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春、列島を横断する (19) - 久慈市・小袖海岸

2011-06-04 | 東北



おらァ、若エとンにゃ、まンだ負けねア、まンだおらの息にかなう奴ァ一人もねァ。上村のたかァ家サぶっ建てて自慢面すてるが、ありゃ観光客来だ時の見得はって、今から愛敬ふりまいて、会長面すてるだけでァおらほァ、高波来て何度も流れツから、身体一つがもとでだ、あどァ何にもいらね。欲ァねァ。おらアたかと違って、一人で稼いで一人で子をなして、一人で何もかもやっできた。最初の男ア嫁入って三月で蟹工船のって遭難した。おら、この下村に生まれて、高波で両親なくしで、おばンちゃんに貰われた孤児だ。家ァねえがら、人に使われで、ワカメ干し手伝ったり砂もみ落としやっで稼ぐうち、或る日舟ァついてな茶碗や丼コ売りに男ァ来た。
・・・・・・・・・
おら、腹のガキ抱えて浜サ帰エって来た。生む日まで海女ァして稼いだ。その頃ァ上村のたかァ今の爺さんに命綱見張らせて、上がれば火たいて貰って、舵子やらして大名稼ぎだ。おら水から上がれば一人で火たいて、腹痛ぐなっても、一人で産湯沸かして一人で生んだ。
エナ切るのに自分の爪で切って、一人で産湯つかわせたもンだ。

(水木洋子作『北限の海女』より)







昭和34年、久慈市小袖の海女を主人公にしたラジオドラマ『北限の海女』がNHKラジオで放送された。

私(語り手)は、都会に暮らす30歳の女性。 夫に死別し、これからの自分の生きる方向を模索すべく、一人で、日本の海女の北限といわれる、岩手県久慈市小袖を訪ねる。そこで境遇が対照的な二人の老練の海女(北村ひで、岩田たか)に出逢う。
そして、北村ひでの激しくも、個性的な生きざまを目の当たりにし、これからの自分の生きる方向に確信をもつという物語である。当時の小袖地区の様子や海女の生活、方言などが興味深く描かれている。この作品はその年の芸術祭賞を受賞する。


このドラマの脚本を書いた水木洋子は、『ひめゆりの塔』、『裸の大将』、『浮雲』など、戦後、日本映画の黄金時代に数々の名作を残した。








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