☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十一話
Epilogue Bridge「出会い」4
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
Noah・Shangri-La 現在
三人はナスカチルドレンのトレーニングルームへと向かった。
ジョミーは部屋の真ん中に立って、四方から好きなように攻撃を仕掛けていいと言った。
「銃を使ってもいいよ」
「バカにして」とヴィーがうなる。
ヴィーは後ろにまわり、正確に狙いを定めてから部隊で使っている銃で撃つ。
弾はすべてジョミーの背後のシールドで止まった。
まだジョミーははっきりとしたサイオンを出していない。
今度は、正面に移動し、対ミュウ用の銃で撃つ。
透明だったシールドが青く変わっただけで、前と同じで弾はシールドに当たり、バラバラと床に落ちた。
ジョミーは真ん中に立ったまま、動いてもいなかった。
ヴィーは、ジョミーの間合いに走りこみ至近距離で電撃を撃った。
二人の間で青と黄色のサイオンがはじける。
はじかれて跳んだ場所から、光の玉を作り放つヴィー。
「……」
ジョミーは最初のは手で受け、相殺した。
二つ目は、受け止めてそのままゆっくり押し戻した。
この攻撃で返されたことの無かったヴィーは慌てる。
「…!」
爆発がおきる。
ヴィーの前にはトォニィがいた。
彼を庇ったのだった。
「お前、あんなの作れるんだ。サイオン、イエローなのに?」
と嬉しそうなトォニィ。
「もっと上手く使えるように教えてやる。そしたら、もっとずっと凄いのを出せるようになる」
「…は?…え?」
ヴィーはトォニィが何を言おうとしているのかはわかった。
わかったが、喜びようがわからなかった。
「トォニィ。ヴィーに怪我をさせるなよ。それと、明日も勤務入ってるんだからね」
とジョミーは部屋を後にした。
「わかっているよ。ジョミー」
と元気な返事が返ってきた。
あっけに取られたままのヴィーを残して、トレーニングルームのドアがゆっくりと閉まった。
ヴィーは、思ってた以上の能力だった。
とジョミーは思った。
ミュウとして生まれ、何年もかけて習得するものを彼は三年あまりで覚えたのだ。
でも、攻撃ばかりで防御を知らないのは危険。
きっと、それはトォニィが教えるだろう。
自分のあの反撃は、最初からトォニィが庇うと思っての反撃だった。
しかし、ノアで僕を見つけた彼とこんな形で再会するとは…。
「泣いて謝ったか…」
きっと、ヴィーは全てを聞いてを知っている。
それは過去の自分の軽はずみな行動の結果だ。
彼らを見殺した事、ヴィーに怒りを覚えても…それは間違いだ。
挑発に乗ってしまったな。
ずっと昔に実験室として使っていた部屋の前まで来た。
そこにはもう何もないが、そのドアに手を着くと昔の自分とドール、そしてリオが中で笑っているような気がした。
タイプイエローの戦士。
「ドール…。シロエ。マツカ」
君たちの意思は彼に引き継がれていゆく…。
そして…。彼が、僕たちの代わりに彼を守っていってくれるだろう…。
これは、僕の我がままだ。
僕の代わりなんていらない。
僕らタイプブルーはもういらない。
トレーニングルーム
ヴィーはトォニィの教え方の的確さに驚いていた。
自分の癖や不備な所を見抜いて丁寧に教えてくれる。
伸びていく実感があった。
でも、彼はやはりソルジャーの名を持つものだけあって、持久力が全然自分とは違っていた。
俺はすぐにエネルギー切れになってしまった。
なので、話がしたいと訓練を中断することになった。
「ヴィー、気になってる事があるけど、お前、ジョミーを敵視してるんじゃない?」
「敵視なんてしていない」
「お前がキースを尊敬しているのはセルジュから聞いて知ってた。でもそれで、ジョミーを敵視しているのか?」
「ジョミーを敵だと思っていない」
「キースとミュウの敵同士だった。その図式のままだと思っているなら、それは良くない。あ…、全部が良くないと言い切れないか…お前にも事情はあるよな…。だったら、ソレ、僕に向けたら良い」
「……」
ずいぶんストレートに言ってくるヤツだとヴィーは思った。
「ミュウになって、俺は、あいつ、ジョミーと…。似ていると長い間思ってきた。こうして会っても、それは変わりはない。だけど、あいつは何なんだ」
「気に入らない?」
「どうも面白くないだけだ」
