君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」七話(Sumeru)

2011-08-28 18:42:29 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


  『君がいる幸せ』

   二章「湖底の城」

  七話(Sumeru)現在
 キースが連れてきた太陽系の私設の兵士達がスメールの宇宙港へと引き上げてゆく。
 トォニィはシャングリラを空港上空の宇宙に待機させていた。
 今回のスメールでの事は、外部には漏れていなかった。キースがあの放送の後、空港を閉鎖し、この空域への渡航を禁止していた。
 それでも、太陽系にいたキースが動いた事、シャングリラがスメールに向かった事は軍部の知る所となった。太陽系に残したセルジュに指示をする為にキースが部屋から出ていった。
 『スメール事件』は全てジョミーが単独でした事と処理された。
 スメールだけの事件という事で大きな問題にはなっていなかった。
 太陽系にいるとはいってもまだ大きな影響力を持つ、キースがそう処理させたのだった。

 フィシスは、ジョミーが無事だったのを喜び、トォニィとキースに感謝した。
「ジョミーは僕のグランパだから当然の事をしただけ。それに僕一人では出来なかった。フィシス。ありがとう」
「トォニィ」
「それと、僕は今まで貴女に酷い事をしてきた。貴女も長く大変な思いをしてきたのに、僕は甘えてばかりで…ごめんなさい」
 ゆっくりと優しくトォニィは言った。
 彼女への感謝の言葉をあのナスカから口にした事の無かったトォニィ。心ではもう許していても言えずにいた事はジョミーも知っていた。
 やっと言えたんだね。メサイアへと旅立った事はトォニィを一回り大きくしたようだった。
 この先、僕が傍に居なくても、もう大丈夫だろう。
「残る問題はカナリア殺害だけか?」
 キースが部屋に戻って来る。
「フィシスに聞いたけど、カナリアの子供の事でしょ?もう蘇生されてるんじゃない?」
「蘇生?」
「前に僕がが仮死状態になったのを真似したんだよね?ジョミー」
「やはりそうか」
 キースは説明を求めるようにジョミーに詰め寄る。
「騙していた訳じゃないよ」
 と、説明していい?と言って、皆に話はじめた。

「あの時は…、メティスでカナリアの少年に会った時は、あの子は統合される事にとても脅えていたんだ。僕はフィシスに聞く前からカナリアの事は知っていた」
 あの時ーー。
「僕は統合を止めてみせる。だから、君達の所に行かせてくれないか」
「それは絶対に無理です。統合は止めれません」
「必ず止める」
「いいえ。僕達、カナリアだけの力なんです。ジョミーがスメールに行ったら始まってしまう」
「だから」
「無理です!統合なんてされたくない!僕は嫌だ!」
「ここまで影響があるっていうのか?」
「ええ、多分。そう言われた。もしも、無事でも。皆は、二度と僕を見なくなる」
「だったら一緒に戻ってもいい。絶対統合はさせない。皆を守ってみせる」
「いいえ。無理です。もう僕を殺してください!」
 
「あの子は錯乱したようになって死のうとしたんだ…。だからそれを止める為に、トォニィのように心臓だけを狙い遅くさせて…仮死に…。コールドスリープ状態なら、ミュウの技術で蘇生できるとスメールに着いてすぐにトォニィを呼んだ」
「…だから早かったのか…」
 キースはミュウの信頼関係をうらやましく思った。
 太陽系を出たジョミーには軍部からの追手が付いていた。
 自分のシャトルや民間船を乗り継いでの移動に時間がかかり、結局ジョミーとキースは同じような時にスメールに着いた。
 この頃、人類とミュウとの通信は連絡が上手くいっていなかった。メサイアに直通で連絡が取れるのはスメールとノアくらいだった。
「フィシス。僕を攻撃してきたってのは嘘だ。死んでもいない。貴女にとても心配させてしまった…ごめん」
 いつもとは反対にジョミーの手をとりフィシスが微笑みを浮かべて言った。
「私が心配していたのはジョミー、あなたです。無理はしないで」
「僕は何もしていない…皆に助けられただけだよ」
 とジョミーは優しく微笑んだ。
「ジョミー。僕からも質問」
 トォニィが言いだした。
「自力でもカナリアから出れたのにどうして出なかったの?」
「待っていたんだ。トォニィ。君とキースが来るのを」
「そんなの待ってるから心を持ってかれちゃうんだよ」
「あれは…持っていかれたのではなくて自分の意思で分けたのでしょう?意思統合をするには最初に自我をなくさせる必要があって。その為にその人の弱点を狙って精神を攻撃するのです」
「…心理的な僕の弱点を攻撃か…あの時かカナリアが知る筈もないナスカの事を言われたよ」
 ナスカで救えなかった事が自分の中でまだそんなに…と、複雑な思いでフィシスを見るジョミー。
「消えない傷でいいのですよ…」
「それは、手厳しいな」
「それがきっと私達への罰なのでしょう」
 彼女はとても強い…。
 僕は勘違いをしていたのかもしれない。
 どこまでも抱えていくのが僕たちの責任なのかもしれないと思うジョミーだった。

