人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2021年 ホセ・クーラ、スイスでアルゼンチン歌曲のコンサート(無観客・ライブストリーミング)

2021-02-19 | アルゼンチンや南米の音楽

 

 

 

2021年2月9日、ホセ・クーラの11か月ぶりのコンサート出演が実現しました。

スイスのチューリッヒ近くの町、ヴィンタートゥールでのアルゼンチン音楽のコンサートです。オーケストラは、ヴィンタートゥールムジークコレギウムで、1629年に創立された非常に歴史の古いオケです。独自の活動の他、チューリッヒ歌劇場のピットでも演奏しているそうです。クーラは長年にわたり、チューリッヒ歌劇場のオペラに出演してきましたので、オケとの信頼関係も深いのかもしれません。

コロナ禍のため、残念ながら無観客で実施されることとなりましたが、ライブストリーミングされ、試聴することができました。またオケの公式YouTubeチャンネルに録画も掲載されています。限定公開のため、いつまで視聴できるのかわかりませんが、楽しく美しいコンサートでしたので、ぜひご覧になってみてください。

約1時間半、休憩なしで、クーラ自身がオーケストラ用に編曲したアルゼンチンの作曲家による歌曲30曲を、クーラ自身が指揮をしながら歌っています。

 

 

 

 

 

 

 

●ヴィンタートゥールムジークコレギウムの公式チャンネル掲載の動画リンク

(*はじめの10分ほどはまだ黒い画面で、始まりません。11分少し前にクーラが入場、話し始めます)

 

 

 

Musikkollegium Winterthur
LEITUNG UND TENOR José Cura
SOLIST Barbora Kubikova, guitar


ARGENTINISCHER ABEND MIT JOSÉ CURA  09. FEB 2021

Argentine songs for tenor, chamber orchestra, piano and guitar in arrangements by José Cura

 

                                                (作者)          (曲名の直訳)

Intro    

1、Hilda Herrera „Desde el fondo de ti“   ヒルダ・エレーラ(1933~)     「あなたの奥深くから」

2、María Elena Walsh „Postal de guerra“  マリア・エレナ・ウォルシュ(1930 – 2011)  「戦地からの葉書」

3、Carlos Guastavino „Violetas”      カルロス・グアスタヴィーノ(1912 – 2000)  「すみれ」

4、Carlos Guastavino „Pájaro muerto”      同                  「死んだ鳥」

5、Carlos Guastavino „Se equivocó la Paloma”   同                 「鳩のあやまち」

6、Carlos Guastavino „Préstame tu pañuelito”            同           「あなたのハンカチを貸して」 

7、Carlos Guastavino „El albeador”       同                   「アルバドール」

8、Carlos Guastavino „Romance de José Cubas”  同            「ホセ・クーバスのロマンス」

9、Alberto Ginastera „Canción del árbol del olvido”  アルベルト・ヒナステラ(1916 –1983)  「忘却の木の歌」

10、José Cura „Pensé morir”         ホセ・クーラ(1962~)作曲    「私は死ぬと思った」

11、Carlos Guastavino „La Rosa y el Sauce”  カルロス・グアスタヴィーノ   「バラと柳」

12、Carlos Guastavino „Cortadera Plumerito”  カルロス・グアスタヴィーノ  「コルタデラ プルメリト」  

13、Carlos Guastavino „¡Qué linda la madreselva!“  カルロス・グアスタヴィーノ 「スイカズラはなんて美しいのだろう」

14、Carlos Guastavino „La flor del aguapé”     同            「アグアペの花」

15、Carlos Guastavino „Ay, aljaba, flor de chilco...”  同            「ああ、矢筒のようなツリウキソウの花」

16、Carlos Guastavino „Cuando acaba de llover”     同          「雨が降り出した時」

17、Carlos Guastavino „Yo, maestra”        同            「私、先生」

18、Carlos Guastavino „Ya me voy a retirar”       同          「私は引退する」

19、Carlos Guastavino „Los días perdidos”      同           「失われた日々」

アンコール曲 

 

 

 

 


 

 

 

●公式チャンネルの動画が非公開になった場合は、以下のリンクでご視聴ください。アルゼンチンのラジオ局が放送し、アップしているもののようです。

 

Concierto de José Cura desde Suiza por Radio Rosario Clásica fm 90.7

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

●現地でのクーラのFB投稿より 

 

 

”ヴィンタートゥールで雪とともに目を覚ました。リハーサルを終え、準備完了だ! 私たち全員は距離をとり、通常のコンサートとは違う。20人が80人分のステージに広がる。私はオーケストラから10メートルほど離れ、彼らは全員、顔でのコミュニケーションを難しくするマスクを着ているが、しかし雰囲気は最高、愛は感じ合える!!! 19:30、忘れずに!”

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

≪ それはコミュニケーションのイベントだった ーー レビューより ≫

 

 

"興味深いのは、ホセ・クーラとの夕べだった。彼はアルゼンチンの作曲家の歌で聴衆を喜ばせた。芸術的な観点からは初めてのことではなく、そのプログラムも初めてではなかったが、洗練された雰囲気の中で、メロディックに彩られた、メランコリックな表現力とユーモラスな音楽、ホセ・クーラ自身によるオーケストラのためのアレンジ。それは彼が語ったように11か月ぶりのコンサートであり、最初のストリーミングイベントだった。”

”それはコミュニケーションのイベントであり、ホセ・クーラはまるでテレビ番組であるかのように存在していた。彼はリラックスして魅力的で、瞑想的で、ユーモラスで、家で見ている私たちとコミュニケーションを取り合っていた。”

”彼がジェスチャーを通じてオーケストラともコミュニケーションを取っているという事実は、驚くほど自然に思えた。曲の叙情的な内容が複雑なものでないことを残念に思う人もいるかもしれないが、しかし、彼の活力と深みのある声はそれを忘れさせ、ギタリストのバーバラ・クビコワの演奏を含む楽器の貢献が多くの魅力をもたらした。アルベルト・ヒナステラという作曲家はからよく知られているが、カルロス・グアスタヴィーノが前面に押し出され、クーラは、音楽の解釈者であるだけでなく、パブロ・ネルーダの詩の作曲によって作曲家でもあることが証明された。”

 

 

 

 

 


 

 

クーラは、2020年3月15日にドイツ・ハンブルクでヴェルディのオテロに出演して以来、1年近く、コロナ禍によってすべての公演がキャンセルされ、ステイホームを余儀なくされていました。その間、繰り返しロックダウンに見舞われたマドリードで、健康を維持しながら、作曲やオーケストレーションなどで創造的な仕事を続けていました。しかし舞台に生きるクーラにとって、生のステージに立てない苦悩は大きなものだったと思います。

動画では、ようやく舞台に帰ってきたクーラの喜び、オケと一緒に音楽をつくっていく楽しさを噛み締めながら、味わいながら、歌い指揮する姿が映し出されています。繰り返しオケへの感謝の言葉も述べているようです。英語で語っていて字幕がないために、私には何を言っているのか十分理解できないのが残念です。今回のストリーミングは原則無料で配信され、限定公開でオンデマンド視聴もできましたが、オケの運営を支援するために、クーラも「ぜひ寄付を」と呼びかけていました。

コロナ禍を克服し、通常の形でコンサートやオペラが上演できるのは、いつ頃になるのでしょうか。アーティストと音楽・文化芸術関係者の皆さんの先の見通せない不安や経済的困難はまだまだ大きなことだと思います。ワクチンの普及をはじめとして、世界が困難を克服でき、文化・芸術活動の新たな本格的スタートが可能になる日を心から待ち望んでいます。

 

 

 

 

*写真はコンサート動画より

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(録画公開編2)ホセ・クーラが歌うアルゼンチンの歌曲

2020-09-25 | アルゼンチンや南米の音楽

 

 

少し紹介が遅れましたが、ホセ・クーラが歌うアルゼンチン歌曲のコンサート動画が公開されました。

以前の動画でとりあげた、2018年のドイツのウルト・フィルハーモニー管弦楽団とのコンサート録画の続編です。このコンサートは2部形式で、その前半が今回紹介するアルゼンチン歌曲のプログラム、そして後半が、クーラが指揮をするドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」という構成でした。

