君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十七話 「jealousy」1(全三話)

2011-12-25 04:16:17 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十七話

   Epilogue Bridge「jealousy」1(全三話)  
※時間軸が現在に戻ります。
  現在・メサイア襲撃とノアの政変後 
 誰かを好きになればなる程、人は堕ちてゆくのだろうか?
 ヴィーがキース付きとなって、やはり僕は少し複雑な気持ちになった。
 でもそれはメサイアで感じたあの時のように僕をぐらつかせる事はなかった。
 あの頃の僕は…。、
 クローンの彼らと戦う日が来る事を恐れていた。
 だから、キースの中に逃げてしまいたいと、思っていたのだろう…。
 その恐れが悪夢を呼び、僕を彼に落ちるようにと惑わせた。
  あの状況から逃げたくて、連れ出して欲しかった。
 嫉妬という感情は、その対象になりたいと思うから…と言うが、キースの傍にいられる者たちに僕は嫉妬した。
 いつから僕はこんなに弱くなったのだろう。
 いや、僕は強くなどはなかったな。
 あの時、ブルーも言ったっけ…「僕も弱いよ」と。
 僕はキースへの気持ちを自覚した。
 だが、ここ3ヶ月。
 僕達は忙しくて会えなかった。
 でも、それは忙しいからだけではなかった…。

 キースは考えていた。
 「嫉妬」という感情は何だろうと…。
 それは、成り代わりたいと思うものではなくて、ただ、許せない自分がいるのが不思議でならなかった。
 得体のしれないその感情の始まりは、ヴィーから聞いた四年前のジョミーの事、惑星ノアを中心とした誘拐、人身売買事件だった。
 四年前の戦後の混乱期から続く人身売買事件は人間にミュウ因子を植える実験をする為に集めらた。
 誘拐された子供たちだったのだが、ノアの辺境を捜査中だったジョミーがそれに巻き込まれていたとの報告だった。
 護衛官兼捜査官の「ジュピター」として接触したのであれば、犯人を捕まえなくてはならない。
 それを見逃した事は問題だった。
 だがそれより、ヴィーがミュウの力を使って機械的に自白させた部分、捜査中に彼らに助けられたジョミーが拘束され暴行を受けていたという事実。
 ジョミーからはその報告は上がっていない。
「それは彼が彼らの記憶を消しているらしい」との事だった。
 記憶を消す事。
 ジョミーはそれを良しとしていない。
 むしろ、その行為を憎んでさえいるはずだ。
 ヴィーの部隊に見つかった時の報告は受けている。
 報告がされなかった事、記憶を消さなくてはならなかった程の事。 
 彼がそれをしたなら、これは多分…触れてはいけない。
 触れてはいけない…と思うが、その事実を問い詰めたいと思う気持ちが首をもたげる。
 直属の上司だった時代だ、聞く権利はある。
 その頃ジョミーが集めていたものについての事も報告はされているし、その運び屋は捕まり処刑されている。
 ヴィーが独断でジョミーの事だけを何年も隠していたのは、その事実を知っている人間が自分一人だという事と、ジョミーを敵視している彼にしたら、その事件はショッキングだったかららしい。
 誰にも言うに言えずに居たという事だった。
 それを、やっと言えた対象が俺だった。
 それだけの事だ。
 こんな事は気にしなければ何ともない。
 そう思っていたのに、それを知ってからジョミーと会うどころか通信も減っていた。
 今は、ミュウとはトォニィとセルジュが連絡を取っている。
 ノアの政変も収まり、平和だった。
 そんな心の余裕がそう思わせるのだろうか?
 人を好きになればなる程、堕ちてゆくのか?
 俺はジョミーへの気持ちを自覚した。
 今、それが揺らいでいる。
 俺はこんなに弱かったか?
 だが、ここ3ヶ月程。
 俺たちは忙しくて会えなかった。
 でも、それは忙しいからだけではなかった…。