「でも、どうして深層にミュウでもないキースを送ったんだ。危ないのに」
 と今度はジョミーが皆に聞いた。
「それは、深層に潜るには最低でも二人必要だよね?潜るのと補助と」
 とトォニィが答えた。
「補助をトォニィがするなら潜るのはフィシスじゃないのか?」
「補助は僕だけど、実際はもう一人のジョミー。あなたが願ったんだ」
「僕が?」
「意識が残ってた。キースに潜って欲しいと言って。一緒に潜ったんだ。だから、キースがミュウでなくても潜れて、たどりつけたんだ」
「…何故、キースを?どうして僕がそんな事を…」


  続く




『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」六話(Sumeru)

2011-08-23 03:19:32 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  六話(Sumeru)現在
 キースは人の深層心理になど潜った事はないし、それをする気もなかった。
 だが、今はトォニィの力でジョミーの心理に潜っている。
「!?」
 深く暗い水底のような、ゆらゆらと淡い光が射す何も無い世界。
 ゆっくりと下へ下へと降りてゆく感覚があるだけだった。
 キースの不安を感じ取ったのか「そのままで…あわてないで」フィシスの声がした。
(ジョミーを探して、お願い)
 ジョミーを探す?
「どういう事だ!さっきまでのはジョミーではないのか?」
(ジョミーです。 ですが…どこかに心が…)
「心が欠けたまま?戻っている?」
(カナリアの統合で分かれてしまったのです)
 意識統合の事はキースも聞いていた。それはカナリア達だけに起こる事だとされていた。なので、研究者たちはその部分は重視せず、彼らの寿命を延ばす事を最優先にしていた。その能力が何故、ジョミーに影響をしたのかわからなかった。それは本当にカナリアの所為なのか?
 それと、心が欠けるとはどういう事なのか?
 そんな様々な疑問が頭に渦巻く。
 今は、その全ての疑問の答えを持ったままどこかに行っているジョミーを探し出す事。
「まずは、それからだ」
 水底のような深く暗く静かな場所…。
 ジョミーがここの何処かに居るというのか…ここが本当にあいつの心の中なのか…。
 こんな暗い世界が…。
 やがて、降下が少しずつ緩やかになり静かに停まった。
 底に着いたという感覚はしなかった。そこで止められたような感じだった。