 →後半の動画紹介「(録画公開編)ホセ・クーラが指揮するドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』

 

後半はフルオーケストラでシンフォニーを指揮、そして今回公開された前半は、小規模な室内楽編成にして、クーラはその真ん中に座り、オケと対話するかのようなスタイルで、抑えた動きで指揮をしながらアルゼンチン歌曲を歌っています。

オケのひとりひとりのメンバー、ギタリスト、そして指揮者兼歌手のクーラ、それぞれが互いにアイコンタクトでコミュニケーションをとりあい、曲の間にはたびたびクーラのユーモアたっぷりの語りが入ります。とても親密で、温かく、リラックスして、ステージと観客とが一体となった雰囲気でプログラムが進行していきます。

クーラの母国アルゼンチンの歌曲。それぞれ短い曲ですが、美しく、しみじみとした哀愁がただよい、全体のプログラムを通して、クライマックスにむけた大きな高まりがあり、胸を打ちます。

クーラのアルゼンチン歌曲のコンサート、コンサート全体の動画が公開されるのは、今回が初めてだと思います。遠くからの固定カメラで撮影しているので、表情のアップはありませんが、音質はとても良好です。

ぜひ、ご覧になってください。

 

 


 

 

ーーホセ・クーラ アルゼンチン歌曲のコンサート

 

≪全体版≫

 

Argentinian Songs | José Cura | Würth Philharmoniker

 

 

Reinhold Würth Hall of the Carmen Würth Forum in Künzelsau
The Würth Philharmonic
October 2018 

ARGENTINE SONGS
Direction and singing | José Cura

 

 

≪Program≫

 

プログラムと各曲のリンクです。上記と同じ動画のなかで、直接、それぞれの曲の冒頭にとびます。

 

 

00:00 Intro    あいさつ              (作曲者)              (曲名の直訳)

1、01:03 Hilda Herrera „Desde el fondo de ti“   ヒルダ・エレーラ(1933~)作曲        「あなたの奥深くから」

2、03:30 María Elena Walsh „Postal de guerra“  マリア・エレナ・ウォルシュ(1930 – 2011)作曲  「戦地からの葉書」

3、08:06 Carlos Guastavino „Violetas”      カルロス・グアスタヴィーノ(1912 – 2000)作曲   「すみれ」

4、10:57 Carlos Guastavino „Pájaro muerto”      同                   「死んだ鳥」

5、16:00 Carlos Guastavino „Se equivocó la Paloma”   同                   「鳩のあやまち」  

6、18:30 Carlos Guastavino „El albeador”       同                   「アルバドール」

7、20:34 Carlos Guastavino „Romance de José Cubas”  同                  「ホセ・クーバスのロマンス」

8、25:05 Felipe Boero „Funeral Coya“       フェリペ・ボエロ(1884 –1958)作曲      「葬儀Coya」*意味がわかりませんでした)

9、27:10 Alberto Ginastera „Canción del árbol del olvido”  アルベルト・ヒナステラ(1916 –1983)作曲   「忘却の木の歌」

10、30:00 José Cura „Pensé morir”         ホセ・クーラ(1962~)作曲           「私は死ぬと思った」

11、34:00 Carlos Guastavino „¡Qué linda la madreselva!“  カルロス・グアスタヴィーノ作曲     「スイカズラはなんて美しいのだろう」

12、35:47 Carlos Guastavino „La flor del aguapé”       同                 「アグアペの花」 

13、40:07 Carlos Guastavino „Cuando acaba de llover”     同                 「雨が降り出した時」

14、42:50 Carlos Guastavino „Yo, maestra”          同                 「私、先生」

15、46:00 Carlos Guastavino „Ya me voy a retirar”       同                 「私は引退する」

16、49:06 Carlos Guastavino „Los días perdidos”       同                 「失われた日々」        

17、53:27 Carlos Guastavino „Jardín antiguo”         同                 「古い庭」

18、55:24 Carlos Guastavino „Alegría de la soledad”      同                 「孤独の喜び」

 

 

 

≪曲間のクーラの語りと解説≫

 

”グッドアフタヌーン”の挨拶から始まったコンサート。まずクーラは、「アルゼンチン人として、これらの美しい曲を、ドイツの”パンパ”で歌うことは、とても嬉しく、誇らしい」と、クーラの出身地アルゼンチン中部の草原地帯”パンパ”に会場の町キュンツェルザウを例えて、観客を笑わせ、「こんな美しい場所に住んでいる皆さんが羨ましい」と語りました。

その後、2曲、または長めの曲は1曲ごとに、クーラが短い語りや解説を加えて、オケや観客とコミュニケーションをとります。

クーラの語りはいつものようにユーモアと温かみがあり、オケの同僚たちとの信頼関係が伝わるものでした。英語とドイツ語の字幕がついていますし、日本語翻訳もできますので、ぜひ、曲と一緒に、語りも楽しんで見てください。

いくつか抜粋して紹介します。

 

 

●音楽の秘密は素晴らしい歌詞にある

冒頭の2曲を歌い終わった後、会場スタッフに対して、「もっと明かりを!」とお願いし(その時のやり取りもユーモアたっぷりです)、その理由を次のように説明しました。

「この音楽の秘密は、とても美しい音楽であるだけでなく、その素晴らしい詩にある」

「私たちを見る必要はない。(配布されている歌詞を)読んで!」「そうすれば、私たちがしていることをもっと楽しむことができる」

 

 

●シューベルトやシューマンのような歌曲であり、バルトークやコダーイにも似ている

7曲目「Romance de José Cubas」を歌い終わった後、クーラは少し長い解説をしました。

「この音楽の最も難しいことのひとつは、音符を奏でることではなく、そのスタイルだ。すべてに異なっている。今、皆さんが聞いているこの音楽は、すべてのものと違っている。これらは”Lieder"(歌曲、リート)であり、シューベルトやシューマンのようなクラシックの歌曲。ポップミュージックではない。」

「それでもやはりそれらは、ポップの香りに触発されている。少し、バルトークやコダーイの音楽に似ている。これらに刺激を受けている。そのためフォーク調の香りを感じるが、しかし非常に古典的だ。最も難しいこと、そして彼らが皆さんに伝えるのは、音ではなく、スタイルであり、フィーリングだ。」

 

 

●グアスタビーノの真の音楽的遺産とは

 → 最後の2曲について

「グアスタビーノは現代の作曲家。彼は2000年に死去した。ほんの少し前のことだ。彼には家族がなく、アルツハイマー病にかかり、病院でひとりぼっちで、何も思い出せなかった。グアスタビーノは現代に生きた人物であり、彼の音楽、彼の真の音楽的遺産は、これから私たちが演奏する曲のような音楽だ。」

「ただし彼も、他の人々と同じように、食べていかなければならなかったので、経済的に成功する必要があった時には、ちょうど今聞いた曲やその前の曲のような、美しく旋律的な曲を書いた。しかし彼が自身の足跡、音楽的な足跡を残すことを求めた時には、彼はこの曲のような音楽を作曲した。」

「そしてこの2曲で私たちはコンサートの前半を終える。これらの2曲を私たちは、昨日亡くなった、同僚であり友人であるモンセラート・カバリエ(スペインのソプラノ、2018年10月8日死去)の思い出に捧げたい。これらの曲の後の最後の拍手は、私たちに対してではなく、モンセラートの思い出に対する拍手になるだろう。」

 

最後の2曲を歌い終わると、クーラが促して、全員のスタンディングオベーションで、カバリエに対して拍手をし、前半を終えました。

 

 


 

 

約1時間のアルゼンチン歌曲のプログラム、とてもこれでコンサートの前半とは思えないほど、充実して内容が濃いものとなっています。

全部を通しで聞いていただくのが一番ですが、プログラムを見て、興味のある曲だけを聴いていただくのもまた楽しいと思います。

それぞれが魅力的ですが、私がとりわけ印象深かったのをいくつかご紹介します。まず3曲目の「すみれ」、クーラが、オーケストラがすみれに吹きかかる風を表現していると説明した曲です。7曲目の哀感ただよう”Romance de José Cubas”、10曲目のクーラ作曲”Pensé morir”も何度聞いても感動的です。14曲目"Yo, maestra”、16曲目„Los días perdidos”はクーラがしっとりとドラマティックに歌いあげます。

