人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(追加情報編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-03-31 | ワーグナーのタンホイザー



モンテカルロ歌劇場のタンホイザー・パリ版仏語上演で、はじめてのワーグナー挑戦を成功させたホセ・クーラ。これまでの情報については、いくつかの投稿で紹介してきました。
 
 → (録画編)  (レビュー編)  (放送告知編)  (リハーサル編)  (緊急告知編)

以上で終りのつもりでしたが、その後もいくつか、レビューや紹介記事が出され、またクーラがインタビューで、タンホイザーの反響について語ったりしていましたので、そうした情報を今回、追加的に紹介したいと思います。


●インターネット情報サイトEuronewsが紹介

ヨーロッパを中心とするインターネット情報サイトのEuronewsで紹介記事が掲載されています。



Euronewsでは13ヶ国語による紹介動画を作成していて、Youtubeにもアップされました。

こちらは英語版
Tannhäuser: a Wagner opera with a French accent - musica



*ついでに、まだこのタンホイザーの全編録画をご覧になっていない方に、Youtubeにアップされている、最終日2017年3月1日の録画リンクを。
たいへん珍しい、ワーグナーのタンホイザー、パリ版フランス語上演の舞台、モンテカルロ歌劇場でのライブ収録。

"Tannhäuser" de Wagner en français - l'Opéra de Monte-Carlo


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――ホセ・クーラ プラハでのインタビューより(2017年3月)

●タンホイザーの反響について


ドイツからの反応は、明らかな驚きだった。ドイツ人は彼らのワーグナーと英雄的なテノールを守っている。これは、ワーグナーを行うための別の方法だ。

今、みんなが私に電話してきて、オリジナルでの(ワーグナーの)役柄を学ばせようとするが、私がドイツ語を習得する前に、私は60歳になるだろう(笑)。

(「iDNES.cz」)





――モナコの情報サイトでのプロフィール紹介とインタビューより(2017年3月)

●役柄へのアプローチでこんなに苦しんだことはない

Q、あなたは初めてのワグナーをフランス語で歌う!この経験をどのように表現する?

A、山に登るようだ!
スコアは非常に長く、ボーカルがたいへん複雑であるだけでなく、テキストの量も膨大だ。


Q、新しいレパートリーやタンホイザーのような役柄にどのようにアプローチする?

A、通常、まず台本を学ぶことから始めて、それから、作曲家が、その言葉がどのように聞えると想像していたのかを見つけ出そうとして、音楽を汲み取る。

タンホイザーの場合、これまでになく、テキストを覚えるのに苦労したために、そのプロセスは非常に遅かった。
なぜなら、おそらく、私が多くの瞬間、フランス語の歌詞が音楽と衝突していると感じたためだと思う。
私は、役柄にアプローチするのに、これほど苦しんだことは一度もない!

(「Little Big Monaco」)

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――レビューより

●ローマ語りはまぎれもなく感動的

ホセ・クーラは、彼のタンホイザーに対して、様々な意見を集めた。一部は不十分さを感じたが、これらのほとんどはオリジナルのドイツ語を好み、フランス語上演に疑問をもっている人だ。確かに、その役割における「ラテンらしさ」の量は、ドイツスタイルの特定の歌手のパフォーマンスと比較する人にとって、混乱させることかもしれない。

私たちは、有名なオーケストラを指揮する良いミュージシャンでもある、このカリスマ的な芸術家の解釈を好む。そして、オテロの熱烈な衝動やサムソンのアクセントを見出すことで私たちを不快にすることはなかった。

さらに、クーラは、タンホイザーのもろさや懐疑的になった時、必要に応じて、ささやき声やメッツァ・ヴォーチェを使い、情熱や反乱の爆発をどう制御するかを知っている。

最後の幕で、彼のローマ語りは、紛れもなく感動的だった。

(「Metamag」)





●ボーカルも演劇的にも優雅、熟した声、楽々と

ホセ・クーラのタンハイザーは、フランス語ではじめてのワーグナーへのコミットメントをうまく克服した。

彼のキャラクターはさまざまなニュアンスを含み、ボーカル的にも演劇的にも優雅に現れている。彼の声は、熟して、楽々と放射される。

(「OperaClick」)


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台本とスコアの分析、役柄の研究を、これまでにないほど苦しみながら、徹底的にやったクーラのタンホイザー。その努力と到達が、多くのレビューでも高く評価されたことは、本当に喜ばしいことです。

またあちこちから、ワーグナーを原語であるドイツ語で、という誘い(?)がすでにあるようです。
もちろんクーラは、すでに日常会話程度のドイツ語はできるし、ドイツ誌のインタビューでも答えていましたが、ミュージシャンとしてとても良い耳をもっているので、言葉を発音することは可能ということです。しかし、音楽と脚本の解釈、歌唱と演技を一体化させたクーラ自身の「基準」からは、満足できるものではなく、それをやらないのは、楽曲と聴衆を尊敬しているからこそだ、とのことでした。