 僕の心の中に…声が入ってくる。
「ジョミー、聞こえるか?」
 トォニィではない…少し低い。これは…キースの声だ…。
 キース…?
 それは…何者なんだ?
「誰?」
 ジョミーから答えがきた。
 声の方へ向かいながら、キースは考えていた。
 この事件の最初のビルレストでの事を「こんな事は予定外だ…」と…。
「…!」
 突然、空気が振動する。
 殺気が感じられる。
 ミュウの、ジョミーの攻撃だった。
 最初のはよけたが次から次へと襲ってくる。
 反撃する手段もなく避けきれず頭をかばっていると真上で青いサイオンがはじけ飛んだ。
 トォニィが攻撃を防いでくれていた。
「もし、攻撃された時には僕が防ぐ。深層へ送る事、戻る時に迷わずに帰れるようにする事だけが補助の役目じゃない」潜る時にトォニィは俺にそう言った。自分の周りに何かバリアみたいなものが施してあるらしかった。
 キースは何もない暗い水底を殺気のした方へ歩き出した。
「どこにいる?お前はどうしたいんだ」
 何かが微かに聞こえた気がした。
「…これは…」
 気がつくともっと暗く深い色に変わっていた。
 後悔や懺悔。そして償い。そんな感情が流れているのがわかった。
 この息苦しく重苦しい感情は自分にもわかる。
 俺たちはこれに潰されてはいけない。
 キースは叫んだ。
「まだ全てを救いたいと思っているのか?」
「キース。君か…。思わないよ。僕は偽善で欺瞞。全てに嘘をついて、いい人ぶっているだけ。本当はもっとずっと汚れているのに…」と声が聞こえた。
「俺もだ。俺も同じだ!それでも、我々は生きないといけない」
「なぜ?」
「今、生きているだろう?俺のこの命はお前が守ったものだ。お前も誰かに守られた事ぐらいあるだろう。俺はこの命をもう無駄にはしない、あの時、お前も自分の意思で生き残った。だから、生きて、どんなに苦しくても必死に生きあがいて。俺達はその先を見届けないといけない。この先、何がどうなるのかはわからない。でも進むしかないんだ」
 ジョミーの姿は何処にも見えない。
「ここから出て、カナリアたちを助けろ。お前になら出来るはずだ。彼等は色々言っているが、その実、守ってくれる何かが…そう親が欲しいだけだ。俺も…俺も同じ実験体だからわかる。そう…俺も彼等と同じだ」
「…カナリア…」
「俺の手を取れジョミー」
 とジョミーが何処にいるのかわからないまま、キースは手を伸ばした。
「キース。この先は…未来は何がどうなるかわからない?」
「ああ」
「進んでみないとわからないって…?」
「そうだ。お前もそう思っていただろう」
「そう…だったね」
 先は進んでみないとわからない。それを君が言うんだ。それは…僕が言われた言葉。
「ジョミー、どこだ」
「僕を許してくれる?」
「お前も俺を許してくれるのか?」
 いや違う、ここは俺の心じゃない…お前は何に許しを請うと言うのか…。
「俺は大丈夫だ。許している」
 キース…。
「確かに戦争で沢山死んだ。だがあの戦争で人はちゃんと生きられるようになったんだ。だから戻ってこい!まだ残っているだろう?やる事が。カナリアをこのままにしておいてお前は後悔はしないのか?」
 やがて、
 キースの伸ばした手の先に静かにジョミーが現れる。
 逃がさないとジョミーの手を取った瞬間、深い水底に明るい光が射した。

 世界が戻った。


「ジョミーがパパでフィシスがママなの?」
「そうだよ」
 カナリア達の歓声があがる。

 ジョミーはフィシスのようにここで彼等を見守る事となった。



   続く


『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」五話(Sumeru)

2011-08-18 02:05:34 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  五話(Sumeru)現在
「ジョミーいい?」
 カナリア達が事の急変にあわてはじめた。
 トォニィがミュウである事はその服装からわかる。そして、彼が強い事も感じ取っていた。
「戦うの?」
 とカナリアのジョミーの問いに「そうだね」とジョミーが答えた。
「危ないから下がってて…」
 カナリア達をフィシスに託し、部屋を出て中庭に向かうジョミー。
「ジョミー。報告。ゼルはメティスに着いたよ」
 カナリアのジョミーからは返事はなかった。
 一瞬だけジョミーの目が優しくなったようにトォニィには見えた。
 だが、すぐに戦闘態勢に入ってしまった。
「ふーん」
 トォニィが先に仕掛ける。
 青い光が弧を描いてジョミーに向かった。前の時のように相殺するとトォニィは思っていた。だが、身体をひねり避けるジョミー。彼の後で爆風が上がった。
 カナリアの施設は無傷だった。シールドがはってある。
 ジョミーはそれを目で追った。
「二重?」
 トォニィはあきれたようにジョミーを見る。
 一つはミュウのシールドで、もう一つはジョミーのシールドだった。
「やめ、やめ。こんな事しても僕達にはなんの利益もないもの」
「君がジョミーと戦いたそうに見えたから」
 と冷たく笑うジョミー。
 それに向き直りトォニィは言った。
「そうさ。戦いたいさ。このガキめ!今は僕がミュウの長なんだ!いくらジョミーでも、勝手にソルジャーを名乗ってもらっては困るんだ」
 言いながらジョミーに詰め寄った。
 トォニィを睨み返すジョミー。
 その目を見下し「なんなら、実力で叩き出そうか!」とトォニィが凄んだ。
「……」
 急にクスクスとジョミーが笑い出した。
「わかったよ。トォニィ。僕が彼等を説得するよ。もう十分、脅えているから、もうやめてくれないかな?」
 そのままジョミーは(彼の中の)カナリアと会話をはじめる。
 その話し合いはすぐに終わり、ジョミーはカナリアの呪縛から解放された。

