、ソルジャーになった。そうだなぁ…。家そのものになった感じだったな。皆が僕の守る家から出て戻る。僕も皆の所へ戻る。それで精一杯だった」
「それでは俺の方がよっぽど普通に生きてきた事になるな」
「グランドマザーの申し子なのにね」
 とジョミーが笑った。

「人間らしく生きるってどういう事?」
 と、この何日かの間にジョミーが挑戦していた事があった。
 それはお互いの立場を意識しないで友人みたいに話す事だったが、それはちょっと変だった。
「年齢が近いシドと友人みたいに話したいのに微妙に敬語を使ってくるから、そんなに出来ないものなのかと思って…」
 とジョミーが言う。
「それで何を話すんだ?」
「うーん。キース、今日は何してたんだ?」
「ノアの防衛線の強化。と、ノアとペセトラの軍事バランスの…」
「違う違う」
 と途中で止める。
「じゃあ、昨夜は何をしてた?」
「お前と居たけど…」
「……」
「何を、してたかまで言おうか?」
「…だから、違うって…」
「ジョミー、友達みたいに話すのは、ガキみたいな事を話すのと違うだろ?」
 と言ったら「そうだな」と考え込んでしまった。
 それを見てキースが笑い出した。
「お前を好きになって良かったと俺は思う」
「な、何を急に…」
「面白いやつだと思って。益々嬉しくなっただけだ」
「あ…ありがとう」
「こんな風に話すだけでいいんじゃないのか?」
「シドとも気にしなくていいって事?」
「そう。あいつともっと話してみればいい。きっと面白いものが出てくるぞ」
 とキースがまた笑った。
「面白いもの?」
「ああ」
「何それ?」
「じっくり話してみればわかるさ」
 とキースが面白そうに言った。
 仏頂面の多いキースが最近は良く笑う。
 ジョミーはその意味を嬉しく思った。
 二人はこの限られた時間を楽しもうとしている。
 何をするでもなく、普通に過ぎる時間を愛おしく思っているのだった。
 このまま、その時間を楽しみたいと思った。
 けれど、僕にはこの時間を分けなければならない人達がいた。
 時間が足りない。
 ブルーもこんな風に焦っていたのかな?
 本当はもっと皆と居たかったのに、貴方が僕に分けてくれた時間。
 その大切さを僕は理解していなかった。
 僕にはもう時間が無いんだ。
 だから…。

「シドに聞いても教えてくれなかったら?知ってるなら、今、教えてよ」
 俺は、ちょっと考えた。
「あいつはな、俺を見る目が違うんだ」
「違うって何が?どう違うんだ?」
「俺に嫉妬してる。お前、あいつに何かしたか?」
 色目とか使ってないか?と面白そうに言った。
「ええ?い、色目?」
 なんで、シドにそんな事…。
「もしかしたら…」
 しばらく考えていたジョミーが言い出した。
「色目、使ったのか?」
「ち、違う。確かにそういう力はあるけど…」
「…そんな力が…あるのか?」
「そういうのじゃない。僕のは会話で相手を僕のペースに持っていくだけで…。恋愛で落とすとかそういうのでは使ってない」
 イグドラシルの対話で使われたやつか…とキースは思った。
 次はノアの事件の後、そんな能力を使われた。「どんな事でもする…どんな事をされてもいい…僕を抱いて…」と言われた時、拒絶するのに苦労した訳だと俺は思った。
「なら、何だ?」
「…メサイアで…君と…その初めて、関係した後、僕を迎えに来たのがシドだったんだ。それで、感情が昂ぶったままだったから…少し彼と話をしたんだ。あれでバレたのかな?」
「それだけ?」
 男として勘が良いやつにはわかるのかもしれないなとキースは思った。
「やっぱり、違うかな?それでキースに嫉妬ってないよね。それだとシドが僕にそういう感情があるって事になっちゃう」
「その落とす力ってのを使ってみればいいんじゃないか?ミュウなら拒絶も出来るだろう?」
 とキースは言った。
 俺とこういう関係になっているのに、相変わらず恋愛に疎いジョミー。
 キースは何故ジョミーは俺と居ると、こんな風に子供のようになってしまうのだろうと思っていた。
 俺に甘えているというだけでない、悪戯な子供みたいになる。
 そんな彼が、本当のジョミーの姿なんだろうな。
 ふと、ブルーの言葉が蘇る。
「僕はジョミーに安らぎを与えられなかった。何もかも奪い取ってきただけだった…」
 あの時、ブルーは俺にまだ何かを言った。
 消える瞬間に俺に言った言葉がある…。
 彼は何と言った?
 俺の肩に手を置いて、顔を寄せてささやくように、消える瞬間にブルーはー。

