人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(録画編・放送緊急告知編) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2020-11-19 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017





*再追加

2017年に生放送されたものの再放送だと思い込んでいましたが、微妙にカメラアングルも演技も違っていると感じ、調べてみたところ、別の日の舞台の収録でした。2017年12月13日の公演です。2日分収録して放送してくれるとは、コロン、太っ腹です!

*追加

録画放映された、2017年の12月のアルゼンチン・テアトロコロンのオペラ、ホセ・クーラ主演のアンドレア・シェニエ、劇場の公式YouTubeチャンネルで、引き続き視聴可能です!! 

いつまで視聴可能かわかりません。素晴らしい公演ですので、ぜひご覧になってみてください。

 

 

 


 


2017年の12月に上演されたアルゼンチン・テアトロコロンでのオペラ、ホセ・クーラ主演のアンドレア・シェニエが録画放映されます。

当時もライブ放映されましたが、コロナ禍で2020年シーズンの公演を停止せざるをえない現在、テアトロコロンでは積極的に録画の放映に取り組んでおり、その一環として、クーラのシェニエも再放送されることが決まりました。

緊急ですが、日時は、2020年11月15日(日)20:00~(現地時間)。

直前!のことで恐縮ですが、アルゼンチンとの時差の関係で、日本時間では、2020年11月16日(月)8:00~。月曜日の朝の放送になります。

テアトロコロンのライブ放送サイトで視聴できるほか、コロンのYouTubeチャンネルFBツイッターなどでも視聴可能なようです。

*画像にリンクをはっています。

 

2017年当時、ライブ放送を視聴した私としては、演出はとてもオーソドックスですが、出演者たちによる素晴らしい熱演によって、歌唱と演技、ドラマに集中でき、本当に素晴らしい公演だったと思います。クーラも絶好調。熟年コンビではありますが、マッダレーナとの相性も抜群で、シェニエの人間像とドラマを演技と表現力豊かな歌唱で描き出しつくしたと感じました。

告知がぎりぎりになってしまい申しわけありませんが、また平日の朝ということですが、興味をお持ちの方はぜひご視聴をくださいませ。

*もしかするとYouTubeではしばらくオンデマンド可能になるかもしれません。期待しています。

 

なお、この公演については、2017年当時にもこのブログで紹介しています。いくつかの記事がありますので、よろしければご参照ください。

  → テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017

 

 


 

 

●テアトロコロンのライブ放送のページ

 

 

●テアトロコロンYouTube公式チャンネル

 




 

●テアトロコロンのFB

 

 

 


 

 

●プロダクション紹介のページ

 

 

 

DIRECTOR MUSICAL INVITADO = Christian Badea , DIRECTOR MUSICAL = Mario Perusso *
DIRECTOR DE ESCENA = Matías Cambiasso , DISEÑO DE ESCENOGRAFÍA = Emilio Basaldúa , SUPERVISOR DE VESTUARIO = Eduardo Caldirola
DISEÑO DE ILUMINACIÓN = Rubén Conde , DISEÑO DE COREOGRAFÍA = Carlos Trunsky
DIRECTOR DEL CORO ESTABLE DEL TEATRO COLÓN = Miguel Martínez , ASISTENTE DE DIRECCIÓN ESCÉNICA = Ángela Boveri
ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Oscar Vázquez , SEGUNDO ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Carolina Basaladúa , ASISTENTE DE ILUMINACIÓN = Ariel Conde


ANDREA CHÉNIER = José Cura
CARLO GERARD = Fabián Veloz
MADDALENA = María Pía Piscitelli
BERSI = Gaudalupe Barrientos
MATHIEU = Hernán Iturralde
ROUCHER = Emiliano Bulacios
INCREDIBILE = Sergio Spina
CONDESA COIGNY = Cecilia Aguirre Paz
MADELON = Alejandra Malvino , FLEVILLE = Noberto Marcos , ABATE = Iván Maier

 

 

●紹介動画

 

ーーリハーサルの様子とクーラのインタビューを紹介

 

ーープロダクション全体の抜粋動画

 

ーー報道より




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(ライブ中継無事終了) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-12-31 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017





報告が遅くなりましたが、ホセ・クーラ、2017年最後の出演、故郷アルゼンチンのテアトロコロンでのアンドレア・シェニエが無事、終了しました。
そして最終日の12月16日(日本時間では17日の朝8時開演)の舞台は全世界にむけてインターネットでライブ中継されました。

当初、回線の状況を心配していましたが、私の自宅PCでは、数回程度、動画が短時間ストップしたり、画質が粗くなったところがあったものの、全体としてはかなりスムーズに、画質も音質も良好で、視聴を楽しむことができました。各演目ごとにライブ中継を実施してくれるテアトロコロンには、地球の反対側から感謝を伝えたいと思います!