成熟した美しい声でドラマティックに表現するクーラのアルゼンチン歌曲。とても聞きごたえがあります。もちろんクーラは、現在もテノールとしてオペラの舞台に立っていますし、作曲や指揮、演出もしています。それらと並行して、故郷アルゼンチンの歌曲のコンサートをライフワークとして各地で取り組んでいます。

コロナ禍による制約が解けたら、ぜひ日本でも、現在のクーラの魅力満載のアルゼンチンの歌曲のコンサート、企画してくれるオーケストラがいないものでしょうか。ぜひともお願いします。

 

 

*画像はオーケストラのFBからお借りしました。

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2020年 ホセ・クーラ、ドイツでアルゼンチン音楽のコンサート

2020-03-04 | アルゼンチンや南米の音楽

 

 

2020年2月28日、ホセ・クーラはドイツ南西部の都市ルートヴィヒスハーフェン・アム・ラインで、母国アルゼンチンなど南米の音楽をプログラムとするコンサートに出演しました。

先日、今年11月にホセ・クーラが、愛知芸術劇場(名古屋)でバーリ歌劇場のアイーダに出演するということが、中京テレビ(主催)から公式発表されましたが、依然としてクーラの公式カレンダーは沈黙のまま(苦笑)です。今年は、オテロの演出も予定され、またハンガリー放送芸術協会の客員アーティストとして多彩なプログラムやレコーディングの計画も進行中のため、多忙なのはわかりますが、すでに今年も3月になっているのに年間のスケジュールがわからないのには困り果てています。

そうしたなかで、フェイスブックやネット上の記事で告知されていた公演のひとつが、この2月末のドイツのコンサートでした。今年初の歌の公演ではないかと思います。

主催者は、ルートヴィヒスハーフェンに本社をおく世界的化学会社BASFで、企業の文化事業として様々な企画が行われているようです。今シーズンは「ビッグフォー」という企画で、クーラの他、エリーナ・ガランチャなども招聘されたようでした。会場は、BASF社が運営するファイアアーベントハウスというコンサート会場です。 

 

 


 

 

*画像はハンガリー放送芸術協会のインスタより

 

 

José Cura, tenor
Hungarian Radio Symphony Orchestra

program "Argentinian Songs"

Feb 28 2020 8 p.m.
BASF Feierabendhaus

 

 

コンサートは、上の写真に見るように、ステージの上に室内楽オケを配置し、その中央にクーラが座って、指揮をしながら歌うというスタイルでした。最近は、このスタイルで、アルゼンチン歌曲を歌うのがコンサートの定番のひとつとなっているようです。オケは、ハンガリー放送交響楽団。ギターのソリストとして、チェコの若いギタリスト、バルボラ・クビコバさんが共演しました。

 

 

≪パンフレット≫

PDFで7ページ分のパンフレット。ドイツ語です。画像にリンクを張っています。

 

 

 

≪プログラム≫

 

プログラムには、クーラが愛するアルゼンチンの作曲家の歌曲がびっしりと並んでいます。クーラが、チリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの詩に作曲した曲も加えられています。全体で、約2時間くらいのコンサートだったようです。

 

~前半50分~

Hilda Herrera (1933~)  ヒルダ・エレーラ
„Desde el fondo de ti“

María Elena Walsh  マリア・エレナ・ウォルシュ
(1930 – 2011)
„Postal de guerra“

Carlos Guastavino  カルロス・グアスタヴィーノ
(1912 – 2000)
Tres canciones
„Violetas“
„Pájaro muerto“
„Donde habite el olvido“
„Se equivocó la paloma“
„Prestame tu pañuelito“
„El albeador“
„Romance de José Cubas“

Felipe Boero(1884 –1958)  フェリペ・ボエロ
„Funeral Coya“

Alberto Ginastera(1916 –1983)  アルベルト・ヒナステラ
„Canción del árbol del olvido“

José Cura(1962~)  ホセ・クーラ
„Pensé morir“

(休憩)

~後半45分~

Carlos Guastavino  カルロス・グアスタヴィーノ
„La rosa y el sauce“
„Flores argentinas“
„Cortadera, plumerito“
„Campanilla“
„¡Qué linda la madreselva!“
„La flor del aguapé“
„Ay, aljaba, flor de chico“
„Cuando acaba de llover“
„Yo, maestra“
„Ya me voy a retirar“
„Los días perdidos“
„Las nubes“
„Jardín antiguo“
„Alegría de la soledad“

 

「タンゴ以上。 ホセ・クーラは、現代のヴェリスモ・オペラを代表する偉大な人物の1人。 アルゼンチン人は30年間ヨーロッパに住んで働いてきた。しかし彼は、常に子ども時代のメロディーに引き戻される。ホセ・クーラは祖国を心の奥深くに運び、印象的な舞台の存在感と思いやりのある控えめな方法で、人々に、彼らの魔法を特別なものにすることができる。
クーラが考案したこのプログラムには、信じられないほど親密な歌が含まれている。それらのすべては、詩と音楽の間の密接な関連を持っている。例えば、クーラがパブロ・ネルーダの詩に基づいて書いたオリジナルの作曲や、『アルゼンチンのシューベルト』として知られるカルロス・グスタヴィーノの作品には、叙情的な熱意と飽くことのない憂鬱が込められている。感傷的ではない、哀愁でいっぱいの夜。」

(コンサート紹介文より)

 

 

 

≪コンサートの様子~オケのインスタより≫

 

 

 
 
 
 
 
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#fridaynight #JoséCura #HungarianRadioSymphonyOrchestra #BarboraKubikova #ArgentinianSongs

MagyarRádióMűvészetiEgyüttesei(@magyarradiomuveszetiegyuttesei)がシェアした投稿 - <time style="font-family: Arial,sans-serif; font-size: 14px; line-height: 17px;" datetime="2020-02-29T14:27:07+00:00">2020年 2月月29日午前6時27分PST</time>

 

 

 

≪レビューより≫

 

*この写真は、以前、ルートヴィヒスハーフェンを訪れた時のもののようです。

 

” 魅惑的なラテン系のいい男という呼び声は依然として彼の前にあった。しかし一方で、アルゼンチンのテノール、ホセクーラは、BASFファイアアーベントハウスの「ビッグフォー」に出演した際、偉大なアーティストに成熟していた。そのカリスマ性によって、彼はハンガリー放送交響楽団とともに、聴衆を2時間以上にわたって魅了した。

哀愁と官能に満ちた夕べーー昨年、伝統的なハンガリーのオーケストラは、ホセ・クーラとの長期的なコラボレーションを発表した。 「これは私の家族だ」と、世界のスターは最初に言った。 歌手、指揮者、ステージデザイナー、ディレクター、作曲家、モデレーターとして、彼はコンサートを続けている..…”

(以下は有料記事で読むことができませんでした)

 

 

 

≪関係者がアップしてくれた動画≫

 

主催者や共演者のFBに、会場内からとった短い動画が紹介されていました。アンコールの際のようです。

クーラがおしゃべりで場内を笑わせながら、コミュニケーションをとっている、とても親密なコンサートの雰囲気が伝わります。

 

 

 

 

 

こちらは、コンサートの告知用に掲載された動画

 

 


 

 

今回のコンサートのような、決して大きすぎない会場で、室内楽オケ、またはピアノ伴奏による、クーラのアルゼンチン歌曲の公演、ぜひ、11月に来日した際にも、どこかで企画していただけないものでしょうか。すでに1998年にクーラは、「アネーロ」というアルゼンチン歌曲のCDを出しており、このコンサートで歌った曲も多数収録されています。なじみのある曲も少なくないと思います。14年ぶりの来日のチャンス、クーラの円熟の魅力を、親密なアルゼンチン歌曲のコンサートで味わいたいものです。ぜひぜひ、よろしくお願いいたします!

