海外のとある場所で一人の日本人と出会った。
同じバス停でバスが来るのを待っていた。
日本人だという確証はなかったが、日本語で話しかけると返事が返ってきた。
一人旅の青年で、これから街へ出るのだという。食事に誘ったところ、快く応じてくれた。
現地の食堂で食事をしながら、旅のこと、仕事のことなど話をした。
彼は、東京の某有名国立大学の航空学科を卒業して、今は日本の某大手輸送重機企業の、ボーイング787型機の設計・生産部門のエンジニアだという。
某国立大学の航空学科と言えば、学科創設期には、国産初の旅客機YS-11の主任設計者の木村秀政、堀越二郎、など日本の航空機産業のリーダーを輩出したところではないか…
なんていうとりとめもない話をしばらく続けていた。
話は、おのずと、宮崎駿監督『風立ちぬ』の話題となり、ストーリーや、ジブリの映画のこと、そして宮崎監督の飛行機好きのことなどを語り合った。
そして最後に、この青年は、自分もこの映画の主人公、堀越二郎のような人生を目標にしたいという夢をせつせつと語ってくれた。
久しぶりに、若々しい、情熱のこもった言葉を耳にし、瞬く間に時間が過ぎ、気分よく青年と別れた。
今、B787の機上でコーヒーを飲みながら、あの時のことを思い出している。
(ANA B787-8 JA812Aの機上から、笠雲を戴いた富士山を眺める)