中継の様子や簡単な感想をすぐに掲載しようと思っていたのですが、つい繰り返し録画、録音を聞いてライブ中継の余韻に浸っていたために、すっかり遅くなってしまいました。それくらい今回のシェニエの中継は、私にとってはクリスマスプレゼントとお年玉を一度にもらったような(笑)、宝物になりました。本当に素晴らしい公演だったと思います。何といってもクーラの声の魅力と迫力、演技と存在感、そして堅実で実力ある共演者に恵まれて、激動の社会で信念を貫いたシェニエの人間像が浮き彫りになり、革命と愛、死をめぐるドラマに圧倒されました。






DIRECTOR MUSICAL INVITADO = Christian Badea , DIRECTOR MUSICAL = Mario Perusso *
DIRECTOR DE ESCENA = Matías Cambiasso , DISEÑO DE ESCENOGRAFÍA = Emilio Basaldúa , SUPERVISOR DE VESTUARIO = Eduardo Caldirola
DISEÑO DE ILUMINACIÓN = Rubén Conde , DISEÑO DE COREOGRAFÍA = Carlos Trunsky
DIRECTOR DEL CORO ESTABLE DEL TEATRO COLÓN = Miguel Martínez , ASISTENTE DE DIRECCIÓN ESCÉNICA = Ángela Boveri
ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Oscar Vázquez , SEGUNDO ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Carolina Basaladúa , ASISTENTE DE ILUMINACIÓN = Ariel Conde

PRINCIPALES INTÉRPRETES
ANDREA CHÉNIER = José Cura
CARLO GERARD = Fabián Veloz
MADDALENA = María Pía Piscitelli
BERSI = Gaudalupe Barrientos
MATHIEU = Hernán Iturralde
ROUCHER = Emiliano Bulacios
INCREDIBILE = Sergio Spina
CONDESA COIGNY = Cecilia Aguirre Paz
MADELON = Alejandra Malvino , FLEVILLE = Noberto Marcos , ABATE = Iván Maier


●クーラのシェニエ――ライブ映像から

今回の演出は、急きょ演出家の交代があったりしたために、基本的にオペラの台本に忠実で、セットはシンプル、衣装も歴史的なものでした。
演出やセットに刺激や意外性がないだけに、出演者のパフォーマンスの出来に公演の成否がかかるわけですが、クーラはじめ、主な共演者、コーラスとも演技も歌も大熱演で、集中して鑑賞できました。
いくつか画像と、またYoutubeにシェニエとマッダレーナの二重唱がアップされていたので紹介したいと思います。


≪第1幕≫

第1幕、シェニエのアリア「ある日青空を眺めて」、クーラは伸びやかに、余裕をもって歌いました。アルゼンチンの国旗の色でもあるスカイブルーの衣装も美しく、白髪交じりのクーラの髪が衣装の色に合って、凛々しい詩人ぶりでした。後半は非常に激しく、クーラがオペラにおける「プロテスト・ソング」と指摘するとおり、貴族社会の欺瞞と偽善を暴く情熱的な歌唱だったと思います。







≪第2幕≫

第2幕は、友人ルーシェとのやりとり、そして再会したマッダレーナと愛を確認しあう美しい二重唱と、見どころの多い幕です。クーラがきめ細かな演技をしながら、とても柔らかく、美しく歌ったのが印象的でした。








シェニエとマッダレーナとの二重唱。困難な境遇に追い詰められた2人が再会し、つよい絆と愛情を結ぶシーン。とても美しく、また愛を歌いながら、死への恐怖を克服し、ともに運命に立ち向かう決意を語り合う、とても激しくつよい意志の込められた歌唱です。

Andrea Chenier Act II duet: Ecco l altare



≪第3幕≫

裁判で反革命の汚名をきせられ、自分はペンを武器に偽善者とたたかってきた、裏切り者ではない、運命は死へと向かうのだろうか、しかし名誉は残してくれ、と誇り高く激しく訴えるシーン。こういう場面のクーラの存在感、ドラマティックな歌唱と演技はやはり抜群だと思います。










≪第4幕≫

第4幕は圧巻でした。クーラの「五月の晴れた日のように」は非常に柔らかく優しく歌い出し、死を覚悟したシェニエの絶望と諦観、生と愛へ渇望を表現しました。
そしてラスト、マッダレーナとの二重唱は、本当に感動的でした。マッダレーナ役のイタリアのソプラノ、マリア・ピア・ピスチテッリさんがまた、ベテランで演技、歌唱とも非常に素晴らしく、クーラのシェニエと相性も非常に良かったと思います。彼女の切々とした歌唱は胸を打ちました。
最後の二重唱は、死を前にして愛を賛美する内容で、あまり盛り上げすぎると、盲目的な愛の賛歌のような印象になってしまい、現代的な視点からはちょっとどうかなと思うシーンでもあります。しかし2人の演技と歌唱は、非常に控え目で、抑えがちでありながら、悲劇的な運命に立ち向かい、愛の力で、2人で最後まで、生をいとおしみ、意志をつらぬいてゆくという決然とした姿がつよく印象に残りました。崇高で凛々しいシェニエとマッダレーナ、魅力的でした。











最後の二重唱の動画です。

Andrea Chenier final duet: Vicino a te





●もしかすると再放送が?

クーラが終演直後に、ドレッシングルームからあげた写真です。これはFBのものですが、インスタの投稿には、ビデオストリーミングがあるというクーラのコメントがついていました。もしかすると、再放送があるのかもしれません。

“テアトロコロンの私のドレッシングルームから。シェニエは終わった。任務完了!
 そこにいなかった人のために、ビデオ・ストリーミングがある。後ほどお知らせがあるだろう。
 明日、自宅に帰って、子どもたちとペットに!  Peace & Love!”