「その、心のままに、愛すればいい」

 そんな日々を過ごし十三日目の夜が訪れる。
 明日には議会は解散し、俺はノアからペセトラ基地へ行く事になっていた。
 運命の歯車が回り始める予感がしていた。
 その夜、僕はキースに僕の知り得た全てを話した。

「まだ謎は残っているけど、もうこれ以上は解けない…。僕に解っているのはここまで」
「それが、グランドマザーの計画だったのか?」
「僕には四百年という時間が計画より早いのか遅いのかはわからない」
「それがお前だったというだけだと言いたいのか?」
「そう。僕だったというだけ…。人として余りあるこの力の最初から用意された使いどころという事」
「解放したらどうなる?」
「いいとこ。僕は、霧散かな」
「それをお前は受け入れるというのか?」
「それが僕の使命ならば…」
「他に道はないのか?」
「わからない」
「ブルーはマザーの仕掛けた魔法だと言った。俺はマザーの言った通りならお前達を抹殺する計画なのだと思ったが…」
「マザーは人間が作りしもの。ミュウも人に作れられたもの。人間の為に使われるのは当然なのかもしれない」
「それなら、ブルーは俺に何をさせたかったんだ」
「……」
「俺はお前をここに閉じ込めても行かせたくない」
「僕も本音を言えば、行きたくない」
「俺の傍から離れるな」
「何をしても、僕が従わなくても、必ず僕は地球に呼ばれる」
「それまで俺と居ろ。俺の所に」
「僕にはまだしなくちゃいけない事があるんだ」
「…居てくれ…」
「泣かないで。キース」
 泣く気はなかった。それでも涙は滲んだ。
「お前も泣くな」
 ジョミーも泣いていた。
 キースは僕を抱き寄せた。 
「まだ泣く気はないのに、これが最後じゃないのに…」
「俺達人間がお前を追い詰めているのか?すべては人間が仕出かした事なのに…お前達を怖がり抹殺しようと追い詰めてきた。そんな人間達の…後始末を…なんでお前が…しないといけない」
「それは…僕が人間だから…。そして、オリジンのブルーの選んだ僕。タイプブルーのソルジャー・シンだから」
 キース。
 僕は、何をおいても傍に居たい。
 何も欲しくない。
 ただ君だけが居ればいい。
 そんな気持ちを恐ろしく思う。
 すべてを捨ててしまいそうで…危険すぎる。
 僕には使命がある。
 それすらも、捨てていける程の思い。
 そう、僕は君が好きだ。
 これは期限付きだからなのか?
 命が永遠ならそうは思わないのか?
 君の為に生きたい。
 君の為に死にたい。
 君と共に生きたい。
 君と共に死にたい。
 叶わぬ願いだとわかっている。
 だから傍に居られない。
 自分を制御する手立てが見つからない。
 君を殺してしまうかもしれない。
 僕の場所に連れてゆきたい。
 そして僕の中に君を閉じ込めてしまいたい。
 出来ぬ願いだから望むのか?

 会いたい。
 会えない。
 何もかもが憎くなる時がある…。
 僕はこんなに浅ましかったのか…。
 運命というものがあるのならば、それを超えて行きたい。
 その先に行きたい。
 今は出会えた喜びをただ抱いて。
 それだけをただ見つめていよう。
 だから、今は許して欲しい。
 今は泣けるだけ泣こう。

 そして、未来(さき)に進もう。
 そして、未来が辛く厳しくても何が起きても君は進め。
 いつか、再び会える日を信じて。



    Rebellion   終





『君がいる幸せ』 四章「心のままに」二十話 「jealousy」(追記)