ということで、現在のところは、ドイツ語のワーグナーにあらためて挑戦するつもりはなさそうですが、今後、クーラを説得する劇場やマネージャーが現れるのかどうか、これはクーラの今後の歌手としてのキャリアにとって大きな影響を与えることでもあり、興味深いです。








*写真は、劇場のHPなどからお借りしました。
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ホセ・クーラが歌う、ドヴォルザークの歌曲「愛の歌」 / Jose Cura "Love Songs" of Dvorak

2017-03-19 | CD・DVD・iTunes



前回、ホセ・クーラがiTunesなどで楽曲のデジタル配信を開始し、まず、ドヴォルザークの歌曲集「愛の歌」をリリースしたことや、それまでのレーベルとの関係と経過などについて紹介しました。
今回は、iTunesから「愛の歌」のアルバムを購入・ダウンロードしてみての感想をふくめ、追加的な情報を紹介したいと思います。


まずは、クーラが、「愛の歌」のリリースを宣伝するために作成した動画を。
クーラのFBやVimeoのページにアップされ、フォロワーに拡散をよびかけているものです。
アルバムに収録されている8曲のうちの1曲めを全部聞くことができます。


Jose Cura "Love Songs" the little video clip from new released album



≪ アルバム「ドヴォルザーク 愛の歌」の内容 ≫

ANTONÍN DVOŘÁK LOVE SONGS
2017 - JCP (José Cura Productions) Running time: 15min 37
Artists: José Cura., Irina Kondratenko (piano).
Music by: Antonín Dvořák (1841 - 1924)
Lyrics by: Gustav PHleger-Moravský (1833 -1875)

1 - O naši lásce nekvete to vytouzené stestí (1’42’’)
(Love will never lead us to that happy End / 愛は私たちを幸せな結末には導かない)
2 - V tak mnohém srdci mrtvo jest (2’13’’)
(Death reigns in many a human breast / 死は、多くの人の心を支配する)
3 - Kol domu se ted’ potácím (1’21’’)
(I wander often past yonder house / 私はしばしばその家を過ぎてさまよう)
4 - Já vím, že v sladké naději (2’33’’)
(I know that my love to you / 私はあなたへの愛を知っている)
5 - Nad krajem vévodi lehký spánek (1’29’’)
(Nature lies peaceful in slumber and dreaming / 自然は穏やかに眠り、夢見る)
6 - Zde v lese u potoka (2’09’’)
(In the deepest forest glade I stand / 私が立つ一番深い森の中で)
7 - V té sladké moci ocí tvých (2’09’’)
(When thy sweet glances fall on me / あなたの甘いまなざしが私の上におちるとき)
8 - Ó duše drahá jedinká (1’33’’)
(You only, dear one / あなただけ、愛する人)
*日本語は英題を直訳したものです


アントニン・ドヴォルザークは、チェコの国民的な作曲家で、日本ではやはり交響曲第9番「新世界より」で親しまれています。
「愛の歌」は、ドヴォルザークがまだ24歳の時の1865年に、彼がはじめて作曲した歌曲集「糸杉」のなかに含まれていた曲がもとになっているそうです。

「糸杉」誕生のきっかけになったのは、彼が音楽の家庭教師をしていた女性、ヨゼフィーナ・チェルマーコーヴァーに対して抱いた恋心と失恋。この「糸杉」から、のちに8曲を選んで、手直しし、1888年に歌曲集「愛の歌」として発表されたそうです。

ヨゼフィーナとは失恋に終わったものの、彼女の妹とドヴォルザークは結婚しています。にもかかわらず、のちに「愛の歌」として改めて改訂・発表しているわけで、それほどに、彼女への思いは、忘れられないものだったのでしょうか。





このクーラのアルバムは、もともとドヴォルザーク没後100年を記念して、2004年にCDとしてリリース(録音は2003年)されたもので、今回、iTunes や、Amazonなどを通じて、デジタル音楽配信をおこないました。クーラとしての、はじめての挑戦です。

私はiTunesで楽曲を購入するのは初めてでしたが、またPCもウィンドウズ、スマートフォンもアンドロイドでしたが、問題なくダウンロードできました。ただ、全く初めての方は、アップルのアカウントを作ることから始めなければならないため、難しいことはないのですが、少し面倒に感じられるかもしれません。

歌唱や声は、クーラがまだ40歳頃の録音であり、とても若々しく印象です。
実らなかった恋の歌だけに、切なく、悲しい面とともに、哀愁を感じさせる美しく、とても甘いドヴォルザークのメロディ、そしてクーラが非常に豊かなニュアンスで、若者のひたむきな熱情、多感な心を表現しています。
またチェコ語の響きが、日本人にはめずらしく、これもまた魅力のひとつだと思います。iTunes購入に付属のデジタルブックレットには、短いですが日本語の解説と、全曲の英語の歌詞がついています。


興味をお持ちの方は、iTunesの紹介ページをどうぞ。




また、アマゾンでも購入できます。しかもiTunesより安い!デジタルブックレットが付いていないせいなのか、アルバムが600円です。またブックレットは関係ない1曲ごとで買う場合も、100円と安くなっています。全曲試聴もできます。




