人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(初日編) ホセ・クーラ、モナコでピーター・グライムズを再演 / Jose Cura , PETER GRIMES in Monte-Carlo

2018-02-24 | ピーター・グライムズ




モナコのモンテカルロ歌劇場でのホセ・クーラのピーター・グライムズ、2月20日に無事初日を迎えました。
レビューも出始めています。カーテンコールの映像などをみても、大きな喝さいを受けており、成功したようです。

繰り返しの説明で恐縮ですが、このプロダクションは、クーラが長年つよく願ってきたピーター・グライムズへの初挑戦が実ったもので、しかも舞台デザイン、演出、照明などの多くを自ら手掛け、主演も担って、昨年2017年ドイツのボンで初演されました。観客からもレビューからも高く評価され、今回は、共同制作のモナコで再演されているのです。

ボンの客席は約1000、モンテカルロは500余と、両方とも非常にコンパクトな劇場で、そこでクーラ渾身のグライムズが聞けるとは本当に贅沢な体験です。モナコで鑑賞された方の情報によれば、演出家としてのクーラも舞台も非常に良かったとのことでした。

ぜひ映像化、ネット中継をお願いしたいのですが、残念ながら今のところ、放映の情報はありません。最終日の28日までに放送予定が発表されることを願っています。

いずれレビューも紹介したいと思っていますが、今回は、初日を前後して掲載された劇場サイトの告知動画や舞台写真、SNSにアップされたカーテンコールの様子などをまとめてみました。

→ リハーサル編はこちら





Peter Grimes by Benjamin Britten
First at the Monte Carlo Opera
New production,in co-production with the Bonn Opera

Opera in three acts and a prologue
Benjamin Britten Music (1913-1976)

February 20,23,25,28, 2018

Musical direction= Jan Latham-Koenig
Staging= José Cura
Sets & costumes= José Cura
Lights= José Cura and Benoit Vigan
Choirmaster= Stefano Visconti

Peters Grimes, a fisherman= José Cura
Ellen Orford, a widow= Ann Petersen
Captain Balstrode= Peter Sidhom
auntie= Carole Wilson
First niece= Micaela Oeste , Second niece =Tineke van Ingelgem
Bob Boles, fisherman and Methodist =Michael Colvin

Swallow, a lawyer= Brian Bannatyne-Scott, Mrs Sedley= Christine Solhosse, Rev. Horace Adams, the rector= Phillip Sheffield
Ned Keene, pharmacist and healer= Trevor Scheunemann , Carter Hobson, valet= Michael Druiett






つぎの動画は、モナコの情報サイトがアップしたもので、舞台の様子とクーラのインタビューを収録しています。
たぶんドレスリハーサルの時だと思われますが、クーラの歌も含め、舞台の映像がたくさんあって、とてもうれしい動画です。
クーラのグライムズの痛切な声、叫びが響きます。

Opéra : Première de « Peter Grimes » de Britten à la Salle Garnier



こちらはモンテカルロ歌劇場がアップした動画。リハーサルの様子とクーラのインタビューで、クーラが演出家として演技をつけている様子もあります。

Séance de travail pour Peter Grimes de Benjamin Britten - Reportage Monaco Info



初日の後に、共演者がアップした画像。舞台上からとったもののようで臨場感たっぷりです。




初演の場を提供した共同制作のボン劇場も駆けつけて、フェイスブックにもその様子を投稿して応援していました。




初日のカーテンコールの様子。インスタにアップされたものです。

Five years after seeing him on the same stage for Verdi’s STIFFELIO (he also sang TANNHAUSER here last year), Jose Cura came back to the Salle Garnier of the Monte Carlo Opera tonight for the première of Benjamin Britten’s operatic masterpiece PETER GRIMES. This haunting production owes much to the great Jose Cura who not only sings the part of Peter Grimes, but also signs the mise en scène, set design, light design and costumes of this Monte Carlo production. Ann Petersen sings the part of the schoolteacher, Peter Sidhom is Balstrode. Jan Latham-Koenig conducts the Philharmonic Orchestra and the Chorus is directed by Stefano Visconti. This strong, haunting production can be seen until the 28th of February. #PeterGrimes #JoseCura #Britten #BenjaminBritten #operademontecarlo #OPMC #sallegarniermontecarlo #AnnPetersen #PeterSidhom #JanLathamKoenig #StefanoVisconti #nofilter #opera #instaopera #music #instamusic #videooftheday #videodujour #videoofthenight #tenor #vocals #operagram #classicalmusic #musiqueclassique #monaco #montecarlo #instamonaco

Arkun Demirogluさん(@arkundemiroglu)がシェアした投稿 - <time style=" font-family:Arial,sans-serif; font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-02-20T23:47:49+00:00"> 2月 20, 2018 at 3:47午後 PST</time>




同じくインスタにアップされたカーテンコールの画像。




クーラのインタビュー。30分たっぷりですが、残念ながらすべてフランス語。
何を言っているかわからない・・でもクーラの穏かでささやくようなフランス語が、なかなか魅力的に響きます。

Jose Cura ITW



初日を終えて、数日のオフの間に、モナコの海でとった写真をクーラがアップしたもの。
モンテカルロの美しい海と空を背景に、もともとギリシャ・ローマの彫刻のような整った顔立ちが、風雪を経て、成熟し、まるで哲学者のような風貌です。




