君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十八話

2011-11-11 01:52:37 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

   十八話 現在  
 戦艦ゼウス キースの部屋
「シャトルが撃ち落されなくてよかったな」キースは冷たく言った。
「普通に飛んできたから…ね…」
「能力で飛んでたら即撃ち落されてたかもな」
 急速接近するシャトルに一時戦闘(スクランブル)状態になったゼウスだった。
 二人はテーブルを挟んで向き合って座っていた。
 ジョミーの後ろにはソルジャーズがいる。
「……」
「で、急用でもないのに、何をしに上がってきた?」
「……」
 ジョミーは答えなかった。
「あんたに会いくなったからだよ」ブルーが言う。
「わー!ダメだってば」とブルーをおさえるソルジャーズのジョミー。
「ごめんなさい」彼はブルーを無理やりひっぱり出ていった。
 ドアが閉まるのを見届けてから、
「ブルー、声が低くなったな」キースが言う。
「最近、声変わりしてきたからね。ますます似てきたかな」
 ジョミーは彼らが出て行ったドアを見たまま答えた。
「それで、ブルーが言った事は本当か?」
「うん。そうだな…認めるよ。会いたくて来たんだ」
 ジョミーはキースの方を見ながらゆっくりと返事をした。
「それだけで、来たのか?」
「……」
「バカだな、おまえ」キースはため息をついた。
「後、何時間かで会えるだろうに…」
 ゼウスは式典の後、各地を回ってノアに戻る前にメサイアに寄る事になっていた。
 僕もそれは十分承知していた。
 だが、僕はゼウスが到着する頃には、メサイアを出発する予定になっていた。
 出来れば会いたいなと思っていたのは確かだけど、たとえトォニィ達にのせられたとしても、こんな行動を取ってしまった自分が恥ずかしかった。
「会いたかったんだから!いいじゃないか!」と心の中で言ってみた。
 情けないが、言い訳すら出てこなかった…。
「……」
「いつも、そう素直で大人しかったら、何年もかかる事はなかったのにな」
「え?」
「お前が俺を好きだと自覚してから今日みたいに本音が出るまで何年かかっていると思っている?」
「自覚って…メサイアでの事?」
「素直に俺に会えて嬉しいと言ってただろう?俺の事を好きだったとも。だけどお前が俺を意識するようになったのはもっと前だと思っている」
「……」
「お前はいつからだと思う?」
「…わからない…」
 キースが真正面からじっと僕の目を見て話すので、彼の前に、尋問を受けるような形で椅子に座らされているのが、苦痛になってくる。
 しかし、よくそういう事を平気な顔で言えるなと、キースは照れるってないのか?と思った。
 この機械人間!
 僕は下を向いていた顔を上げて、キースの目を見返して言い返した。
「確かにメサイアで僕は好きだって言ったけど、キースからは何もなかったじゃないか」
「言っている」
「いつ?」
「月に行った後だったか…」
「え?…あ…」

『お前は俺を好きになればいい』

「あれは、冗談だと思ってた…」
「好きだと気づくまで何年もかかって、自覚しても行動に出るまで二年か…。それで、まだ何年もかかるのか?」
 その言い方にカチンとなるジョミー。
「じゃあ!キースはいつから、僕を好きになった?」
「俺はナスカでも、地球でも、敵としか見ていなかった。助けられてからも、余計な事をしてくれたとしか思ってなかったな…」
「…助けてごめん」 ぼそりとジョミーが言った。
「そこでお前が謝る必要はない。言いたい事は違うだろ?言葉をとめるな。そこで切るんじゃない。言いたい事はすべて言え。受け止めるから、俺はそんなやわじゃない」
 ここまでこんな風に来てしまい、僕の感情が不安定に露になってて隠せてない今だから…。
 キースは僕から全てを吐き出させるつもりなんだと感じた。
 今の心のままに全部出してしまおう…と覚悟を決めた。
「…わかった。僕は君を、地球で助けた事を後悔はしていない。だから謝らない。」
「そうか」
「あの時は、僕も死ぬと思った。だけど…助かる可能性があるのならそれに懸けてみようと。地の底で、君を助ける事が僕も生きる事に変わったんだ。もう駄目だと諦めた時、君に触れたら「命の音が聴こえてきた。それで、諦めずに地上まで上がれたんだ。君が僕を助けた。だから謝らない」
「俺はお前を責めてはいない。意識が戻った時に礼は言っている。あれは本心だ。今も感謝している。俺はあの日でやっと人間になれた気がした」
 キースは少し優しい目をした。
「キース」
 彼にあらためてそう言われると、あの時の死にそうな思いや死んでいった仲間たち。僕たちを押し上げてくれた幾多の人々の想いが報われる気がした。
 キースは言葉をつづけた。
「地球で、お前の覚悟と優しさを知った。きっかけはシロエだったのかも知れないが…、ビルレストで暮らしている間は、危なっかしいやつくらいにしか思っていなかった。月日が経つ内に、俺の中でわだかまっていた「月」を教えないといけなくなった。だが、何故だか教えられなかった。そこが自分でも不思議だった。月にはブルーがいる。だから、言えなかったのだと俺は気がついた。あれは嫉妬だったのかもしれない…。正面からお前を見るようになったのは月を教えた時からだ」
「月を…」
「上手く言えないが、あの時、月でお前を守るのが俺の役目みたいに思った」
「守る?」
「能力が強い弱いじゃない…。お前はどこで何をしてても自分を捨ててる気がして」
「僕はちゃんと生きてるよ」
「そうだな、今はな…」
 キースは、一度目を伏せてから、あらためて僕を見つめ直した。
 彼の目は「さあ、まだ言いたい事を言え」と言っていた。
 そんなキースの行動に言葉がつられて出てくる。
「…確かに僕は月で…変だったかもしれない。月に着いてから、何もかもがどうでもよくなってた。地球も月も、人もミュウも。すべて…。僕は何故死ななかったのだろう?とそればかり…何の為に生き延びているのだろう?とそう、すごく死にたがっていた」
「月でブルーを見て生きていこうと思ったのか?」
「ううん…ブルーを見ていたら、生きなくてはならないって感じはしたけど、彼じゃない。あの赤い地球を見たら、青い地球が見たくなる。生きて青い地球が見たいと…。月は近い、肉眼で地球が見える。地球は青く美しいとインプットされた僕の心は軋むんだ。人は愚かだと泣くんだ」
「ああ」
 自分をつかまえ地球を見せたジョミーを思い出すキース。
「キース、僕は、今どう見える?」
 今度はジョミーがキースを真正面から捉えて聞いてくる。
「今も探してる気はするが、スメールに行ったからか?何かがあった方が良いのかもしれないな。お前は。生まれながらのソルジャー(導く者)なのかもな」
「導く者がソルジャーなら、キース、君もだね」
「その称号は欲しくないが、今度、月へ行ってみるか?」
「議長の許しが頂ければ、いつなりと」


 戦う者がソルジャーだと思ってた時期もあった。
 導く者だと地球に着いてやっと気がついた。
 僕らはブルーに導かれてここまでやって来たのだと…。
 今は、守護する者だと思っている。
 この新しき世界を…。

 ブルーが恋がれ 
 キースが願い 
 トォニィが夢を見て
 僕が望む

 この世界を護りたい
 僕はこの世界の剣と盾になろう。
 



  続く




最新の画像もっと見る

コメントを投稿