 

 

*写真などは関係者のSNSよりお借りしました。

 

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2019年 ホセ・クーラ、リスト音楽院でアルゼンチン歌曲のコンサート

2019-05-27 | アルゼンチンや南米の音楽
 
 
 
 
ぼんやりしていて更新がしばらく滞っていましたが、決してニュースがないわけではないので、紹介したい公演、テーマが沢山たまってしまいました。ぼちぼちと続けていきたいと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。
 
今回は、少し前のことになりますが、2月のハンガリーでのコンサートについて紹介したいと思います。
2019年2月24日、ホセ・クーラは、ハンガリーの首都ブダペストのリスト音楽院で、アルゼンチン歌曲のコンサートを行いました。このコンサートは、ハンガリーでリストの再来と言われたピアニスト、ジョルジュ・シフラの名を冠したシフラ・フェスティバル最終日のガラ・コンサートです。フェスティバルの創設者であるハンガリーの若手ピアニストのヤーノシュ・ボラージュと共演しました。
 
チケットは早々に完売。当日も満席で、追加の席が舞台上にも配置されるなど、伝統あるリスト音楽院の大ホールは、大変な熱気だったようです。また、クーラの母国アルゼンチンの歌曲によるプログラムは、スペイン語の歌詞の内容を理解してほしいというクーラの願いから、歌の内容や込められた思いなどをクーラ自身が語りながらの進行だったということです。参加した人たちのコメントによると、情熱的で繊細な歌、ユーモアあふれる語りで、とても親密な雰囲気、美しく感動的なコンサートとして大成功したそうです。
 
残念ながら、録音も録画もありません。主催者や関係者のSNSに投稿された写真などを中心に紹介します。またクーラのハンガリーでのインタビューから抜粋して掲載したいと思います。
 
それとは別のクーラの長いインタビューを以前の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
また、これまでのクーラのアルゼンチンや南米音楽のコンサートについて、いくつかの記事があります。 動画も紹介しています。
 
 
 

 
 
 
≪2019ジョルジュ・シフラ・フェスティバル≫
 
●フェスティバルFBの告知バナー

 
 
 
●チケットは、早々に完売

 
 
 
 
●HPのコンサート紹介(ハンガリー語)

 
 
 
 
 
≪ガラ・コンサートの様子≫
 
 
プログラムは、アルゼンチンの著名な作曲家、カルロス・グアスタビーノを中心に、アルベルト・ヒナステラ、カルロス・ロペス・ブチャルド、そしてクーラ自身が作曲した曲などで構成されました。ヤーノシュ・ボラージュのピアノとクーラの歌、語り、2人の波長は良く合っていたようで、盛り上がり、コンサートが45分も(!)延長になったそうです。びっくり、そしてその日の観客が羨ましい限りです。
 
 
●フェスティバルのFBに掲載された舞台写真。このいくつかの写真を見ても、2人の親密さ、互いのリスペクトと情熱が伝わってくるようです。
 
 
 
●FBにはまだたくさんの写真が掲載されています。右上のFをクリックすると見ることができます。
 
 
 
●美しいリスト音楽院 観客のインスタより 
 
 
 
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Évus (Hungary) 🇭🇺さん(@d.endrodyeva)がシェアした投稿 - <time style=" font-family:Arial,sans-serif; font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2019-02-24T19:53:21+00:00">2019年 2月月24日午前11時53分PST</time>

 
 
●終演後、在ハンガリー・アルゼンチン大使夫妻、ヤーノシュ・ボラージュ夫妻とクーラ
 
 
 
 
 
≪ハンガリーでのクーラのインタビュー≫
 
 
●フェスティバルのFBに掲載された動画。テレビ番組で、クーラの紹介とインタビューが組み合わされています。英語ですが、ハンガリー語の吹き替えが重なっていてなかなか聞き取れません。
 
 
 
 
 
●ネットに掲載のインタビュー記事より(抜粋) 


 
 

Q、今日のオペラの状況について?

A(クーラ)、多くの大人たちにとって、文化的な「パッケージ」は、その芸術を”購入する人の人数”によって決まる。それは、アーティストが彼らに与えているものを彼らが愛するか嫌うか、それが彼らの先入観に合うかどうかにかかっている。

しかし、若い人はもっとオープンだ。彼らの唯一の期待は、自分の気持ちに嘘をつくことなく、彼らを魅了すること。それが誠意をこめて提示されれば、クラシック芸術は永遠に続くだろう。音楽的な愚かさが時代遅れになったことを神に感謝したい。

 

Q、新しいオペラは必要か? それとも既存のオペラで十分?

A、19世紀の作曲家も同じ質問をした。そのようなレパートリーのようなオペラの必要性があるかどうか尋ねるならば、私の答えはノーだ。すでに知られている形式に新しいアプローチを組み合わせた作曲家が必要だ。

私は最近、自作の最初のオペラを完成させた。私は様々なスタイルや演劇的なツールを使い、それらを一種のネオバロックスタイルに組み合わせた。ハンガリーでいつかお見せできることを願っている。

(注)すでに2020年1月に同じリスト音楽院大ホールでコンサート形式による初演が決定しています。


Q、あなたは歌手、指揮者であるだけでなく作曲家だが、これはあまり知られていない面では?

A、私は作曲家と指揮者になるために音楽を始めた。最初は1978年に15歳でコーラスを指揮していた。しかし1993年、30歳でフルタイムのオペラ歌手になった。

 

Q、ハンガリーのピアニスト、ジョルジュ・シフラについてどう思う?

シフラは驚くべき名手であるだけでなく、素晴らしい人物でもあった。最も過酷で最も苦痛な状況にもかかわらず、成し遂げることができるという生きた実例だった。

もちろん、私はシフラのライブ演奏を聞いたことはないが、たくさんのビデオとオーディオのレコーディングがある。この偉大な個性あるアーティストの最も明白な特徴は、最も難しい曲からもにじみだしている、印象的な自信と精神的な安らぎだ。

彼の才能を超えて「得た」ものは何もない。それ以外の熟知した知識は、彼の長年の努力の結果だ。シフラは、有名人であることと、偉大さとの違いについて私が話す時、その意味するものを象徴している。

 

≪リハーサルの様子≫

 

●リスト音楽院でリハーサル中
 
 
  
●リハーサル後に、ヤーノシュと
 
 
 
●エリカ・ミクローシャと。今回は共演はありませんでしたが、彼女もフェスティバルに出演していました。
 
 
 
おまけで、昨年のヴェスプレーム・フェスティバルで共演した時の公式動画を。
クーラはミクローシャと、何とモーツアルトのドンジョバンニの二重唱を歌っています。
 
Operagála - José Cura, Miklósa Erika, Ramón Vargas, Rost Andrea - 2018. július 13.
 
 
●新聞報道 
 
 
 

 
 
クーラのライフワークとなっているアルゼンチン歌曲のコンサート、ハンガリーの観客から長い喝采とスタンディングオベーションを受けたようです。放送がなかったのが残念でなりません。来日は無理としても、いつか遠征してライブで聞きたいものです。
 
クーラは2019年の秋から、3年間、ハンガリー放送芸術協会の客員アーティストとして活動することが発表されています。素晴らしい文化的伝統と音楽好きの観客を持つハンガリーで、クーラの多面的な活動がいっそう花開く3年間になりそうです。
 
 
 
 
 *画像はフェスティバルや出演者のFBなどからお借りしました。
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2018年 ホセ・クーラ、ドイツとスイスでアルゼンチン音楽のコンサート

2018-11-03 | アルゼンチンや南米の音楽




ホセ・クーラはこの10月(2018年)、ドイツとスイスで、母国アルゼンチン音楽のコンサートを行いました。
クーラ自身の作曲作品を含む、アルゼンチンや南米音楽のコンサートは、クーラがライフワークとしているようで、近年、各地で行われています。

→これまでの南米・アルゼンチン音楽のコンサートについての記事

今回の2つのコンサートに関しては、録画や録音がなく、写真も少ないのですが、とても素晴らしい公演だったようです。
このような、親密な雰囲気の室内楽風のコンサート、ぜひ日本でもやってほしいものです。



クーラのFBに掲載されたコンサートの告知(画像は昨年のドレスデン音楽祭2018の際のもの)




下の動画は以前も紹介しましたが、クーラがノーベル賞詩人ネルーダの詩に作曲した歌曲で、とても切なく美しい愛の歌です。
今回のコンサートのプログラムに入っていたかわかりませんが、たぶん歌ったのではないかと思います。

