初三郎の鳥瞰図の特徴は、画風と構図にある。
友禅図案絵師からスタートし、西洋の画法も学んだ彼の鳥瞰図は、浮世絵と西洋画が融合したような、それまでにない独特の近代的な画風であった。
その構図は、横長の画面に中央を細密に描き、左右の端をU字型に曲げ、実際の視界には入らない遠くの景色をパノラマ風に描く独特のものだった。
たとえば、地平線や水平線の彼方に、見えるはずのない遥か遠方の地が描かれていたり、関西の都市図に九州が、あるいは富士の観光図にハワイが描かれたりしているのである。
この極端にデフォルメをほどこされた地図は、「初三郎式鳥瞰図」と呼ばれた。
そしてその作風は、一つの独創芸術ともみなされるようになる。
初三郎は、1600種以上もの数多くの鳥瞰案内図を残したといわれているが、大量の作品を制作するために、京都に「大正名所図絵社」を設立。共同作業による工房制をしき、出版部門を備え大量印刷を図った。
依頼主から依頼を受けると現地を取材し、複数のスケッチを作成、既存の地図などを参考にして、原画を作成、その原画をもとに印刷された鳥瞰図が広く流布した。
つまり初三郎個人はプロデューサー兼デザイナーという存在であったのだ。