被せガラスの中でも扱いが難しい赤色を使い、これまた難易度が高い、”実もの”をモティーフに挑戦しました。作り手の技術と表現力が試されます。
グラデーションとハイライトで、あんずの実の立体感を出していきます。
油絵や水彩画が色を乗せて描画していくのに対し、サンドブラストは色のついたガラス層を削り落としながらオブジェクトを浮き上がらせていく”引き算のアート”です。
たえず砂が吹き出しているノズルを遠ざけたり近づけたり、砂の圧力の強弱を調整しながら、砂を当てる角度、時間を加減して、色ガラスを削り落としていきます。
たった0.5秒、ノズルを生地から離すタイミングが遅いだけで、一瞬にして色が飛んで、そこで終了(=失敗)、しかもやり直しが利きません。
さて、上記作品の失敗部分はどこでしょうか?答えは、左側の実に重なる枝の部分。枝→実の順で彫りますが、先に枝の色を落としすぎたため、実の部分の作業中に枝の色がすっかり落ちてしまったというわけです。
そうかといって、色の落とし方が足りないと、重なったパーツ同士の境目(段差)が出ずにパーツがつながってしまう)という別の失敗を招きます。
被せガラスの生地自体が人による手作りであるため、同じ素材を使って同じ図柄を彫っても、完全に同じ出来栄えになるとは限りません。そして、その日の精神状態にもよってもかなり違ってきます。
別の日にもう1個彫ったのですが、(右側)この日はなんとなく集中力が続かず、雑な仕事ぶりが顕著に作品に出てしまいました。まったく見るに耐えない恥ずかしい失敗作品ですが、自戒の意味で載せておくことにしました。
工法はたった1つ、ガラスに砂を吹きかけるだけ。それだけのことなのに一筋縄ではいかないから、また挑戦したくなる。サンドブラストにはそんな不思議な魅力があります。