「ジョミーはいつもああだよ。いきなり君をここに連れて来たりしてさ。君の能力を見たら僕が嬉しがるってだけなのかもしれないけど…ね」
「嬉しい?俺みたいのは珍しいのか?」
「珍しいし、楽しいよ。この先、多分、タイプブルーはもう生まれない。だから、強いミュウは珍しいし、僕は嬉しい。僕はジョミーに言わせると、君と同じで好戦的だからね」
と笑った。
自分の存在を、嬉しいとはっきり言うトォニィの言葉にヴィーは少し照れた
「あ…あいつは違うのか?」
「違うよ。ジョミーは戦いは嫌いなんだと思う。でも戦い続けている。そういう所すら、本当に肝心なことを全然僕に言ってこないんだ。だから、僕も面白くないよ」
「心酔してるって聞いたけどな」
「心酔ねぇ…。そう。とても尊敬してる。大好きなんだ。だけど向こうは、それを考えてくれていない。僕の想いは一方通行なんだ。僕が心配するのも要らないと言ってくる」
「心配も?…変なヤツだな。それでやってゆけるのか?」
「ジョミーは他の人が自分を心配する事すら、痛みに変わってしまうのだと思うよ。まぁ、前はそこまで頑なでも無かったんだけどね。今は…ミュウはもう僕が引き受けているし、好きにして良いってなったら、色々と悩みだしちゃったみたいだ。今までジョミーが背負っていた荷が大き過ぎだったからね」
「戦争になった歴史は知ってる。でも、もう六年になるじゃないか」
「それは、六年が長いか短いかは人それぞれだよ。だからさ、ジョミーの事を、敵視するの止めれない」
とトォニィはにっこり笑った。
なまじ美形なだけにトォニィの笑顔は迫力がある。
「…あの」
「君のその気持ちはなんなの?」
「え?気持ちって?」
「敵視する根本は嫉妬?」
どこまでもストレートなヤツだな。こいつは。とヴィーは思った。
「嫉妬なわけない…」
「ふーん。そう。君がさっき言ったように、ジョミーの生まれも育ちも、なんとなく似てるとこも反発する理由なんだろうけどさ。一番は、君の好きなキースがジョミーといる事も気に入らないのが一番の原因かと思ったんだけどな」
「お、俺の…心を読んだのか?」
とヴィーは立ち上がった。
「あ?図星だった?読んでなんかいないよ。僕はそういうの嫌いだから」
「だけど、図星って!」
「あのさぁ、尊敬してるのはわかるけど、一体、キースのどこがいいの?」
「僕を抜擢してくれたし、立派な人物じゃないか。ノアを救った英雄だ」
ヴィーは座りなおした。
「あぁ、先の反乱ね。マスコミに踊らされてるってそれ」
フィズの存在を公表できないので、昨年のノア上空での戦いはただの反乱で、その戦いにはミュウも参戦したというだけになっていた。
ミュウの中では、二人のソルジャーが星を救ったと言われているが、人類の方にはそこまでわかっているのは少なかった。
「それに、君をキースに推薦したのはセルジュだろう?ん、まぁ、いいか。君はノア出身だし、昨年の事件で急にって感じじゃないし…、彼もノアに関してはいろいろやってきてるようだからね。キースが好きなミュウってのが居ても、良いんじゃない」
トォニィは笑いながら、僕は面白くないけどね。とつけ加えた。
「あのさ、ヴィー。結論で言うと、意外な事に僕は君が気に入った。だから、やっぱりジョミーにちょっかい出さないで欲しい。でも、さっきのジョミーの態度も良くないと思うよ」
どこまで、ストレートなんだよ。とヴィーは思った。
このミュウの長は俺と同じくらいの歳だと聞く、そんな立場を無視して言ってくる。
「お前が言ったように、能力で仕事をしている俺は、きっとお前達と和解するべきなんだろうけど…ジョミーの事だって…よくわからないけど。俺は…別に彼が嫌いでそう思っているんじゃないと思う」
とヴィーは言葉を選びながら言う。
「いいって。利害関係でなら僕らと仲良くするのがいいけど。今はね。それだけで良いさ。急には無理だし。あ、そうだ、僕。セルジュと友人だから。あいつの事が気に入らなかったら、それも言ってきていいよ」
とトォニィは笑った。
ヴィーも思わずつられて笑った。
でも、いくら、えらそうな態度をとってしまう自分でも。
そうも、上官の事を言える訳ないと思うヴィーだった。
続く
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十一話
Epilogue Bridge「出会い」4
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!
