君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

☆ご案内☆

☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

終わった感想です。

2013-06-21 03:54:40 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆月イチ雑記を忘れてました^^;

終わってすぐに書けばいいものを、ちょっと放置してたら、感情が流れてしまいました。
別の問題もリアルで立ち上がってきてしまい、もうすっかり「終わったなぁ~」って思うようなテンションが無くなってしまいました。…すみません。;
UPPした瞬間は「爽快感」がすっごいあって、気分が良かったです。
終わりの一つ前、ソルジャーズのジョミーの視点で語る一話がとても苦労しました。
実は、彼のキャラが出来上がって無いんです;
クローン設定だったから、まぁ、同じ感じで良いんじゃない?なんて思ってました…^^;
で、クローンじゃなかった。ってした今回の設定で、どこをどうする。と焦りました。
最後の所で半分無理矢理に会話させていますが、もっとわがままになるはずだった。
でも、そうならなかった。
結局、良い子で終わりました。しかも、中途半端に。。
「伝えたい言葉」ってタイトルもね。途中でそう変えたので、そこも中途半端。
何が「伝えたかった」のでしょうねぇ^^;
「自分で考えて生きるのが一番良い」がテーマかな?

人の為に生きてきた感じのあるジョミー。(でも、それは自分の意思でもあるけど)
自分とその周りの人がもっと自由になれれば、その先には、きっと。
ぶつかりあいながら、求めながら、心で悩み進む。
作られた意思ではなく。
生きてゆく事。
生き抜く事。

それから、ラストでいかにも重要そうに語った、殺せる殺せないの展開ですが、あれは、答えが出ないまま放置していた問題を持ってきただけです。
あの事件で最初は殺している設定でした。直接手を下すかくださないか?はありましたが、苦しまずに殺す。って感じで殺すはずだった。でないと、レイプ擁護になっちゃうじゃん;
暴力は反対です。。。。でも、殺さない。となり、そこは、矛盾だったんです。
何で殺さないの?と。でも、返答は出なくて、、。
「殺したくないから」ではない。とだけ…。そのまま放置で進んでいました。
結局は憎しみで殺してはいけない。だったけど、それもちょっと違う。
子供に語るにあたって、そうなっただけ。。です。
。。。。。。

ジョミーとしたら、自分の事をここまで酷く扱える者が新鮮だった。
で、そのあたりで興味が湧き、同じ人として向き合ったら、きっと殺していない。
自分が人ではないなら殺している。それは暴力。
人なら殺せない。あの時、僕は人だったから。
暴力に暴力で答えないって事。
だけど、どうすればいいのか?で悩んでしまい殺せないままだった。
って、小説で書いてない事を言っても意味はないですね^^;

キースを出して二人で語らせようかとも思ったけれど、キースはもう話したくない話題なので、これ以上苛めるのもねぇ。となりました。
どうせなら、ラブラブで出してやりたいですから、ここで彼の機嫌を損ねてどうします。
えーと、まだラブラブは書いてないです^^;
短編扱いだから、一気に書いた方が面白い。
何処をどうしようか?と悩み中です。
砂吐いて~。てかもうどっかにいっちゃってるようなの書きたいです^^
でも、どっかで歯止めかかっちゃうんだろうなぁ;;
なんとかその辺を打破して書きたいです。


ラストに駄文。
「進撃の巨人」見てます。展開にドッキドキです。
巨人化きたーーーーー!^-^
新年のアニメは「絶園のテンペスト」が良かったです。
樹の意思とか、良かったけど絶園の魔法使いの正体がわかった所で終わりですね。
その後は全部、まとめですもん。
主人公がだんだん蚊帳の外になっていって、「俺ら、普通の高校生」は、ちょっと興ざめしたけど…。でも、すごく出来は良かったと思います。
多分、ラストバトルに主人公達が居ないのが、寂しいかっただけです。
でも、そういう所に視点がいってるのも面白いですね。

結城信輝キャラデザインの「ヤマト2199」見ました。結城さんが好き!!最初はそれで直視出来ず(笑)
デスラー総統のセンターで登場の回から見ました。え、入浴シーンからですっ!(笑)
今回女の子が多くて良いですね^-^
でも、森雪の設定が微妙な気がします。
まさか、キムタク「ヤマト」みたいな事にはならないよね?
あの映画は、予算が無かったのがねぇ、悪かったと思う。
フェリーで撮影したのね!!!って丸わかりで、つまらなかった。
せっまい格納庫で話すより、甲板でいいじゃない?バックは真っ黒の宇宙空間で済みますもん。
あああ、話がそれた;

月イチ雑記って事でお許し下さい。
頑張って短編で何かを書きあげますので、もうしばらくお付き合いをお願いします。


では、また。 真城灯火



『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 二十一話

2013-06-11 03:13:45 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー

   