José Cura: Argentinische Lieder (Dresdner Musikfestspiele 2018)






≪2018年10月7日、ドイツ・キュンツェルザウでのコンサート≫


キュンツェルザウは、シュトゥットガルトの北に位置する人口1万5千人あまりのドイツの都市です。
そしてそこにあるカルメン・ウルト・フォーラムという、2017年7月に完成したばかりの最新の現代的なホールがコンサート会場です。大きな多目的ホールと、最高の音響レベルをうたう中規模の室内楽ホールがあり、その580人収容の室内楽ホールでクーラのコンサートは行われました。

キュンツェルザウには、ドイツの世界的な部品メーカー、ウルト社(ドイツ読みはヴュルト)の本社があり、このホールをはじめ、美術館などの文化施設は、同社の社会貢献として建設・運営されているようです。
そのためか、通常のチケットは25~35€程度(日本円で3~4千円代、公演により少し高い特別設定もあるようです)に抑えられています。しかもこの秋から来年にかけて、クーラの他にも、ブリン・ターフェル、ヴァルガス、オポライス、アンネ=ゾフィー・ムター等、多くの著名な出演者による公演があります。機会があれば、ぜひ行ってみたいものです。





主宰であるオーケストラは、このホールを根拠地としているウルト・フィルハーモニーでした。
ここでのプログラムは、クーラが指揮するドヴォルザークの交響曲第9番と、アルゼンチン歌曲の2部構成だったようです。

写真を見ると、「新世界」の演奏では、フルオーケストラをクーラが指揮し、アルゼンチンの歌の際には、オケを室内楽に再編成し、中央にクーラが位置して、指揮もしながら歌ったようです。このスタイルは、最近のアルゼンチン歌曲のコンサートでは定番になりつつあるようです。

チケットは完売、そして満場の観客から、スタンディングオベーションを受けたそうです。







これらの写真は、オーケストラがフェイスブックにアップしたものをお借りしました。




こちらはフルート奏者の方がFBにアップしたもの。スタンディングオベーションを受けている様子が。




同じくオケのメンバーがアップした写真。
「今夜奇跡が舞台で起こった!!!!!ホセ・クーラ、ありがとう、ダンケ、サンキュー!音楽学校への入学を両親に感謝!」と興奮気味のコメントが添えられています。




オケのコンサートマスターがFBにアップした、リハーサル中の写真。






≪2018年10月13日、スイス・チューリッヒでのコンサート≫






長年にわたってチューリッヒ歌劇場に出演してきたクーラですが、2012年以来、なぜか出演がありません。今回は、歌劇場ではなく、トーンハレ・マーグという会場でのコンサートです。





オケは欧州最古の歴史を持つというヴィンタートゥール・ムジークコレギウム。この夏(2018年7月)のヴィンターツゥールの夏フェス野外コンサートでも共演しました。










とても素晴らしいコンサートだったようですが、残念ながら、あまり写真や音源が公開されていません。
クーラが1枚だけ写真をFBにアップしていますのでそれを紹介します。



夏のコンサートで共演した際も、すぐにオケのメンバーと意気投合したと語っていたクーラ。コンサートでも、冗談もいいあいながらの、とても親密な雰囲気だったようですね。


コンサートを前に、雑誌に掲載されたインタビュー。ドイツ語で、画像のため、こうなると何が書いてあるのか、読みたくても歯が立ちません(苦笑)。





会場のトーンハレは、現在、改修中なのだそうです。そのため、クーラのコンサートは、一時的な仮設会場で、工場か何かだった建物の内部を改装したホールとのことです。とはいえ、仮設でも、非常に音響が良く、移転後も解体せずに利用すべきだという意見も出ているのだとか。
以下の動画は、FBに掲載されている、空き工場が音楽ホールに変身するまでを早送りしたものです。とてもユニークです。




***************************************************************************************************************************


Dresdner Musikfestspiele 2018




この動画は、5月にドレスデン音楽祭でやはりアルゼンチン音楽のコンサートを行った際の、リハとインタビューです。

何度も紹介していますが、クーラはアルゼンチン出身で、祖父母が、中東レバノン、イタリアとスペインからの移民という一家に生まれました。
そして自分自身も、青年期を軍事政権下とその後の経済的混乱のなかで過ごし、音楽への道を探るために1991年にイタリアに移住しています。
アルゼンチン音楽の特徴は、移民のノスタルジアにあると語っているクーラ。現在の世界における移民や難民の姿も、かつての自らと重さねています。

その後、国際的なキャリアを重ね、トップテノール、アーティストとして成功をかちえたからこそ、アルゼンチン人として、祖国とそのルーツを大切にし、アルゼンチン音楽や南米音楽を知らせることを自らの使命とも考えています。

ノスタルジックなアルゼンチン音楽、クーラのドラマティックな声と表現、そしてクーラの作曲、指揮・・クーラの魅力を全面的に味わえる、こういう小規模な室内楽コンサートを、日本のいずれかのオーケストラに企画していただけないものでしょうか?

今年はアルゼンチンと日本が外交関係を樹立して120周年だったそうです。残念ながらこの節目の年にはかないませんでしたが、ぜひ、オーケストラ、プロモーター、関係各位の皆さま、クーラの招聘をご検討いただけることを、心から願っています。




*写真等はクーラ、オーケストラなどのSNS、HPからお借りしました。
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(本番編) ホセ・クーラ、ドレスデン音楽祭2018で、アルゼンチンの歌コンサート / Jose Cura , Dresden Music Festival 2018

2018-05-16 | アルゼンチンや南米の音楽




サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場でサムソンとデリラに出演してから1週間後の5月13日、ホセ・クーラは、ドイツのドレスデンで、アルゼンチン歌曲のコンサートに出演しました。

→ (告知編)

ロシアではオペラ出演でしたが、今回は、自ら作曲した作品をふくむ、故郷アルゼンチンの歌曲を中心としたコンサート。クーラは歌手として、また作曲家として出演しています。写真をみると、どうやら指揮もしているようです。
クーラのアーティストとしての多面的な魅力を示す今回のコンサート。参加した海外の人の情報でも、とても素晴らしいコンサートだったようです。

残念ですが、ラジオ放送やライブ中継もなく、録音、録画も紹介できないですが、クーラやフェスティバル事務局がSNSなどで公開した写真や動画、またレビューなどをまとめて紹介したいと思います。





The 41st Dresden Music Festival  
10 May to 10 June 2018   With 67 events at 24 venues

JOSÉ CURA & DRESDNER KAPELLSOLISTEN
Dresdner Kapellsolisten
Helmut Branny, Conductor
José Cura, Tenor

María Elena Walsh、1930年2月1日 - 2011年1月10日»ARGENTINEAN SONGS«
Works by Felipe Boero, Carlos López Buchardo, José Cura, Alberto Ginastera
Carlos Guastavino, Hilda Herrera, Héctor Panizza und María Elena Walsh

SUN 13.05.18 11:00
Semperoper

第41回ドレスデン音楽祭 → フェスティバル公式HP
2018年5月10日~6月10日  24会場、67イベント


ドレスデン市内に貼られたポスター(フェスティバルのFBより)




≪母国アルゼンチンの作曲家をとりあげ、歌う≫

コンサートは、伝統あるドレスデン音楽祭の一環で、会場はドレスデン州立歌劇場・ゼンパーオーパーです。

共演は、ゼンパーオーパーが誇る専属オーケストラ、シュターツカペレ・ドレスデンのメンバーによって結成された室内楽アンサンブル、ドレスデン・カペルゾリステン(1994年設立)。指揮のヘルムート・ブラニーは、シュターツカペレコントラバス奏者でもあり、カペルゾリステンの指揮者だそうです。

取り上げた楽曲の作者は、すべて、クーラの母国アルゼンチンの作曲家です。

フェリーペ・ボエロ(Felipe Boero 1884-1958年)
カルロス・ロペス・ブチャルド(Carlos López Buchardo 1881-1948年)
アルベルト・ヒナステラ(Alberto Evaristo Ginastera 1916-1983年)
カルロス・グアスタビーノ(Carlos Guastavino 1912-2000年)
ヒルダ・エレーラ(Hilda Herrera 1933年― )
エクトル・パニッツァ(Hector Panizza 1875-1967)
マリア・エレナ・ワルシュ(María Elena Walsh 1930-2011年)
そして、ホセ・クーラ(José Cura 1962- )

