ふたたび、シドニーオリンピック陸上・女子400mゴールドメダリスト、キャシー・フリーマンについて。
キャシー・フリーマンの母方の祖母は、いわゆる「盗まれた世代」の一人だった。
「盗まれた世代(Stolen Generation)」とは、白人男性とアボリジニ女性の間に産まれた混血児の子どものことで、オーストラリアでは1915年から1969年まで、政府とキリスト教会の主導の下、アボリジニの子供を親から強制的に引き離して寄宿舎などの諸施設で養育するという政策が行わた。白人への同化政策である。
隔離されたアボリジニーの子供たちは政府による「公民教育」のようなものを受けた。政府としては彼らのコミュニティーの絆を壊すのが目的だったようだ。
これは議会で承認を受けて立法化さ政策だったために54年間にもわたって実施され、この間に親元から引き離されたアボリジニの子供達の数は、10万人を超すといわれている。
この政策は、彼らからアボリジニとしてのアイデンティティを奪ったのは明らかである。
キャシーの家族は、祖母の負ったそのような心の傷を、家族全員で長年にわたって共有して生きてきた。
キャシーがうまれたのは1973年。先住民居住区で幼年期を過ごし、いまだ消えない人種差別を目の当たりにしてきたのであった。