「カナリアは自分達の存在をちゃんと知って欲しかっただけなんだ」
 ジョミーに交戦の意思がない事がわかり施設は開放された。カナリアとフィシスは自由になった。
「すぐにでも戻れるくせに力も使えるのになんで使わないのさ」とトォニィがすねていた。
 一時は本当に使えなかったんだとジョミーが答えた。
「大人しくなってしまったミュウを再び表舞台に引っ張り出すには良い機会だと思ってね。軍部にも対処しないとミュウの皆はいつまでも阻害されたままだよ」
「軍部にいるミュウの事?」
「それだけじゃないよ。もっと広く見るんだ。でないと…」
「戦争を忘れられないようにたまには脅すと言うのか?」
 キースが施設内に入ってくる。
 その声に思わずトォニィがジョミーを庇った。
「ああ、やっぱり怒ってる?」ジョミーはキースの傍に進む。
「ジョミー」キースがジョミーの肩に触れたその時。
「そのまま離さないで!」とトォニィが叫んだ。

 遠くから祈るようにフィシスが見ている。
 事の次第がわからないまま、肩を掴んだ手を離さないでいるキース。
 そして、ジョミーはそのまま深い水底に落ちてゆくような感覚に襲われていた。



   続く


『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」四話(Sumeru)

2011-08-14 18:30:23 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


 『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  四話(Sumeru)現在
 ミュウの長のジョミーからの要求は至極簡潔なものだった。
「カナリアの存在を認めること」
 それを伝えるのに何故ミュウの長でなければいけないのかというと、彼自身が戦艦並みの力を持っているから…。言う事を聞かなければ攻撃も辞さないという脅しなのだろう。

 ジョミーの肉体は彼等に操られているが、その精神の全てを手放した訳ではなかった。
 僕は自分がこうなったことで、人類はどう動くのか?
 トォニィはどうするのか?かが知りたかった。
 ジョミーは返答を待つ間に二度ほど、人類側にいるミュウの部隊の精神攻撃を受けた。
 同族なら反撃しないと思っているのか?とカナリア達は言っていたが、ミュウにはミュウを。それは当然の対処の仕方だろうと思っていた。
(ミュウの部隊の彼等自身が言い出したのだろうな…)とジョミーはすまなく思った。
 フィシスは一緒にいるが人質ではない。
 ここの職員も数名残っているが拘束はしていない。
 外との連絡は取れる状態になっている。
 ただ宣言後は、出られなくなっただけだ。
 カナリアが僕を操っているとは思われてはいない…犯人は僕だけとなる。
(そうなると…そろそろソルジャー・トォニィが来るはず…)
 ここはノアに近い、移住先の惑星メサイアもノアに近かった。
「ジョミー大丈夫?」と心の中に声が届くトォニィの声だ。
 ミュウが人類からの依頼に動いた証拠だ。
「大丈夫だよ」と答えた。
 この会話はカナリア達には聞こえない。二人はサイオンを発動せずに会話をしていた。
 ここにフィシスがいるから出来る会話だった。
 彼女は僕らの能力を増幅できる。
 それはソルジャーだけに与えられた。文字通りの女神。
 彼女とソルジャーブルー出会い助け出した偶然の産物なのか、はじめから用意されていたものなのかは、わからなかった。
「ジョミー、僕が来た意味わかるよね?このままだと武力制圧されちゃうよ」
「わかっているよ…」
「カナリアを反対に封じれない?外から協力するから」
「それはしないでいい。もう少し待って。それより太陽系にいるミュウの船をビルレストに送って欲しい」
「…ビルレストに?」
「至急頼む」
「向かうように伝える。それで、この後、僕はどうすればいいの?僕と戦う?」
「それが必要ならば…ね」
「OK」
 そこで交信が切れた。

 しばらくしてから人類側から通信が入る。
 それはこの施設全館に強制的に流された。
「人類統合機構 太陽系司令部総監キース・アニアン」と声が響いた。
 長い肩書きと共にキースの登場だった。
(ここにキースが来たという事は…。何かがあったという事なのだろうか?)
「太陽系の総監が、わざわざこんな所まで…」とカナリアのジョミーが焦り出した。
「ソルジャー・シン。そちらの要求は認められた。カナリア達の解放を望む」
「よ、要求はあれだけではない!」
「要求を言え」
「…まっていろ」
 キースの迫力にカナリアのジョミーは言葉につまった。
(もう少し優しく言えないかなぁ。いくら子供が嫌いだからって…)
 その後、ソルジャー・シンからの要求はなかった。

「キース・アニアン総監。ミュウからの要求も聞き入れてもらえない?」
「ミュウの要求?なんだ」
「ジョミーと戦わせて。確かめたいことがあるんだ」
「それは許可できない。危険すぎる」
「大丈夫。他に被害が出ないように仲間がシールドつくるし、僕の狙いはジョミーだけだから」とトォニィはにっこりと笑った。
 有無を言わせない迫力と、それとは反対の優しい物言いにキースは少し圧された。
 キースは人類軍を下がらせた。
 カナリアの施設の広い中庭にトォニィが歩いてゆく。
 ジョミーはその様子をカナリア達と共に見ていた。
 そして「ジョミー?いい?」とトォニィが声をかけた。