ぜひ、多くの方に興味を持っていただければと思います。



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ホセ・クーラ iTunesで楽曲配信を開始!まずドヴォルザークの愛の歌(ラブ・ソングス) / Jose Cura in iTunes

2017-03-14 | CD・DVD・iTunes



ホセ・クーラは、3月13日、フェイスブックと公式ホームページで、iTunesからの楽曲配信を開始したことを告知しました。

クーラは、2000年代初頭以降、大手レコード・レーベルと契約しないで、自分の独自レーベルをたちあげて活動してきました。いくつかのCDが発売されています。
今回は、2004年にそのクーラの独自レーベルから出されていた、ドヴォルザークの"LOVE SONGS"(「愛の歌」)をiTunesからリリースしました。

ドヴォルザークの「愛の歌」ラブ・ソングスは、ピアノとクーラの歌によるもので、ドヴォルザークの美しく、哀愁ただよう切ないメロディと、クーラの声、表現をしみじみと味わえる作品です。歌もチェコ語の歌詞で、たいへん珍しいものだと思います。

今回は、全8曲に、日本語も一部あるデジタルブックレット付きのアルバムが750円1曲は各150円となってます。

クーラ自身による楽曲配信は、今回が初の試みです。今回の様子をみて、今後の方針を決めるとのことです。
iTunesで、"jose cura love songs"などと検索すると、すぐにわかります。 ぜひ多くの方に興味をもっていただければと思います。


下の画像は、今回、配信されたドヴォルザークの音楽が収められていた、もとのCDです。なお配信はラブ・ソングスだけで、交響曲第9番はありません。
画像をクリックすると、クーラのHPの紹介ページにとびます。




クーラの曲のiTunesでの紹介ページです。購入・ダウンロードできます。




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なお、なぜクーラが直接、iTunesから楽曲配信をするかということでは、これまでも紹介してきましたが、そこには独自の背景と事情がありました。
くわしくは、以前の投稿「ホセ・クーラ スターダム、人生と芸術の探求」などをお読みいただけるとうれしいです。

今回は、クーラがFBやHPに掲載した告知記事と、またこれまでのクーラのインタビューから、レーベルとの関係について語っている部分を抜粋して、紹介したいと思います。
いつものことですが、不十分な訳文、誤訳もあると思いますが、ご容赦ください。


――クーラのフェイスブック告知記事より  → FBの記事リンク

私の最初の製品がiTunesに!
iTunes Storeに行き、「jose cura dvorak」と入力すると、Love Songsのアルバムにアクセスできる。

なぜドヴォルザークのラヴ・ソング?
なぜ新しい曲ではなく2003年に録音された曲を?

理由1―― 2004年、ドヴォルザークの100周年記念の一環として、ラヴ・ソングと交響曲第9番のアルバムを制作した。しかしこのアルバムはプライベート・リリース用であり、大きく注目されるようにはならなかった。

理由2―― 今回は、デジタルプラットフォームとの私の商業的関係の始まりであり、それがどのようにすすむのか知る必要があった。
だから、私が期待どおりに進まない場合に備えて、新しいものを公開するのではなく、既存のレコーディングでシステムを「テスト」したいと思っている。

理由3――(元のアルバムを入手している人にも)このリリースは、REMIXで、音の“Director’s mix”(映画監督による編集のように)、ついに、曲が、私が望んだように聞くことができる。このリリースは、驚異的な24 BITS - 96 HERZクリスタルサウンドによる!

理由4―― このリリースには(iTunesのみ)、デジタルブックレットが含まれている(オンライン版ではまれ)。ヨーロッパの主要言語だけでなく、日本語、アラブ、中国語による簡単な紹介が掲載され、プラスして、すべての曲の英語テキストも。

私は、この新しい冒険に参加してくれる、みなさんすべてを必要としている!!!
クーラがレコーディングビジネスに戻ってきたことをすべての人々に知らせ、できるだけ多くのアルバムを購入してもらい、ディーラーを驚かせたい。
その理由から、私は、特別価格で、提案された6,99ユーロではなく、アルバム全体を3,99ユーロで提供することをつよく主張した。
ぜひ、もう一度、iTunes Storeに行き、 "jose cura dvorak"と入力を!
どうか、あなたが知っているすべての人に、この情報をつたえてほしい。
Peace & Love






*クーラは、当初エラートと専属契約を結んでいて、日本でも「プッチーニアリア集(1997年)」などが発売され、大ヒットしました。しかしエラートは経営不振のために閉鎖され、その後クーラは、大手レーベルと契約せず、2002年に自らのレーベルを発足。以下の2003年のインタビューで、その経過や思いを語っています。