 今にも泣きそうな顔のソルジャーズのジョミーを見て、僕は彼が愛おしくてたまらなくなっていた。
 ここまで連れてきたのに、君は僕の甘言に乗らないね…。
 やり難いよ。
 元が僕と同じ人間だからか?思考が似ているからなのか…。
 僕は彼から見えないように小さく微笑んだ。 
「僕は気が付いていた。君はブルーよりも人間を恨み、ミュウを恨んでいる。感情がすぐに表に出る彼の方が怒っていると思われがちだけど、実際は君の方が深くて重い。惑星ノアを救った時も、メサイアでもそうだった。スメールの子供たちと交流して素直に受け入れたのはブルーだ。彼は実験体だからかどこか希薄な部分がある。そうだな…彼はいろいろなしがらみを切って進める。メギドの中で僕たちミュウの方を選んだのも彼だろう?人間の君はそんな風に簡単にはいかない。出来ないんだ。…恨みや思いが消えない」
「僕がミュウを受け入れて喜んでいると演技をしていたと?」
「演技?そうか…演技だったと…。そうだね。演技じゃなくて、本当に受け入れていた部分はあっただろう。けれど、自分の運命を作った僕を、君をそこへと連れて行った人類を許してはいなかった。君が第三勢力の海賊と繋がりを持ったのも全てを壊してしまいたいと思ったからだろう?」
「!」
「だが、それも結局は出来ずに自分で自分を罰した…」
「ち、違います」
「違わない。君は本当に人間だな…」
「……」
「流されては迷い…、戸惑って悩み…傷つきやすくて脆いのに強い。殺されても生き延びようとする命。人は本当に強い。僕は君を羨ましく思うよ。だから、もっと自由になって世界を見てごらん。そして君なりの答えを見つけるんだ。君が人類やミュウを許せる何かを捜すんだ」
「僕には何も見つけ出せません」
「どうしてそう思うんだ?」
「それは、僕が僕だからです…」
「君が?何だと言うんだ?」
「皆を騙し続けていたから…僕は許されないし、許しもない」」
 そう言って彼は自分の両手で両腕を抱えた。
「そうだな」
 その答えに彼の体が小さく震えた。
「……」
「そう、では「楔」にはならないのか?」
 ふわりとジョミーが宙に浮いた。
 シュルシュルという衣擦れの音がして、天井から布が降りてくる。一つ、また一つと、布が増えていく、それは心の防壁が増えるという事だった。
「ジョミー?」
 そして、どこからか声がした。
「君の弱点と僕の弱点は同じ…」
 それは、ブルー。
 言葉ではなく心に響いた。
「じゃあさ。何故、次は僕を嫌だとか怖いと思うのかを教えてくれる?」
「…あ…それは、力が強いから…」
「今では、ブルーやトォニィのが強いじゃないか」
「好きだからです。そして、悔しいから…」
「良い答えだね。じゃあさ。僕らがブルーを取り合っても君は僕を好きでいられる?」
「ええ!?」
「…出来ないよね?普通ではいられない。それで良いんだ」
「いえ、たとえ、そうなっても僕は…」
「人類を恨みに思うならその気持ちをキースに向ければいい。ミュウを恨むならそれは僕に向ければ良い。それが出来ないって言うなら…」
「ジョミー」ふいにどこかから、ブルーの声がした。
 目の前には金色の髪と青い瞳のクローンのブルーが居た。その横にはジョミーが立っていた。
 ジョミーはブルーの肩と顔に手を伸ばして、少し背伸びをして、目を閉じる。
 二人の唇が徐々に近づく…。
「ダメ。嫌だ」ソルジャーズのジョミーが叫んだ。
 ブルーとジョミーはそこで止まった。
「もう少し、強くなって自信を持つんだ。でなければ、彼は僕がもらうよ」
「…嫌だ」
「本体であろうと、クローンだろうと、ブルーの遺伝子には僕を探し求めるようにインプットされている。それは絶対的な僕からの支配だ。彼の意思だけでは太刀打ち出来ない。僕が彼を拒否しない限り、ブルーは僕を追い続けるだろう」
「知っています」
「僕に似ていると言うだけのただの人間の君には、どう足掻いても分が悪いね」
「知っています」
「それでも?」
「それでも」
「君はもう十分強いのかもしれないね」
 答えはもう君の中にある。進んでごらん自分の足で、その意思で。
 もう誰も君を束縛しない。
 大丈夫だから、前を向いて進んでごらん。
 僕はここに、ここに居る。

 世界が広がる 安心して、まだまだ広げていけるから。




  惑星アルテミシア クローンのブルーとの邂逅後
 僕の記憶はなんだかまったりとした感じでスッキリとしなかったが、それでも次へと向かうのに支障はなかった。
 最近は前よりもゆっくりと時が流れている気がする。
 それは、僕の「記憶」が有る無しに関わらず、時を大切に思うようになったからかもしれない。
 僕はいつも何かに追われていた。
 それは、ソルジャー・シンだった時も、ジュピターになった時も、何かを追い探し求め、何かがずっとその先へその先へと僕の背中を押していた。
 「死」というものを感じたあの時も同じだった。
 簡単な安らぎが僕を覆いつくし、眠りたいと願った時も、それでもまだ何かに追われていた。
 まだ「人類の目覚めはこない」そう思って僕は何故?どうして?とそればかりを嘆いていた。
 でも、気がついたんだ。
 彼らはもうとっくに「目覚めている」静かにゆっくりと目を開いていたんだ。
 僕は僕の周りしか見えずにそれに気がつかなかっただけだ。
 もう、僕は…何も心配をしなくていい。
 次を追う準備が出来たのかもしれない。
 
 あの後で聞いた。クローンのブルーの願いは自分が死んだ後で、彼がもし願ってくれたのなら、同じ場所に埋葬して欲しいとの事だった。
「ジョミーがあなたのクローンでもなく、タイプブルーでも無いのに、ただ仲間が欲しくてそうしてきたのは自分だから、あの事件は僕にこそ非がある。僕が勝手に死のうとしたジョミーに怒ったり恨みに思ったりするのは見当違いなんです。あなたが僕の願いを叶えてくれるなら、お願いがあります。この先、どう長く生きても自分が先に逝くから…その時に寂しいのは嫌だと思ってしまったんです。でも、彼が死んだ時、僕の隣なんて嫌かもしれない。それは彼の意思次第だから、だから、お願いにも何にもならないかもしれないけれど、叶えられないかもしれないけど、僕はそれを願ってしまうんです。だけどもう、寂しいのは嫌なんだ…」
 その願いは、僕の心を締め付けた。
 僕はブルーをあの寂しい場所に置き去りにしている。何もなく、僕が作った氷が閉じ込めた悲しみだけの世界に。
「ブルー。わかった。彼の意思を尊重する。君の意思は必ず伝える。だけど、似ているね。これは前に皆と月に行った時に考えたんだけど、僕は月でオベリスクのようになったあの氷ごとブルーを地球へ運ぼうと思う。そして、僕が死んだらそこに埋葬してもらえたらなと思っていたんだ。だから、地球で良いなら…君もそこにと…」
「…はい…」
 と、泣きながらブルーはうなずいた。

