人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

ホセ・クーラ 初期の歌声 その2 Jose Cura early days 2

2016-06-12 | 初期の歌声


以前、「ホセ・クーラ 初期の歌声」で、1991年の渡欧から1995年頃までの録音や動画を紹介しました。今回は、その続きです。

1990年代後半は、テノールとしてホセ・クーラが世界に進出し、大きな注目を集めた、飛躍の時期でした。
クーラ自身、30歳代の半ばを迎え、体力的にも、声、舞台上の存在感、演技も充実し、それまでの努力と才能が、大きく花開いたといえるのではないでしょうか。世界の著名なオペラハウスにつぎつぎデビューを果たしました。
この時期は、注目すべきロールデビューや劇場デビューなどが多くて、紹介しきれません。そのうちのいくつかを紹介します。

詳しくは、クーラの略歴を参照してください。

●1995年 ロンドン・ロイヤルオペラハウス(ROH)デビュー
95年、ヴェルディ初期のオペラ、スティッフェリオでROHにデビューしました。
中年の聖職者が妻の不倫に悩み苦しむ話で、32歳のクーラのデビューには、あまりふさわしい感じがしませんが、これにはわけがあります。当初ホセ・カレーラスが出演予定でしたが、キャンセル、それで若いクーラに、ROHデビューのチャンスが回ってきたのでした。
音声だけで、それもあまり良くありませんが、懸命で初々しい歌唱という印象です。

ヴェルディ スティッフェリオより、第1幕 スティッフェリオと妻リーナとの二重唱
Jose Cura 1995 Stiffelio Act1 duet



●1996年 ウィーン国立歌劇場デビュー
クーラのウィーンデビューは、プッチーニのトスカ、カヴァラドッシでした。
これも録音のみで音質はよくありませんが、のびやかな歌声です。

プッチーニ トスカより、第1幕 カヴァラドッシのアリア「妙なる調和」
Jose Cura "Recondita armonia" 1996 Tosca



●1996年 ムーティ指揮、ラヴェンナでのカヴァレリア・ルスティカーナ出演
クーラが「最愛のトゥリッドゥ」とよぶカヴァレリアの主人公。たぶんこの時がロールデビューではないかと思います。みずみずしい歌唱と一途な青年にふさわしい風貌、演技がつよい印象を残します。

マスカーニ カヴァレリア・ルスティカーナ 元恋人で人妻のローラを思って歌う「おお、ローラ」
José Cura "O Lola ch'ai di latti la cammisa" Cavalleria Rusticana


トゥリッドゥと恋人サントゥッツァの二重唱 ヴァルトラウト・マイヤーと
Jose Cura - Mascagni



●1996年 ローマ歌劇場でマスカーニのイリス、オーサカ役で出演
日本が舞台の悲劇です。白塗り、まげ、着物の何とも言えない姿ですが、難易度の高いアリア「窓を開けて」をらくらくと歌い、オケからも喝采を受けています。
Mascagni Iris/ Jose Cura - "Apri la tua finestra!"



●1997年 ジョコンダでミラノ・スカラ座デビュー
91年にイタリアに渡ったクーラが、オーディションでもエージェントまわりでも認められず、最後の望みとして紹介されたテノールのフェルナンド・バンデラに会ったのがミラノでした。ようやくひとすじの希望がつながった、その時から、6年後のスカラ座デビューです。
ポンキエッリのジョコンダ 第2幕 エンツォとラウラの二重唱
Jose Cura Gioconda 1997 (very beautiful love duet)



●1997年 トリノでヴェルディのオテロ デビュー
衝撃のオテロデビューとなった、アバド指揮、ベルリンフィル、オルミ演出の舞台。ドミンゴのキャンセルを受けてのことでした。世界に生中継されました。
詳しくは、以前の投稿「1997年 アバド指揮、ベルリンフィルとオテロデビュー」で紹介しています。
ここでは、第2幕 ライモンディのイアーゴとオテロの二重唱 "Si, pel ciel・・"を。
José Cura "Si, pel ciel marmoreo giuro!"



●1998年 東京・新国立劇場の会場記念公演ヴェルディのアイーダ
忘れるわけにはいけない、日本デビュー、ゼッフェレッリ演出のアイーダのラダメス。
こちらの投稿でも紹介しました → 1998年新国立劇場の開場記念 ヴェルディのアイーダ
マリア・グレギーナとの第3幕の二重唱を。
Jose Cura , Maria Guleghina  "Pur ti riveggo mia dolce Aida"



●1998年 パレルモでアイーダに出演
東京でのアイーダの同じ年に、パレルモでもラダメスを歌いました。これも、パヴァロッティのキャンセルを受けての出演だったようです。
ヴェルディ アイーダ 第1幕のラダメス「清きアイーダ」
Jose Cura amazing! "Celeste Aida" Palermo 1998