   続く


『君がいる幸せ』 二章「湖底の城」三話(Sumeru)

2011-08-09 02:50:30 | 『君がいる幸せ』(本編)二章「湖底の城」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

 <用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 2人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市


  『君がいる幸せ』

  二章「湖底の城」

  一話(Sumeru)現在
 キースは考えていた。
 ジョミーがカナリアを殺していったい「何が」あるいは「誰が」得をする?
 信頼を得はじめていたジョミーはこれで人類から追われる身となる。
 カナリアはその死をもって世間にその存在を知らしめる。
 この二つで何が得をする?
 人類?
 カナリア?
 それとも、ミュウか?
 ミュウだとすれば、ジョミーを排除する事でまた戦時下に戻す事が出来る。
 今度こそ「力」で制圧ができる。
 けれど、メサイアに旅立った今、それを彼等が望んでいるとは思えない。
 キースはカナリア殺害の事を短い間しか止めておけなかった事を不審に思っていた。
 …内部に手引きした者がいる。
 損得で図れる事象では無いのかもしれない。
 ジョミーが向かった育英都市スメールで何か起きた事は、セルジュを通して聞いた。
「全く、あいつに手を出すバカがいるのか?」
 ミュウを敵にまわすと思ったら出来ないはず、だが、ジョミーを敵にしなかったら最強という事になる。恐ろしく簡単な図式が見える。
 強大な力がありながらそれを揮おうとしないのは、意味がわからないと言うの者も多いからな…。
 異星にミュウが飛び立った今だからか?
 ジョミーに隙がありすぎる。
 優しすぎる。いや…甘すぎるのか?
「うかつに手を出すなと言ったのに…」
 キースは部下に内情を探るように言い、セルジュに太陽系をまかせてひとまずスメールに飛んだ。
 スメールは首都星ノアに近いが、その昔、反抗勢力が隠れていた地域だった。
 この手の情報に詳しいスウェナと会う事となった。
 あの大戦以来会っていないが、彼女が持つ情報網は信用が出来た。
 以前、ジョミーと同じようにカナリアの事を世間に知らせて救いたいと言っていたスウェナ。
 カナリア側にも信頼されている彼女なら、何かを知っているかもしれない。


  スメール空港
 スウェナと会ったキースは単刀直入に切り出した。
「スウェナ、正式に私の元で働かないか?君の持つ情報は両刃の刃になる事を自覚した方がいい」
「キース、あなたに協力するのはあの大戦での一度だけって約束だったはずよ」
「感謝している。だが、色々と目をつぶっているが、それでは不足なのか?」
「いいえ、キース。私は謝ってほしいだけよ。あの戦いであなたが見殺しにしようとした。私の娘に」
「わかった」
「え?」
「あの時の事は申し訳ないと思っている。許して欲しい」
 とキースは頭を下げた。
 思いがけないキースの行動に謝れと言ったスウェナが慌てる。
「キース。あなた本当に変わったわね…」
「頼みたい事がある。スウェナ。カナリアの事も、ミュウの事も、あるがままを伝えていいものではない。何でも暴けばいい訳じゃない。秘密にしておいた方が良い事は存在する」
「キース、それはジョミーの事ね?」
「そうだ。カナリアと交渉がしたい。今、何者かが、ジョミーのその力を(能力的にも影響力的にも)利用しようとしている。その前に手を打ちたい」
「要するに私がジョミーの事をカナリアに教えてしまったから、カナリアが彼に目をつけて問題を起こしたって事でしょう?あなたがスメールに来るなんて考えられなかったから調べてあるわ。多分、連絡もつけれるはずよ」
「スウェナ」
「あなたと違って、ジョミーには助けてもらった恩があるもの」
 と皮肉を言ってみるスウェナ。
「ジョミーの初恋の相手は君だったんだ」
 と返された。
 キースは本当に変わってきていると驚くスウェナだった。
 カナリアとの連絡をするスウェナ。だが、それは繋がらなかった。
 その時、空港内のモニターが一瞬乱れた後に、まっすぐにこちらを見つめるジョミーが映った。
「僕はミュウの長 ジョミー・マーキス・シン」
 よく通る声がロビー全体に広がってゆく。
 遅かったか…と、キースが唸った。



   続く