 僕の同級生のスウェナはまだまだ若々しいが、レティシアが昨年子供を産んだので「おばあちゃん」になってしまったわ。と言っていた。
 そして、そういう話の最後には決まって「ジョミーはいいわね」と続く。
 僕は一度自分を殺し戻った。
「肉体年齢は二十歳でも…僕は僕だよ。君と同じだ」
 彼女も僕がクローンで、そう永くないのは知っている。
 それは、僕だけではなく、同じクローンのブルーも、実験体として生まれたキースも同じだった。
 そして、僕ら自身で子孫は残せない。

 後、何年生きていられるのかわからないけれど
 僕らはそれまで懸命に生きるんだ。
 それしか出来ない。
 でも、それで良いんだ。

 人は生き続けるいつもいつでも、営みが続いてゆく。

 僕らはそれを見つめ続ける。

 それが僕ら「タイプブルー」の生きる道。











「では、これからは、君の為に生きようかな」













  「伝えたい言葉」    終





『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」二十話

2013-06-03 01:30:22 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」二十話

 僕は話の内容とジョミーの言う許しが繋がらなかった。
 だが、ジョミーは僕を見て静かにこう続けた。
「僕の矛盾はそこだったんだ。彼らを僕は殺せなかったけど…答えは出たんだ」
「ジョミー。それは間違っています」
「わかっているよ…僕の言葉は殺せなかった事に理由をつけたに過ぎない」
「あいつらは悪い事をしていたから、殺していいんです…」
「ああ、そうだね」
 ジョミーはそう言いながら、僕の前に来て手を取った。
 そのまま僕の頭を腕の中に納めた。
 そして「ごめんね」と言った。
 僕にはその意味がわからなかった。
「泣かないで」
 とジョミーが言う。
 僕は泣いてなんかいない。
 だけど…。僕は話の内容に頭がついていっていない事に気が付いていなかった。
 懸命に考えているけれど、思考と感覚がどこかにいっているようだった。きっと僕は酷い顔をしていたに違いない。
「ごめんね。君にはショックだったね。どうも僕は過去の事を話す事で他人を傷つけるんだって意識が薄いようだ…」
 ショック?
 ああ、そうか。僕は信じられないんだ。こんなに強いジョミーが何も出来ない状態で酷い暴力を受けた事が信じられないんだ。でも、僕は彼に何をどう言えばいいんだろうか?まだ、僕はさっきの話を信じ切れていない筈なのに、心が全然落ち着いてくれなかった。。
「あ…あのジョミー。僕が沈んでいるのは、僕らも、同じような事があったから…。教育ステーションで僕らは理由もなく他の生徒に攻撃されたんです。暴力では無くて精神的にでしたが、最初の短い期間だったけど…それを思い出してしまっただけで…。だから、わかるんです。あなたは辛くないのですか?僕は思い出すだけで辛くなります」
 僕は少しうろたえながらそう言った。
 でも、半分以上自分が何を言おうとしているかわかってなかった。ただ、ジョミーの話を必死になって自分の中でまだかみ砕いてる最中で、何も言えなかった。こんな気持ちをどう言葉にすればいいのかをただ模索していた。
「そうか…大変だったね。辛いのなら泣いていいよ。僕がここでこうしているから」
 僕が辛い?僕が泣く?それって、僕がする事?
「僕は泣いていないです…」
「心のずっと奥がここに来ているんだ。見ていればわかるよ」
「いいえ。いいえ。僕は泣きません。ジョミー。だから、僕はあなたが辛くないのかと…。僕は辛いです。だって、僕は自分だけが、すごく不幸なんだと思っていました。でも、トォニィもシドもセルジュも、ヴィーもキースも、そして、あなたも不幸だったんだと知って…だから…」
 支離滅裂だ。
 言葉が思い浮かばない。ただただ、自分が苦しくて辛かった。苦しくて苦しくて、僕はそれを怒りに変えて、ジョミーに当り散らしていただけだった。
「僕の不幸?僕は不幸じゃないよ。自分で行動して起こした事象なら、それは僕が選んだものだから」
「そんなの。殺されそうな目に遭う事を選んだってそう言うのですか?だから、辛くなかったって、あっさり話せてしまえるような事じゃないでしょう?」
 僕はジョミーの腕から抜け出し、反対に彼の肩を掴んで叫んだ。
「だって、暴力が怖かったのでしょう?」
「ああ。怖いと思ったよ」
「そんな…他人事みたいに言わないで下さい。だって、本当に何も出来なかっただなんて、あなた程の人が、そんなの酷過ぎる」
 きっと、僕は泣いている。でも、それは、意味のわからない怒りへと転換された。
「僕程の人?僕は普通の人間さ。ミュウの力が無ければ何も無い」
「そんな事は無いです」
「ただの子供さ」
「いいえ。ジョミー。違う。それは違う!子供だったって言うなら、そんな目に遭ってどうして、そんな風に話せるんですか?辛いって泣けばいいじゃないですか?」
「それはやったさ。怯えて、逃げて。叫んで、憎んで、泣いた。自分を蔑んだり憐みもした。それで、自分にはまだこんなに色々な感情があるんだと知ったよ」
「……」
 あの頃のジョミーは色々な感覚がマヒしていて、自分を動かすことすら力を使っていたと聞いた。泣き叫ぶのは人間の本能で力で動かしてはいないはず…。そう思った瞬間、怒りなのか、憐みなのか。とても酷く醜い感情が襲ってきていた。そんな僕をただ見つめてジョミーはこう言った。
「だからさ。記憶が粉々だって…事だよ」
 とジョミーは自嘲した。
「え?」
 人は誰だって記憶を消したり塗り替えたりして辛かった事を変化させて生きている。いちいち覚えていたら前には進めなくなってしまう。だけど、ミュウの能力はその忘れたい部分まで記憶のどこかに保管して忘れさせてくれない。なら、自分で壊すしかなかった。そういう事なんだ。そこまでの恐怖だったんだ。その時の恐怖の感情を思い出さないようにその部分の記憶を壊した…?だから、今こうして他人事みたいに話しているんだ…。
「自分で、砕いた…?」
「多分…ね」
「だったら。だったら、なおさら、殺していないんです?僕にはわからない。それなのに許すって何ですか?そんなの信じられない」
「君は殺していれば、納得が出来ると言うの?」
 ジョミーのこの言葉に訳のわからない感情に振り回されるのに疲れた僕は、それをまた怒りへと変えた。
「だって。命の危険はあったでしょう?殺されるとは思わなかったのですか?」
「殺されそうだから殺すってのは、極端な正当防衛だよね。だけど、僕は彼らに殺されるとは思わなかったよ」
「そんなの、嘘だ!」
 僕はジョミーの視線から避けるように首を横に振った。
「あのさ。いい?」
 そう言うとジョミーは手に青い短剣を作って僕に向けた。
「…ジョミー」
 鋭い切先が目の前にあった。鈍く青く光る剣をすべらせ僕の首筋にあてたジョミーは僕にこう聞いた。
「怖い?」と。当然僕は「怖いです」と答えた。
「そう?ならこれは?」
 と、ジョミーは僕の目を見た。
「…!」
 彼からは絶対に逆らえない力を感じた。ぞっとする。悪寒があがってきて止まらなかった。
「怖いでしょ?」
「……」
 はい。と答えたかったが口から出なかった。
「これが殺意。相手を完全に消し去ってやろうと思う事」
 ジョミーから殺気が消えた。