2011-12-30 01:43:36 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)二十話

   Epilogue Bridge「jealousy」(追記)  

 二人で暖炉の火を見ていると急にキースが言い出した。
「お前、前に好きになった人数と関係した回数が同じくらいだと言ったな」
「い…言ったけど…」
 ムードぶち壊しじゃん…と思いつつ答えるジョミー。
「…あの…彼らは回数に入ってない…よ」
 入っていたら回数が跳ね上がる…。
「あぁ、入ってないと思ったが、それを聞いたんじゃない」
「何?」
「俺とはメサイアとゼウスで二度だ」
「…そうだけど…」
「お前、いつも、この時だけと思っていただろう?」
「え?」
「他のとは一人で一度だけなら、俺ともこれっきりと思っていたんじゃないか?」
「そ、そこまで思っていないけど、そういう部分はあったかもしれない…」
「関係を継続させた事はないのか?」
「ん…しなかった。させれなかった」
「やはりな…。忙しくても会おうとしていたメティスにいた時の方が、こうなってからより会っていたな。…これからは継続させる関係を持たないか?」
「…どうやって?」
「ジュピターの仕事に戻るのはもう出来ないが、ペセトラかノアにお前の拠点を作ればいい。それで…」
「?」
「……」
 とキースは急に黙ってしまった。
「言いにくいな…」
「キース」
「………」
「そこは、傍に居て欲しい。一緒に暮らさないか?であってるかな?」
「ああ…どうだ?」
「僕の拠点を作るのはいいけど…」
「俺はお前の居る場所を作りたい」
「……キース」
「俺はお前を手を離す気はないと言っただろう」
「僕は僕でする事もしたい事もある。だから、君と居る時間は少ないかもしれない…それでもいいなら」
「それはお前の本心だな?」
「…うん」
「俺はブルーからお前を託された」
 ジョミーは思いがけないキースの言葉に驚いた。
「今、何て…」
 ジョミーの表情が変わる。
「ペセトラのマザーに会わせて動けなくなった事があっただろう。あの時、お前は昔、シロエになったみたいにブルーになったんだ」
「…信じられない…」
 イグドラシルでシロエは急に現れた。
 あれは僕でもマザーの力でもなかった。
 なら、あれは、ブルーが……?
 わからない…。
 まだ何かあるのか?
 でもあれは人の思いの塊だ。
 だったら、ブルーも何か伝えたくて来たはず…。
「…ブルーはなんて言ってた?」
「俺に殺された後はどうなったか?と聞いてきた」
「どう答えた?」
「お前がミュウを地球へ導いたと」
「……」
「喜んでいた」
「…そう…良かった…」
 そう言って黙ってしまったジョミーをしばらくキースは見つめた。
「ブルーは俺にこう言った。起源の謎が解けた時、お前をマザーに掠め取られると。起源の謎は見つかったか?その答えを教えて欲しい」
「今それを口に出すと、今にも時間が溶けて動き出しそうで…。まだ言えない。だけど、君には知っていて欲しいと思えるよ」
 キースはブルーも凍った時間が溶けると言ったなと思った。
「いつか、教えてくれるか?」
「ああ」
「お前の声で、言葉で聞かせてくれ」
 その時間はあるのか?とキース思った。
「必ず。君には、必ず…言う…約束する」
 あるよ。とジョミーは答えた。
「本当は…今言うべきなのかもしれない。だけど、僕は今はこう言いたい。僕にいつも居場所をくれてありがとう」
 僕は君がそうして繋ぎとめようとしてくれるからここに居られる。
 ここに居てもいいと思える。
 だから、僕は…。
 前を向いて歩こうと思えるんだ。
「俺はお前の傍にいていいのか?こんな俺でも、もう何も出来ない俺でも…」
「僕が何も出来ないと言うと、いつも君は出来る事はある。と言ってたね」

 運命というモノがあるならそれを壊すだけの力が欲しい。
 今すぐに。
 ブルーはそれを俺に託した。
 俺達にまだ時間はあるのか?
 だから、俺は…。
 暖炉の前で眠ってしまったジョミーを見つめ、
「俺は負けない」
 とキースはつぶやいた。



    jealousy 追記 終