20世紀初頭から現代までの作曲家で、クーラ自身の作品も含んでプログラムが構成されています。






この下はフェスティバル主催者が掲載した動画です。
クーラが歌っているのは、チリのノーベル賞詩人ネルーダの詩にクーラが作曲した曲。
「もし私が死んだら」と題した愛と死を歌った情熱的な詩集から何篇か抜粋して、クーラが美しく切ないメロディをつけた組曲のひとつです。

歌詞は、私の不十分な直訳ですが、以前のブログで紹介しています。 → 「ホセ・クーラが作曲し、歌う、パブロ・ネルーダの詩」

もともとピアノと声のための曲として作曲したそうですが、後にクーラ自身がオーケストラ用に編曲して、ピエタリ・インキネン指揮、プラハ交響楽団によって初演されました。
以下の動画は、2013年ブダペストのコンサートのもので、ピアノ伴奏版。ぜひ聞いてみてください。

José Cura: Argentinische Lieder (Dresdner Musikfestspiele 2018)




≪アルゼンチン音楽の特徴は、郷愁――ノスタルジック≫

フェスティバルのフェイスブックに、もう1つの動画がアップされています。
リハーサルの際に撮影されたもので、クーラがアルゼンチン音楽について語るインタビューです。
そしてインタビューのバックと後半では、クーラがギターとチェロとともに歌っています。

この曲名は私にはわかりませんが、とてもリズミカルで美しい曲です。クーラの声と歌いぶりも、つい1週間前のサムソンの歌唱とは全く違って、優しく、美しく響かせています。



――クーラのインタビューより

アルゼンチン音楽は、とてもノスタルジック。他のほとんどの南米音楽と同様、そして特にアルゼンチン音楽について理解しておかなければならないのは、移民についてだ。イタリアやスペインなどから来た移民だけでなく、現地の人々と結婚してクリオーリョと呼ばれる人々など、イタリア系、スペイン系、ローカルアルゼンチンの人々が混ざり合い、それらがとてもノスタルジックな混合物をつくった。

音楽のうちの90%は、苦しみや、誰かの死についてで、タンゴがそうであるのと同じ。これらの歌は謎めいていて、シューベルトやシューマンのようなスタイルをとっている。そのほとんどは悲しい曲だが、いくつかはコミカルで、そのコントラストはとても興味深いものだ。しかし基本的なものは、常に、深い悲しみだ。


カルロス・グァスタビーノ「バラと柳」
La rosa y el sauce - tenor José Cura (ARGENTINA)




≪オケ、共演者との魅力的なコラボレーション≫


この写真は、クーラが公演前日にアップしたもの。共演のドレスデン・カペルゾリステンの方たちとの朝食風景だそうです。
「音楽の魔法が、共演者とのチームワークの素晴らしい感覚を作り出した」とクーラ。
自らの母国の音楽、そして自らの作品を、優れた室内楽オケのメンバーとともに作り上げていくのは、とても親密で魅力的な活動だったことと思います。






≪満員のゼンパーオーパー、1100人観客からスタンディングオベーション≫


コンサートは大成功、ほぼ満席の会場、観客からはスタンディングオベーションを受けたそうです。
好評のレビューもいくつか出ています。いずれまた紹介したいと思っています。






こちらは公演の写真を掲載した、フェスティバルのフェイスブックより。




フェスティバルの紹介誌。その下はクーラの紹介ページです。






このようなクーラの多彩な魅力、多面的な活動ぶりを紹介するコンサートを、日本でもぜひやってもらえないでしょうか。
できれば大きすぎない、中規模なホールで、室内楽のオケ、数人のソリストとクーラで、親密で、穏かなアルゼンチン音楽のコンサート。いつの日か、実現する日を心待ちにしています。




*写真はフェスティバルやクーラのSNSなどからお借りしました。
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(告知編) ホセ・クーラ、ドレスデン音楽祭2018で、アルゼンチンの歌コンサート / Jose Cura , Dresden Music Festival 2018

2017-09-12 | アルゼンチンや南米の音楽



クーラのフェイスブックやインスタグラムは、9月に入っても依然として夏休みモードのままですが、新しい公演のニュースが入ってきました。
来年2018年のドレスデン音楽祭への出演です。

*ただし現時点では(2017年9月10日現在)、クーラの公式カレンダーにはまだ掲載されていませんので、最終的に出演するのかどうか、まだわかりません。 → 掲載されました

音楽祭のHPやネット上の情報から、現時点でわかっている内容についてまとめてみました。





The 41st Dresden Music Festival
10 May to 10 June 2018
With 67 events at 24 venues
Intendant Jan Vogler

第41回ドレスデン音楽祭 → フェスティバル公式HP
2018年5月10日~6月10日
24会場、67のイベント


JOSÉ CURA & DRESDNER KAPELLSOLISTEN

Dresdner Kapellsolisten
Helmut Branny, Conductor
José Cura, Tenor

»ARGENTINEAN SONGS«
Works by Felipe Boero, Carlos López Buchardo, José Cura, Alberto Ginastera
Carlos Guastavino, Hilda Herrera, Héctor Panizza und María Elena Walsh

SUN 13.05.18 11:00
Semperoper

  

ホセ・クーラとドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団

ドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団
ヘルムート・ブラニー(指揮)
ホセ・クーラ(テノール)

アルゼンチンの歌

2018年5月13日(日) 午前11時~
ゼンパーオーパー(ザクセン州立歌劇場)




クーラの出演予定のコンサートは、2018年5月13日(日)で、テーマはクーラの母国アルゼンチン音楽のようです。
会場は、ドレスデンのゼンパーオーパー。そしてヘルムート・ブラニー指揮、シュターツカペレ・ドレスデンの主要メンバーで構成されているドレスデン・カペルゾリステンとの共演です。

内容は、フェリペ・ボエロ、カルロス・ロペス・ブチャルド、アルベルト・ヒナステラ、カルロス・グアスタビーノ、イルダ・エレーラ、エットレ・パニッツァ、マリア・エレナ・ワルシュなど、アルゼンチンの作曲家の作品、そしてクーラ自身が作曲した楽曲などがとりあげられるようです。

昨年、ドイツとルクセンブルクでもクーラはアルゼンチン・南米音楽のコンサートを行っていますが、同じような感じになるのでしょうか。
その時の様子は、以前の投稿で紹介しています。 → ドイツとルクセンブルクでラテンアメリカの曲コンサート


約1か月間にわたり、ドレスデンの市内各所の24会場で、67のイベントが開催される音楽祭です。
クーラの他に、歌手では、イアン・ボストリッジ、ジョイス・ディ・ドナート、ブリン・ターフェルなど。またバレンボイム、ティーレマンをはじめとする指揮者、マルタ・アルゲリッチ、アンネ=ゾフィー・ムター、ヨーヨー・マをはじめとする楽器のソリストなど、数多くの世界的に活動するアーティストが出演するようです。

ラジオ放送や録画放送など、何らかの形で鑑賞できることを願っています。


音楽祭HPに、来年のパンフレットが掲載されています。画像をクリックするとPDFファイルにリンクしています。



こちらはクーラのコンサートの紹介ページ



PDFパンフから、ドレスデン市内の会場配置図





クーラが出演予定のゼンパーオーパー







*画像は音楽祭HPやクーラのHPなどからお借りしました。
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2016年 ホセ・クーラ ドイツとルクセンブルクでラテンアメリカの曲コンサート / Jose Cura gala Concert in Saarbrucken

2016-12-11 | アルゼンチンや南米の音楽



ホセ・クーラは、2016年11月、母国アルゼンチンの音楽を中心とする南米音楽のコンサートに出演しました。
11月6日がドイツのザールブリュッケン、翌7日がルクセンブルクでした。

たいへんうれしいことに、ザールブリュッケンのコンサートはラジオで生中継され、しばらくの間、オンデマンドでも聴くことができました。残念ですが、すでに終了しています。
  → プログラムやインタビューなどのページ