「あの時、彼らからは殺意は感じなかった。彼らは暴力行為をただ楽しむだけ、その結果、僕が死んでも別に構わないくらいは思ってはいただろう。けど、それでも殺す気は無かった。だから僕はそれに対応する術が無かった。とても怖かったよ。彼らのは狂気さ。一方的な暴力。人の枠から弾き出された彼らの自己憐憫。自己陶酔。人間の本質と狂気。それを見て、僕は当然の正当防衛だと言って彼らを殺してもいいものかと迷った。迷ってしまったから、あそこで僕は彼らを殺せなかったんだ」
「…それって、暴力には暴力。狂気には狂気なんですか…それは変です。だって、何であっても反撃しないと、何もしないで殺されてしまうかもしれない。だったら、殺される前に殺していいんじゃないですか?僕にはあなたがわかりません」
「僕には殺す事が重要じゃないんだ。ジュピターだった頃、キースや人間を守る為に人を殺していた。なのに、僕は彼らだけは殺せなかった。僕の中で何かが変わっているのに気付かずに居たんだ。だから、その答えを何年も探す事になったけどね」
「どうして…」
「暴力にも狂気にも許しなんだよ」
「許すなんて無理です!」
「恨みや憎しみにいつまでも、同じだけの憎しみをぶつけていたら、どこまでも終わりは来ないんだ。君は教育ステーションで君たちに向けられた暴力をそのまま返してはないだろう?話し合いで治めたんだろう。それと同じ…」
「でも、状況が違います。あなたは、酷いことをされて死んでいたかもしれないのに。なのに許すって言うんですか?」
「ああ。そう言っているんだ」
「出来ないです。普通はそんな事は!」
「だから、君は同じでなくて良いって言ったよ。君は君の答えを見つけるしかないんだ」
「そんな…」
「この先、君たちは人類にもミュウにも属さなくなるんだ。個人的な恨みでは動いてはいけない。前に言ったよね?僕たちの力は武器と同じなんだって。だけど、武器は意思を持たない。扱う者が殺したいと思って殺すんだ。僕らは武器と同じだ。この剣が怖いのは、これが自分に向かってきたら死ぬかもしれないと思うから怖いんだ。だけど、剣だけでは何も出来ない。僕たち強いミュウの力は殺意を表に出さなくても使える。何も考えなくても殺せる。そういう力なんだ。僕らは意思ある武器なんだ。だから簡単に殺そうと思ってはいけないんだ」
「それは、責任を持てばいいって」
「そう。力を揮うなら、その責任だね。でも、「楔」になるなら、僕らは殺せる武器にならなくてはいけないん。僕は君に殺す権利を渡すから…君たちが「楔」になると言う事は。僕は君に殺してはいけないと教えておいて、今度は殺していいという免罪符を与えるんだよ」」
「でも…」
「……」
「ジョミー。僕には無理です」
「君はいつまでも恨みや怒りで動くのか?まぁ。確かに彼らで言うなら殺されても仕方ない事をしている。君の苛立ちもわかる。だが、人類なら、そこは捕えて裁判で決める。僕らミュウはどうしている?メサイアでの犯罪は捕えたら何をするか知ってる?」
「もう二度としないよう指導するって…」
「本当は指導はしていない。強制的にその心に犯罪はダメなんだと植え付けて、放免だ。少ない我々には確かに効率は良いのかもしれないが、それではマザーと同じだと思うんだ。そこには犯罪者の贖罪と僕らの許しが存在しないといけないんだ。人類のように。罪は罪で悪いけれど、その罰を受ければ、許さないとダメなんだ」
「そんな、許せないような事もあります」
「うん」
「なら、どうするのですか?」
「許すのは僕が出した答えだ。君のは君で…」