モンテカルロ歌劇場の共演者のSNSから







以下、いくつか劇場サイトからお借りした舞台写真を。








グライムズの粗暴な外見の内側にある、愛への渇望、切なさが滲み出るような写真がたくさん。




事故死した少年の幻影に苦しみ、罪の意識に苛まれているのか。クーラ演出独自のシーンと思われます。









クーラがデザインした舞台の全景写真。映画のような、絵画のような、美しい舞台です。海の香りが漂ってくるようです。
モンテカルロ歌劇場のサイトには、まだまだたくさんの素晴らしい写真が掲載されていますので、ぜひ直接ごらんください。






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(リハーサル編) ホセ・クーラ、モナコでピーター・グライムズを再演 / Jose Cura , PETER GRIMES in Monte-Carlo

2018-02-16 | ピーター・グライムズ




2018年2月20日に初日を迎える、モンテカルロ歌劇場のピーター・グライムズ。ドレスリハーサルの写真が劇場のフェイスブックにアップされました。

このピーター・グライムズは、昨年5月にドイツのボンでホセ・クーラが初挑戦したプロダクションの再演です。
クーラ自身が演出・舞台デザインを行い、そしてタイトルロールのグライムズを歌ったもので、今回もクーラが主演します。
ボンでのグライムスについて、これまでいくつかの記事で紹介しています。クーラの作品解釈、グライムズ論、レビューなどもありますのでご覧いただければ幸いです。 
→ ボンのグライムズについての記事


モンテカルロ歌劇場は、クーラが昨年2月に、ワーグナーのタンホイザーのパリ版・フランス語上演に初挑戦した劇場でもあります。劇場関係者、スタッフとの息も合って、素晴らしいアンサンブルが期待できそうです。
→ これまでのブログ記事で、タンホイザーパリ版仏語上演についても紹介しています。

このドレスリハーサルの写真は、ボンの写真と比べると、雰囲気がまた違っていて、劇場の個性が出るのか、カメラマンが違うせいなのか、またクーラ自身も演出を練り直して臨んでいるのか、興味深いです。
今回の舞台、ネット中継されることを切望していますが、不安材料としては、フェイスブックでのフォロワーの質問にクーラが「放送予定はない」と答えていたことがあります。
タンホイザーはCultureboxでライブ放送してくれたので、今回もぜひともお願いしたいものです。






Peter Grimes by Benjamin Britten


Opera in three acts and a prologue
Benjamin Britten Music (1913-1976)



Musical direction= Jan Latham-Koenig
Staging= José Cura
Sets & costumes= José Cura
Lights= José Cura and Benoit Vigan
Choirmaster= Stefano Visconti

Peters Grimes, a fisherman= José Cura
Ellen Orford, a widow= Ann Petersen
Captain Balstrode= Peter Sidhom
auntie= Carole Wilson
First niece= Micaela Oeste , Second niece =Tineke van Ingelgem
Bob Boles, fisherman and Methodist =Michael Colvin

Swallow, a lawyer= Brian Bannatyne-Scott, Mrs Sedley= Christine Solhosse, Rev. Horace Adams, the rector= Phillip Sheffield
Ned Keene, pharmacist and healer= Trevor Scheunemann , Carter Hobson, valet= Michael Druiett



●クーラのFBにアップされたリハーサルの様子

クーラの説明によると、手前のテーブルの上にあるのは、クーラが手掛けたセットの設計図。そしてスポットライトの光を浴びている指揮者の頭の向こうに、ヘレン役のアン・ペーターゼンと演技をつけるクーラが舞台上に。
リハーサルは順調のようです。




●ボンでの初演の紹介動画

こちらは昨年5月に初演を迎えたボンの舞台の紹介動画です。
回転する舞台セットを巧みに使い、場面転換をしています。


PETER GRIMES am THEATER BONN from Theater Bonn on Vimeo.




●モンテカルロ歌劇場がアップした画像

劇場のフェイスブックからいくつか画像をお借りして紹介します。
クーラの鬼気迫るグライムズ。そして、まだまだたくさんの臨場感あふれる画像がアップされていますので、ぜひ劇場のFBをご覧ください。




























潮風の香りが漂ってくるような、漁師町の雰囲気たっぷりのリアルなセット。クーラ渾身のグライムズです。ぜひとも放送、DVD化してほしいと願っています。



*画像はモンテカルロ歌劇場のフェイスブックからお借りしました。
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(レビュー編) ホセ・クーラ ブリテンのピーター・グライムズに初挑戦 演出と主演 / Jose Cura PETER GRIMES

2017-05-22 | ピーター・グライムズ



これまで何回かの記事で紹介してきた、ホセ・クーラ初主演、初演出のブリテンのオペラ、ピーター・グライムズ。
 →(解釈編)(初日編)(告知編)

残念ながら、まだ録音や録画が放送されるという情報はありません。
今回は、このプロダクションがどう受け止められたのか、ボン劇場に寄せられた観客からの反響や、これまで読むことができたレビューを抜粋して紹介したいと思います。
いつものことで申しわけありませんが、翻訳が不十分な点はどうかご容赦ください。





≪ ボン劇場のFBに寄せられた声より ≫

ボン劇場のフェイスブックには、初日の舞台を観た観客から、たくさんコメントが寄せられました。初日、大喝采、満場のスタンディングオベーションだったそうですが、それを裏付ける興奮した様子が伝わります。そのうちのいくつかを紹介します。

