君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十二話 「出会い」5(全五話) 

2011-12-18 02:47:29 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十二話

   Epilogue Bridge「出会い」5(全五話)  
※この章は流血もBLもあります。時間も飛びます。ご注意を!

 Noah・Shangri-La 現在
 二人の練習が一息ついた頃に、二人はジョミーから呼ばれた。
「ジョミー。こいつ、飲み込みが早いよ。教えてて楽しい」
 と本当に楽しそうにトォニィは言った。 
「そう。良かった」
「ヴィー、君は大丈夫だった?体、無理してない?」
「え…いえ。どこも…大丈夫です」
 さっきまでの事を思うと返事がしにくかった。
「最近、トォニィは外交で疲れ気味だったから、良い気分転換になればと思った。ありがと。急に変な事につきあわせちゃったね」
「いえ…俺も色々教えてもらえたので…」
「そうか、なら良かった。それじゃ、庭に行こう」
 と、ジョミーが歩き出した。

「あ、待って…」
 ヴィーが声をかける。
「待って…ください」
 ヴィーのその表情を見て、トォニィは先に行くねと言いながら庭園に向かって行った。
「何?」
「あ、あの…さっきの事、ノアでの運び屋の事ですが…。俺は誰にも言っていません。あの頃、あの部隊にミュウは俺一人で、機械にかけたのは皆も知っていますが、あなたと彼らの事は俺しか知りません。でも、見たっていってもごく一部で…ずっと気になっていて…あんな事を言うつもりは無かったんです。直接会っても聞くつもりなんて…全然、本当に全然無かったのに…」
「きっと、君には疑問がいっぱいあって…僕を見る度に辛い思いをしていたのだろうね。僕が今、君に言えるのはこんな言葉でしかない…あの時の事は、本当にごめんね」
「…あ…いいえ…俺が悪いんです…」
 謝られた。
 俺は謝れと言っていた。
 それが叶った。
 だけど、なんで、こんなに胸が痛くなるんだ?
「…つっ…」
「…ヴィー、トォニィが待ってるよ」
 と歩き出す。
 ヴィーは泣きそうな顔でついて来た。
「あ、ジョミー。さっき…誰にも言ってないって言いましたが…キース議長には転属の時に話して…います。すみません…」
 ジョミーの後に続きながら、急に思い出したようにヴィーが言った。
「ん、そう。それはかまわないよ。大丈夫だから…」
「……」
「そんな事より、ヴィー。君の最初の疑問に答えよう」
 と言い、ジョミーは庭園に入って行った。

  シャングリラ(庭園)
「トォニィ、お待たせ。君も知りたいと思っているだろう。僕がノアで集めていたのは、これだよ」
 とジョミーが言った。
 ジョミーは胸にしまったものを取り出した。
 幅五センチくらいの黒い水晶のような塊が、彼の右手の上に浮いていた。
「これは人類の記録の断片。でもこれはもう古すぎて解析も出来ない。人類には用も何も無くなった物。グランド・マザーの基盤になっていたコンピューター・テラの中に残されてた物だ。僕はそれのある部分を切り取ってきた」
 それって犯罪じゃ…。
 と言いかけたヴィーをトォニィが止める。
「これには僕たちミュウの起源が書かれているんだ」
「僕たちの…?」
「でも、この記録はもう古くて人類には解析が出来ない。ただの数列の塊さ」
 と言って両手を閉じる。
 意味の無い物と言いながらも、大事そうにジョミーはそれを胸にしまった。
 青く光りそれはジョミーの中に消えていった。
「でも、人類の物だよ…」
 とヴィーが言った。
「持ってても、人では何も出来ないし意味はないと言っただろ」
 とトォニィが言う。
「あ、それって…ジョミー。ミュウなら出せるかも?って事だよね?」
「そうだけど、やってもバラバラ過ぎて、答えが出ないんだ」
「ジョミーがテラズナンバーを巡っているのはそれのせいだったの?」
「うん。まだ情報が足りない。月へ行くべきかも…」
「月?」
 ちょっと不安げな表情を浮かべたジョミーは顔を上げて言った。
「ああ、いや…。ねぇ、トォニィ。僕たちがミュウと呼ばれる意味は知ってるよね?」
「突然変異(ミュータント)だからでしょ?」
「そう。けれど、それすら作られたものだとしたら…どう思う?」
「僕たちが作られた?この前のノア政変で、人間にミュウ因子を植え付けるのが出来なくて失敗したから、クローンを作ったんじゃないの?人間からミュウを作るなんて無理なんじゃ…」
「でも、もし、そうやって作られたのなら、僕たちは人間から作られた別物。それでも、根幹は人間…僕たちは人間だって事になるよね」
「だけど、それじゃ。突然変異で生まれたより…酷いじゃない?」
「そうだね。でも、今は、その可能性もあるって言っただけだよ」
「人類は僕達を勝手に作っておいて変なのが出来たから、抹殺しようって事だよね」
「…そうなるね…」
「あ、あの。これって俺は聞いてていいのかな?」
 ヴィーは公表されていないクローンの事は知らなかった。
「ん、君がイヤなら…負担になるなら…。忘れさせようか?」
 とジョミーが言った。
「いいえ。誰にも言いませんから、聞いてていい…で…すか?」
「…君は…」
 と、じっと、ヴィーを見るジョミー。
「?」
 そして、ジョミーはにっこりと笑うと、
「聞いてていいよ。知りたいだろう?」
 と言った。
 そのまま、二人はまたミュウの起源の話をしていた。
 俺はさっきの「君は」の続きが気になっていた。
 彼は何を言おうとしたのだろう。

 やがて、会議の行事がすべて終了した。
 トォニィはメサイアへと戻る事になった。
 ジョミーもスメールへ戻ってゆく。
 キース議長付きになった僕は彼らを見送った。
 二つの白い船体が別方向に進んでいった。

「ヴィー、君はシャングリラに行ったと聞いたが」
 とキースが聞いた。
「はい。ソルジャー・トォニィが色々と戦い方を指導して下さいました」
「そうか。それは良かったな」

 マツカ、お前がもし今、生まれていたら、彼のようになったのだろうか?
 この世に「もし」はないが…。
 もし、あったとしたら、今頃、俺達はどうしていたのだろうな…。



    「出会い」 終




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