「だから、ジョミー。もう答えて…教えて下さい。あなたは僕に何を見て、僕に何を望んでいるのかを」





   続く







『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十九話

2013-05-23 02:17:12 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十九話

「ここは時間も関係ないんだ。だから、何も気にする事は無いよ。座ろうか?」
 僕たちは床に座った。
 ジョミーは、左足を立てて座り、その足に腕を乗せていた。
 僕はぺたんとあぐらをかくように座った。
 ガラスの床は冷たくなかった。
「殺風景だろう?」と見回しながらジョミーが笑う。
「いえ、とても綺麗だと思います」
「そう?ありがとう。前はね。もっと広くて、でも、狭くて。本当になーんにも無かったんだ。この上についてる布はブルーの所にあったから、つけてみたんだ。彼のはもっと大きくて沢山あって、何層にもなってて…。それで、たまに潜れないのがあるんだ。そんなのの側には、決まって空気がガラスの粒みたいになってた。だから、無理に通ろうとすると傷がいっぱい出来ちゃうんだよ。通る資格があるかどうか…彼は本当に人を試すのが好きなんだから…。本当に進むのが大変だったよ。あれは心の中にまで防御してたって事だったんだろうね。で、僕も真似をしたけど、僕のはこの程度さ。これじゃ、単なる装飾だね」
 ジョミーは所々に下がっている布を見ながら懐かしそうにそう言った。
「僕はこれで良いと思いますよ。だけどそれなら、クローンのブルーにも布がいっぱいあるのかな?」
 僕も近くにある下がっている先が見えない白いカーテンを見上げながら答えた。
「さあ、それはわからないな。きっと違うと思う。心は同じではないから心象世界も違う。彼のはどんな風だろうね」
「潜ってないですか?」
「ここまではないよ。君たち二人の表層までならあるけど」
「…僕のもこんなに綺麗だといいのにな…」
「君のは僕より、きっともっと頑丈だよ。ここはとても脆いんだ」
「そうですか?僕にはそうは見えませんよ」
「そう?なら少しは強くなっているんだろうね」
 ジョミーは笑った。
「あの、人の深層に潜るのは二人でないといけないんじゃないですか?」
「ああ、それは相手が心を開いていない場合だよ」
「え?じゃあ僕は?」
「君の心は僕が開いてここに引き入れたからね。君を責めて怒らせたり、不安にさせたりしたのは僕の作戦だったんだ」
「なんで、そんな…」
「君とは深層で話したいと思ったから」
「そうならそうと言ってくれれば」
「君の心は強固なんだ。距離もあるし、だから、僕だけでは無理だろうと思ってた。それでも、誰かを介入させたくなかったんだ」
「会って話せば良かったんですね。僕がずっとそれを拒んでいたから…」
「ちょっと強引だったけどね。ごめんね。でも、君はもうここに居て、こうしているのだから、いいよね?」
「あの…ほんの少しだけ、こんな事されて怒っていたんです。でも…ここを見たら…許しちゃいましたよ。僕と本当に二人だけで話したかったのですね」
 ジョミーが結構無鉄砲な性格だった事を思い出していた。
 そして、二人は笑った。