「印象的、壮大な風景と偉大な声。彼の夢の役割の1つは、ユニークで、達成不可能な素晴らしさ!それはオペラ愛好家のための贈り物だった」
「時代を超越している。クーラの直接的なアプローチは、常に完全にエキサイティングだった。素晴らしい合唱団、指揮者。私はまた戻って友人を連れて行く!」
「完全に圧倒され、興奮した。全体の制作、ステージデザイン、衣装、素晴らしいアーティストを忘れることはできない。今日の夜を素晴らしいものにするためのホセ・クーラと一緒のすべての苦労が成功した。ありがとう!」
「今回のプロダクションは『必見』。素晴らしい夜をありがとう」
「素晴らしいオペラの夜! すべての感覚のための饗宴!」
「すべてにおいて調和して、非常に印象的な夜だった。音楽、物語、ステージング、キャスト、衣装、ライト..私は戻ってくる」
「耳、目、魂のための饗宴!」
「圧倒的な経験!クーラは舞台で、壮大な時代を超越したプロダクションを展開している...」
「信じられないほど情熱的なパフォーマンス。深く感動した。美しいインスピレーションの舞台、歌手やオーケストラ。スタンディングオベーションに値する!」





≪ レビューより抜粋 ≫

読むことができたレビューは、ほとんどがクーラの演出、舞台、そしてクーラと他の出演者を含む演技・歌唱、音楽など、全体について、高く評価していました。
一方、ある1つのレビューは、全体を評価しつつも、クーラの英語の発音の問題を指摘していました。これについては、長年英語を使って国際的キャリアを重ねてきたとはいえ、もともとアルゼンチン出身のスペイン語ネイティブのクーラ、どうしてもスペイン語なまりがあるのでしょう。これについては、グライムズ出演を重ねていくなかで改善されていくのではないでしょうか。
また2つのレビューが、グライムズの人物像について、彼の「暴力性、残忍性を含む複雑さ」の掘り下げが不十分と論評をしました。これにたいしては、前回の投稿(解釈編)で、クーラの反論的なコメントを紹介していますので、よかったらご参照ください。


●すべての出演者にスタンディングオベーション

「ボンの初演の聴衆は、すべての参加者のために、賞賛のスタンディングオベーションを与えた。またオペラの夜にも感謝した。」
「その創造性はあまり目立たなかったが、昔ながらの強靭さに対する、感情的な彩度と素朴な好奇心の満足によって。」
(「Kolner Stadt-Anzeiger」)







●ボンは、ホセ・クーラを祝福

「この夜の後、ピーター・グライムスの役柄が、クーラにとって、長らく夢であったことが理解できる。」
「彼はここで、歌と演技の描写が手を握り合った団結を形作る原始的な力のように現れる。アリアの叙情的な瞬間と、第3幕の狂気の場面などで。」
「彼はオテロを歌う声で、ピーター・グライムズの魂の痛みを、聞き取りやすく、感じ取れるように歌う。すばらしい。」

「プレミアの観客は、熱狂的なスタンディング・オベーションと賞賛で、参加者全員を祝った。
ピーター・グライムズは典型的な敗者だ。しかし、彼の解釈者であるホセ・クーラは、すべての分野における勝者だった。演出家として、衣装・舞台デザイン、タイトルロールの解釈においても。」
(「General-Anzeiger」)







●すべてのオペラのファンに、ボンへの訪問を

「ボンでの演奏後。観客は10分間の喝采により、刺激的で感動的な音楽を劇場にもたらしたチームに報いた。」
「タイトルロールだけでなく演出を担った、ヒューマニストのホセ・クーラにとって、ピーター・グライムスは、今日の時代、とりわけ重要となっている。」・・

「歌手としてのクーラは、ピーター・グライムズの崩壊に歌唱の焦点を当てている。アリア「大熊座と昴は」は、信じられない絶望的な瞬間と相まって、印象的に成功した。彼の暗い声、繰り返し綴る強く明瞭なトーン、このステージングに非常に適している。」・・
モンテカルロ歌劇場のタンホイザーのフランス語上演で、輝かしいキャリアの開発に成功したことにつづいて、同様に、ボーカル面で再び実証された。」

「結論:成功したアンサンブル作品、それは注目すべき。高い芸術的レベルで作品を提供しようとし、それは成功した。すべてのオペラのファンに、ボンへの訪問を勧める。」
(「Kulturexpresso」)







●説得力ある演出、観る価値がある

「ホセ・クーラは、ピーターグライムズでロールデビューだけでなく、演出とセットデザインも担当した。その多くのタスク、特に演出は見事成功した。クーラの絶対的な説得力のある全体的な演出が成功したことによって、オペラの夕べは、舞台を見る価値があるものにした。また、彼のエモーショナルな演技は、その場を満たした...」

「ボンオペラハウスの舞台が国内最高のランクであることのさらなる証拠」「非常に成功した、死んだ少年を悼むグライムズの試練のプロローグ」

「モンテカルロ歌劇場との共同制作として2018年2月にモナコで上演される。このような作品がいくつかの公演の後に消えてしまうのは残念であり、また、劇場の予算がますます厳しく、共同制作の数が増えていることは、経済的な観点からだけでなく理にかなっている。また、観客にとっても、本当に成功したプロダクションが別の場所で『生きている』のは素晴らしいことだ。」
(「Deropernfreund」2回目)







●特別クラスのオペラの夕べ

「クーラのボーカルとブリテンのオペラでの演技は、プレミアの拍手での彼への熱狂的な反応と同様に、ボンの仕事は彼にとって特に重要だと感じさせた」
「これは繰り返すことができる:ボンでのこのパフォーマンスは特別クラスのオペラの夕べだった」
(「Deropernfreund」)









