君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 五話「学園生活」

2012-08-31 01:52:04 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
※今夜はブルームーンなんですね。
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」五話「学園生活」

 週二回のジム通いの後でミアを会う約束をしたジョミー。
 別のブロックで生活している上級生と会うのはそれが都合が良かった。

 そんなある日、ある一団に呼び止められた。
「おい。そこの一年。お前、ジョミー・アニアンだろ?」
 アニアン姓にまだ慣れないジョミーは少し不機嫌に答えた。
「そうですが…。僕に何か?」
 相手は三年が四人。と四年が一人だった。
 四年の男は体格が良かった。
「あぁ、あなたはジムで何度か会いましたね」
「え、ああ」
 四年の男はジョミーがまさか自分を知っていると思っていなかったようだった。
「そ、そんな事はいい。ちょっとこっちに来てもらおう」
「……」
 有無を言わせない感じを漂わせて、男が歩き出した。
 その男を先頭にして、僕が続き、後ろから四人が着いてきた。
 次の授業に出られなくするのが目的だったようで、僕は顔と腹を殴られてある部屋に閉じ込められた。
「誰かが探しに来るまでそこにいろ」
 ミアとの事を何か言っていたようだが、去り際の言葉はこれだった。
 入学したての一年が三年の彼女と上手くいっているのを、面白く思っていない者達がいると一年の友人から聞いていた。
「痛て…」
 思いっきり殴られた訳じゃなかったが、痛くもなんとも無いとはいかなかった。
 一応、腕で防御っぽいものはした。
 殴られて当然な事をしてはいないし…。
 こういう事は、弱者をただいたぶるだけの行為は許せる物ではなかった。
 でも、何もしないで殴られて閉じ込められた。
「俺はMかよ…」とごちる。
 僕は床に寝転んだ。
 一人で考える時間が欲しかった。
 ここなら、少し精神を伸ばしても誰も何も思わないだろう…。
 この区画は空き部屋が多くて人も余り通らない。
 夜にならないと気が付かれないかもしれない。そんな場所だった。
 前にシドが僕に言った事があった。
「統制されなくなって子供は人の本性が出てきていると聞きました。だから、子供同士の暴力沙汰もあるようです。気分の良い話ではないけど、弱者を狙うようなのもあるって…」
「ああ、そうだね。戦後のごたごたはその辺りが多かった。人は不安な状態に置かれるとどうも力…。そう、暴力という物に目がいくようだ。そうやって強い者は強いと見せて自分自身をそして社会を守ろうとしているのだろうね…でも、それが度を過ぎると、ただの弱いものいじめになる。弱者をいたぶって快感を得てしまうのだろう…。それと、子供とは本来とても残酷なんだよ」
「ジョミー、今のあなたは弱者にあたります。そういう目に合ったらどうします?」
「わからないな…」
「何故です?決まっているでしょ。もし、殴られたら反撃してくださいよ」
「どうしても?」
「そういうのって、最初が肝心なんです」
「んー、反撃ねぇ」
「意味無く殴られたら、殴り返すのが人のルールだと思ってていいんです」
「…そんなルール…先が危ういだろう?」
「先って、どの先ですか?人類の将来ですか?そんな物の為に殴られるのですか?」
「そこまでは…言ってないよ」
「大丈夫です。戦争なんかに発展しませんから」
「シド」
「ジョミーは物事を大きく考え過ぎなんです」
 殴られても何もしなかったとシドに伝えたらなんと言うだろう…。
 多分…いや、絶対怒られるな。
 あれこれとシドへの言い訳を考えながら、ここからなら、彼の所まで意識を飛ばす事が出来るかもしれない。とジョミーは淡く青く光り始めた。
 解放されていく意識を感じながら、良い場所を教えてもらったような気持ちになった時、小さな音がしてドアがそっと開いた。
 ジョミーは床に寝ころんだまま、目を閉じた。
「おーい、一年の…大丈夫か?あいつら行っちまったからもう出れるぞ」
 と一人が言う。
「気を失っているのか?酷い事するなぁ」
 と声がした。
 足音では三人いるようだった。
「大丈夫で…す」と僕はゆっくり起きながら答えた。

