リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

331. 18回目のドイツ旅行(11) 2人旅 パリからロンドンへ

2024年01月11日 | 旅行

▶ロンドンでの4泊5日間


ロンドンのセント・パンクラス駅

 

▶ブレグジット下で初めてロンドンまでユーロスターで往復しました。

 2012年にもパリからロンドンまで列車で行ったことがありましたが、まだイギリスがEUに属していた時で、それほどの緊張感はありませんでした。でも今回はEUから離れたために行きも帰りもパスポートチェックが入りますし、出発1時間前には駅に行っていないといけないようで、何だか落ち着かない気持ちでした。

 8月28日。12時13分パリ北駅発のユーロスターに乗るために、ゆとりを持って9時25分にはホテルをチェックアウトしました。
 でもこの日の朝、私は出発前にパニックになっていたのです。それは荷物整理をしたときに折りたたみ傘が見つからなかったからです。特にロンドンではいざというときのために傘がないと困るのに一体どこに置いてしまったのでしょう。トランクの中はもちろんのこと、ベッドの下も洗面所も探しましたが見つかりません。必死になって片っ端からもう一度確認し、「こんなところにあるはずないよね~」と思いながら念のため金庫を開けたときに、傘ではなく三津夫の財布がまだ残っていることに気が付いたのです。私がパスポートなどを取り出したのに。「あ~、お財布が残ってた!」と、あわてて三津夫に渡しました。彼の黒い財布が黒い生地の金庫の中でよく見えなかったのでした。免許証も鍵も入っている大事な財布。「よくぞ気が付かせてくださった!!」と一転して心から神様に感謝でした。その後、気を落ち着かせてもう一度トランクを調べたところ、コロコロの奥にすっぽりはまり込んでいる傘が見つかりました。本当に良かった…。

 北駅までは下見の通り順調に行くことができました。M1の北駅を出てからユーロスター乗降口まではずっと平坦なのですが、最後が階段で何故かエレベーターがないのです。仕方なくトランクを引き上げようと構えたところで通りかかった男性が運び上げてくれました。感謝! 
 受付に早めに到着したので出発時刻の札の前で並びました。まだそれほど並ぶ人は多くなく、1本前の列車に乗る人たちがあわてて駆け込んできます。その後15分ぐらいした頃でしょうか、私たちが乗る列車の列が動き、奥の改札口でまたまたQRコード。しかしうまく読み取ってもらえずに窓口へ。何とかチェックを受けて中に入るとパスポートコントロール。いくつかのブースがあり、私たちが呼ばれたのは黒人の係員さんのブースでした。彼が笑顔で「ありがとうございます」と言いながらささっとスタンプを押してくれました。トランクもベルトコンベアーに載せ、ようやくベンチのある待合室に着きましたが、どんどん混んできて座席は不足気味。私たちは早めに入ったので座って待つことができましたけれど、もう少しゆとりがあれば良いのにと思いました。ユーロスターに乗った後は何だかあっという間にロンドンに着いたような気がします。1時間の時差があり、実際は2時間半近くかかったのですが。

 

▶11年ぶりのロンドン

 写真集の第Ⅱ巻『続・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』(福田緑著、丸善プラネット)を出してすぐ、2012年3月にヨーロッパに来たときに、リーメンシュナイダー作品を見たくてイギリス南部も回りました。その時は確かヴィクトリア駅近くに宿を取ったように思いますが、今回はユーロスターでフランスまで往復することを考え、セント・パンクラス駅の近くに宿を取りました。その宿が大きな看板を出していなかったため、行ったり来たりして探すのに大分手間取りましたが、わかってみると案外駅に近くて便利です。でもとっても狭い部屋です。何より驚いたのは部屋の隅にある洗面所がA4の紙1枚ぐらいの大きさしかなく、顔を洗うにも床に水がこぼれてしまうことでした。トランクを二つ広げるスペースもなく、私のトランクは玄関でまず半分広げ、ベッドの下にずらしながら入れこんでようやく残りも広げるという苦労をしての5日間。私たちが泊まれる中級クラスのホテルでは、ロンドンもアムステルダム同様にゆったりした部屋はなかなか難しいのでしょう。ベッドも幅が狭いものでした。

 この日はもう午後も遅いので宿周辺の探索をし、買い物をしました。駅構内にスーパーもあり、以前の旅で残っていたポンド硬貨で何とか買い物ができました。旧札はイングランド銀行に行って両替しないと使えないとネットで読んでいたのでホテルのフロントで確認してみると「すぐそこの両替所でできますよ」と言うのです。しかし実際に行ってみたら「イングランド銀行に行かないとだめです」とやはり断られてしまい、明日の朝一番に銀行に行くことにしました。その後、近くにあった竹家荘で中華を食べたところ、珍しく美味しいチャーハンが食べられたので、4日間の夕食はいざとなったらここで良いねと言いながら部屋に戻りました。