●ドラマに多大なエネルギーをもたらした演出

「シーンごとに、クーラはドラマに多大なエネルギーをもたらし、多くの保証と成功を収めた。」「特に注目すべきは、ボアー亭での第1幕第2場の巧みな取り扱いだった。これは特に動きの速い忙しいシーンだが、すべてのキャラクターが自分自身を表現するために必要なスペースを与えられていた。」

「クーラは典型的な漁師の外見、身体的に強く、がっしりし、船乗りに必要なひげを着けていた。彼の演技は安全で表情豊かであり、彼の強い存在感が彼を舞台に支配することを可能にした。音楽的に、クーラはいくつかの魔法の瞬間を作り出した。最も魅力的なのはAct 3、シーン2の狂ったシーンで、ステージ外のコーラスが伴う。霧が全体をおおい、グライムズはゆっくりと、過去の出来事を思い出す。クーラのボーカルコントロールは、表現力豊かで完璧だった」

「グライムズの気分が乱暴の方向に振れる時、クーラは声の色調、色合い、ダイナミクスを調整し、グライムズの精神的苦痛をうまく捕らえた。それは真に精力的で説得力のある解釈だった。」
(「Operawire」)


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ボンでの公演は、つぎは5月26日。その後、6月に別キャストによる公演があり、7月に再度クーラが登場、7月8、15日に出演します。
また来年2月には、モンテカルロ歌劇場で再演される予定です。
クーラが長年願い、渾身の力で取り組んだボンの舞台をぜひDVD化していただきたい、またはモンテカルロの舞台が今年2月のタンホイザーのようにネット中継されることを、心から願っています。








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(解釈編) ホセ・クーラ ブリテンのピーター・グライムズに初挑戦 演出と主演 / Jose Cura PETER GRIMES

2017-05-20 | ピーター・グライムズ



5月7日の初日以来、ボン劇場で上演中のホセ・クーラ主演・演出のピーター・グライムズ。 これまで、(告知編)(初日編)で紹介してきました。

今回は、主にクーラの作品解釈と演出コンセプトについて、またグライムズの人間像をどうとらえるか、などについて、クーラの発言やインタビュー、フェイスブックの投稿などから紹介したいと思います。

画像は前回同様、ボン劇場のHP、FBなどからお借りしています。




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≪ 劇場のワークショップの報道より ≫

リハーサル中の4/23、クーラは、ボン・オペラで開かれたピーター・グライムズに関するワークショップに出席し、作品や演出について語っています。以下は、その様子とクーラを紹介した報道記事からの抜粋です。

●「オペラの反逆者――ホセ・クーラはボンで『ピーター・グライムズ』の解釈を提示」
(「Kulturexpresso」)


クーラは確かに、表現力豊かで、偉大な声をもつ、多彩なボーカリストの1人だ。しかし演出家としての彼を知る人は多くない。
クーラは、作曲家や指揮者として訓練を受けた芸術家であり、彼はすでに15歳の時に指揮者として登場し、歌への転向を28歳で決意した。
妥協を許さない創造的な天才だ。

クーラは、彼のアプローチを哲学的に見ている。そのメッセージは彼にとって明らかだ。グライムズの海に対する闘いは、 無慈悲な社会における、おそらく多くの人々の人生の闘いの原因でもある。
部外者としてピーター・グライムズは、村のコミュニティによって観察され、同情を得られず、偏見を持たれるようになった。人類史の古いテーマ:適応できない者は除外される。

彼が2人の男の子の死において罪を犯しているかどうか――最終的にチーム全体によって否定される。チームの意見によると、グライムスはおそらく強く非接触的であるが、愛情のために泣く男だ。

オペラの歌詞はジョージ・クラブの詩に基づいており、クーラは、それを彼のプロダクションの重要な基盤と呼んでいる。

またクーラは歌手として、新しい自らの基準をつくり、この役柄で新たな挑戦を見いだしている。

明らかに、このディスカッションでは、クーラの現在の世界に対する関心が強調された。アルゼンチンの全体主義体制下で育ったこのアーティストは、激動する社会的、政治的な出来事に、無関心でいることはできない。

深みのある、自立的な芸術的雰囲気の彼のコミットメントは特徴的だ。モンテカルロオペラとの共同制作であるこの制作は、きっと感動的なオペラ体験になるだろう。
(「Kulturexpresso」)






≪ ボンでのクーラのインタビューより ≫

Q、主演、演出、舞台など多くをどうやる?

A(クーラ)、10年前からこの全体的アプローチを追求してきた。秘訣は、事前に沢山働くこと。様々な事態に備えて、できるだけ多くのものを用意するようにしている。

とりわけ、信頼でき、深い理解が得られるチームを持つことが重要だ。
例えば、自分で出演する舞台を作るとき、私の仕事の重要な部分は、キャラクターが生きて生活できる舞台を作ること。まず行動を視覚化してから、空間を設計し、必要なものすべてを得るようにする。

Q、全てのことを1人でやる長所と短所は?