「俺達は一般コースの一年だ」
「この辺りの空き部屋でたまに集まっているんだけど、今日はたまたま見かけて助けれたって事」
 彼らは冒険心でこの区画を見つけ、ここで集まって遊んでいるのだと言った。
「僕はジョミー。同じ一般です。助けてくれてありがとう」
「俺は、キリアンだ」
 一番大きな身体の彼がそう言った。
「ありがとう。キリアン。僕は君とジムで会った事があるよ」
 確かに、一度二度ジムに行った事があるキリアンはジョミーの記憶力に驚いていた。
 ジョミーに事の経緯を聞いたキリアンはこう言った。
「あいつら、また仕掛けてくる気だろうな」
「多分、君があのトップのジョミーの兄弟って所も気に入らないんだろうね」
「どうしてまた来ると思うんだ?」
 とジョミーが聞いた。
「そんなに酷く殴られてないし、さっきの部屋の鍵は俺達で開けられるロックしかされてなかった」
「僕が出られるようにしてあったと言う事?」
「時簡になって部屋に居なかったと因縁を付けてまた殴る気なんだと思う」
「……でも、それって…大人しく部屋に居てもまた殴りに来るなら同じじゃない?」
「同じ殴られるのでも、相手に理由を与えるのと与えないのとではちょっと違うんだ」
「…キリアン…僕にはよくわからないよ」
「だから、殴るのに理由なんてない。あった方が殴りやすいだけだ」
「…ふーん…そうか…」
 不思議な顔をしていたジョミーが腑に落ちたような顔をしたのでキリアンは話を先に進めた。
「ジムに行く時が問題なら、これからは俺達が着いて行ってやる。心配すんな」
「トップのジョミー達に言えば解決するんじゃないか?」
 と、あの部屋の鍵を開けた細身で黒髪のマックスが言った。
「こいつに泣き付く気があったら、殴られる前に名前を出してるだろ?」
「出せば良かったのに、殴られなかったと思うよ」
 ソルジャーズの名前を出すなんて事は思いつきもしなかった。
 出せば良かったのか?
 そうすれば、こんな事にはならなかったのか?
「兄たちはスゴイんですね」
「スゴイって、知らないのか?ここでの歴代の記録を全て塗り変えてるぞ。あの二人は」
 彼らが色々と記録を出している事は聞いていた。
 それがそんな大きな事だとは知らなかった。
 本当に頑張っているんだな。
 そう思うと嬉しくなった。
「でも、だったら、僕は余計に兄達には言えない。これは僕が解決しないと…」
「どうするつもりなんだ」
「ジムに行くのは止めれないから、着いて来てもらわないといけないけど…他は何もしない」
「何もしない?」
「うん。でもこの先、ミアと二人きりでは会わない」
「え、いいのか?」
「僕が彼らから逃げたら、ミアに危害が及ぶかもしれない。だから、君たちとミアも知り合いになれば良いと思うんだ。大丈夫。僕たちはそういう関係じゃない」
「…お前…」
「……」
「彼女には聞かなくていいのか?」
 とキリアンは言った。



  続く





『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 四話「予兆」

2012-08-27 02:53:33 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』Artemisia編 一章「夢の在り処」四話「予兆」

  入学して二ヶ月程した頃。
 僕はやはり体力的に皆に付いていけないと思うようになった。
 運動のメニューを特別に作ってもらって、センターにあるジムに通う事にした。
 ここは学年や過程に関係ないので良い交流の場所になっていた。
 そのジムで、入学した時に知り合ったミアと再会をした。
 彼女は僕を見つけるとすぐに声をかけてきた。
「ジョミー。あなたもここに?」
 そう言って彼女は僕が運動の後に受けているヒーリングベッドの隣に寝転んだ。
「こんにちは。ミア」
「どうしたの?」
「体力作りをするように言われて」
「薬とかで何とかなるのに、そうしないの?」
「別に筋肉付けたい訳じゃないからね…」
「ミアはそうなの?」
「え?いいえ。ち、違うわよ」
「それじゃ、気になる対象は僕ですか?」
 僕は起き上がり、手を伸ばし彼女の腕を掴んだ。
「…ジョミー。や、やる事が大胆ね…それは、ダメよ」
「ミアにゆっくりと時間を割く必要が無いと思って。ね。そうじゃない?」
「な…」
「そうでしょ?」
「わかったわ。場所を変えましょうか?」
「了解」
 僕達はジムを出るとセンターにある談話室に向かった。
 彼女はわざと大きな部屋を選び、その隅に座った。
 この部屋と席の選び方を彼女は後で後悔する事になる。
 ジョミーは部屋全体を眺めてから、ミアの前の席に座った。
「気が付いていたの?」
「ええ、出会った場所がちょっと気になったし、今日も唐突でしたから…」
「じゃあ、正体がわかってた訳じゃないのね」
「軍ですか?」
「ええ」
「何故、こんな所に?」
「ちょっとね…」
「ここまで話して、もう止めるの?」
「軍事機密ってのもあって」
「そう?なら…」
 ジョミーは席を移動してミアの隣に座った。
「え?」
「ミアって、Cなの?もっと大きいと思うんだどな。Dでしょ?触っていい?…」
 もとより、良く透る声をしているジョミーが有る程度まで聴こえるように言ったのだから、堪らない。
 あわててミアはジョミーの口を塞いだ。
「ちょ…待って…な、何を」
「これで僕と君はステディの噂が立つね。二人で話しやすくなるよ」
「なんで?」
「二人きりになりたいから…もっと…君(の事)が知りたいんだ」
 これもまた少し大きめに言うジョミー。
「わ、私が困…」
「君も僕の事が知りたいのでしょ?」
 とにっこりジョミーは笑った。
「……ジョミー」
「なぁに、ミア。部屋を変える?」
「い、移動しましょ」
 ミアは真っ赤になり周囲の目に耐えながらそう言った。