――2003年インタビューより

エラートで特殊な状況を体験した。私のCDがリリースされたが、その時、レコード生産の危機とこれまでで最も深刻な景気後退を理由に、他の有名アーティストとともに、契約がキャンセルされた。
所属していたレコード会社と、私は、平和的に別れた。しかし、過去数年間の体験は、私に、すべてのことを自分で掌握しておくことが、よりベターだと教えてくれた。

私は、歌手は、芸術と役柄、その、ただ1つのことだけに集中すべきだ、という説を信じない。私は、マネジメント、プロダクションと流通のトリックについて知ることで、もやはトラブルを抱えなくなった。

2000年に自分のプロダクションCuibarを設立し、2002年にレコードレーベルCuibar Phono Videoも設立した。販売とマーケティングやプロモーションはロンドンのAvieレコードと契約した。
自分のレーベルから、すでに2つのアルバムをリリースした(03年当時)。ラフマニノフ交響曲第2番を指揮し、もう1つはアリア・アルバムで「オーロラ」というタイトルだ。






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紹介してきたように、エージェントにも、大手レーベルに属さず、独立独歩で活動してきたクーラ。自営業、零細企業主ともいえるのだと思いますが、独立当初には、リリースした曲がインターネットでの海賊版被害を受けて、CDなどのリリース自体が嫌になっていたこともあったようです。
こうした試行錯誤をへて、今回は、メジャーなデジタル・プラットホームであるiTunesで、あたらしいチャレンジです。これが成功して、クーラの作曲した作品や、これまで録音してきた楽曲がリリースされ、観賞できるようになることを願っています。

今回のドヴォルザークの愛の歌、私もiTunesで無事、購入・ダウンロードすることができました。本当に美しく、魅力的な歌唱でした。
興味をもたれた方は、ぜひ、iTunesをのぞいてみてください。



*写真はクーラのFB、HPからお借りしました。
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(リハーサル編) ホセ・クーラ 自作オラトリオ「この人を見よ」を世界初演 / José Cura "Ecce homo" world premiere

2017-03-13 | プラハ交響楽団と指揮・作曲・歌 ~2017



2015年秋からはじまった、ホセ・クーラのプラハ交響楽団のレジデントアーティストとしての活動も、2年目の2016/17シーズン最後のコンサートとなりました。
今回は、クーラ自身が作曲したオラトリオ「ECCE HOMO」(「この人を見よ」)の世界初演が目玉。そのほかに、クーラが指揮して、サティやレスピーギの曲が演奏されました。

3月8、9日が本番でしたが、実はクーラは、3月1日まで、モナコのモンテカルロ歌劇場で、ワーグナーのタンホイザーのパリ版仏語上演の復活という、歴史的な意味の大きい、しかもクーラ自身がはじめてのワーグナー挑戦という、たいへん心身ともに負担が大きかっただろうと思われる舞台に出演していました。

その最終日、深夜までの公演の2日後には、もうすでに、プラハでリハーサルを開始しています。クーラのタフさに驚きますが、それとともに、やはり、やりたいこと、自分の芸術的な信念にもとづく活動をやっているからこその充実ぶり、喜びを感じているからこそだと思います、

ということで、今回は、このリハーサルの様子や、クーラが作品を解説しているFBの記事、動画などを紹介したいと思います。




JOSÉ CURA – ECCE HOMO
Smetana Hall, Municipal House

8.3.2017 19:30
9.3.2017 19:30
ERIK SATIE Gymnopédie (orch. Claude Debussy)
OTTORINO RESPIGHI Church Windows
JOSÉ CURA Ecce homo, oratorio (world premiere)
José CURA = tenor
Lucie SILKENOVÁ = soprano, Sylva ČMUGROVÁ = alto
Aleš VORÁČEK = tenor, Jaromír NOSEK = bass

PRAŽSKÝ FILHARMONICKÝ SBOR / PRAGUE PHILHARMONIC CHOIR , JAROSLAV BRYCH = choirmaster
KRÁLOVÉHRADECKÝ DĚTSKÝ SBOR JITRO / CZECH CHILDREN'S CHOIR JITRO , Jiří SKOPAL = choirmaster

SYMFONICKÝ ORCHESTR HL. M. PRAHY FOK / PRAGUE SYMPHONY ORCHESTRA
José CURA = conductor
Mario DE ROSE = conductor





これまでも何回かの投稿で紹介してきましたが、クーラはもともと作曲家・指揮者希望で、大学でも作曲と指揮を専攻し、作曲もしてきました。
  → 「ホセ・クーラ 音楽への道」

そして、近年になって、マニフィカト(2014年4月初演)スターバト・マーテル(2014年10月初演)、またクーラがノーベル賞詩人のパブロ・ネルーダの詩に曲をつけた音楽劇「もし私が死んだら」が、プラハ交響楽団でピエタリ・インキネンの指揮によって世界初演される(2015年10月)など、ようやくクーラの作曲家としての側面に光があたり、作品が発掘、演奏されはじめています。