「では、何から話そうか…」
 僕はその言葉にドキンと心臓が跳ね上がった。さっきまでのドキドキと同じような不安が戻った。
「あ、あの、あなたは運び屋を殺そうと思ったのですか?」
「…ああ。それが知りたいの?」
 ジョミーは少し不思議そうな顔をしていた。話を逸らしたいんじゃない…。さっき感じた怖さの意味が知りたかった。
「いえもう…気にはしていません。何もしてくれなかったんじゃなくて、殺そうとしていたのなら、もう気にしなくていいと思って…ます…」
 語尾がにごってしまった…。
「そうか…。気になっているのなら話してもいいけど…。何もしなかったのは…。そこは僕なりの理由しか出てこないよ。ちゃんと先を示してあげられない。聞いて君の判断に任せるしかないのだけど、それで良いなら…」
 僕は無言でうなずいていた。
「本当は別の話をしようと思っていた。でも、あの場所で君と出会っていたのならば、その方がいいかもしれないね」
「……」
「あの頃の僕は、大戦後、もう誰も殺したくないと言いながら、それでも僕は人に向けて力を揮っていた。そこには答えのない矛盾が生まれていたんだ」
「…矛盾ですか…」
「そう。砂漠で、あの時はね、僕は何もしなかったのでは無くて、何も出来なかったんだ」
「?」
「今頃、こんな事を言っても、助けられなかった言い訳にしかならないけど、僕は砂漠で熱波にやられて何も出来ない状態だったんだ。僕が拾われたのを君は見てるんだね?」
「はい…」
「でも、君は不思議に思っただろうね。いくら病気で高熱を出していてもミュウの力がそこまで使えなくなるなんて事にはならない。その通りだ。問題は病気だけじゃなくてね。僕は砂漠に入る前に、博物館で遺跡の中にブルーの痕跡を見つけたんだ。そこには、石版になったコンピュターテラがいてね。それには、僕に繋がる遺伝子を消さずに残しながら、ミュウは迫害するとあったんだ。それは、何百年も、僕という「新たな希望」が見つかるまで、ずっと仲間たちは苦しむって事だ。それは僕に重い絶望しか与えなくて…僕はそれまで、心の何処かで自分は「ブルーに選ばれた者」だって思いがあったんだ。そう、その思いだけで進んで来れた部分もある。そこが音を立てて崩れてた。そんな感じだった」
「……」
 この話は前にトォニィが僕らにしてくれた事がある。どの時期で知ったのかまではわからなかった。ほんの十年ほど前、まだそんなに最近だったんだ。
 ジョミーがブルーから受けた影響はとても大きい。それが彼をソルジャーにしていた。そこの中心が折れてしまったんだろうと僕は思った。
「博物館を出たら、運悪くヴィーが居てね。僕を捕まえようとしていた。最初は邪魔だとしか思えなくて、彼が僕を同じミュウだと知っても全然聞き入れてくれなくて、思わず僕は全員吹き飛ばしてやろうかと思ったくらいだったよ。彼とは本当に運の無い出会いだったよ。ミュウを傷つけようなんて、多分もう、あの時から僕は普通に考えられないようになっていたんだ…」
 そう言ってジョミーは座り直して膝を抱えるような姿になった。
 その姿は彼を小さく見せた。
「多分、僕は自分を否定して、力を拒否して。自分で自分を閉じ込めたんだ」
 それからジョミーはその頃は自分の中の力に体が耐え切れずにいた事を話した。自分を拒否して力を封印してしまったジョミーは熱波にかかかり砂漠で死の淵をさまよう事になった。そこに通りかっかたのが研究所の運び屋だった。
「記憶が粉々になってしまった原因はよくわからない。君たちが車から降ろされてから、売り物にならなかった僕は彼らに薬を飲まされてね。それは麻薬みたいなもので、身体も精神もなにも薬と彼らに支配されてしまったんだ、繰り返される暴力で正常な心もやがてねじ切れて、僕は彼らの言いなりになった」
 そう言ってジョミーは少し悔しそうに唇を噛んだ。そして、小さく息をつくとまた話始めた。
「とても悔しい事だけど、彼が僕にしろと要求すれば何でもした。黒く汚れてゆく自分を感じたよ。もう最後は僕はそれに喜んで従っていたのかもしれないね。暴力を快感とは思わなかったけど、命令されてそれにただ何も考えずに従うのが楽だと思ったんだ。それでも、必死で他の者を庇ったりして、本当に僕は愚か者だ…」
 愚か者…。
 その言葉はその時の彼に向けらて発せられたのではなく、自分を力を否定していなければ、僕や自分を含めそこにいる全員を救えたと、自分の中の弱い自分に言っているのだろう。
「そんな状態になってから、僕は自分が否定したミュウの力を欲した。僕は力を使うものの資格とか覚悟って言うけど、その時はそんな考えはどこにも無くて、僕は、ただそこから逃げたくて、力が欲しかった。プライドなんてもうどこにもない。ただ、生き延びる為だけに、何もかも捨てて。動物のように、いや、物のように扱われて、何度も何度も死んだ方がいいと思った。最後には力があったら車ごと僕を含めた全てを焼くつくそうとそう思った。でも僕は何一つ出来なかった。もう目を開くのも嫌になってた…」
「……」
「今はわかるよね?僕の使命。「地球再生」だけど、それすらも何もかもどうでもよくなって。それがあるから死ねなかったと僕は思い込んで居たけど、そうじゃない。ただ僕は出来なかっただけで何があっても生き抜く事。僕に出来るのはそれしかなかった。だから、やがて、時間が経って熱が下がり、少し動けるようになった時、僕は何もかも捨てて逃げようとしたんだ。もうボロボロで…逃げれるはずもなく、当然のように見つかって。その時僕を見つけたのは兄の方で、それで、僕は今度はどんなに酷いことをされるのだろうと怯えていたんだ。でも、彼は僕の怪我の手当てをして…。だから…」
 ジョミーはここで言葉を切った。すこし考えてまた話し出した。僕はただ続きを待った。
「だから、僕は彼の前で声を上げて泣いたんだ」
「え…」
「僕はさ…。何をどうしたかったのかわからなくなっていて、その頃の僕は、人類に戦争をしかけて殺してきた事をずっと悔やむばかりだったんだ。殺した事の償いなんて出来はしない。それに気が付かずにただ必死に自分が贖罪して救われる事ばかり願っていた。ただ楽になりたくて、そう願うばかり。でも、何をしても満足しなくて、僕は彼らにそんな扱いを受けて気が付いたんだ。人間の強さと本質を。そして、僕は自分が許される事ばかり考えていたけれど、彼らを許すのも必要だったんだと知ったんだ」
「許し許される事?」




   続く





『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十八話

2013-05-15 03:03:06 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
☆今回。一人称が二人とも「僕」なので、混乱すると思います><
一応、交互に話をさせていますが、読みにくくてすみません;
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十八話