「もう。最初から個室にすれば良かったわ」
「そうだね。自分と相手の事をもっとちゃんと見ないと守る機密も何もないよ」
 と言いながらジョミーは、この部屋の監視システムパネルを使いそれを一時ダウンさせた。
「ど、どうやったの?」
「機密って答えてもいい?」
「ご、ごめんなさい」
「僕の情報はある程度、君の耳に入っているはずだ。最近、君以外にも来ているよね?」
「ええ」
「ならば、そうもゆっくり僕の事を探っている時間は無いんだろ?だったら、君が知っている情報を疑うな。初動で間違うぞ」
「わかったわ」
「僕はジュピターだ。それに嘘はない。それと、僕にはここの中に仲間がいてある程度の操作が出来る。これもそれさ」
 とシステムパネルを指さした。
「やっぱり、ジュピターなの?じゃあ、本物のジョミーなのね」
 ミアはジョミーの左手首に付いている白いブレスを触った。
「ミュウの力はほとんど無いけどね。本物だよ」
「これが人類で最高と言われる権力の証なの?」
「今の僕には過ぎた物だ…。ミア。これ、気をつけないとここら辺一帯が吹き飛んじゃうよ」
 と、笑った。
 ミアは慌ててジョミーの手を離した。
「嘘だよ」
「……」
「さてと。本題に入るけど、君はあのクローンの二人を見張る為にここに居るのか?」
「ええ、あ、はい。そうです」
「僕をただの一年生と扱って欲しい。でないと問題が起きる」
「はい。わかりました。でも、あの…」
「ああ、ただの…ではないか…。君とはもうステディだったね」
 ドアの前に立ったまま話していたジョミーがミアの方に近づいてゆく、ミアは慌てた。
「扱います。一年生として扱いますから!」
「OK。それでいい」
 ジュピターって優しくて大人しいって言う事だったのに。
 聞いていた情報と違うじゃない。と思うミアだった。
 そんな彼女の心を見透かすようにジョミーが優しく微笑んだ。
 その後、何度か情報の交換が行われた。
 彼女からは「軍」の人間が何人派遣されているのか?
 それは何を警戒していて何を防ごうとしているのか?だった。
 ジョミーからは、短時間であるがシドの協力を得てシステムを手中に収める方法。
 彼女の本来の目的であるクローンの二人に正式に紹介する事だった。
 軍はここが何者かに狙われているという情報を得て動き出していた。
 ここに居る最重要人物はジョミー達だが、そこは今は絡んでいないようだった。
「僕達が狙いでは無いなら…一体何を…」
 ジョミーが考えながら呟く。
「情報が足りないな…」
「私は軍事には疎いから情報が違っていたら…ごめんなさい」
「いいよ。知り得た物をそのまま教えてくれてもいい。解析はシドがしてくれる」
「それって、私が信用できないって事?」
 ミアがちょっとむくれた顔をした。
「信用している。していない訳がないじゃないか?それに違っていたらと言ったのは自分だろう?」
「そうね」
 ミアのそんな言動や行動は、こんな所に一人送り込まれて不安だった気持ちから来るものだろうと思えた。
 ミュウであり、その上、得体の知れないクローンの彼ら。
 彼らが「誰」のクローンであるかは解っていても、その本人が謎に包まれていては悩みの解決にはならない。

「シド。今夜、ブルー達と会えるようにして欲しい」
「了解。でもまだ何が起きるのかわかっていないけどいいですか?」
「確かに情報が足らないね…。ミアだけじゃ無理かなぁ」
「彼女は監視員だから無理ないですよねぇ…」
「うん。頑張ってくれてるとは思っているよ」
「ジョミー。ところで…」
「何?」
「彼女ってジョミーが気になってきてるよね?」
「はあ?」
「そう思わないですか?」
「…思わないけど…」
「そうですか?」
「彼女は僕みたいな子供より大人の男が好みみたいだよ」
「へええ…」
 僕を子供と見ているか、大人と見ているのか。
 そんな事は今はどうでもいい。
「シド…、セルジュを探してくれないか?」
「了解」
 今はまだそこまでの危機感は無い。
 でもそれは、僕の能力が無いから予知出来ないだけの事なのかもしれない。
 なら、その不安が消えるまで…調べるしかなかった。