Noah・Shangri-La 現在
三人はナスカチルドレンのトレーニングルームへと向かった。
ジョミーは部屋の真ん中に立って、四方から好きなように攻撃を仕掛けていいと言った。
「銃を使ってもいいよ」
「バカにして」とヴィーがうなる。
ヴィーは後ろにまわり、正確に狙いを定めてから部隊で使っている銃で撃つ。
弾はすべてジョミーの背後のシールドで止まった。
まだジョミーははっきりとしたサイオンを出していない。
今度は、正面に移動し、対ミュウ用の銃で撃つ。
透明だったシールドが青く変わっただけで、前と同じで弾はシールドに当たり、バラバラと床に落ちた。
ジョミーは真ん中に立ったまま、動いてもいなかった。
ヴィーは、ジョミーの間合いに走りこみ至近距離で電撃を撃った。
二人の間で青と黄色のサイオンがはじける。
はじかれて跳んだ場所から、光の玉を作り放つヴィー。
「……」
ジョミーは最初のは手で受け、相殺した。
二つ目は、受け止めてそのままゆっくり押し戻した。
この攻撃で返されたことの無かったヴィーは慌てる。
「…!」
爆発がおきる。
ヴィーの前にはトォニィがいた。
彼を庇ったのだった。
「お前、あんなの作れるんだ。サイオン、イエローなのに?」
と嬉しそうなトォニィ。
「もっと上手く使えるように教えてやる。そしたら、もっとずっと凄いのを出せるようになる」
「…は?…え?」
ヴィーはトォニィが何を言おうとしているのかはわかった。
わかったが、喜びようがわからなかった。
「トォニィ。ヴィーに怪我をさせるなよ。それと、明日も勤務入ってるんだからね」
とジョミーは部屋を後にした。
「わかっているよ。ジョミー」
と元気な返事が返ってきた。
あっけに取られたままのヴィーを残して、トレーニングルームのドアがゆっくりと閉まった。
ヴィーは、思ってた以上の能力だった。
とジョミーは思った。
ミュウとして生まれ、何年もかけて習得するものを彼は三年あまりで覚えたのだ。
でも、攻撃ばかりで防御を知らないのは危険。
きっと、それはトォニィが教えるだろう。
自分のあの反撃は、最初からトォニィが庇うと思っての反撃だった。
しかし、ノアで僕を見つけた彼とこんな形で再会するとは…。
「泣いて謝ったか…」
きっと、ヴィーは全てを聞いてを知っている。
それは過去の自分の軽はずみな行動の結果だ。
彼らを見殺した事、ヴィーに怒りを覚えても…それは間違いだ。
挑発に乗ってしまったな。
ずっと昔に実験室として使っていた部屋の前まで来た。
そこにはもう何もないが、そのドアに手を着くと昔の自分とドール、そしてリオが中で笑っているような気がした。
タイプイエローの戦士。
「ドール…。シロエ。マツカ」
君たちの意思は彼に引き継がれていゆく…。
そして…。彼が、僕たちの代わりに彼を守っていってくれるだろう…。
これは、僕の我がままだ。
僕の代わりなんていらない。
僕らタイプブルーはもういらない。
トレーニングルーム
ヴィーはトォニィの教え方の的確さに驚いていた。
自分の癖や不備な所を見抜いて丁寧に教えてくれる。
伸びていく実感があった。
でも、彼はやはりソルジャーの名を持つものだけあって、持久力が全然自分とは違っていた。
俺はすぐにエネルギー切れになってしまった。
なので、話がしたいと訓練を中断することになった。
「ヴィー、気になってる事があるけど、お前、ジョミーを敵視してるんじゃない?」
「敵視なんてしていない」
「お前がキースを尊敬しているのはセルジュから聞いて知ってた。でもそれで、ジョミーを敵視しているのか?」
「ジョミーを敵だと思っていない」
「キースとミュウの敵同士だった。その図式のままだと思っているなら、それは良くない。あ…、全部が良くないと言い切れないか…お前にも事情はあるよな…。だったら、ソレ、僕に向けたら良い」
「……」
ずいぶんストレートに言ってくるヤツだとヴィーは思った。
「ミュウになって、俺は、あいつ、ジョミーと…。似ていると長い間思ってきた。こうして会っても、それは変わりはない。だけど、あいつは何なんだ」
「気に入らない?」
「どうも面白くないだけだ」
