君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 四章「心のままに」十八話 「jealousy」2(全四話)

2011-12-26 01:35:47 | 『君がいる幸せ』本編四章「心のままに」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 四章「心のままに」(短編集)十八話

   Epilogue Bridge「jealousy」2(全三話)  
※時間軸が現在に戻ります。
   現在・首都星ノア
 官邸のビルに入りエレベーターで最上階まで上がる。
 ここまで来るとドーム都市の天井が近くに見えた。
「前より緑が増えた気がする…」
 二年程前までは、このビルは僕の勤務地の一つだった。
 あの頃、キースは再び人類の代表になる活動をしていた。
 僕は、ジュピターとして彼に付いて世界を周りながら、共生都市計画を進めつつ、人類とミュウの謎を追っていた。
 それは「ジュピター」だった頃の事。
 今は「ミュウの前ソルジャー」の政治活動の方が多かった。
「……」
 静かに緊張が上がってくる。
 この気持ちは何だろう?
 …わかっている。
 僕は我がままだ。
 彼を失いたくないと思っている…。
 僕は「ジュピター」なのか?
「ジョミー」なのか?
 悩む事はない…どちらも僕だ。
 だけど、今、僕は引き裂かれる程、胸が痛かった。
 エレベーターを降りると正面に大きなドアがある。
 その前でキースが待っていた。
「その服で来たのか…」
 とキースは言った。
「ジュピターと呼んでいいですよ」
 僕はまっすぐにキースを見て答えた。
 部屋に招かれた僕は応接セット横にある長いすに座った。
 ジョミーの座った長いすの横に立ったまま、外を眺めるキース。
 二人の間に沈黙が流れた。
「らしくないな…」
「俺もお前も…」
 とキースが言った。
「僕を断罪しますか?」
「何故呼んだのかは、気付いてるようだな」
「はい…」
「断罪か…それはしない。彼らはもう処刑されている。それに、引鉄はノアで起きた兵らの暴走行為が原因。各地での虐殺事件は我々政府の問題でもある。行方不明の人々はミュウの因子の実験の被害者だったのだったと今はわかったが、それを調べもせずに即、ミュウとして処分としたのは明らかに政府の落ち度だったんだ。あの頃、実験施設を探る為に重要な事は全て政府が握っていて、ノアの行政には明かしていなかった。その所為だ。彼らはその被害者だったと聞いた。住んでいた地区を兵士に焼かれて運び屋になったと聞いたが…」
「その通りです。僕は直接彼らから聞きました。でも、彼らは犯罪者。僕は彼らの罪を知っていながら逃がした」
「それは、事情があったのだろう?」
「いえ…単なる同情です…」
「お前は裁いて欲しいのか?お前は、俺の元で働いていても部下ではなかった。ましてや、軍人でもない。軍規で裁くことは出来ない」
「それでは、キース。君が…裁いて」
「……」
「僕がした事を君が裁いてくれればいい」
 何も言わないでいるキースにジョミーは催促するように言った。
 キースはジョミーの真意が図れなかった。
「俺はそんなに詳しく知ってはいない」
「そう?…なら、僕が話そうか?」
「…覚えているのか?」
「ミュウの記憶は忘れているような事でも、自分を辿れば見えると言ったよね?」
「…ああ、そうだったな…」
 ちょっと待っててと言うとジョミーは目を閉じた。
 ジョミーは記憶を手繰りだした。
 キースはジョミーを見ていたが、何かに気付いて目を逸らす。
 そして、
「やめろ」と言った。
 ジョミーが静かに目を開ける。
「もう…思い出さなくていい」
「どうして?」
「辛い事など思い出さなくてもいい」
「…辛かったかどうかなんてわからないじゃないか…」
「辛くない訳が無いだろう?」
「……」
「お前は今、自分がどんな顔をしていたかを、わかっているのか?」
「……!」
 ジョミーは今までキースを見ていたのをやめて目を部屋の奥の方を向けて、考え込んだ。
 四年前の事なんかより、今が辛い。
 でも、僕達はこれを越えなくてはいけない。
 何かをさらけ出し何かを掴むんだ。
 それは、無傷では得られない。
