君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十九話 「jealousy」3(全三話)

2011-12-28 02:00:48 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十九話

   Epilogue Bridge「jealousy」3(全三話)  
※時間軸が現在に戻ります。
 愛しすぎると感情は憎しみに変わるものなのか?
「でも、キース。殺そうと思っていても、きっと出来なかったと思うよ。あれが君の理性の表れ…」
 ジョミーは開け放たれたドアを指さした。
 キースはいくつもあったドアを、一つも閉めずにここまで来たのだ。
「君の心は誰か止めてくれと。何度も言っていた」
 そう、だから…。
「…だから僕は黙って着いて来た」
「……」
「ここで君に殺されるなら、それもかまわないと思ったから…」
「ジョミー」
 ドアの方を向いていたジョミーが目隠しをしたまま、ゆっくりとキースを見た。
「僕の志。僕の使命。僕がしなくてはならないそんな物の全てを…捨てさせるだけの力が君にはある」
 キースはジョミーの目を塞いでいるネクタイを外した。
 キースは愛だの恋だのに留まらず、もっと上を見るジョミーを眩しく感じた。
 俺も同じ位置に居たはずだ。
 同じように隣に立っていたはずなのに…。
 今はとても離れてしまった気がしていた。
「キース、それは違う。離れてなどいない。君は僕が好きでも、自分の使命を捨てたりはしない。僕に何があっても進んでいける人だ。たとえここで、僕を殺しても、先に進める。だから、君になら殺されてもいいと思ったんだ。前に僕は全てをかけると言ったよね?あれは君になら全てをかけれると言う意味なんだ。だから…僕は…四年前のあの事件が君をこんな風にさせたのなら…それは僕が悪いのだから…仕方が無い…だから話すべきだと…」
「それは、お前の使命が彼らを殺す事も、自分が死ぬことも許さなかったと言うのか?」
「いや。ごめん。僕は、また詭弁で逃げようとしている…。卑怯だよね」
「……」
「キース、僕は本当はとても怖いんだ。あるがままを話してしまうのが。全てを君に話したら、きっと君は、僕が力を使えるようになった時にどうして捕らえるなり、殺すなりしなかったんだ。と言うと思う。あの時、彼らの未来を感じて見逃した。彼らに同情した。でも、それだけじゃない。僕は大きな矛盾を抱えているんだ」
「矛盾?」
「僕は、僕を陵辱したあの者に助けられた。だから見逃したんだと思う」
 実際命を助けられてるけど、そう言う意味じゃないと加えて言葉を続けた。
「…大戦後、僕はずっと誰かに罰を与えて欲しかった。そして、謝りたかった。彼らはとても暴力的にわかりやすくそれを僕に与えた」
「ジョミー、それは…」
「うん。とても、自分勝手な解釈だとわかっている。それと僕は、人類は何故マザーを簡単に受け入れ、反発しなかったのだろうとずっと考えていた。その答えがそこにあったんだ。絶対的支配の前で人はそれに従ってでも生き抜こうとするんだ。それが人類の種を守ってきた強さなんだね。きっとそれは人類もミュウも同じなんだ…」
「……」
「それが身に沁みてわかった…いつ死んでもいいなんて思うのは、とても醜くて卑怯な事なんだ。どんな時でも生き足掻いて生き抜くのが人間の姿なんだと」
「……」
「それから、ミュウの力が使えないとあんなに怖いって事もわかった…。僕は弱い。人類は強いね…」
「強くはない。俺がしようとした事はただの嫉妬だ。浅はかな行動に出ただけの事だ」
「キース…」
「俺はヴィーからこの話を聞いた時に、最初に思ったのは、何故殺しておかなかったのか?そして何故逃がしたのか?もちろん理由はあるだろうが、お前が消した記憶が戻った事で俺は聞きたくない話を子供のような部下から聞く事となった。あいつは俺達の関係は知らないし、直属の上司だった俺にお前の事を告げ口しただけなのかもしれないが」
「…僕の体調が万全じゃなかったから、暗示がかけきれてなかったんだと思う…。キース。ヴィーは純粋に君に相談したんだと思うよ。そこまで悪い子じゃない」
「告げ口されたも同然なのに庇うのか?」
「庇っているとは思わない。けど、彼は仲間だからね」
 とジョミーは小さく笑った。
「俺はそこまで寛大にはなれんな。今回の事で俺の怒りの矛先は被害者である筈のお前だった。俺は器の小さいヤツなんだと思っ…」
 キースの言葉をジョミーが遮る。
「そんな事はない。僕に怒りが向いて当然だ。僕には彼らを退けるだけの力があるのにそれをしなかった。当然、何かを疑われてもしょうがない」
「ジョミー」
「彼らとの事がいつだったとかは関係ない。僕が信じてもらえないような事をして、それで、彼らの記憶を消して…それで終わったと、軽く考えていたんだ。僕はこの事で僕以外の誰かが傷つくなんて…思いもしなかった…」
 ジョミーは顔の前で手を組みちょっと俯きがちで話した。
「ジョミー。逃がした意味はほぼ理解した。結局は俺達はお互いを信じきれていなかったのか?俺は何度もお前を信じると言っていたのに、いざとなると、こんな無様な事をしてしまった」
 キースはため息をついた。
「キースは無様じゃない。僕がいけないんだ」
「お前は悪くない…」
「僕はきっと、ううん。絶対、間違えた。僕は彼らではなくて…君に謝るべきだったんだ。君の前で泣くべきだったんだ。例え、君に浅ましいと思われても、泣けばよかったんだ。君はそんな僕を受け止められる。意味を成さないプライドなんて捨てればよかったんだ…」
「だが、それは出来なかった」
「…出来なかった。素直になれなかった。償いたいと言いながら僕は君も仲間を殺しているじゃないか。とどこかで弱みなんか見せるものかと、思っていた。キース、君も沢山、失ってきているのにね」
「もう意地を張るな…。強がらなくていい。お互いの傷を舐めあうみたいな事はしたくないが、俺達には俺達でないとわからない物がある。俺も間違えていた。お前の償いたいと言う言葉を俺は、偽善だと感じていた。償っても戻る事のない物に何をしたって所詮、同じだと思っていた。お前にはそれが必要だったんだな」
「キース。僕も間違えてばかりだ。君に強さばかりを望んで、弱さに気が付けなかった。どこまでも冷徹な考え方が出来ると思い込んでた。そういう人間らしさも君なんだね」
「俺達はもっとお互い知らないといけない」
「揺るがない関係なんて出来ないかもしれないけれど、せめて、お互いを信じていけるように…」
「ああ」
「いつか…君の前で泣けるといいな」