●1999年 ニューヨーク・メトロポリタンオペラ劇場(MET)デビュー
90年代最後としてMETデビューを紹介したかったのですが、残念ながら、音源も動画もありません。
いずれ見つけることができたら、ここにいれたいと思います。
METデビューが開幕初日だったのは、カルーソー以来、2人目だったそうです。カヴァレリア・ルスティカーナのトゥリッドウでの出演でした。







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90年代後半のクーラに、たいへんな勢いがあったことが、こうしてちょっと振り返るだけで痛感されます。
チャンスをつぎつぎに自分のものにし、階段を上り、歌唱、演技の面でも、成長していく様子がわかります。
この時期の充実ぶりの一方で、実は、クーラ自身は悩みを深めていました。
それが90年代末から2000年代初頭の、ある決断と苦闘の時期につながります。
その内容と経過については、クーラ自身のインタビューなどから、「ホセ・クーラ スターダム、人生と芸術の探求」にまとめました。

飛躍の時期、そして苦悩と決断の時期をへて、キャリアを自分自身でコントロールし、現在も、さらなる芸術的な円熟へと向かっています。











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ホセ・クーラ 初期の歌声 Jose Cura early days

2016-03-07 | 初期の歌声


ホセ・クーラの魅力の1つは、やはりその声ではないでしょうか。指揮者・作曲家をめざしていたクーラに、母国の恩師は、「君のような声は30年に1人しかでない」と言い、経済的に苦しいクーラに無料で歌のレッスンをしてくれたそうです。
クーラの声は、年とともに円熟し、重くなり、オペラの解釈を深まりとともに劇的なパワーと表現力を高めていますが、また一方で、若い頃の声は、レーザービームのような、天まで貫くかのように輝かしく、忘れがたい魅力をもっています。

クーラは1991年にアルゼンチンからイタリアに渡り、国際的なキャリアを歩み出しました。そのごく初期の歌声、1991年から95年までの録音、映像を、Youtubeなどから紹介します。
もちろん正規の録音ではなく、しかも古いため、画質、音質が悪いことをあらかじめお断りしておきます。ただし少し我慢して聞いていただければ、若いクーラの声の魅力を実感していただけるものと思います。
 →クーラの略歴も参考にごらんいただけるとうれしいです。

●渡欧の年 はじめてのコンサート
イタリアに渡った年1991年の7月、ジェノヴァで欧州初のコンサートに出演しました。ヴェルディの椿姫「乾杯の歌」、指揮はマルコ・アルミリアートです。
クーラが最近開始した動画サイト「ホセ・クーラTV」に掲載されました。同じ日のノルマからのデュエットもあります。
 →JOSE CURA TVの動画リンク


●1993年―はじめて主要な役でデビュー
この年、はじめてオペラの主要な役でデビューがかないます。ヤナーチェク「マクロプロス事件」のアルベルト役。イタリアのトリノです。Youtubeには他にも同じ舞台の映像がいくつかアップされています。
Janácek - The Makropulos Case - II act Part 3 Raina Kabaivanska, Jose Cura




ドイツでしょうか、TV番組に出演し、プッチーニのトゥーランドット「誰も寝てはならぬ」を歌っています。きらきらするような声の響きが独特です。
Jose Cura 1993 "Nessun dorma"


●1994年―オペラリアで優勝
94年、プラシド・ドミンゴが主宰するオペラリアに優勝します。この頃を期に、メジャーな劇場への出演、主役としてのロールデビューが相次ぐようになります。

オペラリアで、プッチーニの西部の娘より「やがて来る自由の日」。司会はダイアナ・ロス。
Jose Cura 1994 "Ch'ella mi creda" La fanciulla del West




●1995年――ロンドンやパリのオペラ座にデビュー
メジャーな劇場に主要な役で出演するようになります。この年、ロンドンのロイヤルオペラに、ヴェルディ「スティッフェリオ」のタイトルロールでデビュー、またパリ・オペラ座 オペラ・バスティーユにデビューしました。

オペラ・バスティーユ ヴェルディ「ナブッコ」イズマエーレ
Jose Cura 1995 Nabucco " Fenena! ... O mia diletta! "


ジョルダーノのフェドーラ ロリスのアリア「愛さずにいられないこの思い」。歌い終わった後、拍手とブラボーの声が止まらず、無理やり再開しています。
Jose Cura "Amor ti vieta di non amar" 1995 Fedora


ロイヤルオペラ ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」ガブリエーレ(音声のみ)
Jose Cura Simon Boccanegra 1995 Duo Amelia & Gabriele


この翌年には、ウィーン国立歌劇場にデビューするのをはじめ、ぞくぞく主役デビューが続きます。その先はまた、いずれ紹介したいと思います。

             

*写真はクーラのHPなどからお借りしました。
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