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-空から見るからこそ見えてくるものがある-

Tenkuu Fuji (12) - 残照 2012

2012-12-29 | Fuji




富士の嶺雪が、蒼天にきらめいていた。継之助は嶮路に足をとどめ、あかずにその姿を見入った。

― 実(げ)に聖人のごとし。

と、その旅日記「塵壺」にかいた。



富士を、単なる大地の隆起とはとうていおもえない。

(あれは、天地の清にして浄なる気が凝ったものだ)

そうおもった。

思いこそ実在というのが継之助の認識論である。富士のばあい、継之助だけでなく、日本の多くの詩人はそのようにして富士に接してきた。

神か、でなければ聖人であり、自然ではない。




(司馬遼太郎著『峠』より)













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