人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

1994年 ホセ・クーラ プッチーニ「つばめ」最終版の世界初演に出演 / Jose Cura "La Rondine" final version world premiere

2017-02-02 | オペラの舞台―プッチーニ



ホセ・クーラは現在、モナコのモンテカルロ歌劇場で、初挑戦のワーグナー・タンホイザーのリハーサル中です。
これまで、イタリアオペラ中心、主にヴェルディとプッチーニのドラマティックなオペラやヴェリズモのプロフェッショナルとして、作品と役柄の解釈を深めてきたクーラですが、今回は、念願でもあった、ワーグナーのロールデビュー、もちろん新プロダクションのため、2017年2月19日初日めざじて、1月末から、リハーサルに入っています。





 → 「(緊急告知編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦」


タンホイザーのリハーサルの様子は、写真など断片的な情報は入ってきていますが、告知されていたクーラからの情報発信はまだありません、
ということで、クーラのタンホイザー情報を待ちつつ、今回は、モンテカルロ歌劇場にゆかりの作品として、ここで初演されたプッチーニのオペラ、「つばめ」(La Rondine)の話題をとりあげたいと思います。

「つばめ」はプッチーニ59歳の年の作品で、かなり後期の円熟の時期に作曲されています。1917年にモンテカルロ歌劇場で初演を迎えました。しかし初演の評価に満足できず、改訂を繰り返し、プッチーニは第3稿までねりあげたそうです。

ところがこの最終稿は、第二次世界大戦の戦火で焼失、のちに、残されたわずかな資料で復元作業がすすめられ、失われた改訂部分のオーケストラ譜の復元・補筆を経た最終版の世界初演は、1994年、トリノのレージョ劇場でおこなわれました。

今回、紹介したいのは、この「つばめ」最終版の世界初演です。この時、クーラが、主人公マグダ(ソプラノ)の愛人ルッジェーロ役で出演しました。1991年にアルゼンチンからイタリアに移住して、まだ3年後のこと。当時31歳です。

あまり情報が多くないので残念ですが、いくつかの舞台写真、YouTubeにも少しだけですが、その時の舞台の動画があります。

またクーラは、「つばめ」では、2012年に仏ナンシーで、マスタークラスの生徒たちを出演者に、自らは演出、舞台デザイン、衣装、そして指揮もしています。その時の様子も、またいずれ紹介したいと思っています。


***************************************************************************************************************

Torino, Teatro Regio, 22 marzo 1994
Conductor = Donato Renzetti
Orchestra = Teatro Regio di Torino

Magda = Nelly Miricioiu
Ruggero = José Cura
Ramblado = Roberto De Candia
Lisette = Silvia Gavarotti
Prunier = Iorio Zennaro





このオペラのテノールのアリアで有名な第1幕のルッジェーロの「パリ、それは欲望の街」は、第2版で付け加えられたものだそうですが、この最終版では残念ながら削除されています。

第2幕、舞踏会の会場で意気投合した、ルッジェーロ、マグダと友人らによる4重唱と合唱「あなたのさわやかな微笑みに乾杯」を。画質はどれもたいへん悪いですが、クーラの若々しい声を聞くことができます。
Jose Cura 1994 "Bevo al tuo fresco sorriso" La rondine



第3幕、ルッジェーロは、親に結婚の許しを請う手紙を書いたことをマグダに伝える。ルッジェーロのアリア、「僕の家に来てくれるといって」。
画質は最悪、色が抜けてモノクロになっていますが、クーラがたいへん甘く、やさしく歌っています。
José Cura "Dimmi che vuoi seguirmi" 1994 La Rondine



第3幕、それまでの版と大きく違っているラスト。1、2版では、マグダが自ら身を引いて、ルッジェーロに別れを告げていましたが、第3版では、マグダの過去(金持ちの愛人)を告発する電報を受け取ったルッジェーロが、マグダを責め、去っていくというもの。ドラマとマグダの人物像を大きく変える変更となっています。
Jose Cura 1994 La rondine Act 3 last duet






***************************************************************************************************************


「つばめ」の歴史的な最終版初演の舞台で、若々しく、強靭な声をもつ、初期のクーラの歌唱を聴けるこうした動画が残されていたことは、画質が悪いとはいえ、たいへんありがたいことです。

前述のように、現在、クーラは、モンテカルロでタンホイザーのリハーサル中ですが、パリ版フランス語上演という珍しいプロダクションです。
ルーティンを嫌い、好奇心とチャレンジ精神旺盛のクーラ。これまでも、この、つばめ最終版初演をはじめ、プッチーニのエドガール4幕版の世界初演などにも出演してきました。

興行的にメジャーでなくとも、貴重な珍しい作品へのチャレンジを好むクーラですが、予算削減、公的補助削減などが欧州の劇場でもひろがり、こうした珍しい作品の発掘や上演は困難になっているといいます。クーラは、かつてボーイトのネローネというたいへんめずらしいオペラへの出演を予定していて、楽しみにしていたようですが、イタリア政府の補助金削減で劇場が資金難になり、キャンセルされたこともありました。