 ヴィーはずっと言えなかった事を言えた事が嬉しかった。
 言ってはいけないと、封印しようとしたのに、自分の中でジョミーの存在が大きくなる度に言ってすっきりしてしまいたかった。
 直接会った時につい話してしまった事を、後から後悔する事となった。
 ジョミーは怒っていた。
 あれはそれを知ってる僕への怒り。
 彼が怖い部分もあったが、僕がその秘密を知っていると、彼とそれを共有してしまったのが怖かった。
 誰にも言わずに、秘密にしていた方がよかったと思った。
 けれど時は戻らない。
 尊敬するキースの部下として移動が決まった事で、四年前にジョミーの上司だったキースに会えた時に思い切って相談をしたら、会えるように時間を取ってくれて、話を聞いてくれた。
 そのことをキースは記録に残す事はせずに自分だけの胸にしまうと約束をしてくれた。
 運び屋がした暴力行為は重罪だ。
 もう処刑されているのでそれ以上罪には問えない。
 だが、僕は今、酷い扱いを受けたのに見逃したジョミーの心理が知りたかった。

 キースがヴィーから話を聞いてから四ヶ月が過ぎた頃、人員が増えた事でジョミーがシャトルを新しくした。
 その報告と礼を兼ねてジョミーがノアへ会いに来た。
 シャトルにはジョミーとソルジャーズのブルーとジョミー、パイロットのシドが乗って来ていた。
 官邸で4人と会い報告を受け、彼らが出てゆくのを普通に見送った。
 ジョミーも公式行事のようにそのまま出ていった。

 俺は何にこだわっているんだ。
 暴行された事を報告されなかったからか?
 それとも、その事実が許せないのか?
 俺がいるのにそんな事になっていた事か?
 だが、俺達がこういう関係になる前の事だ。
 そいつらをジョミーが見逃した事か?
 俺は何にこだわっているんだ。

  ジョミーのシャトル内
「ジョミー。いい?」
 とソルジャーズのブルーが部屋を訪れた。
 部屋にはシドが居てスメール行きの話をしていた。
「ジョミーに話がある」
 と言うと、シドは出ていった。
「あのヴィーってヤツ、殺してこようか?」
 とブルーが言った。
 何故?と聞くと、ジョミーを悩ませてるじゃないか。
 と言う。
「ダメだからね。そういう事をしちゃ、いけないよ」
「でも、邪魔だと思ってるでしょ?」
「邪魔ではないな。彼が関係なくは無いが、でも、これは僕とキースの問題だから。君たちは何もしなくていい」
「キースも変だったよね?」
「……それを言うなら僕もだから、同じなんだ。彼だけではないんだ」
 ソルジャーズたちは何故か僕の心によく反応してくる。
 でもそれは本当に何が起きているのかがわかっているのではなくて、ただそう反応しているだけ。
 …僕の心の深い部分に反応しているだけだ…。
 そう、飼い主とペットのように…。
 卵から孵った雛鳥のインプリティングのように僕に懐いていた。
「ジョミー」
 と操縦室からシドが通信してきた。
「キース・アニアン議長からです。そちらに繋ぎます」
 と僕の部屋に繋いた。
「ジョミー。話しておきたい事がある。時間をくれないか?」
「話の内容をここで聞いて決めるってのは、出来ないよね?」
「直接会って話したい」
「…了解。今から?どこに行けばいい?」
「ここへ」
「わかった。すぐに向かう」
 と通信を切った。
 キースの様子がおかしくなったのは、ヴィーをシャングリラへ連れてきてすぐ、彼がキース付きになってから…。
 僕に言ったあの一言。
「なんで、あいつらには謝ったのに?」
 あれはヴィーが一人で悩み抱えてきたものだったから…きっと、伝わってしまったのだろう。
 あの事に関しては、僕に非がある事ばかりだ。
 病気になってしまった事、捕らえられてしまった事、何も出来ず暴行された事、それなのに僕は彼らを逃がした。
 彼らの境遇に同情したとしても、そうしてはいけなかった。
 僕はミュウの幹部服を脱ぐと、「ジュピター」の黒いスーツに着替えた。
 そして、そのまま、ジュピターとしては禁止されている事をした。
 僕は空港から官邸まで跳んだ。



   続く






最新の画像もっと見る

コメントを投稿