A、自分のルールに固執しなければ、悪くないと思う。
それぞれ長所と短所があり、完璧なシステムはない。私は歌手として知的なアプローチで知られてきた。したがってこれらの研究を発展させることは驚くことではないと思う。

私のプロダクションでは、登場人物のキャラクターと心理的な深さが常に一定の方法で示される。いつも最初にコンセプトを作るが、その背後には必ず私自身が存在する。このコンセプトが作品のあらゆる側面に反映されることを常に念頭に置いている。
私がこの挑戦を探求する理由は、プロセスが非常に面白いということ。もちろんそれは非常に疲れる。それが実際私が思う唯一の欠点だ。

エゴによって自分を失う危険はない。私はすべての同僚(技術スタッフも)から、その分野における正直さを求めている。その分野の担当者のアドバイスを受けなれば、人間としてアーティストとして発展することはできない。
(1人で多くのことをすることについて)批判する人はいるが、プロセスのプロフェッショナリズムと結果の質に疑問を呈する人はいない。もちろん私の作品が好きでない人がいるのは当然だが、真剣さを否定することはできない。

Q、このオペラのどこが魅力?

A、実際に演技し、テキストと音楽が一致して感じられるオペラ。
加えて私の「夢の記録」を完成させることができる。オテロ、サムソンとデリラ、タンホイザーとピーター・グライムズ。4つの偉大なオペラの国から1作品ずつ。この4つの大役を歌ったことを誇らしく思う。

今年はタンホイザー(モンテカルロ歌劇場)で始まり、今、ピーター・グライムズをやり、オテロ(リエージュ・ワロン王立劇場)でシーズンを締めくくる。
私が歌いたいもう一つのタイトルは「スペードの女王」。しかしチャイコフスキーは、言葉の壁のために、私の芸術的な欲求から逃れてしまうのではないかと恐れている。

Q、海が重要な役割を果たす?

A、私はアルゼンチンのパンパから来た。ロサリオの自宅は海から1000㌔離れていた。しかし私はいつも海に魅かれていた。たぶん制限された閉鎖的スペースが嫌いだったからだと思う。グライムズは、人々を窒息死させる閉鎖的社会の制約についてのものだ。

Q、ボンについては?

A、これまでは数日の滞在だったので、何も見て回ることはできなかった。今回は1月半滞在するが、しかしこの作品は非常に強烈なので、観光の機会はほとんどないだろうと思う。
劇場の楽しい雰囲気を楽しみにしている。同僚とスタッフはプロフェッショナルで献身的だ。経済的な削減にもかかわらず劇場の高い水準を維持している彼らの役割は、支持する価値がある。

ピーター・グライムスの後で、伝説的なベートーヴェン・オーケストラ・ボンを指揮したいと願っている。アンサンブルとコーラスとともに、ボンのオペラの頼りになる存在だ。

(ボン劇場のHP掲載、ホセ・クーラインタビューより)






≪ クーラが引用したピーター・ピアーズの言葉から ≫

ブリテンのピーター・グライムズ初日、劇場内は大興奮・大喝采、レビューも高い評価でした。一方、1つの批評が、クーラのグライムズについて「暴力性と残虐さの複雑性を欠く」と指摘しました。これに対する反論でしょうか、クーラはFBに、このオペラの作曲家ブリテンの生涯のパートナーで、初上演の時のグライムズ役でもあったピーター・ピアーズの言葉を引用しました。

●グライムズは複雑な「現代的」なキャラクター。彼はたくさんいる

「..または、この男は興味深く、敏感で、苦しんでいなければならず、また彼は、彼の困難に対し、聴衆の関心と同情を受けなければならない。
彼は複雑な『現代的』なキャラクターであり、昔ながらの残酷な悪役ではない。グライムスは英雄でもないし、オペラの悪役でもない。彼はサディストでも、悪魔的なキャラクターでもない。そして音楽は、それをはっきりと示している。

彼はごく普通の弱い人間であり、社会と矛盾する自分を認識し、それを克服しようとする。そうすることで従来の規範に反し、社会によって犯罪者に分類され、そうやって破滅させられる。
グライムズは、まわりにたくさんいる!」
(ピーター・ピアーズ)






≪ クーラのフェイスブックの投稿より ≫

ピアーズの言葉の引用に続いて、グライムズの人物像の解釈に関するクーラ自身の次のような解説がフェイスブックに掲載されました。

●グライムズの攻撃性、双極性の背景にある極端な不安、家庭への切望

いくつかの(尊重すべき)見方とは対照的な、グライムズの心理とピアーズの言葉について、もう少し。

グライムズのパーソナリティについての全体的なポイントは、彼は暴力的なのではなく(NOT violent)、攻撃的である(but aggressive)ということだ。この2つの言葉は同義語ではないが、何人かの解釈者はそう主張し、あるものは罠に落ちる・・。

グライムスの攻撃性は、彼の極端な不安の結果であり、彼の双極性の人格からくる――彼はエレンに「手を離せ」と叫んだかと思うと、その20秒後には、「あなたは私の唯一の希望だ・・」という。

人生で最終的に成功したいという思いから、重荷を背負いすぎている時、彼の残忍な力は、彼が少年を傷つけたいと思っているかのような激しいやり方で、彼に少年を押させる――「少年よ、海に行くぞ!」、彼は興奮して叫び、少年は2m飛び離れて、恐怖する。
その1分後、彼はまるで少年が息子であるかのように話しかけ、2人の世話をする家庭と女性を持つことを約束する。グライムスは、ここでは哀れで、やさしく、愛し、愛されることを切望している。

ボア―亭での "オールドジョン"の歌の間。彼はみんなの喜びに惹かれ、考える。「自分もみんなとの曲に参加して、彼らと楽しむことができるだろう。多分、しばらくの間、少なくとも受け入れてもらえる」 
しかし、彼の社会的な不器用さのために、彼は間違って歌い、みんなを混乱させる。

暴力的、NO! 涙ぐましく、悲しく、甘く、哀れな、彼は、エレンが少年に「ピーターがあなたを家に連れていく」という時、すぐに心がやわらぐ。家?そう、家――彼の夢・・。

グライムズは、ある意味で、私にカジモド(「ノートルダムの鐘」の主人公)を連想させる。彼は、本当はそうでないにもかかわらず、醜く、暴力的だというレッテルが張られている。彼がエスメラルダを必死に愛している時も、誰もが、彼は彼女を傷つけていると思う。しかし彼は、それを反証するには不器用すぎる・・。ピーターとエレンと同様に。

私はすべての解釈を尊重する。私は他の見解を尊重する。
しかし、尊重することは、コピーするということを意味しない。それどころか、コピーするというのはまったく逆であり、敬意を欠くことだ!