まずは、今回のコンサートの前に、クーラ自身が作曲について、作品について語った動画を。
ヒアリングの能力がなくて全部意味を聞きとることはできませんが、作曲家として、頭や心のなかで曲を想像していると、その曲をはじめて実際に聞いた時には、ショック、よい意味での(時には悪いことも)ショックを受けるということや、マーラーのように、繰り返し繰り返し、曲の修正をしたくなることなど、語っているようです。

José Cura about Ecce homo


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子ども合唱団とリハーサル中のクーラ。ピアノで音をとりながら、スペイン語の歌詞を解説する。
 ↓ 画像をクリックすると、クーラのFBにアップされた短い動画にとびます。



クーラがFBに掲載した解説。画像をクリックするとFBの元ページにとびます。




*以下、大まかに訳してみましたが、キリスト教の知識がないため、たいへん不十分です。ぜひクーラのFBをごらんください。

――クーラのFBより、ECCE HOMOについて

●1989年に作曲して以降、しまい込まれていた

この作品を、1989年に、ブエノスアイレス出身のテノールの同僚のために書いた。
作品は、彼と私によって公開されることはなかった。若い、夢見る2人には、その実現に必要な要素を集めることはできず、プロジェクトを現実に変える力はなかった。

それから何年も経ち、私の芸術的キャリアはさまざまな方向に向かった。
Ecce Homoは、他の多くの作品と同じように、引き出しの後ろにしまい込まれたままだった。





●30年を経て、作品は成熟した

2016年に、私はそれを再発見し、喜びと誇りをもって、それを実現することができた。
それまでのすべての年月は、単にホコリを集めるために費やしたのではない。作品は成熟した。良いワインと同じように。

間違いなく、過去30年間、私が、人間としてアーティストとして、成熟するためにやらなければならなかったことが、1989年には考えられなかった裁量権を得て、このオラトリオを改訂することを可能にした。





●聖書のキリストの受難にもとづいて

ECCE HOMO(エッケ・ホモ、ラテン語で「この人を見よ」)は、オリジナルではない。イエス・キリストの生涯の最後の瞬間にもとづいた多くの作品がある。そのなかには、伝説的で、到達不能なものもある。
しかし、それ(クーラ作曲)は、聖書の特定の部分の使い方において、オリジナルである。たとえば、「詩篇」のような、あるいはスターバト・マーテル。
そして、最初の詩の中には、かつて1982年に自分自身で書いた部分があった。
それらは、"Christ’s Passion"(キリストの受難)の「演劇的な」行動と結びついている。





●宗教的な内省を構成

Ecce Homoの音楽的、劇的な構成は、大衆の宗教的な内省を組み合わせたもの。
彼らの異教徒の不遜、地上において有形であり、彼の神性に対応して神秘的な深さとの間にあるキリストの介入、そして彼の絶望の本能的な性質は、彼の人間的な状態により類似している。

この意味で、特に私にとって感動的な瞬間は、私たちが破滅的な誠実さを目の当たりにする、これら3つ――詩編6“Father, where art thou? Save me!”、ゴルゴタでの彼の絶望的な叫び “O Lord, why hast thou forsaken me?”、息子の死を見た聖母マリアの“Tell me, is there a greater pain than this?”。





●勝利者のレトリックを避ける

復活の音楽を表現するために、私は、偉大な"Hosanna"(「ホサナ」、ヘブライ語で「救い給え」)を描くことで勝利者のレトリックに陥ることを避けた。

むしろ私は、"Easter of Easters"を反映させることにした。カトリック信仰の基盤、"Quando corpus morietur"という詩の暗闇の微妙で予想外の変化から、"Paradisi Gloria"という言葉の明るく感動的なハーモニーへ。それらは、アーメンの前、作品の終わりに、子どもたちの合唱団によって歌われる。





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キリスト教の素養のない私のようなものには、この解説を読んでも、イメージが難しいというのが率直なところです。
アルゼンチンに育ったクーラは、自然に、カトリックの宗教的な世界観を身につけて育ってきたのでしょう。作曲作品も、マニフィカトなど、聖書にもとづくものが少なくないようです。

同時にクーラは、マニフィカトの初演の際に語っていましたが、例えば聖母マリアの苦しみや喜び、不安を、現代に生きる人々とかさね合わせて解釈するなど、聖書の言葉や場面を素材としながら、今日の社会と人間性と結びつけて、自らの思いを曲に込めているようです。
次回は、コンサートの様子などを紹介したいと思います。





子ども合唱団とクーラ、指揮者のマリオ・デ・ローズ




*画像は、プラハ交響楽団のFB,合唱団のFBなどからお借りしました。
コメント (2)
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(録画編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-03-05 | ワーグナーのタンホイザー



ホセ・クーラのワーグナー初挑戦、モンテカルロ歌劇場のタンホイザーパリ版仏語上演は、大好評のうちに、無事に終了しました。
最終日の2月28日の舞台は、フランスの公共テレビ、フランス3が収録、系列のインターネット配信サイトCultureboxで世界に中継されました。日本でもたいへん良い画質、音質で順調に観賞することができました。