今回のシェニエ、クーラは公演初日に55歳の誕生日を迎えました。テノールとしてはキャリアは終盤に差し掛かっているといえるでしょうが、声はまだまだ艶やかで響きが美しく、若い頃よりもさらに表現力が増しているように思います。そして演技、存在感、役柄の解釈と合わさって、総体として素晴らしいシェニエだったと思います。

今年もまもなく終わります。世界でも日本でも、大変に厳しい年であり、また困難ななかに、希望の光も見えた年でもありました。
クーラのシェニエの解釈は非常に現代的です。このオペラをつうじて、世界の変革を求める人々と、それを押しとどめようとする体制、偽善者の姿、そして変革が歴史のうねりのなかで逆流となった激動の時代、その時の人間像を描こうとしています。その時々にどう生きるのか――いかなる圧政に対しても、自由を求め、信念を貫き、人を愛し、恐れずに運命に立ち向かう人間像を、クーラは、シェニエそのものが生き、革命と人生、愛と死を歌っているかのように演じてくれました。
年の終わりにこのようなクーラのシェニエを見ることができて、喜びと感謝の思いでいっぱいです。


テアトロコロンは、SNS上でも繰り返しライブ放送の告知を発信していました。以下は劇場の告知用画像です。
コロンは2500席プラス立見席という巨大劇場ですが、ライブ放送で映った様子だとほぼ満席。観客の反応も非常に良く、クーラをはじめ、すべての出演者が大喝采を受けていました。
DVDなどで正規の動画がリリースされることをつよく願っています。









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(ライブ中継告知) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-12-14 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017




ホセ・クーラが出演中のテアトロコロンのアンドレア・シェニエ。ようやくライブストリーミングの情報が入ってきました。
12月16日(土)20時から(現地時間)の最終日が、インターネット中継されるようです。
無料で、だれでも聞くことができます。太っ腹のテアトロコロンに感謝です。


全6公演中、4公演がクーラ出演で、すでに3公演を終えました。クーラはコンディションが非常に良いようで、レビューも多くが高く評価していました。ツイッターやインスタ、FBにもたくさんの情報がアップされ、聴衆の期待と反響の大きさがうかがえます。「クーラの声の状態の良さには驚かされた」などの声もありました。

ただ、アルゼンチンは日本とは地球のちょうど反対側、あまりに遠いために、ストリーミングが順調に視聴できるかどうか、その点にはたいへんに不安があります。以前、2015年にクーラ演出のカヴァレリアと道化師がテアトロコロンからラジオ中継された時は、まだ映像配信はなく、音だけでしたが、私の家の機器や通信状況の問題のせいもあり、音質があまり良くなく、残念だった記憶があります。ただ現在では、ネットでのストリーミングが当たり前の時代になっていますので、いろんな面で改善されていることを願っています。


●放送日時

12月16日(土)20時から(現地時間)。日本とアルゼンチンの時差はちょうど12時間です。
ライブストリーミングは日本時間で、12月17日(日)8時(朝)からとなります。視聴しやすい日時で助かります。


●視聴できる場所

テアトロコロンのサイトのライブ放送のページでストリーミングされるようです。
下の画像をクリックするとリンクしています。つながらない場合は、テアトロコロンのHPから入って、上部のタブ"VIVO"をクリックしてください。






DIRECTOR MUSICAL INVITADO = Christian Badea , DIRECTOR MUSICAL = Mario Perusso *
DIRECTOR DE ESCENA = Matías Cambiasso , DISEÑO DE ESCENOGRAFÍA = Emilio Basaldúa , SUPERVISOR DE VESTUARIO = Eduardo Caldirola
DISEÑO DE ILUMINACIÓN = Rubén Conde , DISEÑO DE COREOGRAFÍA = Carlos Trunsky
DIRECTOR DEL CORO ESTABLE DEL TEATRO COLÓN = Miguel Martínez , ASISTENTE DE DIRECCIÓN ESCÉNICA = Ángela Boveri
ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Oscar Vázquez , SEGUNDO ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Carolina Basaladúa , ASISTENTE DE ILUMINACIÓN = Ariel Conde

PRINCIPALES INTÉRPRETES
ANDREA CHÉNIER = José Cura
CARLO GERARD = Fabián Veloz
MADDALENA = María Pía Piscitelli
BERSI = Gaudalupe Barrientos
MATHIEU = Hernán Iturralde
ROUCHER = Emiliano Bulacios
INCREDIBILE = Sergio Spina
CONDESA COIGNY = Cecilia Aguirre Paz
MADELON = Alejandra Malvino , FLEVILLE = Noberto Marcos , ABATE = Iván Maier


テアトロコロンがアップした、指揮者のインタビュー動画です。舞台の様子も観ることができます。

Andrea Chenier | Christian Badea



こちらはテアトロコロンのフェイスブックにアップされた動画。劇場の天井を中心に映していますが、かつて世界3大歌劇場といわれたその美しさ、豪華絢爛さを実感することができます。

 

 



テアトロコロンの2017年シーズンをしめくくる最後の演目の最後の公演。クーラをはじめとするキャストが好調を維持して、良いパフォーマンスをくりひろげてくれることを心から期待しています。





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(インタビュー編) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-12-12 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017




ホセ・クーラは現在、テアトロコロンの2017年最後の演目であるアンドレア・シェニエに出演中です。(12月5、10、13、16日)
母国滞在中に、何度か現地メディアのインタビューにこたえています。どれもスペイン語ですが、今回紹介するものは、クーラのシェニエ論、シェニエと現代社会、オペラの発展とヴェリズモについて、オーケストラの楽器とチューニングの問題など、とても興味深い内容です。不十分な語学力を承知のうえで抜粋して訳してみました。誤訳直訳、お許しください。


なお今回の公演については、これまでに、リハーサルや初日の様子、事前の経過などをいくつかの記事で紹介しています。 
また、クーラが以前、アンドレア・シェニエの解釈について語った内容もまとめています。合わせてお読みいただければありがたいです。