***************************************************************************************************************************************

ブリテンの生涯のパートナーであり、グライムズ初演の主役を担ったピアーズの言葉も引き、さらに自らの言葉を重ねて、グライムズの人物像を語ったクーラ。
クーラは、彼を特殊で異常な人物ではなく、複雑ではあるがどこにでもいる人間、現代の社会の閉鎖性、偏見・差別、生きる困難、人生と苦闘する姿として、普遍的に描きたかったのだと思います。
社会的な関心とヒューマンで温かい視点をもつクーラならではの、グライムズが描き出されたのではないかと思います。ぜひ映像化を期待したいです。




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(初日編) ホセ・クーラ ブリテンのピーター・グライムズに初挑戦 演出と主演 / Jose Cura PETER GRIMES

2017-05-14 | ピーター・グライムズ



ホセ・クーラが、それを歌うことは「夢」であり、「自分にとっての理想のオペラ」と語ってきたブリテンの英語オペラ、ピーター・グライムズの初日が、5月7日、ついに幕をあけました。クーラは、主演とともに、舞台デザインと演出も担いました。

*公演の概要やクーラの思いについては、以前の投稿(告知編)をご参照ください。

まずは、ボン劇場が公開したプロダクションの紹介動画を、ぜひぜひ、ご覧ください。
2分13秒の短い動画です。下の画像をクリックするとボン劇場のVimeoのページにリンクしています。たいへん細部まで作りこんだ舞台という印象を受けます。






次の動画は、クーラがアップした、初日終了後のカーテンコールの様子。劇場中が大興奮の大喝采、満場のスタンディング・オベーションになったとのことです。
拍手と歓声が鳴り止まず、最後はクーラがスタッフをつぎつぎに舞台上に招いて、キャスト・スタッフ全員で成功を喜び合っています。
*なお、歓声が非常に大きいのでご注意ください。
下の画像をクリックするとクーラのフェイスブックの動画にとびます。






初日の成功、観客の大反響、大喝采を受けて、クーラもFBで動画を紹介しながら興奮気味にコメントしていました。

「昨日のピーター・グライムズ初演後のカーテンコールの動画の一部分。
自発的なスタンディングオベーションが、平土間の最前列からギャラリーの最後まで!!! 彼らはボンでこのようなことが起こるのは初めて、または少なくとも長年にわたってないと言う。私にはそれが本当なのかどうかわからない。おそらくそうではないとしても、パフォーマンスが成功したのは事実だ!! 多くの感情、涙、鳥肌。舞台の上で、オーケストラ・ピットの中で、誰もがベストをつくした!!!
このことは、我々が繰り返し言ってきたように、社会全般が絶望的ではないことをもう一度証明している。共通のプロジェクトを担うことによって、そしてそれに向かうインスピレーションを与える人々ーーそれこそ我々みんなが求めるものだ!!! 
祝福と感謝を共に働いた全ての人々に!!! ホセ 」





以下、ボン劇場がHPやFBにアップした画像をいくつかお借りして、紹介したいと思います。

舞台中央に、このオペラの作曲者ブリテンが暮らした町、オールドバラに残されている塔をモデルにデザインした建物が。




少年の死の責任を問われたグライムズ。まわりの人影が圧迫感、グライムズの孤独と辛さを増幅する。




恋人エレンとの結婚というささやかな幸福を夢見るグライムズ。その実現のための大切な手段である舟と。




村人たちが集まる酒場ボアー亭




ボア―亭で村人たちに溶け込もうとするグライムズ




漁のために新しく迎え入れた少年と。不器用で粗暴なグライムズ、心の底に愛とやさしさを持っているが、少年への接し方が誤解を招く。




事故で亡くなった少年の幻想に苦しめられるグライムズ。舟とともに彼の人生の重荷に。




まだたくさんの画像が公表されていますし、クーラのインタビュー、グライムズの解釈についての投稿、レビューなど、引き続き紹介していきたいと思います。



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(告知編) ホセ・クーラ ブリテンのピーター・グライムズに初挑戦 演出と主演 / Jose Cura PETER GRIMES

2017-04-13 | ピーター・グライムズ



2~3月に、初めてのワーグナーに挑戦し、タンホイザーのパリ版仏語上演を成功させた、ホセ・クーラ。
そして現在は、2つめの大きな挑戦である、イギリスの作曲家ブリテンの英語オペラ、ピーター・グライムズの演出と主演のため、ドイツのボンでリハーサルを続けています。5月7日が初日です。

現時点での公演の告知と、クーラがFBやインスタグラムなどにアップしたリハーサル画像などをお借りして掲載するとともに、長年の念願でもあったオペラ、ピーター・グライムズに対するクーラの思いを、インタビューなどから抜粋して紹介したいと思います。