そして2017年9月1日まで、半年間、無料でオンデマンド視聴が可能です。

TANNHÄUSER Richard Wagner

2017年2月19日(日曜日) - 15H
2017年2月22日(水曜日) - 20H(GALA)
2017年2月25日(土曜日) - 20H(収録)
2017年2月28日(火曜日) - 20H(収録・ライブ放映)

Conductor= Nathalie Stutzmann
Directer= Jean-Louis Grinda
Set&Light= Laurent Castaingt , Costumes= Jorge Jara

Tannhäuser= José Cura
Hermann, Landgrave de Thuringe= Steven Humes
Wolfram= Jean-François Lapointe
Elisabeth, nièce du Landgrave= Meagan Miller
Vénus= Aude Extrémo
Walther= William Joyner , Biterolf= Roger Joakim , Henry= Gijs van der Linden
Reinmar= Chul-Jun Kim , Un Pâtre= Anaïs Constans




また手軽に楽しみたい方にはYouTubeの公式チャンネルにもアップされています。 → 終了 別のリンクを

"Tannhäuser" de Wagner en français - Live @ l'Opéra de Monte-Carlo



加えて、DVDもリリースされるそうです。いたれりつくれりのサービスに、感謝感激です。


劇場のFBに掲載された、収録中の様子。


舞台は、簡略なセットですが、背景に映像を使用して、非常にカラフルで、舞台設定やドラマの背景、タンホイザーの心象風景などを幻想的に映し出すもので、たいへん美しく、魅力的でした。

これまで(レビュー編)で紹介しましたが、レビューは全体として非常に好評、初演時に大失敗に終わったパリ版仏語上演を復活成功させた歴史的意義への評価とともに、ナタリー・シュトゥッツマンの指揮は高く評価されていました。

またクーラのタンホイザーへの評価も、一部に、仏語の発音や歌唱テクニックの問題の指摘、またスタイルがワーグナーではなくヴェリズモ的だとするものもありましたが、ほとんどが好評でした。
「タンホイザーのキャラクターに人間性をふきこんだ」「主人公の苦悩に焦点をあてた」など、クーラの志す、人間のリアルなドラマを浮き彫りにする現代のオペラが、この舞台でも実現したことを示唆する評もありました。

ぜひ、このユニークでエモーショナルなプロダクションをご覧ください。
以下では、(レビュー編)で紹介された後、新たに出されたレビューから、主にクーラに関する部分をいくつか抜粋しつつ、舞台の様子を紹介したいと思います。


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≪第1幕≫
麻薬と愛欲に溺れるヴェーヌスベルクでのあけくれに嫌気がさし、脱出を望み、引き留める女神ヴェーヌスを振りきろうとするタンホイザー。
非常にやわらかく歌いはじめたクーラの印象的な歌唱。






●「リスクが報われた」
「タイトルロールのホセ・クーラが印象的。彼の真のテノールは、高音からバリトンの印象まで、魅力的に変化し、無慈悲に対しての成功の願望のない闘争を表現する」「キャラクターの脆弱性を表現できている」
(「Opera-Online」)

●「刺激的で、詩的」
「ホセ・クーラはひどい風邪をひいていて、バレエの間に何度も咳をした。最悪のことを恐れたが、そんなことはなかった―― クーラは見事にタンホイザーを征服した。おそらく風邪のために、中心的なシーンの前は抑えていたが、クライマックスでは激しく歌い、アンサンブルとともに、非常に多くのニュアンスを持つローマ語りを描き、涙を抑えきれないほどだった。柔らかい色調と視覚的にも感動的なパフォーマーとして際立ち、彼はロマンチックな英雄として飛びぬけて優秀であり、依然としてハンサムな男、またフランス語においても真面目で、絶対的なプロフェッショナルだった。脱帽!」
(「OperaLounge」)


ヴェーヌスベルクを抜け出し、現実世界に戻ったタンホイザー。


喜びと悔悟の念で泣きながら祈る。



領主ヘルマンや親友ヴォルフラムとの再会し、城に戻ることを決意。


1幕最後の、復活を決意するタンホイザーと合唱は、すばらしい。



●「・・我々は、彼の最初のタイトルロールでの、ホセ・クーラの非常にカリスマ的なパフォーマンスを賞賛するだろう」「私たちは彼の(モンテカルロ歌劇場での)スティッフィリオの忘れられない解釈と、最も最近、目を奪われた非常に親密なリサイタルをおこなった、アルゼンチンのテノールとヴェルディとのつながりを想起することは避けられない。非常に美しく柔らかなボーカルライン、とてもまろやかで、ボリューム感があり、歌唱のなかに、こっそりと、ほとんどドビュッシーのようなントネーション、常に官能的」
(「Musicologie.org」)