ホセ・クーラ:世界の偽善に対する言葉

テノールはテアトロコロンの今シーズンの幕を閉じるオペラの主人公、フランスの詩人、アンドレア・シェニエ(AndreaChénier)との関係を語る。

アルゼンチン人のテノールであるホセ・クーラは、マルセロ・アルバレスが劇場との契約解除を決めた後、テアトロコロンの新演出であるそのオペラを選択した。クーラは、世界で最も認知されたテノールの1人であり、ヴェリズモのレパートリーとの親和性が非常に高い。彼のカヴァレリア・ルスティカーナと道化師のデュオのビジョンは、おそらく究極のヴェリズモの表現であり、それは2015年のテアトロコロンでの公演だった。

ウンベルト・ジョルダーノのオペラ、アンドレア・シェニエは、フランス革命でギロチンにかけられたフランスの詩人の人生にもとづくもので、テアトロコロンの2017年シーズンの最後の演目。元のキャストに重要な変更が加えられたが、それはタイトルロールだけではなく、演出もルクレシア・マルテルの手からマティアス・カンビアッソの手に渡った。 (「Clarin.com」)



――それは特別なキャラクター:時代に抵抗する詩人
 
(クーラ) 2つの側面がある。一方はロマンチックな詩人、もう一方はヴェリスモの時代のスタイル。
ヴェリズモはよりドラマティックで、より直接的なモードを持っているため、その2つは相容れないスタイルであり、さらにハードなオーケストレーションによって、より「迷惑」な面がある。また、もっと甘く歌いたい場面があるが、多くのメタリックなものがあるのでできない時がある。そしてそのことは、よりロマンチックで夢みるキャラクターに逆らっている。しかし台本はその通りであり、第3幕では、アリア(実際には独白)で、「私は兵士であり、私の武器はペンであった」と語る。その時、シェニエはこう言っている。「十分だ。彼らのように私も言うべきことを言う。もし望むのなら、私を殺せばよい」と。



――ルクレシア・マルテルは演出から降りることに決めた。彼女が提案したものは何も残っていなかった?

私は彼女が何を考えていたのか、公表されたコメント以上のことはわからない。
・・(別の人がデザインした)非常に効果的なセットは変更されていない。
・・
幸運なことに、マティアス・カンビアッソ(最終的な演出家)は、劇場での素晴らしい経験をもつ人。彼は最初の日、私たちに「仕事の徹底的な研究をする時間がなかった」と言った。私たちがやっていることは、彼の素晴らしい経験と、私たち全員の豊かな経験にもとづいている。


――シェニエのキャラクターは?

シェニエは、今日、起こっていることを照らし出すうえで、非常に興味深い。それは偽善の婉曲表現である「ポリティカル・コレクトネス」についてだ。彼は自分の名前で物事を明らかにしたために首を切られた。ほとんどのアーティストと同様に、彼はある種の革命を守った。なぜなら、アーティストが正直であり、政治的に操作されていないならば、変革に賛同する立場にあるからだ。シェニエはそれについて語っている。「ある日、青空を眺めて(Improvviso)」(第1幕)は、ボブ・ディランがやったように、抗議の歌(プロテストソング)だ。シェニエは、司祭と役人たちすべてを前にして、彼らは偽善者であると伝える。





――しかし魅力的な変化ではなく、恐怖政治で終わるが?

それがキャラクターの面白さの理由だ。冒頭、彼が告発したのと同じように、彼が守ったものが、彼が批判したものと同様に危険に見え始めると、彼はそれについても告発する。だからこそ彼の友人は、(敵ではない)彼の頭を切り落した。そして違いは、あなたの頭が切断される時、敵が体を傷つけるのではなく、友人がそれを切り落とすとき、それはあなたの魂を傷つけるということだ。物語は、今日起こっていることに照らして非常にモダンだ。


――いつも、アンドレアシェニエの音楽の失敗が話題になるが、それについてはうんざり?

オペラで起きる雰囲気は、闘牛やサッカーのようなもの。そこでは不快感を伴う情熱がカクテルに変わる。
ヴェリズモは、"通常の"ロマン派オペラの成果、例えばヴェルディに到達していないのは事実だ。しかし、ヴェルディとワーグナーに達するには200年にわたる進化があり、これまでのすべての作曲家がそこを通過している。ヴェリズモは、音楽を作る方法への反作用として生まれ、それは模索である。その誕生は物議を醸し、平静なものではなく、むしろ伝統に対する反発だった。 その後、アーリゴ・ボーイトがリードしていたヴェリズモが、ヴェルディに影響を与えた。しかしヴェリズモには成熟する時間がなかった。それが洗練されなかった理由だ。ピエトロ・マスカーニは長年活動していたので洗練された。彼の最後のオペラには素晴らしい豊かな色彩がある。イリスは素晴らしい。ヴェリズモが始まったとき、フランスで印象派が始まり、シェーンベルクがオーストリアに登場した。吸収することがたくさんあった。1900年以降、素晴らしい達成があった。ジャコモ・プッチーニが、「マダムバタフライ」、「トスカ」、「西部の娘」などのオペラを驚くほどの密度で作曲し、「三部作」(1918年「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」)、「トゥーランドット」において音楽的色彩を豊かに洗練した。