→ ボン劇場の案内ページ





クーラは、初役のピーター・グライムズで出演するとともに、演出と舞台デザインを担当しています。
5,6,7月にわたり9公演が予定されていますが、6月はクーラは出演しないようです。

☆クーラの出演日
07 May 18:00, 10 May 19:30, 13 May 19:30, 26 May 19:30
08 Jul 19:30, 15 Jul 19:30

☆Johannes Mertesがグライムズ役
11 Jun 18:00, 22 Jun 19:30, 30 Jun 19:30

≪キャスト・スタッフ≫
Peter Grimes - José Cura / Johannes Mertes [11th, 22nd, 30th June]
Ellen Orford - Yannick-Muriel Noah
Balstrode - Mark Morouse , Auntie - Ceri Williams , 1st niece - Marie Heeschen , 2nd niece - Panagiota Sofroniadou / Rosemarie White Gerber * , Bob Boles - Christian Georg , Swallow - Leonard Bernad
Mrs. Sedley - Anjara I. Bartz / Susanne Blattert , Pastor Adams - David Fischer
Ned Keene - Fabio Lesuisse * / Ivan Krutikov , Hobson - Daniel Pannermayr
fisherwoman - Asta Zubaite / Marianne Freiburg , A lawyer - Dong-Wook Lee / Georg Zingerle

Choir / Extrachor of the Theater Bonn , Beethoven Orchester Bonn

Musical director: Jacques Lacombe
Staging and equipment: José Cura
Lighting: Thomas Roscher , Chore study: Marco Medved , Direction and co-equipment: Silvia Collazuol
Director: Christian Raschke , Stage assistants: Ansgar Baradoy , Musical assistant: Stephan Zilia's ,inspiration: Karsten Sandleben

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ボン劇場のリハーサル室でしょうか。クーラがFBやインスタグラムに投稿した写真です。
ひとこと、コメントが付けられていますが、まだ全体の演出構想が語られていないので、禅問答のような感じ・・


"Today afternoon rehearsing Grimes 3rd act monologue. The boat is his burden..."
「今日の午後、グライムズの第3幕のモノローグをリハーサル中。ボートは彼の重荷・・」


"Grimes surrounded by the spirits of the dead kids..."
「グライムズは、亡くなった子どもたちの霊に囲まれた・・」






"Grimes Prologue... Is it all in his head?"
「グライムズのプロローグ・・すべては彼の頭の中?」


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その後まだ、クーラのFBには演出構想などが掲載されていませんので、どんな舞台になるのか、クーラの解釈の中身はまだよくわかりません。
そのため、クーラのこの作品にかける思いの一端を知る材料として、この間の、クーラのインタビューから、ピーター・グライムズに関する主な発言を抜粋(再掲も含む)して紹介します。


――2017年ドイツの雑誌インタビューより

Q、タンホイザーから3か月後、次の大役、ピーター・グライムズでデビューする。今回、ボン・オペラでは、演出と舞台デザインもやる。新しい役柄を準備しているアーティストにとって、これはかなり難しいことでは?


A、これは巨大な挑戦であり、大きなリスク。挑戦は、私の肩にかかっている仕事の量に関係し、演出と同じということで、私の解釈を最良の方法で作り上げるということについて、自分自身に甘やかすリスクも・・。

冗談はおいて、それは仕事の地獄だが、それはまた、非常に報われるもの。芸術的な楽しみの縮図だ!

もしそれがより頻繁にあるオペラだったなら、おそらく私は演出して歌うことはなかっただろう。しかし、そう頻繁に演奏されない素晴らしい作品を、私が演出する可能性がいつ再びあるだろうか? 私はこの1つのチャンスを失うことはできなかった!

Q、ピーター・グライムズはあなたの「夢の役柄」の1つ。どこに興味をもっている?そして何が挑戦?

A、私にとって、ワグナーの音楽的レトリックと、密度の濃い自由奔放な台本を扱うことの難しさに対して、ピーター・グライムズは正反対――音楽、テキスト、アクションの完璧な共生。私にようなパフォーマーにとっての夢だ。この作品において、すべての瞬間が挑戦だが、しかしリスクを伴うそれぞれのステップが、また喜びとともにある、そういうおもしろい挑戦だ。

Q、2つの新しい役柄、タンホイザーとピーター・グライムズとの違いと類似点は?

A、両方ともつまはじきにされた男だが、理由は異なる。タンホイザーは彼の運命に挑むが、ピーター・グライムスはその結果に苦しんでいる。
声楽的には、タンホイザーは素晴らしい音楽に非常に依存しているが、グライムスは精神の状態を伝えるために、声を使うことに依存している。時には単独の声だけに。たとえば第3幕の長い独白のように。

Q、今あなたの代表的な役柄といえるのは?

A、オテロとディック・ジョンソン(西部の娘)は、カニオ(道化師)、サムソン(サムソンとデリラ)と同様に、私の重要な役割だと言うことができる。数年後には、グライムスもそうなることを希望する。

『Das Opernglas』





――2016年フェイスブックで、フォロワーの質問に答えて(再掲)

Q、2017年に、初のワーグナーに挑戦、ブリテンのピーター・グライムズにデビューするが?

