ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

鎮魂

2012-09-18 23:40:41 | Weblog
今日、上海の日系企業は、ほとんどが自宅待機だったようなのだけど、
私は普通に会社に行き、少し残業までしてから帰ってきた。

領事館の近くにある日本料理店は軒並みお休みで、
看板を隠し、窓をふさいで、
「もともと工事中でしたけど、それが何か?」のようなたたずまいだった。
ちなみに、デモのコースとなっていた仙霞路には、
バスと公安の車がたくさん停まっていて、
いつでもバリケードにできる体制になっていた。夜でも。

そのおかげかよくわからないし、
これまでは煽っていた公安が、本来の業務に表面上は戻ったおかげかもしれないけど、
上海はそれほど激しい暴力はなく、おさまったのではないかと思う。
でも、領土問題自体が解決したわけではないので、
また小さなキッカケで、暴力が噴出するだろう。

中国人の同僚も、
「反日はわかるけど、略奪は違う!」という意見だった。
どこからか降って湧いてくるような流民たち。
中国人も、そういった暴徒となる人たちを恐れている。
だからといって、反日がおさまるわけでもない。

たまたま、今日、私は会社で朝礼のスピーチ当番だった。
こんな日に、上海で、中国人の前でスピーチをするのなら、
やっぱり「鎮まる」話をしなければならないだろう。

そこで、1949年に、上海から台湾に逃げて行った人たちの
子孫の話をすることにした。
私が93年の北京留学中に知り合った友人の話だ。

彼らはいまでも中国に戻って住むことはできない。
中国語を話せなければ、漢字すら書けない人もいるけれど、
彼らはいまでも自分を中国人だと思っているし、
中国と自分がいま住んでいる国の友好のために役立ちたいと思ってる。

中国は、国内に住んでいる人のためだけにあるのじゃなくて、
海外にいる中国人のための国でもある。
きっと私の友人は、世界のどこかで、
今日の中国がどんなになるか、心配してると思う。

彼がよく言っていたのは、
若い人は歴史には責任がない。
日本人だからというだけで、抗日戦争時代のことを持ち出すのは間違っている。
でも、私たちは、現在と将来には責任をもっている。
だから、いま私たちがどうするかが歴史よりも重要なのだ、と。

だいたい、こんな内容を話した。

中国人は、大勢の前で人をあまりほめない。
でも、個人的にいいと思ったことは、2人きりになったときに、
しっかりとその気持ちを教えてくれる。

今日は、いろんな人に呼び止められ、そっと「感動しました」と言われた。
今日みたいな日に、自分の言葉で日本人を誉める人もいる。
それが中国の奥深さだと思う。

そして、1949年の混乱を知っている当時の人の魂が、
平和を願うその気持ちが、
今日は上海にたちのぼってきて、
暴動をいくらか和らげてくれたのではないかと思う。