――しかし今日でも、「トゥーランドット」の歌手のすべての声を聞くことはまだ不可能だ。オーケストラが勝つ。同時に柔軟かつ大きな声を見つけることも困難だ。

問題は、楽器が構築される方法と材料にある。腸で作られたガットから金属製の弦に変わり、私たちは半音を上げて演奏している。これらの楽器は非常に明るい響きをもっている。作曲家が望んでいたことをするのは、そのハーフトーンを下げることではないだろうか?これは音に到達することについてではなく、今、オリジナルよりも半音高くなっているその音についてのことだ。今日の歌手については、1950年代の歌手のように柔軟性をもって歌わないということが主張されている。これらのアーティストが素晴らしい声を持っていたことは事実だが、しかしまた、現在では、すべてのチューニングをハーフトーン上げていることを考慮しなければならない。それらの伝説の歌手たちがその柔軟性をもって半音高く歌えるかどうかはわからない。もし人々がこのことについて関心を持っているのなら、私はそのシステムを問題にしていくよう問いかけるだろう。喉頭には登るための留め金はないのだから。ノートは作られているが、すべての上の半音は少しタイトだ。私は最近、435Hzのチューニングで演奏するイギリスのオーケストラとともに歌った。すべてが変わった。その言葉はチューニングによって理解される。ヴェルディは432Hzを好み、その周波数の声の音は、最大50人のミュージシャンのオーケストラで、テキストを理解し、歌手が強制しない柔軟性を持っていると主張していた。
(補足*現在では440Hzが基準とされていますが、実際にはもっと高い442~445Hzで演奏されることが多いそうです)


――なぜ今日では、80名以上のミュージシャンがオーケストラに参加している?

楽器の音がとても明るいため、バランスをとるためにはより多くが必要になるためだ。この問題は、歌手に向かって叫ぶことに限ったことではない。それほど単純なことではない。これはすでにマリア・カラス、プラシド・ドミンゴによって指摘されていたことだ。





*画像は劇場関係のFBなどからお借りしました。
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(初日編)ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-12-08 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017




ホセ・クーラが主演するアンドレア・シェニエ、12月5日、母国アルゼンチン・ブエノスアイレスのテアトロコロンで無事に初日が終了しました。
観客の反応も素晴らしく、大成功だったようです。いくつかレビューも出ていますので、後日また紹介したいと思います。







DIRECTOR MUSICAL INVITADO = Christian Badea , DIRECTOR MUSICAL = Mario Perusso *
DIRECTOR DE ESCENA = Matías Cambiasso , DISEÑO DE ESCENOGRAFÍA = Emilio Basaldúa , SUPERVISOR DE VESTUARIO = Eduardo Caldirola
DISEÑO DE ILUMINACIÓN = Rubén Conde , DISEÑO DE COREOGRAFÍA = Carlos Trunsky
DIRECTOR DEL CORO ESTABLE DEL TEATRO COLÓN = Miguel Martínez , ASISTENTE DE DIRECCIÓN ESCÉNICA = Ángela Boveri
ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Oscar Vázquez , SEGUNDO ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Carolina Basaladúa , ASISTENTE DE ILUMINACIÓN = Ariel Conde

PRINCIPALES INTÉRPRETES
ANDREA CHÉNIER = José Cura , Gustavo López Manzitti *
CARLO GERARD = Fabián Veloz , Leonardo Estévez *
MADDALENA = María Pía Piscitelli , Daniela Tabernig *
BERSI = Gaudalupe Barrientos , María Luján Mirabelli *
MATHIEU = Hernán Iturralde , Gustavo Gibert *
ROUCHER = Emiliano Bulacios , Mario de Salvo *
INCREDIBILE = Sergio Spina , Gabriel Centeno * CONDESA COIGNY = Cecilia Aguirre Paz , Vanessa Thomas *
MADELON = Alejandra Malvino FLEVILLE = Noberto Marcos , Ernesto Bauer * ABATE = Iván Maier , Pablo Politzer
* Funciones Extraordinarias




まずは、初日の舞台第1幕から、クーラが歌うアンドレア・シェニエのアリア「ある日、青空を眺めて」が、FB上に投稿されていますので、どうぞご覧ください。
下の画像をクリックすると、フェイスブックの公開動画に飛びます。




アルバレスのキャンセル後、代わりを引き受けたクーラ。その他にも、アクシデントによる演出家の不在、もとの演出案をめぐる憶測と議論、などなど、いろんなトラブルを経ての開幕でした。第1幕、登場してすぐのこのアリア、長く、劇的な力が求められ、歌手にとっては緊張とプレッシャーが大きいのではないかと思います。
クーラは最初から落ち着いて、伸びやかに、最後まで歌いあげました。


そして初日の12月5日は、偶然にも、クーラの55歳の誕生日でした。幕が降りて、カーテンコールの動画もアップされていました。
拍手と歓声のあと、観客から"Happy Birthday to you"(もちろんスペイン語版)の歌声があがり、オケも続いて伴奏し、大合唱に。故郷の観客とオケ、共演者から、大喝采と歌で55歳の誕生日を祝ってもらい、クーラの喜びもひとしおだったことでしょう。
以下の画像をクリックするとFBの公開動画に飛びます。







クーラ自身も、初日の朝、ささやかな誕生日パーティの様子をインスタにアップしました。「まだ眠っている」というコメント通りの顔です(笑)






こちらはテアトロコロンがアップした、リハーサルの様子とクーラのインタビューの動画。

Andrea Chenier | José Cura



同じく、衣装をつけてのドレスリハーサルの映像と、マッダレーナ役のソプラノ、マリア・ピア・ピスチテッリのインタビュー。クーラの舞台姿や声もあります。

Andrea Chénier | María Pía Piscitelli




全体を見られないのでよくわかりませんが、セットも衣装もクラシックなスタイルで、出演者の歌が勝負の舞台だったようです。

クーラの出演は、あと12月の10、13、16日。チケットの売れ行きもまずまずで、巨大なテアトロコロンですが、良い席はもうほとんど売り切れのようです。
ライブ放送があるのか、あるならいつなのか、まだ情報が入手できず、ハラハラしています。テアトロコロン2017年最後の演目、ぜひとも、ライブ放送をお願いしたいと思います。
クーラと出演者のみなさんが、体調を維持し、好調のまま全公演を終えられるよう願っています。