〈成功したコンサート〉

チケットは完売、レビューも好評でした。

「ホセ・クーラ ―― 世界の主要なステージで、有名な歌手であるだけでなく、オペラディレクターで、作曲や指揮も学んでいる。そしてザールブリュッケンのコンサートにおいて、彼が今、何をしているのか、非常にフレンドリーな方法で聴衆と話す才能を持っている。彼の偉大な声は、ピアノでほとんど聞こえないほどの音の美しさと強さを広げ、その後、空間に満ちる表現力を発揮するフォルテによって(驚嘆すべき「オーロラ」のアリア)、聴衆を魅了した。」
(「Kultur und Sport an der Saar」)





〈プログラムについて〉

コンサートは、オーケストラの曲と、クーラの歌が交互に演奏される形ですすめられました。
指揮者は、ペルー出身のミゲル・ハース=ベドーヤ。
オケは、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニーです。

Deutsche Radio Philharmonie Saarbrücken Kaiserslautern
Miguel Harth-Bedoya direction
José Cura ténor


以下のような南米の作曲家の曲によるプログラムに組まれました。

ダニエル・アロミア・ロブレス
 (1871-1942 ペルー)
クラウディオ・レバリアーティ (1843-1909 ペルー)
カルロス・グアスタビーノ (1912-2000 アルゼンチン)
アルベルト・ヒナステラ (1916-1983 アルゼンチン)
エステバン・ベンゼクライ (1970~ アルゼンチン)
ホセ・クーラ (1962~ アルゼンチン)
ジミー・ロペス (1978~ ペルー)
エットレ・パニッツァ (1875-1967 アルゼンチン)

曲目 (クーラが歌った曲は、赤字にしています)
●Daniel Alomía Robles: El cóndor pasa
●Claudio Rebagliati: Rapsodia Peruana «Un 28 de julio en Lima»
●Carlos Guastavino: «Jardín antiguo»
●Carlos Guastavino: «Alegría de la soledad»

●Alberto Ginastera: «Los trabajadores agrícolas»
●Alberto Ginastera: «Danza del trigo»
●Carlos Guastavino: Riqueza
●Carlos Guastavino: Se equivocó la paloma
●Carlos Guastavino: «Pájaro muerto»
●Alberto Ginastera: Canción del árbol del ovido
●Alberto Ginastera: «Los peones de hacienda»
●Alberto Ginastera: Malambo
●Esteban Benzecry: Colores de la Cruz del Sur
●José Cura: «De Noche, amada...»
●José Cura: «Pensé morir»
●Jimmy López: Perú
●Héctor Panizza: Intermezzo épico

グアスタビーノやヒナステラなど、日本でも比較的知られている作曲家もいますが、あまり知られていない曲、まだ若い作曲家もふくめ、ドイツの観客にとって、たいへん刺激的で興味深いコンサートになったようです。

なんといってもハイライトは、クーラがパブロ・ネルーダの「愛と死のソネット」の詩に作曲した音楽劇、「もし私が死んだら」から、2曲を自ら歌ったことです。
この曲は、2015年10月に、プラハ交響楽団とのコンサートで、首席指揮者のピエタリ・インキネンの指揮により、クーラが歌い、世界初演を果たしています。7つの歌曲からなり、オーケストラと、ネルーダ役の男声と妻マティルデ役の女声で構成されているそうです。
この時の様子は、ブログの以前の記事で紹介しています。
  → 「2015年 ピエタリ・インキネンとホセ・クーラ プラハ響とクーラ作曲作品を初演」


〈コンサートの録音紹介〉

そして、プラハの公演は放送されませんでしたが、今回は、そのうちの2曲だけですが、はじめて放送されました。
すでにオンデマンド放送は削除されていますが、クーラのファンページ「ブラボ・クーラ」のHPに録音が掲載されていますので、いくつか、リンクを紹介します。

クーラ作曲の「もし私が死んだら」は、非常に切なく美しいメロディです。特に後半の2曲目がエモーショナルで印象的です。
クーラがこのような曲を作曲する音楽家であるということを、ぜひ多くの方に知って聴いていただきたいと思います。
 
 → ホセ・クーラ作曲 「もし私が死んだら」から2曲  (2曲あわせて6分ちょっとです)

 → もうひとつ、カルロス・グアスタビーノの曲から2曲

  (Bravo Cura のページに飛びます。 Many thanks for BravoCura.com! )


 


クーラ作曲の「もし私が死んだら」の歌詞は、チリの国民的詩人パブロ・ネルーダの「愛と死のソネット」からのものです。
ネルーダは、ノーベル文学賞を受賞した世界的にも有名な詩人ですが、実はチリの自由と独立のためにたたかったチリ共産党員で、民主的な選挙によって誕生したアジェンデ政権を支えた1人でした。アジェンデ政権が軍事クーデターによって倒されると、ネルーダも弾圧され、混乱のなかで亡くなりました(病死とされているが疑問の声もあるようです)。南米の苦難とたたかいの歴史における偉大な人物の1人なのですね。

クーラはお隣のアルゼンチン出身。やはり青年期に軍事独裁政権の時代を経験しています。クーラの経験や、ネルーダの詩へ作曲するきっかけ、また母国語であるスペイン語について、南米の音楽についてなど、インタビューから抜粋してみました。

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〈アーティストは、母国のための文化大使――インタビューから〉

――2016年、コンサートにむけたインタビューより
Q、ラテンアメリカの音楽がプログラムで、歌詞はスペイン語。あなたの母国語だが、どの言語が、歌手として一番快適?

A、実は、私が歌手として最も快適に感じるのは、イタリア語。
しかし、このような歌や軽い歌の場合には、スペイン語は、その甘さにおいて比類がない。
私が選んだプログラムは、今年2016年に生誕100周年を迎えたアルベルト・ヒナステラへのオマージュでもある。

また、パブロ・ネルーダの詩集から7つのソネットに作曲した私の一連の作品から、2曲を取り上げることは大変うれしい。
この"Si muero, sobrevíveme!"(「もし私が死んだら」)は、何年も前に私が作曲したもので、詩人の妻、マティルデ・ネルーダとパブロとの間の、詩の形による、25分間の対話だ。

Q、アルゼンチンで生まれ、1991年に母国を離れたが、現在のアルゼンチンとの関係は?

A、アーティスト、特に成功したアーティストは、母国のための文化大使として行動するべきだ。
私が母国語である言葉で自分の国の音楽を歌うとき、それは喜びであり、私の責務でもある。
また、ラテンアメリカの曲のクオリティは非常に良く、何人かの作曲家たち、特にカルロス・グアスタビーノは、ルービンシュタインがかつて表現したように、シューベルトやシューマンに匹敵する。





――2007年、アルゼンチンでのインタビューより
Q、「もし私が死んだら」は、あなた自身の声のために作ったもの?

A、ハイ・バリトンのために書いた。なぜなら、私は、バリトンの声は、室内楽にとって最も美しいものと考えているからだ。女性にとってのメゾ・ソプラノのように。
ミドルゾーンは、声がより甘く、より柔らかく流れる場所だ。これは私自身のボーカルを反映している。高い音を歌うことができる暗い声だ。
普通の歌のように歌うことはできない。聞くだけでは学ぶことができないという意味で、それらは知的で、音楽をよく読み、深く理解することが必要であり、実際には、ピアノと歌による長いデュエットだ。

Q、あなたはどのようにしてその歌詞の音楽性を歌声に?

A、ネルーダの詩は感覚を目覚めさせ、昔ながらの方法で演劇的だ。それぞれの言葉には演劇とドラマが満載されている。選択肢は、言葉にそってメロディーを書いたり、音楽を書くこと、しかしそれは、ネルーダの魅惑的な世界を開く感覚的な豊かさをともなうことが必要だ。
音楽の複雑さはテキストの複雑さに関係しているので、純粋なメロディーを聴く必要はない。メロディーそれ自体を提示することから離れて、詩に集中しなければならない。





――2016年、プラハでのインタビューより
Q、ネルーダについて?