  続く






『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 三話「再会」

2012-08-23 02:17:16 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 三話「再会」

「二人共、大きくなったね」
「ジョミーが小さくなっちゃったんだよ…やっと会えた…」
 ジョミーが僕に抱きついてきた。
 ブルーは僕に抱きついてこなかった。
「ブルー?」
 手を伸ばすと、やっとそれに引っ張られるように側に来る。
 だから、僕から彼に抱きつく事にした。
「あのっ、ジョミー」
「こういう時は素直に喜べば良いんだよ」
 ソルジャーズのジョミーが言う。
「そうそう」
 ジョミーも言った。
 二人のジョミーに抱きつかれる状態になってしまったブルーは照れ笑いを浮かべていた。
 ここでの三人の関係は三つ子となっている。
 二人のジョミーが一卵性で、ブルーとは二卵性の三つ子となっていた。
 生まれは同じでも、三男のジョミーは成長が遅く二歳下の扱いとなった。
 彼らの生まれが特殊で、ダールトンが身元預かりとなった後で政変があり、最後の一人だけがアニアン姓になっていると処理された。
 そこに何も問題無く受け入れられた。
 戦中戦後の混乱期に生まれた子供は身元が不明な子供が多かった。
 今は、家族で育つようにと義務付けられ、ちゃんとした家庭を政府から与えられ育っていた。
 それは、前より「家族ごっこ」に近いけれど、以前より関係は濃密になっていた。
 親子愛や兄弟愛、家族愛や人類愛が少しずつ育ちつつあった。
 僕達三人は、センターの談話室へ移動した。
「この二年の間に、二人とも随分落ち着いたね」
 ジョミーが嬉しそうに言った。
「……」
「大人になったって事なのかな?」
 ソルジャーズの二人が顔を見合わせて笑った。
「ここに来て色々あったし、でも、僕達がここに入るのを決めたのも、ジョミーがミュウに限らずに色々見るようにって言ってくれていたから…。だから、僕達は頑張ったんだ」
「そうか。気持ちが解ってもらえて嬉しいよ」
「あなたはミュウでもなく人間でもない。ただのクローンの俺達を認めて、人として生きるようにと願ってくれた。その恩に報いないといけない」
「うん。でも、そこまで窮屈に考えなくてもいいよ。君たちの生きる道は君たちで探すしかないから、僕はその手助けしか出来ない。だから、じっくりゆっくり悩んでいけば良いんだ。時間はたっぷりあるから」
「僕達が卒業して、ジョミーがもっと元気になったら、またベルーガで旅がしたいな。その頃には僕達も操縦出来るし」
「そうだね。それはとても素敵だろうね」
「ジョミーってジュピターの時に許可を取っているから、ここで教えてもらう事は無いくらいじゃないの?」
「僕は一番大事な学生ってのを経験していないんだよ」
「それって、ここに遊びに来たって事になるんじゃ…」
「そうかもね。二人共、モタモタしてると僕が飛び級しちゃうよ」
「えーっ?」
 そういえば出してない課題があった。とあたふたし始めるブルー。
 倫理?物理?とジョミーが聞いている。
 そんな二人を眺めながら、僕はここで僕達が学生らしく日々が過ぎてゆく事を願わずにいられなかった。

 数日後、新入生の歓迎会で劇がもようされた。
 生徒の代表、以前のメンバーズエリート候補生のようなグループがあり、そこに所属する生徒達の劇だった。
 ブルーが王子役で隣国の姫と恋に落ち、二人が様々な苦難を乗り越えて幸せになる話だった。
 途中、第三の大国に囚われた姫を助けにいくシーンが中盤の山場になっていた。
「たとえ、この腕が千切れようとも、姫を救い、この二つの国の窮地を乗り越えてみせます。命に代えてもとは言いません。救いだしたその時、姫を抱く腕が無くても、一緒に駆ける足がなくても、この命があればきっと彼女は許してくれるでしょう。僕らはそれくらいでは負けません」
  戦い続けてきた人類とミュウ、その未来を阻むものがあるなら共に戦おうという内容だった。
 その内容については僕には何も言う所はない。
 子供の教育現場が一番、将来を育てるのは知っている。
 一つ願うなら、軍事に傾かないで欲しい事だけ、それはいつかまた対立を生む。
 人類が和平から道が外れるようなら、僕らミュウは全力で阻止しなければならないだろう。
 そう、僕はもう恐れない。
 彼らが生まれた意味。
 僕が戻った意味。
 それはきっとそういう事なのだろう。
 そして、人類に仇なすならミュウをも殺さなくてはならない。
 そして、ミュウに仇なすなら人類も殺せる存在になるのだろう。
 大戦から十年、予想通りに戦いの落とし児のようなタイプ・ブルーは生まれていない。
 そして、今、僕ら三人を「楔」のように扱う人類。
 だけど、それは…。
 本当の平和なのだろうか?
 僕らは「楔」ではなく「架け橋」にならなければならない。
 対話は叶った。
 共存は始まっている。
 それだけで本当に良いのだろうか?
 「見護る」とはただ見ているのと同じなんだろうか?
 僕の望みは…もっと強い繋がりだ。
 僕の願いはまた「人々」に無理を強いるのだろうか?