≪第2幕≫

エリザベートと再会、彼女の耳元でささやくように歌うタンホイザー。クーラのフランス語が非常に官能的。


タンホイザーとエリザベートの二重唱。印象的でユニーク。


抱き合う二人、エリザベートを押し倒し、激しくキスするタンホイザー。その場面を、現れた領主ヘルマンも見てしまう。


歌合戦の開始を宣言する領主の話の間でも、落ち着かずにエリザベートの様子をうかがい、こっそり手をにぎるタンホイザー。


神聖な愛を歌うヴォルフラムらの様子を、タンホイザーはふんぞり返って聞き、反論する。傲慢で、自己中心的な人物像が描かれる。




ついにヴェーヌスベルクを賛美しだすタンホイザー。女神たちが現れる。


衝動にまかせて、みんなの前でエリザベートを抱きすくめ、強引にキスをし、彼女に頬を平手打ちされる。





●「クーラの声は、高音は依然として激しく聞こえるが、25年のキャリアの後も、まだ十分な広さと、強力な表現力と耐久性がある。彼の本能的で衝動的な気質は、アンチヒーローのタンホイザーに適している」
「(ConcertClassic.com」)

●「ホセ・クーラの非常に魅力的な音色、彼の勇気は癒しを支える」
(「ResMusica」)


みんなに非難されるタンホイザーを、命をかけて救おうとするエリザベート。彼女の思いに我にかえり、後悔し、ローマへの巡礼で許しを得ようと決意するタンホイザー。







●「全体のチームの歌手は、見事な言語的技巧と豊かな声で演奏した。ホセ・クーラにワーグナーオペラへのデビューを説得することができ、理想的なタイトルトールの英雄を得た。彼は、すべての音を見事に、勇敢にを歌った。ワーグナーは常に、彼の歌手にイタリアの声を要求しているが、それを、柔らかい声で、楽々と高音部でも歌ったホセ・クーラは、非常に印象的。理想的なタンホイザー!」
(「Weltexpress」)


≪第3幕≫

ローマで救いを得られず戻ったタンホイザー、ヴォルフラムと再会し、その顛末を話し始める「ローマ語り」。このドラマのクライマックス。







●「ホセ・クーラは、全体を通して弾力のある声を維持し、ローマ語りでボーカルへの要求の高まりにもかかわらず、陥る可能性があった音楽の歪みが何もなかった」「このオリジナルのパリ版を非常に丁寧に発表したモンテカルロへを賞賛する」
(「Beckmesser's Quill」)

●「タイトルロールのクーラは、耐久力とパワーを持っている。メロディラインは、時には、もう少しきれいであることができるかもしれないが、暗さとラテンの両方のカラ―は、すべての苦しみの信頼度、ローマ語りで最高潮に達する外向的な化身の芸術として、素晴らしいものだった。フランス語においても、アクセントで部分的な課題にもかかわらず、非常に正確な言葉」
(「Diapason」)


絶望し、ヴェーヌスベルクに戻ろうとする思いと、ヴォルフラムの説得との間で引き裂かれ、混乱するタンホイザー。


自らのために命をかけたエリザベートの名前を聞き、ヴェーヌスベルクの呪縛から解き放たれるタンホイザー、一方で、ヴェーヌスに手をひかれ、ヴェーヌスベルクに向かうヴォルフラム。タンホイザーはうなづき、彼の出発を見送る。





●「十分に明確なフランス語の雄弁術で、クーラは、苦悩の側面を強調し、彼の情熱と攻撃的な後悔のバースト、加えて、カリスマ的なステージ存在感。様々なカラ―、色合いで描き出されたローマ語りは、予想外に、驚くべきほどの解釈の集大成だった」
(「El cronista errant」)


ラストシーン。タンホイザーを見つけ出し、とりまいた城の人々。彼に銃口が向けられる。


終幕



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クーラは、非常な覚悟と研究でタンホイザーに立ち向かい、準備をすすめたようです。
中継で彼の歌唱と演技をみて、インタビューでクーラが語っていたことが、納得されたように思いました。
これまでも紹介しましたが、いくつか再掲します。

――私はタンホイザーと苦闘している。キャラクターのなかに意味を見いだすために、多くの労力を費やす。音楽が展開するにつれて、つぎつぎ現れ、3秒で表現されている可能性すらあるメッセージをつかみとるために。

――レトリックはワーグナーのスタイルの一部であり、その音楽の美しさは信じられないほどだ。しかし、イタリアオペラのリズムに慣れ、「リアリズム」の演技のなかにいる人間には、多くの思考が必要であり、私はバランスを見つける必要がある。



クーラの解釈と苦闘、彼が、ワーグナーのレトリックと、自らのリアリズムの間にいかにバランスを見出したのかーーぜひ、クーラの挑戦を動画で確認してみてください!