 キースが知る中で明らかにジョミーの様子が変だったのが二度ある。
 一つは「月」の時、あの時は、ジョミー自身がした事だ。
 もう一つ、サイオンに酔ったようになった時、本人も覚えていなかった事。
 思えばあれは、ノアで彼らに暴行されたすぐ後、あの時、ジョミーは俺に抱いて欲しいと言った。
 俺はなだめて寝かせたが…。
 傷ついていないと言っているだけで、自己をなくす程に傷ついているのは明白だった。
「あの時、俺はお前を抱けば良かったのか?」
「…え?…あの時って…」
「…四年前、メティスでお前がピンクのサイオンで酔ったのを覚えているか?」
「治癒の練習をしていて…くらいなら…」
「具合が悪くなったお前を部屋に運んで寝かせたら、お前は俺に抱いてくれと言ったんだ。時期的にノアでのすぐ後になる…」
「…そう…か。そんな事が…でも、君は僕を抱かなかったんだな…」
 と、ジョミーはホッとしたような表情を浮かべた。
「キースのその選択は間違っていない。最初から最後まで間違ったのは僕の方だ」
「お前は辛くなかったと言ったが、俺にそんな事を頼む程、辛かったんだろ?自分で記憶が無くなる程に治療したかったのは、お前の心か…?」
「あの後、身体から傷が治って痛みが取れても、力が完全に戻っても、恐怖だけが残った…。それに怒りや憎しみも、逃がした事も後悔した。だけど、戻って殺そうとは思わなかった。暴力で屈服させられるのは人としても、男としても悔しい…。ソルジャーのプライドも無かった。理性と感情と行動がバラバラになっていたのかもしれない。僕がそう願った時に、君に抱かれていたなら…どうだったのだろう?わからないな。君に溺れていたのかもしれないね」
「だったら…そうすれば良かったと思えてきた」
 とキース小さく笑った。
「しなくて良かったんだよ…」
 とジョミーがキースの言葉に合わせてくだけた言い方をした。
「キース、君がいつも僕がもっと前から君を好きだと言うのはそういう事があったからなのか?」
「いや、もう、どちらかが先に好きだと思うようになったか?なんて言うのは関係ないのかもしれない。これから築き直そう。それと、これだけは言っておく。俺はお前が俺から離れたいと言っても手を離す気はない」
「……」
「だから忘れろ。俺で、俺だけを見ろ。俺でいっぱいにしてやる」
「今は…溺れたい…君で満たしてくれる?」
 背後からキースは僕を抱き寄せた。


 昔の宮殿を思わせる内装や丁度品がとても豪華だった。
 貴賓室には暖炉があり、僕が寝室から出てくるとキースが火を点けていた。
 そのゆらゆらと揺れるオレンジの火は僕らをとても落ち着かせた。
「僕は君に謝らないといけないよね。僕達が、その…こういう関係なら…。たとえこうなる前だったとしても…それでも…」
「俺はお前がそんな酷い目に遭っていた事に気が付かなかった…同罪だ。すまなかった」
「ごめん…」
「四年も前の事を無理に思い出させて、もう終わっているものに怒った俺を許してくれるか?」
「許すよ。僕の不可解な行動も許してくれるなら」
「許そう」
「ありがとう」



    jealousy 終

      




最新の画像もっと見る

コメントを投稿