   続く






『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 二話「君と僕との関係」

2012-08-21 03:00:08 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルーとジョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」二話「君と僕の関係」

 ミュウの戦艦ゼルで惑星アタラクシアの教育ステーション近くまで来たジョミーとシドはシャトルに乗り込みステーションに向かった。
 キースの指示でステーションの下部にジョミー専用の部屋が作られた。
 ここにはミュウのシドが常駐する事になる。
 秘密裏にシャトルは収容されて、この区画はトップシークレット扱いとなった。
 片耳に付けたヘッドホンで心拍等の情報は常時記録され、八時間置きの定時連絡が義務付けられた。
 これがキースの言う「自分の身体を一番に考える事」と「無茶をしない事」の条件の代わりだった。
「子供じゃないんだから…」
 と思っても、自分自身の行動の危うさは知っている。
 心配はかけないとの約束は気休めの口約束でしかない事も、彼の心配が過剰ではない事も自覚している。
 それは、こうして傍について来る為に医療関係の資格まで取ったシドも同じだった。
「僕はどうも信用されていないみたいだね」
「ええ、そうですね」
「即答なんだ…」
「ええ、当たり前でしょう?」
「そう?」
「何百年か何千年先に、いえ…もっとずっと先に起きる事象に自分を掛ける人なんていません。普通しません」
「……」
「あれ?今日は反論しないんですか?帰って来たから良いじゃないかって言わないんですか?」
「さすがに、口でシドに勝てると思っていないよ」
「ジョミーが大人しいと、ちょっと恐いですよ」
 とシドが笑った。
「失礼だな…お前…僕だって大人しい時くらいある」
 
 目前に迫るステーション1180
「緊張しているのですか?」
「…いや…」
「何か感じますか?」
「ううん。何も…僕はまだ予知は出来ない。シドは感じる?」
「何も…」
「そうか」
「気掛かりなのはキースですか?」
 気にしていた事の図星を指されてピクッと小さく身体が反応する。
「ん…実はノアを出る少し前に、離れて良いのか?と聞いたら怒られて…」
「そんな事を聞いたんですか?」
 今更何言っているのですか?って顔を隠さずそのまま向けてきた。
「ああ、聞いたよ」
「…あきれた。可哀そうにキース」
「え?何で可哀そうなんだ」
「言葉そのままですよ」
「…だって、教育ステーションに行きたいと行ったのはただの望みだったんだ。キースの傍に居たくなくなった訳じゃない。だけど…戻ってから…何故か彼が怖いんだ…」
「それは…きっと…」
「わかるの?何だと思う?」
「いえ、それを聞いた後、キースは何て言いましたか?」
「…嫌いになったんじゃないからって言ったら、俺を重荷に思う事はない。何年でも一人で考えて来いって…」
「ジョミー。やっぱり、彼が可哀そうですよ」
「そう…かな」
「ずっと待っていたのに、戻って一年足らずで離れられるのは辛いでしょ?」
「…そ…そう、やっぱり僕は酷い事をしてる…ね」
「彼はあなたより大人ですから」
「どうせ、僕はこんな子供ですよ」
「彼を怖いと思う理由はきっとそこにありますよ」
「キースが大人で。僕が子供だから?だけど、僕は大人だぞ」
「でも、多分。そこだと思いますよ」
「んー、…理解出来ないな…」
「彼も同じ事を思っているかもしれないですね」
「…でも、僕は…ここに来ないといけない気がするんだ」
「ジョミー…」
 手に取る程に近くなったステーションを見つめるジョミーの真剣な横顔にかつてのソルジャー・シンを見るシドだった。
「ジョミー。全力でサポートします。何でも言ってきて下さい」
「ああ、頼りにしているよ。シド」