「ジョミーはいつもああだよ。いきなり君をここに連れて来たりしてさ。君の能力を見たら僕が嬉しがるってだけなのかもしれないけど…ね」
「嬉しい?俺みたいのは珍しいのか?」
「珍しいし、楽しいよ。この先、多分、タイプブルーはもう生まれない。だから、強いミュウは珍しいし、僕は嬉しい。僕はジョミーに言わせると、君と同じで好戦的だからね」
と笑った。
自分の存在を、嬉しいとはっきり言うトォニィの言葉にヴィーは少し照れた
「あ…あいつは違うのか?」
「違うよ。ジョミーは戦いは嫌いなんだと思う。でも戦い続けている。そういう所すら、本当に肝心なことを全然僕に言ってこないんだ。だから、僕も面白くないよ」
「心酔してるって聞いたけどな」
「心酔ねぇ…。そう。とても尊敬してる。大好きなんだ。だけど向こうは、それを考えてくれていない。僕の想いは一方通行なんだ。僕が心配するのも要らないと言ってくる」
「心配も?…変なヤツだな。それでやってゆけるのか?」
「ジョミーは他の人が自分を心配する事すら、痛みに変わってしまうのだと思うよ。まぁ、前はそこまで頑なでも無かったんだけどね。今は…ミュウはもう僕が引き受けているし、好きにして良いってなったら、色々と悩みだしちゃったみたいだ。今までジョミーが背負っていた荷が大き過ぎだったからね」
「戦争になった歴史は知ってる。でも、もう六年になるじゃないか」
「それは、六年が長いか短いかは人それぞれだよ。だからさ、ジョミーの事を、敵視するの止めれない」
とトォニィはにっこり笑った。
なまじ美形なだけにトォニィの笑顔は迫力がある。
「…あの」
「君のその気持ちはなんなの?」
「え?気持ちって?」
「敵視する根本は嫉妬?」
どこまでもストレートなヤツだな。こいつは。とヴィーは思った。
「嫉妬なわけない…」
「ふーん。そう。君がさっき言ったように、ジョミーの生まれも育ちも、なんとなく似てるとこも反発する理由なんだろうけどさ。一番は、君の好きなキースがジョミーといる事も気に入らないのが一番の原因かと思ったんだけどな」
「お、俺の…心を読んだのか?」
とヴィーは立ち上がった。
「あ?図星だった?読んでなんかいないよ。僕はそういうの嫌いだから」
「だけど、図星って!」
「あのさぁ、尊敬してるのはわかるけど、一体、キースのどこがいいの?」
「僕を抜擢してくれたし、立派な人物じゃないか。ノアを救った英雄だ」
ヴィーは座りなおした。
「あぁ、先の反乱ね。マスコミに踊らされてるってそれ」
フィズの存在を公表できないので、昨年のノア上空での戦いはただの反乱で、その戦いにはミュウも参戦したというだけになっていた。
ミュウの中では、二人のソルジャーが星を救ったと言われているが、人類の方にはそこまでわかっているのは少なかった。
「それに、君をキースに推薦したのはセルジュだろう?ん、まぁ、いいか。君はノア出身だし、昨年の事件で急にって感じじゃないし…、彼もノアに関してはいろいろやってきてるようだからね。キースが好きなミュウってのが居ても、良いんじゃない」
トォニィは笑いながら、僕は面白くないけどね。とつけ加えた。
「あのさ、ヴィー。結論で言うと、意外な事に僕は君が気に入った。だから、やっぱりジョミーにちょっかい出さないで欲しい。でも、さっきのジョミーの態度も良くないと思うよ」
どこまで、ストレートなんだよ。とヴィーは思った。
このミュウの長は俺と同じくらいの歳だと聞く、そんな立場を無視して言ってくる。
「お前が言ったように、能力で仕事をしている俺は、きっとお前達と和解するべきなんだろうけど…ジョミーの事だって…よくわからないけど。俺は…別に彼が嫌いでそう思っているんじゃないと思う」
とヴィーは言葉を選びながら言う。
「いいって。利害関係でなら僕らと仲良くするのがいいけど。今はね。それだけで良いさ。急には無理だし。あ、そうだ、僕。セルジュと友人だから。あいつの事が気に入らなかったら、それも言ってきていいよ」
とトォニィは笑った。
ヴィーも思わずつられて笑った。
でも、いくら、えらそうな態度をとってしまう自分でも。
そうも、上官の事を言える訳ないと思うヴィーだった。
続く