「惑星ノアの砂漠で,最初は別人かと思っていたんです。でも、ソルジャー・トォニィがあなたは前は力で髪や目の色を変えていたって言ってて、それで、気が付いて、あの時は、黒い服で髪は栗色で目の色も違ってて、僕は同じ車に居たんです。僕はあなたを見ています。あれは、ジョミー、あなたですよね?」
「…ノアの砂漠…栗色の髪…それは、列車のように繋がったあのバギーの輸送車か?」
「はい」
 僕はあの頃、ブルーの足跡を追うとともに強奪されたメギドと遺伝子研究所を探していた。彼はその対象の側にいたのだから、偶然、出会っていてもおかしくはなかった。
「…そうだったのか…よりにもよってあの時か…。僕は覚えていないな…」
 とため息をついた。
「覚えていない?そんなの記憶を手繰れば、すぐに蘇るでしょう?」
 身を乗り出し懸命に話す彼を見ても、脳内の情報は変わらなかった。
「いや、ミュウの力でも無理だった…。ああ、君たちの所為じゃない、今回の事は関係ない。あの辺りの記憶は前から曖昧で粉々なんだ。君の前の記憶が壊変され過ぎてずたずたになってしまっているように、僕自身、上手く思い出せないんだ」
 諭すように説明をしてみたが、彼はがっかりしたように「そうですか…」と言っただけだった。だから僕は、僕の疑問を彼に聞いてみる事にした。
「だけど、今の僕にはその記憶は無くても、あそ場にミュウが居るか居ないかは僕は視てるはず、ミュウは居なかったと思うんだが…。仲間が居たら事態は大きく変わっていただろう。…しかし、君はよく僕に気が付いたね」
 事態が大きく変わる?彼はその部分に少し興味を持ったようだったが、僕の質問に答えてきた。
「あ、あの、僕は誰にも言ってないから、誰にもばれてないと思うけど、多分、あの時、僕はもうミュウだったと思うんです。だから、あの時、あそこであなたの中の大きな力を見て、僕は助けてもらえると思ったんです。だから…どうして…」
「そうかだから、君は、僕は大きな力を持っていても何もしてくれなかった。と言うんだね…」
「はい」
「あの時、僕は、助けて欲しいと言う君の気持、そして、君の願いを踏みにじってしまったんだね」
「あの!でも、もう謝らないで下さい。僕が勝手に期待してしまっただけですから…」
「でも、君がそう言っても、僕は君に許しが得たい」
「……」
 ノアでの事が彼にとって重荷になっているとは思えないが、僕は説明を始めた。
「あの時、僕は色々な事を知っていて、その現場に居たのに、何もしなかったのは事実だ。今になって何を言っても許されるものではないな…悪用されないように痕跡を消してあるいても、どこかで残るものなんだね」
 惑星メサイア襲撃事件の後で、ノアにあった研究所の全てが何者かに焼かれ何も残さず燃え落ちてしまっていると聞いた。あれはあなたがやった事だったんだ。僕には悲痛な顔で炎の中に立つジョミーが見えるような気がした。
「ジョミー。それは、人間が勝手にやった事であなたの所為では無いです。ミュウを作るなんて無理なんです」
「それでも、僕は彼らに僕の存在が無ければと言われたよ」
「そんな…」
「だが、今は僕の存在ではなくて、君の存在意義を見つけなくてはね」
 ジョミーは僕の目をまっすぐに見て行った。
 僕はその視線を受け止めたが、あやふやな作り笑いになってしまっていた。
 こんな僕の存在意義?それはもうずっと前から、きっと生まれた時から僕の手に中には無い。それをどうやって見つけるというのだろう。ミュウの力で、魔法のようにパッとどこから持ってこれるそんな簡単な物ならいいのに。そんなのを僕に教えてくれると言うのですか?それはどんな方法でだろうか…。ジョミーは僕に何を言うのだろう?
 ただ、じっと僕らはお互いを見つめていた。
「あの、今、僕が知りたいのは、あの時、あなたが何故何もしなかったのかが知りたいんです」
「そうか…」
 なら…。とジョミーは考え込んだ。
 そして、
「君は僕がスメールで言った。ミュウの力の事を覚えているかい?」
 スメールで話した事が何故ここに出てくるのか?と僕は思った。
「あなたが言ったのは、人の命の重さを知らなければならないというのと、ミュウの力は武器と同じで、剣や銃のように簡単に人を殺せてしまうから、そんな力を持つ者はそれに対して責任を持たなければいけない。でしたよね?」
「そう。君たちはそれを理解してくれているね。僕は嬉しいよ。それで、そこにはもう一つ考えないといけない事があるんだよ」
「もう一つ?」
「ああ、もう一つは、人を殺す事を自分の中で折り合いをつける事さ」
「え…」
 僕らの力は武器で、人を殺してはいけないのだと言ってから、そのすぐ後で、殺す理由みたいなのを考える?それっていったいどういう事なのか?僕はますますわからなくなった。
「それが…さっきの答えになるのですか?」
「いいや。彼らを殺せなかったのは別にある。だけど、君が人を殺せなくなったのは僕がそう教えたからじゃないかと思ったんだ…」
 何も知らず、人を殺してはいけないとは思っていなかった頃、多分死んでいるんじゃないかと思えるような事を僕たちはしてきた。倒すべき敵だと話に聞いてきたジョミーがあまりにも違っていたから、僕はただ彼に怯え甘えていた。だから、僕には信じられなかった。「彼らを殺せなかった」って、ジョミーは、あの運び屋を殺すつもりだったんだ。緊張が走った。そして、得体のしれない怖さが僕に忍び寄っているのを感じていた。何が起きようとしているのだろう。
「…あ、でも、僕は、海賊にも誰も死んで欲しくなかっただけ」
「わかるよ」
 ジョミーは優しくそう言った。だけど、一度高鳴りだした心臓はなかなか落ち着いてくれなかった。
「それじゃあ、殺せば…良かったんですか?」
「ああ、君が失われるくらいなら、僕は何人でも殺せる」
「でも。それじゃ、キースが、ミュウと人類はまた戦争になるかもしれなくて…」
「だから、僕がキースを死なないように殺すんだ」
 ここにきて、僕はジョミーが怒っている事に気が付いた。彼は僕がした事を怒っているんだと…。
「僕は、あの、ジョミー!ごめんなさい」
 大きな不安が襲ってくる気がする。僕はとにかく謝らないと、と思った。
 そう、別に僕はキースを助けられて良かったとは思ってはいない。だけど、もう自分が死んでしまえば楽なんじゃないかと思ってしまったのも事実だった。自殺しようと思った訳じゃないなんて…でも、そうした方が楽とは思っていた。だったら、彼を庇っても死んでも良いんじゃないかと思ったんだ。
「ああ、いや。君を責めてはいないんだ。あんな事になるくらいなら、最初に僕がさっさと手を下しておけば良かったのかもしれないと思った…ただそれだけで。今は、僕も、人は殺したくはない。でも、僕は殺せるんだ。そんな矛盾が僕の中にあると言いたかっただけなんだよ」
「矛盾…?」
「そうだな。君にはまだ早いのかもしれないね。もう少し、人の中で生きてから…にした方がいいのかもしれない」
 そう言ってジョミーは立ち上がってモニターから外れてしまった。
「ジョミー?」
 と呼ぶと「何?」と答えは返ってくる。
 画面にはアルテメシアの空港の貴賓室が映っているだけだった。さっきまでジョミーが座っていた応接セットの大きな椅子と、その向こうには大きな窓、外は青空と白い雲が見えていた。
 どこかの窓が空いているのか、ゆらゆらとレースのカーテンが揺れていた。
 そんな平和な光景だった。
 時間にしてもそんなに経ってはいない。ただジョミーが宙に浮かせたモニターのカメラを自動追尾にしていないだけだった。
 そんな短い時間だけど、僕はどうしようもなく不安に駆られた。
 さっきの心臓のドキドキが戻ってきたのか、不安でたまらなくなった。
 それはまるで、親に置き去りにされた子供のような気分だった。怖くて、寂しくて、不安だった。人を殺せなかったとジョミーが言った所為か、僕に怒っているのだと知ったばかりだからか、僕にはまだ早いと言われたからか、僕は泣きそうな気分になっていた。このまま、今ここで捨てられるかもしれない。そんな不安が襲ってきた。
「ジョミー!」
 僕は叫んでいた。
「な、何?」と驚いた顔で、ジョミーが画面に戻ってきた。
「ごめんなさい」と僕は頭を下げた。
「ああ、僕の方こそ、ごめん。カメラが追尾になってなかったね」
 ジョミーは空港が騒がしかったんだと言った。
 彼は頭を下げたままだった。
 ジョミーは…これには、少し心が痛んだ。僕は彼の不安を煽って心を開かせている。
 近くに居ればたやすい事だが…。流石に距離があるから時間がかかってしまう。
 そろそろか…。
「ごめんなさし。あの時、あなたが助けてくれなかったのを、何もしてくれなかったのを、ずっと悲しんでいた訳じゃありません。だって、でなければ僕はブルーに会えなかったから」
 ジョミー。そこは順番が違うよ。ノアに居た頃はもうとっくに君たちは会っているはずだ。君たちはもっと小さい時に会っている。
「ジョミー」
「だから、僕は良いんです。きっと一緒だった子供達もあなたに葬ってもらえて良かったと思ってます」
 彼は頭を下げたまま話している。
「……」
「僕は、きっと、とても悪いんです。あなたやフィシスと会ってスメールに行けて本当に嬉しかったのに、本物のあなたにブルーが惹かれてゆくのを見て、僕はあなたに嫉妬したんです。だって、スメールでも、戻った時でも、いつもいつも、あなたはブルーばっかりで。僕は、ブルーにもキースにも、ずっとあなたの事しか言わないシドにも、必死になっているトォニィにも。そんな皆に嫉妬してたんです」
「……」
 彼の心は開かれた。
 手に取るように彼の痛みがわかる。
 暗闇で握りしめている手を開くとキラキラとした小さな光が残った。
 それが彼だ。愛しかった。
 僕は泣きそうになるのをこらえていた。
「ソルジャーズのブルーはもちろんだが、トォニィもシドもフィシスも、そしてキースも君が好きだよ」と僕は言った。
「だから、僕はあなたが消えた時、嬉しかったんです。だって、あなたに成るように育てられて、本物が目の前で消えたなんて、どうしてもそう思ってしまう。だから、あなたの代わりをしていられたのは楽しかった。でも、それは最初だけで、あなたがいつもどんな気持ちであの大変な状況で生きていたかがだんだんとわかってきて…。どこにいても何をしていても、どこかで人類に監視されてる。ミュウだって、いつも誰かが何かを言ってくる。願ってくる。その全てを叶えるなんて出来ない。だって、ソルジャーは神じゃないんだ。トォニィやシド、キースやセルジュ、ヴィーやジュピターの時のあなたの友人たち。そんな皆のフォローがなければ僕は二年もあなたの代わりは務まらなかった」
「ジョミー。落ち着いて。目を開けて、そして手を」
「え?」