 シャトルはステーションの下部Cブロック格納庫に滑り込んで行った。
「ところで、ここで彼らの位置は把握出来る?」
「彼らが隠していない限り、出来ます」
「ここの生徒全員のデータは?」
「教職員まで全て入ってます」
「わかった」
「入学式で再教育される事はありませんから安心して行ってきて下さい」
「シド。それ笑えないよ」
 モニターを見たまま緊張を解かないジョミーにシドが冗談を言った。
 笑えないといいつつ、少しだけジョミーは笑った。
 こうして見ると、学生達がとても可愛く見える。
 僕は見た目が十四歳くらいだけど、中身はもういいおじさんなのだから仕方がない。
「一緒に入学するのが、自分の子供くらいの年だもんなぁ…」
「そうですねぇ」
「…そういえば、シドっていくつなの?」
「いくつに見えます?」
「見た目は三十くらいだよね?実際は僕より上で…」
「ジョミーより少し上くらいに思っておいて下さい。まだまだ若いつもりですから」
「…そういう発言が余計に年を感じさせる…」
「酷いなぁ」
「あはは。シドも可愛いって」
「可愛いんですか?」
「うん」
「せめて、カッコいいになりませんか?」
「あー、うん。カッコいいね」
「ありがとうございます。棒読みでも、嬉しいですよ」
 僕を形成していたミュウのソルジャー・シンの枠を外したら、僕達は一歩前進したようだった。
 僕にはその関係はとても心地がよかった。
 僕達はお互いに自分の中に相手を作り上げてそれを「本人」だと認識し、それに相手を合わせようとしていた事に気が付いたのだった。
 その時、その時が「彼」であり、「僕」で、情報も何も変動してゆく。
 お互いが打てば響くような、そんなセッションをするような感じが楽しかった。
 格納庫を出てゆく僕をシドが見送っていた。

 このステーションの制服は青で黄色のラインのある服だった。
 人類の軍服みたいのは窮屈な気がして着る気になれなかったので、これはなかなか良かった。
 入学したての生徒に混じって説明を受けるジョミー。
 今後のスケジュールと部屋割りの説明が終わり、解散になった時に僕はシドに通信をいれた。
「ところで、どうですか?」
 とシドが聞いてきた。
「体調ならいいよ」
「違いますよ。可愛い女の子は居ましたか?って聞いたんですよ」
「え、ああ、シド。君も入学すればよかったのにね」
「なんでそうなるんです?」
「可愛い子がいっぱいいるからさ」
「ええーーー!」
「あっはは。僕からしたら、ここに居る全員が可愛い子に見えるんだって。さっき、そう言ったじゃないか…」
「ソルジャー・シン」
「ん?」
「僕も早く教員資格取ってそっちに行きたいですよ」
「人類の船の操縦資格と通信やらのは取ったんだよね?後は何?」
「積載物の関係です。取り扱い燃料とかの危険物のが時間がかかってしまって」
「半年しか時間が無かったからね。シャトルの医療機器の扱いもあったし…」
「それは、優先して取りましたよ。ジョミーの命の為ですからね。僕は役に立てるのが嬉しいので、気にしないように…」
「ああ、わかっているよ。ありがとう。シド」
「いいえ。それよりジョミー。そろそろ時間が…彼らが待っていますよ」
「うん。じゃ、行ってくる」
 彼らとは、もちろん、僕が会いたがった。
 クローンのジョミーとブルー。
 ソルジャーズの二人の事だ。
 僕が居ない間に、人類側での教育を望みここに入学していた。
 彼らはダールトン姓を名乗っていた。
 ジョミー・ダールトンとブルー・ダールトン。
 ダールトンの双子と呼ばれていた。
 彼らは成績も優秀で人気があった。
 僕は待ち合わせのセンターへと急いだ。
 途中、知らない女子から声をかけられた。
「ジョミー?」
 制服は上級生のグレー、襟についたピンの色は緑、三年生だ。
「……」
 彼女は僕を見て、
「ああ、君は彼の弟さんね。ごめんなさい。本当にそっくりで見間違えちゃった」
「いえ、兄の同級生の方ですか?」
「ええ、そうよ。ミアと言うの。これからよろしくね。それじゃ」
 廊下を行く彼女を見送った。
 その背後で、
「ジョミー」と、
 聞き覚えのある声がした。
「…ああ、お久しぶり、ブルー」
 僕はゆっくりと振り返った。
 そこには、僕のクローンのジョミーと、ブルーのクローンの彼がいた。
 ノアで再会してからもう一年振りになるだろうか…。


  続く








『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」一話「君のままで」

2012-08-16 03:07:09 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
☆お待たせしました。「アルテミシア編」の開始です。
(果たして、待っていてくれる方がいるのでしょうか?)
本当に遅くなってすみません。
二部の目標は重くならない事!
ジョミーにとっての最大の目標が重めなのでそうも軽くならないけれど…^^;
物語の流れと結末は出来ていましたが、その舞台に上がるきっかけが掴めないまま「序章」を書きました。
で、一話の時間軸は、序章と前後します…ノアを飛び立つ前です。
キースと離れてしまうから二人の恋愛要素がない為、最初に入れました。
多分、今度は長くならないはずです。序章を組み込みながら進みます。
かなり成り行きまかせかもしれませんが、よろしくお願いします。