A、残念なことに、私が子どもだったとき、パブロ・ネルーダの仕事や、彼がどういう人であるのか、私に話してくれる人は誰もいなかった。
私がラテンアメリカの詩を発見し、学んだのは、すでに大人になってからだった。私が学校に行った40年前、その時、アルゼンチンは軍事独裁政権が支配していたことを覚えておいてほしい。
私たちは、パブロ・ネルーダの詩を知らなかった。なぜなら彼が共産主義者や社会主義者の思想をもっていたためだ。私たちは、ガルシア・マルケスやその他の革新的な文学偉業を読むことはできなかった。
当時、情報へのアクセスは非常に限られており、これらの人々は国家の敵とみなされていたからだ。


――2015年、プラハでの世界初演の際のインタビューより

●色彩、透明でクリスタルなサウンドを心がけた
曲は、もともと歌手、女優とピアノのために書いた。オーケストラ・バージョンの作曲は大きな課題だった。非常に親密な音楽なので、主に色彩と、透明でクリスタルなサウンドを心がけ、仕事をした。
パブロ・ネルーダの詩は非常にエモーショナルであり、ステージ上であまりにそれに入り込みすぎないよう、注意深くする必要があった。詩の言葉が、本当に観客の胸を打つように、私は音楽に妥協点を見つけたと思う。

●私の心と魂にふれてほしい
ネルーダの詩に曲をつける時、きわめて注意深くなればいけない。クリスタルガラスの間を歩くようなもの。彼の言葉、詩はとても豊かで、完璧だから、すべての音が聴衆の注意をそらすリスクを負う。
作曲のきっかけは1995年、パレルモでフランチェスカ·ダ·リミニに出演していた時。幕間に楽屋に差し入れられた一冊の詩集が、ネルーダのものだった。感動し、すぐに作曲した。
私の曲で、私の心と魂にふれてほしい。ネルーダのドラマの中で、親密な愛の物語を描きたかった。
この作品は音楽だけでなくドラマ。パブロと妻との会話だ。人間が書くことができる最もロマンチックで官能的な言葉。




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美しく、切なく、エモーショナルでドラマティック・・クーラの歌う南米音楽のコンサート中継を聴いての感想です。オペラでの歌声とはまた違って、ささやくように、声色を変化させ、心に訴えかけるように歌うクーラには、独特の声の魅力と豊かな表現力がありました。

繰り返しになりますが、南米、アルゼンチンの音楽の魅力を教えてくれる、こうしたコンサートの録音や録画を、ぜひCDやDVDなどで出してほしいと思います。とりわけクーラ作曲「もし私が死んだら」の全曲がリリースされることを願っています。





*写真は、Kultur und Sport an der SaarのHPなどからお借りしました。
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ホセ・クーラ、アルゼンチンの歌、ラテンアメリカの歌 / Jose Cura / Songs of argentina , Latin American songs

2016-08-14 | アルゼンチンや南米の音楽


ホセ・クーラは、アルゼンチンのロサリオ出身です。音楽家としての夢を実現するために、91年にイタリアに渡り、フランス在住をへて、スペインのマドリードに長く住んでいます。しかしアルゼンチン出身ということへの誇りと、母国へのつよい愛を持ち続けてきました。

これまでに、アルゼンチンやラテンアメリカの曲を収録した、アネーロとボレロという、2枚のCDも出しているほか、各地のオペラコンサートのアンコールで、アルゼンチン・南米の歌を必ずといっていいほど歌っていますし、アルゼンチンの歌を中心としたコンサートも開いています。

故郷では認められず、意を決して欧州に渡り、そこで国際的なキャリアに飛躍したクーラ。故国との関係では、深い愛とともに、決して単純な思いばかりではなかったようです。それでも、機会あるごとにアルゼンチンの歌や南米の歌を歌い、文化を伝える役割を積極的に果たしてきました。
今回は、クーラのアルゼンチンの歌、南米の歌の録音・動画やコンサートの写真などを紹介したいと思います。




●アルゼンチンの愛国歌「アウローラ」より
まずは、アルゼンチンの愛国歌「アウローラ」のなかの「旗の歌」。2009年ウィーンのクリスマス・コンサートより。朗々と歌いあげる素晴らしい歌唱です。
Jose Cura " Alta pel cielo" Aurora


クーラは、子どものころ、毎朝、学校では、旗を揚げながらこの歌を歌うことになっていた、という記憶を語ったことがありました。それほど、アルゼンチンの人々には親しまれた歌のようです。

同じく「アウローラ」、こちらは2003年、プラハでのコンサートで。
José Cura in Prague - Aurora (Canción a la Bandera 1)


●祖父の地を訪ねて――ソリアでのコンサート
クーラは前述のようにアルゼンチンのロサリオ出身ですが、移民の国らしく、父方の祖父母は中東レバノンからの移民、母方の祖母はイタリア出身、母方の祖父はスペイン出身の移民なのだそうです。
2013年に、クーラは、祖父の地スペイン北部のソリアを初めて訪問しました。
ソリアで、アルゼンチンの歌のリサイタルを開催してます。その際、町の様子を自ら撮影して、フェイスブックに掲載しました。

ソリアの町から母に電話するクーラ


ソリアの古い建物、教会などを訪れて、祖父たちの暮らしぶりに思いをはせる。






美しい古い街並み、自然をおさめた写真、クーラ撮影








リサイタルの舞台写真。残念ですが録音や録画はありません。






ピアニストとリハーサル



●モナコのモンテカルロ歌劇場でのリサイタル、今後の予定など
2014年12月には、モナコのモンテカルロ歌劇場で、アルゼンチンの歌のリサイタルを開いています。
クーラのアルゼンチンへの思いはつよく、曲を紹介しながら、思いを語りながらの進行だったために、観客からは「もっと歌って」という声があがったという話も聞こえてきました。思いのこもった語りを聞くのもよいけれど、クーラの声と歌を少しでも多く聞きたいという、観客の願いもわかりますね(笑)





このモナコでは、来年2017年に、クーラのワーグナーデビュー、タンホイザーのパリ版(フランス語)が上演される予定です。

そのほか、ウィーンでもアルゼンチンの歌のリサイタルを開催しています。

今後の予定では、今年2016年11月7日にルクセンブルクで、アルゼンチン、ラテンアメリカの歌のコンサートがあるほか、12月7、8日、プラハ交響楽団とともに、プラハのスメタナホールでユニセフのためのコンサートに出演し、クーラが指揮、ラヴェルのボレロの他、ピアソラ、ヒナステラのアルゼンチン音楽を演奏します。


●故郷への思いを込めたクーラの歌
Youtubeにあがっているクーラの歌をいくつか紹介したいと思います。
どれも哀愁のある、しっとりとした歌で、クーラの故郷への愛と思いが深く込められたものに感じられます。
以前、クーラのYoutubeチャンネルに、アルバム「アネーロ」のメイキングビデオが掲載されていて、母国のピアニスト、ギタリストとともに曲をつくりあげていく風景が映されていました。現在はチャンネルは閉鎖されて、見ることはできないのが残念です。



アルゼンチンの作曲家であり、ピアニストのカルロス・グァスタヴィーノの「ばらと柳」
La rosa y el sauce - tenor José Cura (ARGENTINA)


アルゼンチンの作曲家、アルベルト・ヒナステラの「忘却の木の歌」
Canción del árbol del olvido - tenor José Cura (ARGENTINA)


1998年、オランダ・アムステルダムの運河コンサートで、ピアノの上に座り、ギターで弾き語り。
Cura Prinsengrachtconcert Argentinian songs


メキシコ出身の作曲家アルマンド・マンサネーロの2曲、2010年チェコでのコンサートから。
Jose Cura "Somos novios" & "Esta tarde vi llover"


アルゼンチンの作曲家アリエス・ラミレスのミサ・クリオージャ。ロス・カルチャキスとの演奏で、2007年、アッシジにて。
José Cura - Misa Criolla - Assisi 2007


最後に、1998年のマンハイムのコンサートから、ギターの弾き語りを。
Jose Cura Argentinian Songs


移民のルーツをもつクーラの家族、そして母国アルゼンチンへの望郷と、苦さも含む複雑な思い。
日頃、オペラの巨大なホールを響かせるクーラの声、歌とは違う、クーラ自身の等身大の、情感豊かな、思いの込められた歌を味わうことができると思います。
できるなら、こじんまりとしたホールで、ゆったりとクーラの歌と語りを聞くリサイタルに行ってみたいものです。










 
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