 流してはいけない。
 だけど…何故そう思うのだろう?
「辛くなかったと言ったらどう思う?」
「何に意地をはっている?到底、信じられない事だろう?」
 ジョミーは戦闘中にするようなため息とも深呼吸とも取れるような息をついた。
「…では、キース。君は何故、直接会って話したいと言って僕をここに呼んだ?」
「…それは」
「何が…知りたかったんだ?」
「ジョミー」
「知りたいのは真実。起きたすべて。でしょう?」
「……」
「…だから僕が話す…それで決めて」
 どうして話さないといけない?
 そんな事はしたくない。
 彼らから僕が消した記憶が引き出された。
 ヴィーがキースに伝えた。
 そんな誰かから聞かされた事ではなく。
 キースには僕から本当の事を話すべきだと思った。
 それで、どういう結果になるのかはわからない。
 それでも、僕から真実を伝えなくては……。
 けれど、言いたくはなかった。
 静かにジョミーが話し始める。
「君の知っている通り僕は、コンピューター・テラの欠片をノアで探していた。調べた結果、ある岩山にあるとわかったので、僕はそこに向かって砂漠をシャトルで横断していた。その途中で砂嵐に遭った。それがおさまった時に僕は外に出たんだ。長い時間そこにいた訳でもなかったが、僕は砂漠の熱砂にやられてしまった。ここまでは事後だったが報告はされていると思う。熱砂が過ぎた後、僕は意識を失った。そこに通りかかったのが彼等だった。僕は彼らに助けられた」
 ここまで一気に話すと、ジョミーはまた一つ大きく息をついた。
「…ここからは、僕は酷い発熱と頭痛でちゃんと物事が考えられない状態だったから、曖昧な部分があるかもしれない…」
 ジョミーは長いすの上に両足を上げ膝を抱えた。
 そして一つ一つ思い出すようにゆっくりと話した。
「助けられて気が付いた時には、頭痛だけが残っている状態だった。だが、その頭痛の所為で、意識が集中出来なくて力も使えなかった。力が使えなかったのは頭痛だけじゃなくて、僕が気を失っている間に打たれた注射の所為もあった…。シャトルが上にいるのはわかっていたが、そこに跳ぶ事も出来なかった…。シャトルからの攻撃も対戦艦しか想定してなかったから無理だった…。僕の首には首輪がつけられていて、力を使わない普通の腕力ではそれをどうする事も出来なかった。僕が気が付いてすぐに男が二人部屋に来て…。僕は殴られて…動けなくなった」
 記憶を手繰った時と同じように眉間にしわがよる。
「…彼らに僕に注射を打った。それは、その注射は催淫剤だったんだ。力も使えず、シャトルにも跳べなくて、頭痛で動けないだけじゃなくて満足に話せもしないから、いつもみたいに言葉で黙らせるのは…到底無理だった…」
 ここから先は…と言葉に詰まる。
「…その後は、彼らに暴力的に…弄ばれたとしか…言えない」
「ジョミー」
 と、ずっと黙っていたキースが声をかける
「その上着を脱げ」
「……」
 無言でジョミーは上着を脱ぐ。
 キースはジョミーの腕を掴み立たせ歩き出した。
 ジョミーを半分引きずるようにしてどんどん奥に歩いて行った。
 いくつもある会議室を過ぎた先に、要人用の部屋があった。
 応接間を通りその二つ先に寝室がある。
 ドアを開け中に入る。
 そのドアを閉めずにキースは、そこまで強引に引っ張ってきたジョミーをベッドに投げた。
 そしてその静かな瞳のまま、
「何故そうなったのか言えないのなら、ここで再現をしてみろ」
 と言った。
「…!…」
 その言葉をジョミーは信じられなかった。
 さっきの説明だけで自分には精一杯なのはキースもわかっている。
 なら、何故?
 何をどう知りたいんだ?
 記憶を再現して見せろと言うのか?
 ベッドの上で、投げられた状態のまま睨み続けた。
 キースもただ見下ろしてくるだけだった。
 自分で説明すると言ったのに、途中で言えなくなったのは僕だ。
「女のように泣き喚いて犯されたのか?」という言葉が浮かんだ。
 これはヴィーがシャングリラに来た時、
「泣いて謝ったんだろ?」と同時に彼の心に浮かんだ言葉だった。
 あの時、ヴィーの中には僕に対する蔑むような感情と興味本位の部分が見えた。
 もちろん、ヴィーとキースは同じではないが、今はそれに近いような気がしていた。