☆本編『君がいる幸せ』の大まかなあらすじ。
イグドラシルでの最終決戦後、生き残ったキースとジョミーを書いています。
人類は大戦中に人類最後のメギドを盗まれる。この事からジョミーとキースは協力して対応を進めていた。二年後、ミュウは人類が用意した惑星メサイアへと移住する事となった。
姿の見えない敵はそのメサイアと人類の首都星ノアを狙って動き出した。敵の中にはブルーとジョミーのクローンがいた。二人と対峙するジョミー。
軍に入り込み「ジュピター」として動いていたジョミーはある謎を追っていた。
それはミュウの起源と自分の出生に大きくかかわっていた。やがて訪れる最後の時、最後の場所でブルーと邂逅する。彼がジョミーに望んだただ一つの願いとは…。全てを終えて皆の許に戻ったジョミーは力を使い果たしてしまった為、十歳くらいの子供になってしまっていた。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
惑星アルテメシア ジョミーの故郷 ここの教育衛星で学園生活を送る 
ジュピター キース警護時ジョミーのコードネーム(シャトル所有↓)
ベルーガ ジョミー所有の小型シャトル(ワープ可能、ステルス機能あり)

 <人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルーとジョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君のいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」一話「君のままで」

  惑星ノア、ここは人類の首都惑星。
 僕は「人類」と敵対する「ミュウ」となり、長い年月戦い続けてきた。
 ここ惑星ノアも侵攻し陥落させた。
 その後、僕らが目指す「地球」へと到達し、人類との対話を果たした。
 ノアは人類へと返還され、また首都星となった。
 大戦から十年。
 「ミュウ」は惑星メサイアを主星とし、「人類」と共存していた。
 ゆっくりと時代は平和へと向かっている。
 そんな時、僕は昨年、一年間行方不明の間に、自分の身体と共にソルジャーとしての力をほとんどを無くした。
 そして時空の果てから皆の許に戻る為に自分で自分を作った。
 結果、僕は十歳前後になってしまった。
 ミュウの力も、人としての体力も不安定極まりない…それが、今の僕だ。
 もちろん、そうなってしまった事を悔やんではいない。
 だが、僕の中にある不安は何だろう。
 希望が見えてこないのは何故だろう。
 この満たされない思いは、何だろう。
 僕は、先に何を望むと言うのだろう。
 この平和以上の何を望むのだろう…。
 教育ステーション行く為の最終の医療検査を受けてたジョミーは、その結果を待つわずかな間に医療セクションの通路からキースへ通信を送った。
「キース。本当に僕は教育ステーションに行ってもいい?」
 ジョミーが少し遠慮がちに聞いてきた。
 検査は官邸内で出来る程度のものだったので、キースはその質問を執務室で受ける事となった。
 モニターには検査着のジョミーの姿があった。
 キースは仕事の手を止める事無くそれに答えた。
「承諾もなにも、今更何を言っているんだ。もう決まった事だろう」
「それは…そうだけど…」
「お前が学校生活をしてみたいと言ったから、そうした。何だ?体調とか…悪いのか?」
「ううん。そうじゃない。体は何も問題はないよ」
 キースの前には何枚もモニターが浮かんでいる。
 その中のジョミーが映るモニターを見下ろして聞いた。
「……なら、何だ」
 ジョミーはキースが映るモニターをまっすぐに見て答える。
「今の子供達は子供の時の記憶があって、親元で暮らしていた子も多いんだったよね」
「ああ」
「それは、どう違うのだろうね…」
「大きな違いは無いと聞いているが…」
 モニターに映るジョミーが画面から目を逸らし、もう一度見て質問を変えてきた。
「遺伝子操作や記憶操作されている人類は、どこか自分の事も他人まかせだったよね」
「…だったな」
「今は、人類は無理をしているんじゃない?」
「そう見えるのか?」
「自分をちゃんと見て生きるなんて、そんな急に、簡単に出来る事じゃないと思っただけ…」
「確かに無理は強いているかもしれん。だが、それももう十年だ。あの大戦から十年経ったんだ。人は日々、生きている。何とかなってゆくものだなと俺は思った。だからそう心配するな」
「…キースは…僕が、ここから出て行っても大丈夫?」
「別に問題も心配もない」
「そう…」
「……」
「一般で入学するけど…専門に変わったら四年だよ」
「そうだな」
 ここで初めて、仕事の手を止めるキース。
 ジョミーの映るモニターを真正面から見る。
「……」
「心配なのは、どうやらお前の方だな」
「そう…みたい…だね」
 ジョミーは少し自嘲気味に笑った。
「手を前に出せ」
「ここで?」
「そうだ。おまえの手をこっちに映せばいい」
 ジョミーは自分の手を見てから、両手を前に画面に見えるように差し出した。
 モニターを見るキースの目が少し優しくなる。
「俺がその手をずっと握っていてやるから…行ってこい」
「……」
 ジョミーはゆっくりとモニターに向けた手を戻した。
 モニター越しの会話とは思えないキースの言葉に、彼の強さと思いを感じた。
 僕は…本当に彼から離れていいのだろうか?
 大丈夫なのか?と聞かれるべきなのは、彼ではなくて、自分だった。
「そうだね。キースがここに居てくれるから僕は旅立てる」
「お前は何に不安になっているんだ?」
「…わからない…」
「今は、本当に人に生まれ変わったように見えるな」
「……」
「体が幼くなって心も子供になったのか?人の中に入るのが怖いのか?」
「多分…違う…行く先に不安があるんじゃない…と思う…」
「では、何だ?」
「……」
 ふ~ん。という顔をするキース。
 その表情を見てモニターから少し後ずさりをするジョミー。
「俺を置いて行くのが不安なのか?」
「……」
「浮気するんじゃないかって思うのか?」
「ち…違うって…」
「心配すらしないと?」
「あ、そうでもない…。でもっ、そう言う心配じゃない」
 「なら…今から、そこに行って抱いてやろうか?」
「!」
「そういう心配だろ?」
「キース!こ、ここを…どこだと…おもっ…って…」
 周囲を気にしながら、あわててモニターにかじりつくジョミー。
「キース。い、今はここまでにしよう。検査結果が出たみたいだ」
 そう言ってジョミーはモニターを切った。
 ここはノアの中枢、官邸の別棟の地下にある医療セクション。
 一般人が入れるような所でもなく、必要最小限の人間しかいない。
 さっきの会話を聞いているような人影も無かった。
 検査結果に問題は無かった。
「僕は、何か問題があればいいと、思っていたのかな?」