 僕はゆっくりと目を開いた。 
 ザアッと風が過ぎる。そこは、僕と彼だけの世界。
 僕たちは向き合って浮かんでいた。そして、彼は僕の手を取ると静かに着地した。
 回りを見回すと、ガラスで造られた丸いドームだった。
 ガラスの外の宇宙を写しながら白く光るどこまでも続くようなガラスの床。
 所々に遥か高い天井から下までまっすぐに下がっている透けるドレープ状の床までとどく白いカーテン。
 宇宙には遠くに見える太陽と、青い地球と月、火星と木星。
「…ここは?」
「ようこそ。ジョミー。ここは僕の精神世界だよ」
「精神世界…」
「つまりは心の中だよ」
 僕はノアに居てジョミーはアルテメシアに居る。最新の戦艦で何回も跳んで、それでも二か月はかかる距離だ。それをこんな風に繋げてしまうなんて…。そんな信じられない事をしてしまう彼が、僕の目の前で優しく微笑んでいた。
「どうやって、どうして?」
「ここに来てもらうのに時間がかかってしまったけれど、僕は今から君に人を殺す話をするつもりなんだ。前と反対の事を言うようだが、聞いてもらえるかな?だから、そんな話は通信じゃなくて、二人だけの方がいいだろうと思ってさ…」
 と小さく笑った。




  続く