この録画を振り返って、やはりタンホイザーという、衝動的で、理想と現実、精神的なものと人間の情念、官能、欲望との間で揺れ動き、動揺する人物を描き出すうえで、クーラの表現力ゆたかな歌唱、そしてカリスマ的な存在感、舞台上の姿、説得力のある演技が、たいへん力を発揮したと思います。

単に、精神的な愛と官能とを切り離して、どちらが正しいかというのではなく、人間のなかにある両方の面、その対立、矛盾と、その両者が存在あるがゆえの、苦悩と喜びを、人間的に、リアルに、タンホイザーのキャラクターで表現したのではないでしょうか。
細かな演技をふくめ、演出家といっしょにつくっていったのだと思いますが、好色でわがまま、傲慢で、衝動的、常に揺れ動き、自己中心的だけれど、憎めない、魅力的なタンホイザーでした。

とりわけ、3幕は、やはりクーラの本領発揮。長年、キャラクターのリアリズムとドラマを描き出すことに執念を燃やしてきたクーラならではだったと思います。
もちろん、オテロやトスカなど、クーラが長年歌ってきた役に比べれは、これはまだ第一歩にすぎません。この先、クーラがどう進むのか非常に興味深いです。

クーラは、2/28にモンテカルロでタンホイザーの最終日を終え、すでに2日後の3/2には、もうプラハで、プラハ交響楽団とのコンサートにむけて、リハーサルに入っています。今度は作曲家・指揮者として、3/8,9にコンサートを予定しています。
さらに、その次は、5月にボン劇場で、これも初のピーター・グライムズの演出と主演があります。これは来年、モナコでも上演するようです。

タンホイザーの疲れも見せず精力的なクーラ。やはり、自分の芸術的な信念をつらぬき、長年の夢を実現して、やりたいことをやっているからこその、充実ぶりです。あらたな黄金期を迎えていると、ファンの1人として実感します。





FBに紹介されたカーテンコールの様子。



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(DVD告知編) 2016 ザルツブルク復活祭音楽祭オテロ Salzburg Easter Festival 2016 Otello / Jose Cura

2017-03-03 | ザルツブルク復活祭音楽祭2016のオテロ



2016年のザルツブルク復活祭は、故ヨハン・ボータの病気によるキャンセルで、急きょ、ホセ・クーラがティーレマン指揮のオテロに出演しました。この舞台が、DVDになるというニュースが飛び込んできました!

 *3/8追加 アマゾン、HMVなどで予約受付が始まりました。DVDとブルーレイあり。2017年4月30日発売、日本語字幕・解説ありだそうです!
  → アマゾン     → HMVのページ

➡ 4/26追加 輸入盤はすでに4月19日に発売開始、日本語パンフレットがつく盤は30日発売のようでした。私がHMVに予約注文しておいた輸入盤は数日前すでに到着!日本語字幕もありました。それについてはまた紹介するつもりです。


これまでも何回か、紹介してきましたが、ティーレマンの指揮、衣装もファッション・デザイナーのクリスチャン・ラクロアが担当するなど、たいへん豪華な舞台でした。一方、とりわけ演出を中心に、賛否が別れたプロダクションでもありました。

しかし、いろんな条件があるなかでも、クーラはいつものように、全力投球でオテロの人間像をリアルに描き出す努力をしたと思います。十分に見ごたえのある演技と歌唱、そして美しい舞台でした。

詳しい情報については、これまでの投稿をご覧ください。
 → (告知編)  (リハーサル編) (レビュー編)


2016年ザルツブルク復活祭音楽祭 2016年3月19、27日

Christian Thielemann =Conductor
Vincent Boussard =Stage director
Vincent Lemaire =Stage designer
Christian Lacroix =Costume designer
Guido Levi =Lighting designer / Isabel Robson =Video designer
Jörn Hinnerk Andresen =Chorus master / Stefan Ulrich Dramaturg

José Cura =Otello
Dorothea Röschmann =Desdemona
Carlos Álvarez =Iago
Benjamin Bernheim =Cassio
Christa Mayer =Emilia / Georg Zeppenfeld =Lodovico
Bror Magnus Tødenes =Rodrigo / Csaba Szegedi =Montano / Gordon Bintner =Araldo





発売元は、ドイツの映像レーベルのCメジャー(「CMajorEntertainment」)。
YouTubeに、告知の動画が掲載されています。


Verdi: Otello from Osterfestspiele Salzburg



発売時期や価格、字幕の種類など、詳細については、現時点(2017/3/3)では不明です。
たぶん、日本でも発売されると思いますが、「CMajorEntertainment」のHPに、ウェブショップがあるようですので、少なくともそこで購入はできそうです。


クーラのオテロが正規の映像化されるのは、2006年のリセウ大劇場でのオテロ以来、10年ぶりです。


リセウ大劇場がアップしている動画、第3幕、デズデモーナへの疑念にかられ、自分を追いつめていくオテロ。
OTELLO de Giuseppe Verdi (2005-06) "Dio ti giocondi" (Acto 3)



2006年のクーラは、さすがに若いですね。でも1997年にアバド指揮でオテロとしてロールデビューしてから、約10年歌い続け、充実の演技・歌唱です。




そしてこちらは、2016年のザルツブルクのクーラ。髪や髭は白くなり、本来のオテロの年齢になって、解釈や歌唱、演技もさらに円熟し、深まりをみせています。




近日発売のようですが、できれば日本語字幕付きで発売されることをお願いしたいと思います。






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