*画像は劇場のFBなどからお借りしました。
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(リハーサル編)ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-12-01 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017




ホセ・クーラが主演するテアトロコロンのアンドレア・シェニエ、2017年12月5日に初日を迎えます。その日はクーラの55歳の誕生日でもあります。
クーラは11月半ばから故郷のアルゼンチンに渡り、母校のロサリオ国立大学から名誉学位を受けたり、ラジオ番組出演、マスコミ取材などをこなしながら、リハーサルに取り組んできました。

公演はダブルキャストで、全6公演。うちクーラ出演は、12月の5、10、13、16日の予定です。ライブ放送があるかどうかは、まだ情報がつかめていません。

この公演をめぐるこれまでの経過などは、以前の記事をご参照ください。 → (告知編) (クーラのコメント編) (クーラのコメント編その2)







DIRECTOR MUSICAL INVITADO = Christian Badea , DIRECTOR MUSICAL = Mario Perusso *
DIRECTOR DE ESCENA = Matías Cambiasso , DISEÑO DE ESCENOGRAFÍA = Emilio Basaldúa , SUPERVISOR DE VESTUARIO = Eduardo Caldirola
DISEÑO DE ILUMINACIÓN = Rubén Conde , DISEÑO DE COREOGRAFÍA = Carlos Trunsky
DIRECTOR DEL CORO ESTABLE DEL TEATRO COLÓN = Miguel Martínez , ASISTENTE DE DIRECCIÓN ESCÉNICA = Ángela Boveri
ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Oscar Vázquez , SEGUNDO ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Carolina Basaladúa , ASISTENTE DE ILUMINACIÓN = Ariel Conde

PRINCIPALES INTÉRPRETES
ANDREA CHÉNIER = José Cura , Gustavo López Manzitti *
CARLO GERARD = Fabián Veloz , Leonardo Estévez *
MADDALENA = María Pía Piscitelli , Daniela Tabernig *
BERSI = Gaudalupe Barrientos , María Luján Mirabelli *
MATHIEU = Hernán Iturralde , Gustavo Gibert *
ROUCHER = Emiliano Bulacios , Mario de Salvo *
INCREDIBILE = Sergio Spina , Gabriel Centeno * CONDESA COIGNY = Cecilia Aguirre Paz , Vanessa Thomas *
MADELON = Alejandra Malvino FLEVILLE = Noberto Marcos , Ernesto Bauer * ABATE = Iván Maier , Pablo Politzer
* Funciones Extraordinarias


こちらはテアトロコロンのFBに掲載されたセット組み立ての様子を撮影した動画から。 → FBの動画リンク  3分ほどです。
大きなシャンデリアがさがる大広間のセットの絵や、巨大な円柱などが見えます。割にクラシックな演出なのでしょうか。












テアトロコロンのFBに掲載されたリハーサル画像。















リハーサルは順調なようで、クーラはFBに、リハーサル中のちょっとしたおかしなハプニングについて動画を掲載しました。画像をクリックするとクーラの動画にリンクしています。





舞台が立ち上がってのリハーサル中に、どうやら小道具の拳銃の発砲音があまりに大きくて、出演者一同、心臓がとまるほどびっくりしたということのようです。
クーラが何やらスペイン語で叫んで、みんなで大笑いしている様子がわかります。クーラはインスタにも同じ動画を投稿して、とても素晴らしい、フレンドリーな雰囲気でリハーサルに取り組んでいるとコメントしていました。


進行中のリハーサル


左端の人物が拳銃を発射


突然のあまりに大きな発砲音にびっくり、クーラは胸を押さえ、飛び上がって驚いている人も


やれやれ、全く驚いた・・と、みんなで大笑い






こちらもクーラがFBに投稿した写真。アルゼンチン原産、美しい紫のジャカランダの花が咲くブエノスアイレスの街並み。クーラのコメントによると、春の季節に故郷に帰るのはほとんど20年ぶりだそうです。







クーラが出演したラジオインタビューの録音が、オンデマンドで聞けます。約1時間20分のトーク。そして放送当日は、このあとにモンテカルロ歌劇場で今年2月にクーラが主演したワーグナーのタンホイザーの録音も放送されました。ただしオンデマンドではオペラはカットされています。
トークはもちろんスペイン語で、残念ながら私にはまったく聞き取れません。でも楽しそうに語っている様子がとても印象的です。下の画像をクリックすると番組HPにリンクしています。





こちらは番組司会者の方のFBに掲載された収録時の様子。






クーラにとって、母国でのアンドレア・シェニエ主演は今回が初めてだと思います。自由と平和を愛し、シェニエのような理想主義者であるクーラが、どのような舞台を見せてくれるのでしょうか。初日まであと数日。これからドレスリハーサルも控えていると思います。ブエノスアイレスは春から初夏への季節。欧州とは反対の気候のなかで、体調を崩さず、充実した初日を迎えてほしいと願っています。








*画像はテアトロコロンのFB,報道などからお借りしました。
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(クーラのコメント編その2) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-09-30 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017



少し前の記事で、今年12月に出演予定のテアトロコロンのアンドレア・シェニエに関する、事実無根の噂に対するクーラの反論を紹介しました。 → (クーラのコメント編

今回は、少しだけですがその後の情報をまとめました。






噂を否定する短いコメントをフェイスブックにアップしてから、数日後、クーラは上↑の画像をフェイスブックに投稿しました。

画像の男性はグルーチョ・マルクス(Groucho Marx 1890~1977)。アメリカの著名なコメディアン、マルクス兄弟の三男で、ウィットとユーモアあふれる言葉をたくさん残している方だそうです。添えられているのはグルーチョさんの言葉で、たぶん元は英語、クーラがスペイン語にしたのだと思います。


"Es mejor estar callado y parecer tonto que hablar y despejar las dudas definitivamente."