A、タンホイザーの音楽、一般にワーグナーは、私のように、音楽と演技とのリアルな結びつきを求める者にとっては、理想的とはいえない。しかしこれはスタイルの問題であり、私が解決すべき問題だ。

それには関係なく、ワーグナーの音楽は、信じがたいほどの音のモニュメントだ。残念なことに、台本は愚かしいけれど...。
とにかく私は、タンホイザーをやってみたかった。
なぜなら、私は少なくとも一生に一度は、ワーグナーのオペラを演じたかったからだ。ドイツ語は私には手が出せないので、この「フランス語上演」のチャンスを手放すことはできなかった。

ピーター・グライムズについては、私の“深い思い”を伝えるにはまだ早すぎる。いま進行中だからだ。しかしそれは、私にとって、理想的なオペラだ。次のような理由によって。
ピーター・グライムズは、音楽とドラマの完全な結合だ。もし仮にそこから音楽を削除し、台詞だけを語ったとしても、それらは完璧に意味をなしているだろう・・。


――2016年9月のリエージュでのインタビューより(再掲)

Q、2016-17シーズン中のもう一つの冒険、20世紀の英語のオペラで歌い、演出する?


A、ピーター・グライムズは、私のキャリアにおける最大のチャレンジ。
私はいつも、これを歌うことが夢だと言い続けてきたが、ボン劇場の人々が、私のインタビューでそれを読み、私を雇った。そしてまた、私は誘惑に抵抗できなかったために、演出もおこなう。
ブリテンにおいて、私はほとんどゼロからスタートする必要があり、特に美学、言語、音楽、30年の歌のキャリアの後に、これは非常にリフレッシュになる。
台本は本当に信じられないすごさ、素晴らしいスコア、音楽とアクションとの間の結びつきは総合的で、私自身にとっては、ワーグナーよりも、はるかに快適な方法だ。このプロジェクトは、私の情熱を大いに鼓舞してくれる。

Q、ホセ・クーラにとって、残っている探求は?

A、私のキャリアにおいては、私を魅了し、最も喜びを与えてくれるキャラクターにアプローチし、そして、私が快適に感じ、人びとに何らかのおもしろいものを提供できる場所で過ごすことができた。アーティストとして幸運である場合、期待にこたえ、妥協を受け入れず、自分自身に対して厳しくあることが不可欠だ。
私は、歌手として夢見たすべてをやることができた。まだピーター・グライムズが残っていたが、今シーズン、歌えることになった。成熟した役柄のためには、何年もかかる。明らかに、成熟度の点では、最初のピーター・グライムズは、250回演じたオテロのようにはいかない。だから私は、かなりの時間をかけて、ブリテンの英雄を解釈することができるよう願っている。





――2013年ニューヨークでのインタビューより(再掲)

●現代のオペラを


オペラ的な演劇を行う別の方法があるとをつよく信じる。繊細さとニュアンスにもとづいた方法が。それは現代のオペラ。俳優が自分自身を、本当の深さと特徴づけで役柄に投入する。それは近代的なオペラだ。
将来やりたいのはピーター・グライムズ。私が愛するのはオペラの舞台に流動性を創造するという夢を助けてくれるオペラ。舞台演劇のように。素晴らしい誘惑だ


――2011年リエージュでのインタビューより(再掲)

Q、イタリアオペラの大きな役をたくさん歌っているが、他に試してみたい役柄は?


私はピーター・グライムズをやりたい。私があまり年をとりすぎる前に、誰かがオファーをくれることを願っている。
チャイコフスキーのスペードの女王のゲルマン役でオファーを何度も受けたし、いくつかワグナーの役でも受けた。しかし、私は言語のためにそれらを断った。私は覚えただけのオペラを歌いたくない。やることは可能だが、もし本当にそのキャラクターを描写したいのであれば、その言語をよく知らなければならない。私にはロシア語を学ぶ時間がない。

――2007年ロンドンでのインタビュー(再掲)

私の夢の一つは、ピーター・グライムズをやること、そして私はここ、ロンドンでそれをやってみたい。ここロンドンよりも、それを学び、演じるのに良い場所があるだろうか。

一方で、それは非常に危険なことだ。もしあなたがイギリス人やドイツ人でなくて、英語やドイツ語のオペラをやるとき、正確なアクセントを身につけていないと、死ぬほど批判される。しかしあなたがイギリス人で、イタリアオペラを完璧なアクセントでなく歌っても、誰も何も言わない。なぜそうなるのか、私にはわからない。私は、イタリア的なアプローチが最も健康的だと思う。なぜなら、外国語で完璧なアクセントを持つのは不可能だから。

重要なことは、キャラクターをつくるために最適なアプローチをすることだ。私はピーターグライムズをやれると思う。しかし私がイギリスでそれを提案するたびに、彼らは「イエス、でも他のどこかで最初にやって、それからここに持ってきて」という。なぜだろうか。私は最初からそれをよく学びたい。再びやるときに、ゼロからスタートしなければならないよりも。誰かがこれを読んで、私がそれを行うことができるようになることを願う。




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こうしていくつか抜粋しただけでも、かなり前から、ピーター・グライムズの魅力とそれへの挑戦の意向を、機会あるごとに語っていたことがわかります。ドラマと歌・音楽を一体としてとらえ演じるオペラパフォーマーとしてのクーラにとって、「夢」の作品ということですね。

実は、一度、2011年に、クーラの居住地のテアトロ・レアルで予定されていましたが、劇場監督の交代にともなってキャンセルになったという不幸な経過もありました。今回、いよいよ、ボンで実現します。

長年の願いがついにかない、さらにこの先も自分の代表的な役柄にしたいという、高い意気込みで臨んでいるクーラ。
このチャレンジが成功することを心から願っています。




*写真はクーラのHP,FBなどからお借りしました。
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