▶V&A美術館

 8月29日。昨夜ネットで調べた結果、オイスターカード(日本のスイカとかパスモのようなチャージ式カード)というものを使うと地下鉄がずいぶん安く乗れることがわかり、まずそれを2人分買いました。そして地下鉄ノーザンラインに乗り、バンク駅で下車。しばらく歩いて石造りの大きな銀行に到着すると、入口で警官に用件を聞かれます。両替をしに来たというと入館を許されて、両替部屋の手前に2列の石のベンチがあり、そこに座らされました。更に係員が出て来て一人ひとり用件を詳しくチェック。古いお札を見せて両替したいと言うと「OK」と次の人へ。部屋の中から用事が済んだ人が出てくると、ベンチで待つ人が少しずつ中に入れてもらえるというシステムです。やっと部屋の中に案内されても窓口は3カ所ぐらいあったのですが、用件がなかなか終わらない人が多いのでずいぶん並んで待ちました。私たちの両替はササッと終了、結局イングランド銀行にいたのは約1時間でした。まぁ、こんな大きな銀行の中に入って並ばされて待たされて…というのも面白い体験ではありましたが。

 その後、地下鉄ヴィクトリアラインでV&A美術館駅まで行きました。そこでリーメンシュナイダー作品に再会するのが今日の第一目的です。そして前回来たときには美術館の外観を写し忘れたので今日は必ず外に出て写そうと決めていました(写真・下)。ルーヴル美術館と同じように地下鉄駅からの通路で直接美術館に入れるため、案外正式な出入口に出ないで終わってしまうのです。実際、外から見てもなかなか大きくて立派な建物です。
 でも残念ながらリーメンシュナイダーの工房作1点「彫刻(騎士の姿をしています)」
しか拝観できませんでした。これは前回と同じ場所に立っているところを見られたのですが、以前は他にリーメンシュナイダーの手になる「サロメとゼベダイ」「跪く天使(2体)」の3作品があり、撮影することができました。その写真を私の写真集『続・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』に使用させていただきたいと連絡したところ、「美術館の画像なら無料で掲載できますよ」と画像の提供をいただいたのでしたが。美術館のコレクション検索では2024年1月現在でも、まだそれらの画像が全部出てきますので所蔵しているはずなのに再会できず、とても残念です。

 一方、この美術館にはレプリカを集めた大きな広間「CAST COURTS(鋳造の間?)」がありました。そこには大小のレプリカが集められているのです。レプリカではあっても5体のリーメンシュナイダー彫刻が展示されていました。リーメンシュナイダー以外にもアダム・クラフト、ペーター・フィッシャー(父)のレプリカ作品もありましたし、まだ見たことのない精緻な彫刻群も置かれていて、また次の旅でオリジナル作品を訪ねる目標ができました。



V&A美術館 ようやく永年の宿題を終えた気分でした。
 

 館内のレストランで昼食をとり(あまり味はいただけませんでした)、3時前に「あとどうしようか」となったときに、オイスターカードは1日8.1ポンド以上の地下鉄料金は無料となることを思い出しました。この辺りで今から行けるのはテート・ブリテンです。そこで3つめの目的地をテート・ブリテン(写真・下)に決めて大急ぎで出発しました。V&A美術館駅からサウスケンジントンへ、そこからヴィクトリア駅乗り換えでヴィクトリアラインのピムリコ駅まで乗り、歩いて到着。ここは小さな美術館ですが、一番見たかったジョン・エヴァレット・ミレーの「オフィーリア」を見た後はターナー作品などを見て回り、何とか見終えた頃に閉館時間となりました。今日はイングランド銀行と2つの美術館を回ったことになります。


テート・ブリテン 奥に立つのが連れ合いです。

 

▶今日は徒歩で3つの美術館巡り

 8月30日。今日は徒歩圏内を歩き回り、3つの美術館を訪ねます。

 ホテルから歩き始めてまずは一番近い大英博物館へ。10時前に着いたときには既に長い列ができていました。イギリスもまた美術館や博物館は無料なのがありがたいです。


大英博物館 並んでいる途中です。少々疲れた顔?


 大英博物館は広いので2ポンドで館内マップを購入。ここでの私の目的はリーメンシュナイダーの「東方三博士の礼拝を表した木製祭壇彫(1505~1510)」を見ることです。この浮き彫りは2003年に日本で開催された「大英博物館至宝展」でも展示されました。私も東京都美術館まで見に行き、2012年にも大英博物館に来て見ているので今回が3度目。それでもこのレリーフは部屋の入口に展示され、相変わらず深い気品と輝きを感じさせてくれました。
 他には主に中世彫刻やアジア美術、日本美術を訪ね、途中でもちろんロゼッタストーンも見て、午後2時半頃に博物館を出ました。

 次に向かうのはナショナル・ギャラリー(写真・下)です。 ここも名作が多いのでどんどん見て回ります。以前来たときに一度じっくり見ているので、今日は復習という感じです。それにしてもゴッホやフェルメールやホルバインなどの有名画家の作品がこんなに多いとは、ナショナル・ギャラリーってすごい美術館ですね。しかも無料ですから頭が下がります。ただ、この日の二つの美術館、博物館はクロークに多少の料金がかかりました。