 ジョミーがノアを旅立つまで、あと三日。
 シャトルの調整を済ませたジョミーが官邸に戻るとキースが待っていた。
「俺は明日からペセトラに向かう」
「その予定は知っている」
 二人の間に微妙な沈黙が流れた。
 横に立つジョミーを見下ろしていたキースが急に抱き寄せた。
「ジョミー。お前は俺に何を言わせたいんだ」
「……僕はそんな事は思ってはいない」
「わかっている。お前は俺を避けている」
「避けてって…」
「最近、変だと自分でも気が付いているから、行ってもいいかと聞いたのだろ?俺に引き止めて欲しいのか?」
「どう言えばいいのか…わからないんだ…」
「このまま、こうしていたいのか?」
「それも…わからない」
「俺の本心は引き止めたい。それをわかっていて聞いただろ…」
「そう。知っていた」
「なら、このまま。お前をここに、俺に縛りつけて。二度と何処にも行けないようにしてやろうか?」
「…キース。それは嫌だ」
「俺が嫌いか?」
「ご…ごめん。君が嫌いとかじゃない。けど…だけど。僕は本当に…わからないんだ」
「お前はこの一年で普通に行動が出来るまで回復した。それはこの為だっただろう」
 半年前まで歩くこともままならなかった。それを普通に生活できるまでにするのは簡単なことではなかった。
「そう。でも…何か気が付いたんだ。今まで感じた事の無い何かを」
「俺にはわからないが…ただ怖がっているように思える。まるでその身体のままの、子供のように」
「キース」
「一年前、俺はもうお前が帰って来れないんじゃないかと、覚悟もしていた。お前は命をかけてここに戻って来た。だから…これからもお前が俺を本当に必要だと思うまで、俺は待てる。それで、お前が俺を必要じゃないと判断をしても俺はそれを認める」
「…そうじゃない。君は僕に必要だ。だけど、何かに迷っているんだ。僕は…」
 離れたくないという思いと、行かなければならない意思とがあった。僕の本心はどっちなんだろうか。
「俺と居たこの何年かを重荷と思う事はない。ここに置いてゆけ」
「……」
「二年でも四年でも、一人で考えてこい」
「…僕は…僕は人になったのかな?」
「そう言ったが、はっきりと分ける必要はない。人もミュウも同じ人類なんだろ?お前達はそれをずっと言い続けて、地球を目指したのだろう?」
「そう」
「お前はお前になったんだ。お前の目で見てこれからを見極めて来い」
「ミュウのジョミーじゃない僕か…」

 キースの言っている事は強がりでもなんでもない。
 彼が考えて出した結果だ。
 僕はそれにどう答えればいいのだろうか?
 僕は何を見て、何を感じてこれから生きてゆくのだろう。




   続く