「沈黙し、愚かに見られる方が良い。話して疑いを明確にするよりも。」



不確かな和訳のため、ニュアンスが違うかもしれず、その点はご了解ください。
もしかすると、クーラに対して、さらなる説明やコメントを求める声があったのかもしれません。しかし、事実無根の噂に対しては、クーラ自身がきちんと否定したうえで、これ以上は取り合わないという態度を明らかにしたということだと思います。

またこの画像には、クーラの以下のようなコメントが添えられていました。





「私が短い声明よりも多くの説明を与えていない理由を不思議に思う人のために...。
世界は狂っている――憎しみ、戦争、悪徳、テロ、経済的、政治的不安定、今までないほどの腐敗・・等々。
私たちのエネルギーをそれに集中させよう!」
 




これらについてのフォロワーのコメントに、クーラ自身が書き込んだ言葉の一部も紹介したいと思います。


「私は兵士でも政治家でもない。私は芸術を創る。芸術とは平和と愛だ。」



これまでいっかんして、アーティストとしての社会的役割を自覚し、知的誠実さを、金銭的利益や社会的名声よりも大切にする姿勢を貫いてきたクーラ。今回も、喜びであるはずの祖国での公演を前に、背景はわかりませんが、悪意を感じられる噂が流されたことについても、毅然と対応しつつ、争いごとはやめてもっと広く社会に視野を向けよう、と諭すかのような、誠実で寛容な姿勢をつらぬいているところが、やはりクーラらしいと思います。
この問題は、以上で終わることを願っています。


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(クーラのコメント編) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-09-17 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017


 (写真は2006年ボローニャ歌劇場でのアンドレアシェニエ)


ホセ・クーラは、今年(2017年)の12月、母国アルゼンチンのテアトロ・コロンでアンドレア・シェニエに出演することが発表されています。 → (告知編)
ここへきて、少し気になる出来事がありました。

クーラが9月13日付のフェイスブック上で、このアンドレア・シェニエに関する「噂への反論」(DESMENTIDA DE RUMORES)というような意味のコメント(声明文?)をアップしたことです。下の画像からクーラのフェイスブックの元記事にリンクしています。

あまり楽しいニュースではないのでブログでとりあげるのは迷いましたが、クーラ自身が広めてほしいと言っているので、紹介することにしました。





以下、おおまか訳してみました。スペイン語のため、誤りやニュアンスの違いがあるかもしれません。お許しください。




≪ 噂への反論 ≫

ブエノスアイレスでは、アンドレア・シェニエの最後の二重唱を半音下げて歌うことを私が契約書で要求している、という大きな懸念があることが、様々な手段で私に伝えられてきた。

私は、このような噂は真実ではなく、作品は元のトーンで歌われることを、この場を通して伝えたい。

どうか広めてほしい。

   ホセ・クーラ







2015年のカヴァレリア・ルスティカーナと道化師での演出・出演以来、2年ぶりの母国での公演を前に、なぜこのような根拠のない噂が母国で流され、クーラが公式に反論しなければならないような事態になっているのか、私にはまったくその背景は理解できません。

今回の公演は、同じアルゼンチン出身のマルセロ・アルバレスのキャンセルを受けて、クーラの出演が決まった経過があります。アルバレスのキャンセルも、今回の「噂」とは内容が違いますが、契約をめぐるトラブルがあったように書いた記事もありました。

これまでに何度かクーラは、国際的に高い評価を受けても母国ではなかなか同様の評価がされない時期があったこと、また、オテロなどテアトロ・コロンでのクーラの公演が聴衆から大きな喝采を受けたにもかかわらず、レビューでは厳しく批判されたことなどにふれたことがあります。同じアルゼンチン出身のサッカーのスーパー・スター、メッシでさえ、母国から栄誉を受けるまでには長くかかったことを例にあげながら、母国への愛と複雑な思いをインタビューで語ったこともありました。  → 「母国アルゼンチンから名誉表彰を受けて」

今回の「噂」にどういう意図や背景があるのかまったくわかりませんが、いずれにしても、クーラの歌手としての資質や能力、公演への姿勢を貶めるような「噂」が、その母国で広められるというのは、とても悲しいことです。クーラ自身も残念な気持ちでいることでしょう。
たまたま何らかの勘違いか何かが原因であって、国外で成功したクーラへの妬みや嫌がらせなどではないと信じたいものです。

気にするまでもないことかもしれませんが、こういうトラブルを乗り越えて、母国での公演が大きく成功することをつよく願います。



2006年ボローニャ歌劇場アンドレアシェニエ、ラストの2重唱、マリア・グレギーナとホセ・クーラ。
Umberto Giordano Andrea Chenier 'La nostra morte e il trionfo dell'amor!' Cura Guleghina







*画像は、2006年ボローニャ歌劇場のアンドレア・シェニエからお借りしました。
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(告知編) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-07-17 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017




ホセ・クーラのオペラ新スケジュール、母国アルゼンチンのテアトロコロンのアンドレア・シェニエへの出演が正式に発表されました。
2017年12月、ダブルキャストによる全6公演のうち、クーラ出演は5、10、13、16日の予定です。

実は当初は、同じテノールのマルセロ・アルバレスが出演する予定でしたが、契約関係の変更が理由となって、アルバレスがキャンセル。クーラに出演依頼が回ってきたようです。
アルバレスとクーラは、同郷で、生まれ年も同じ友人同士です。2人については以前の投稿でも紹介しています。