ナショナル・ギャラリー

 そして最後は初めてのコートールド美術館。ここに耳を切ったゴッホの自画像とマネの「フォリー=ベルジェールのバー」があるというので回ることにしました。ここでは私立の美術館なので10ポンドの料金を払います。昨日同様、残り時間は30分ほど。何とも忙しい旅です。小さな美術館ですがとても充実していました。地形の関係で美術館の全体像が写せなかったので、館内の素敵な階段の写真を載せておきます。


コートールド美術館の中の階段

 帰り道で「wasabi」というチェーン寿司店を見つけて入ってみたところ、リーズナブルで味もなかなかでした。ただトイレがないのはガッカリでしたが。今日は宿まで歩いて戻って19796歩、この旅での最高記録となりました。


▶ロンドン最後の日

 8月31日。今日の目的はクィーンズ・ギャラリーでフェルメールの「音楽の稽古」を見ることです。ロイヤルコレクション、セントジェームズ宮殿にあるらしいとはわかっていたのですが、具体的にどの建物なのかわからないので、ホテルの受付でフェルメールのこの絵はどこにあるのかと所蔵館を聞いたところ、クィーンズ・ギャラリーだと教えてくれたのです。クィーンズ・ギャラリーなら地図で特定できるので、地元の人が言うのだからと疑いもせずヴィクトリアラインで向かいました。ヴィクトリア駅を下りてしばらく歩き、クィーンズ・ギャラリーに着いたらもう多くの人が並んでいました。ここは予約をしていないと入れないと言われ、あわてて予約手続きを開始。結局午後2時半の予約しか取れないと分かったものの、スマホではうまく支払い手続きができず、館内でヘルプしてもらいなさいと言われ、中国人らしき若い女性のサポートで現金払いで予約を終了することができました。三津夫に何も言わずに館内に入ってしまって時間がかかったので、予約を終了してから説明すると「それならやめても良かったのに」と言われてガッカリ。そうとわかっていたら払わなかったのに。

 仕方がないのでウェストミンスター寺院とウェストミンスター大聖堂のある川縁まで歩き始めると雨が降り出しました。段々強くなります。せっかくだから雨宿りも兼ねて中に入ろうと思って表示を見ると大人一人で27ポンド! この頃の為替では1ポンドが約190円でしたから1人当たり5130円ほどとなります。いくら何でも高いので諦めて、もう少し歩いたウェストミンスター大聖堂に行くことにしました。こちらは2011年に訪問された前ローマ法王・ベネディクト16世によるミサも行われた場所だそうです。19世紀後半になってローマ教皇庁との関係が修復されてから建てられた(1895年~1903年)ために新しく、モザイク画が輝いていました。




ウェストミンスター寺院(上)とウェストミンスター大聖堂内のモザイク画(下)

 お腹も空いたしトイレも行きたくなってあれこれ喫茶店を探しましたが全然見つからず、ヴィクトリア駅も近いマクドナルドに入りました。ここでお腹も満たし、トイレも済ませ、喉も潤ったのですが、すごく混んでいたため、あまりゆっくりもできずに一旦店を出たのですけれど、まだ時間がタップリあります。そこでもう一軒見つけたスターバックスに入ったのですが、ここにはトイレはないのです。喉だけは潤っていて次第にトイレが待ったなしの状況となり、隣のヴィクトリア駅に行ってみました。すると何と数多くのトイレがあり、しかも無料だったのです。ヴィクトリア駅、太っ腹です。拍手👏 もっとも日本の駅も無料ですけれど。

 少し早めに再度クイーンズ・ギャラリーに行きました。予約時間になって中に入り、ようやく待ち焦がれたフェルメールが見られると思っていたのに、この日の展示は衣装に関する絵画が集められているばかりで、いくら回って見てもフェルメールがないのです。以前来たときは他の美術館に貸し出し中と言われて見られず、今回は地元ホテルの受付のことばを信じて来たのに、まるで違う展示に入ってしまったのでした。「どこの建物に行けば良かったのですか?」と出口で聞くと、それはパレスにあるとのこと。まだ間に合うかと思ったら「もう今日の予約チケットはありません」と言われて心底ガッカリしました。明日はもうロンドンにいないのですから。 

 ※旅行前にパソコンで検索したときにはうまく見つけられなかったのですが、今日、ブログを書くに当たって改めて「本当にどこだったのだろう」と検索してみたところ、「ロンドンのセントジェームズ宮殿のイギリス王室ロイヤル・コレクション」と書かれているサイトがありました。もし次回があれば、ここに予約しますが、そのチャンスは来るのかどうかわかりません。

 ヴィクトリア駅から地下鉄に乗り、まだわずかにオイスターカードの残額がある状態でロンドンの旅は終了。このカードは日本と同じで買うだけでもお金がかかりますから、ホテルの受付で誰か使ってもらえるならと渡してきました。
 残ったポンド硬貨で明日の車中の食べものを買い、竹家荘にもう一度寄って最後のチャーハンを食べました。

 明日はフランスへ戻り、パリを通り過ぎてトゥールーズまで一気に南下します。途中パリ北駅からモンパルナス駅への乗り換えが複雑だから愛さんが迎え&送りに来てくれるというので本当に心強いです。ありがとうございます🙏

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2024  Midori FUKUDA

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