 怒りと屈辱で手が震えた。
 それをグッ握り締めて打ち消し、ジョミーはゆっくりとネクタイを外した。
「人は…弱い…。人の世界が上下関係で成り立っているのならば、弱いものは…」
 靴と靴下を脱いで床へ落とす。
「絶対的な支配の前には何も出来ない…」
 シャツのボタンを一つ一つ外してゆく、
「…僕はそれを知った…」
 すべて外し終えた。
「人は生きる為なら自分すら捨てられる」
 そう言うと外したネクタイを手に取りキースをまっすぐ見つめ、
「これで、僕の目を、見えないように縛って…」
 と言った。
 キースは無言でベッドに上がり、細身の柔らかく光沢のある黒いネクタイを受け取り言われたままジョミーの目を隠した。
「なぜ目を?」
「…君に僕の記憶を見せる方が僕には簡単なんだけど…、今はそれすら…したくない。だけど、言葉も出てこない…。それでも、再現なんて無理だ。ならもう、諦めて話すしかない。目隠しをしたのは、僕が君を見ないようにしたんだ。これから話す…僕の話を聞く君の顔を見たくない…」
 僕が彼を必要だと思うならなおさら、目の前にキースは居ないと思わないと、話せない。
 それは、多分、僕の話を顔色一つ変えず、眉一つ動かさずに聞く事などキースには簡単に出来るだろう。
 僕がそんな彼を見たくないだけだった。
「ジョミー。もう、何も言うな…。どこまで意地をはれば気が済むんだ」
 キースは右手でジョミーの肩を掴んだ。
「意地じゃない…」
「俺は、今回の事は、二人が会えばそれだけで簡単に済むと思っていた。お前に会う決心がついた自分だけに満足していた」
「……」
「お前はきっと弁解してくるだろうと思っていた。まさか自分で説明をするなんて言うとは、思ってもいなかった。俺は事件の断片しか知らない。ヴィーも全部は知っていない。俺は、本当に会えば済むと思っていたんだ…。薬や暴力で言う事を聞かざる負えなかったお前の気持ちなど微塵も考えていなかった。ただ俺を納得させる為に弁解してくるだろうと思っていた。俺達の関係なら当然そうだろうとしか考えてなかった…」
「……」
 キースは掴んでいた手を離し言葉を続ける。
「さっき、俺はお前が説明すると言った時に、下卑た男に成り下がった。お前がそいつらの前でどんな顔をしたのか、どんな事をして、どんな声を上げたのかが、知りたくなったんだ…」
「……」
 ジョミーはただ下を向いて黙ったままだった。
「その時、俺がお前に会えなくなった理由がそこにあったと、わかった。俺は最低だ」
「……」
 まだジョミーは何も言わなかった。
「再現しろなんて言うつもりはなかった」
「…再現したら、殺してた?」
「君は僕を殺すつもりでここに呼んだだろ?」
「……」
 キースはまだ言葉でこの場を収めてしまおうとする自分を感じた。
 そう、俺はジョミーを殺そうと思ったのだ。

 愛しすぎると感情は憎しみに変わるものなのか?


   続く


※ノアでの事件は隠部屋にあります。
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