クーラがテアトロコロンに出演するのは、2015年のクーラ演出・舞台デザインによるカヴァレリア・ルスティカーナと道化師の公演(クーラは道化師のカニオのみ出演)以来。それ以前は、2013年のクーラ演出・舞台デザイン・主演のオテロ、2007年のサムソンとデリラ(コンサート形式)、そして初出演が1999年のオテロでした。

クーラは20代の頃に、奨学金を得てテアトロコロンの付属芸術学校に所属、さらにその後も合唱団で歌っていたことがあるそうです。指揮者と作曲家をめざしていたクーラにとって、夢の実現はなかなか困難で、また歌でも評価されることがなく、チャンスを求めて1991年にイタリアに渡りました。その後、テノールとして認められ国際的キャリアを広げ、テアトロコロンの舞台に主演として初めて出演したのが1999年のオテロだったのです。それ以来、18年間の出演は前述の4回のみで、今回が5回目の出演となります。

 → クーラ演出のカヴァレリア・ルスティカーナと道化師の公演についてはこちら。

 → クーラの音楽家、アーティストへの歩みについてはこちらをお読みください。

 → また、クーラの祖国アルゼンチンへの愛と複雑な思いについてはこちらで紹介しています。


テアトロコロンのアンドレアシェニエのページ(クリックで劇場サイトに)



5,10,13,16 / 12 /2017 Teatro Colón

GUEST MUSIC DIRECTOR Christian Badea
MUSICAL DIRECTOR Mario Perusso *
STAGE DIRECTOR Lucrecia Martel
SCENOGRAPHY DESIGN Enrique Bordolini
COSTUME DESIGN Julio Suárez
ILLUMINATION DESIGN Enrique Bordolini

ANDREA CHÉNIER José Cura / Gustavo López Manzitti *
CARLO GERARD Fabián Veloz / Leonardo Estévez *
MADDALENA Maria Pía Piscitelli / Daniela Tabernig *
BERSI Gaudalupe Barrientos / María Luján Mirabelli *
MATHIEU Hernán Iturralde / Gustavo Gibert *
* Extraordinary Functions

演出家はルクレシア・マルテル、1966年アルゼンチン生まれの女性で、映画監督、脚本家だそうです。クーラより若い方のようですね。


クーラが出演することの告知ページ(同上)




キャンセルしたアルバレスとクーラは、同い年で同じテノールとはいえ、声質も個性も、歌唱スタイル、演技スタイルも全く違っています。
アンドレア・シェニエの同じプロダクションで2人が歌っている動画がありましたので、聴き比べを。
このプロダクションは、ジャンカルロ・デル・モナコ演出のボローニャの舞台でクーラが来日公演(2006年)、DVDにもなっているものです。
2つの舞台は、衣装などが若干違っていますが、同じ演出のものだと思います。


●まずはアルバレス。とてもリリックでやさしい声、丁寧で柔らかなメロディラインです。

Andrea Chénier - Marcelo Alvarez



●こちらはクーラの2006年の舞台。強い声、迫力ある歌唱です。

Umberto Giordano Andrea Chenier 'Un di all'azzurro spazio' Jose Cura



このように大きく違う2人の個性。聴衆の好みも分かれるところだと思います。このキャストチェンジ、テアトロコロンの聴衆は、どう受け止めてくれるのでしょうか。

クーラの歌唱には、クーラとしてのシェニエの人間像と時代背景などを踏まえた作品解釈、キャラクター解釈があります。
以前の投稿で、クーラのシェニエ論、解釈を紹介していますので、お読みいただければうれしいです。

 → 「アンドレア・シェニエの解釈――信じるものを守るために」

また上で紹介したシェニエのアリアについて、クーラの述べた部分を再掲します。


――ホセ・クーラ アンドレア・シェニエについて 2014年ストックホルムでのインタビューより
≪彼らは変革の萌芽≫


彼らは人々の魂に向けて語る。画家、作曲家、演奏者、哲学者、詩人など、いわゆる知識人であり、彼らは常に変革の萌芽である。
そのために彼らの多くは、身体的または社会的な死をも含む高い代償を払ってきた。アンドレア・シェニエはそうした人々の1人。彼は両方の代償を払った。最初は社会的な信用を奪われ、そしてギロチンに。

私自身が一種のドン・キホーテなので、シェニエであることにくつろぎを感じている。
シェニエの性格と精神を明らかにしている"Improvviso"(独白)は、真のプロテスト・ソング(抵抗の歌)だ。


(テアトロコロン 外観)



クーラがシェニエに出演するのは、2014年のストックホルム王立歌劇場のプロダクション(トップの写真)以来です。その前は2013年のウィーンでした。
ストックホルムの録音は見当りませんでした。なので2013年のウィーンでの「5月の晴れた日のように」が入っている録音をYouTube(音声のみ)から。
1999年、2001年、2004年、2013年のクーラのこの曲だけが続けて入っています。

José Cura Andrea Chénier "Come un bel dì di maggio" 1999~2013



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クーラの2年ぶりの母国でのオペラ出演が大きく成功することを願っています。またテアトロコロンは、ライブ放映やラジオ中継に熱心なので、クーラのシェニエもぜひ、放送をお願いしたいです。
またシェニエは、クーラが、人間的に共感できるオペラの登場人物としてトスカのカヴァラドッシとともにあげているキャラクターです。このシェニエでも、クーラの演出・舞台デザイン、そして主演の舞台が、いずれかの劇場で近いうちに実現することを期待しています。


(テアトロコロン 内部)

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