公的な助成をはじめ、観客・住民によって支えられている芸術であるからこそ、クーラは、現実社会と結んで、人間と社会の現実に根ざしたオペラをつくることを、アーティストとしての使命として、繰り返し訴えています。

クーラは、レバノン出身の父方の祖父母、イタリアとスペインの移民の母方の祖父母をもち、移民の国アルゼンチンで生まれました。そして91年に祖母の出身地イタリアに移住、外国人排斥を訴える勢力が増大するなかで、フランスに移らざるをえないという経験もしています。シリアなどの難民の人々の姿を、かつての自分たちを想起させるものとインタビューで語ったこともあります。

今回のトリノの舞台は、その移住からわずか3年後。家賃が払えずガレージに住み、皿洗いやストリートミュージシャンもしながら、歌唱の探求をすすめ、ようやく主役級の出演が可能になっていった時期です。もし、当時、移民排斥がつよまり、クーラがアルゼンチンへの帰国を余儀なくされていたなら、現在のようなクーラは誕生しなかったでしょうし、クラシック音楽、オペラの世界は、ユニークで魅力的なアーティストを失っていたことでしょう。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホセ・クーラ、マノン・レスコーのデ・グリュー プッチーニ / Jose Cura / Puccini’s Manon Lescaut

2016-10-17 | オペラの舞台―プッチーニ




プッチーニのオペラ、マノン・レスコーは、ホセ・クーラの出演するDVDが発売されている貴重な演目のひとつです。
1998年にリッカルド・ムーティが指揮、ミラノスカラ座でのマリア・グレギーナのマノン、クーラがデ・グリューの舞台は、本当に美しく、ドラマティックで、DVDの音質、画質で観賞できるのがとてもうれしいです。

その後、クーラは、この役柄では2010年のウィーンで、ロバート・カーセン演出の現代的な舞台にも出演しています。

しかしクーラは、もうこのデ・グリューの役は、卒業してしまったようです。
最近のインタビューで次のように語っていました。

「私は、ロドルフォ(ラ・ボエームの主人公)やデ・グリュー(マノン・レスコー)を愛している。本当に非常に美しい役柄であり、挑戦的であるが、テノールのためにとても良いものだ。私はこれらを歌うことに大きな喜びを感じるが、しかし、53歳の私は、ロドルフォに、皮膚感覚での信憑性を見いだすことができなくなった。時代は変わり、パヴァロッティが60歳や70歳でやったようには、我々はロドルフォを歌うことはできない」

残念ですが、ドラマのリアリズムを大切にするクーラにとっては、当然のことなのかもしれません。
ということで、今回は、クーラのデ・グリューを、写真や動画、インタビューなどから振り返ってみたいと思います。

DVDはおすすめです。プッチーニの美しく、情感あふれる音楽、若々しいクーラとグレギーナの迫力ある歌声、そして魅力的な舞台姿。マノンとデ・グリューの、若く、愚かで、情熱的な愛が切ない、感動的な舞台です。
アマゾンでも入手できるようです。まだご覧になっていない方は、以下の紹介ビデオを、ぜひ、ご覧になってください。




DVDの紹介ビデオ。1998年スカラ座でのムーティ指揮、グレギーナとクーラのマノン・レスコーより。第4幕、追放されアメリカの大平原に流刑となった2人、渇きと飢えを訴えるマノン、助けたいが何もない荒れ地で絶望するデ・グリューの慟哭。 

*残念ながらレーベルの公式の紹介動画が削除されてしまいました。とりあえず音声だけですが、第4幕の2人の場面を。

Puccini: Manon Lescaut / Act 4 - "Sei tu che piangi?" (Teatro alla Scala, Milan 1998)


Puccini: Manon Lescaut (Teatro alla Scala, Milan 1998)
Maria Guleghina, José Cura, Lucio Gallo
Corpo di Ballo ed Orchestra del Teatro alla Scala
Conductor: Riccardo Muti
Director: Liliana Cavani

***************************************************************************************************************






――スカラ座でのマノン・レスコーのデ・グリューのロールデビューを前に 1998年のインタビューより
●デ・グリューは、これまでで最も危険な役柄


これは、私のキャリアのなかで、最も危険な指名だ。
デ・グリューの役柄は、プッチーニのリリックテノールの役柄のなかで、最も長く、おそらく最も要求がきびしい――5つの曲と大きいデュエットがある。
マノン・レスコーの後、あらゆるオペラは、テノールのための子守り歌になる。それほどタフだ。






――1998年のインタビューより
●マノン・レスコーはテノールにとって、ワルキューレのオーケストレーションを伴ったラ・ボエーム


マノン・レスコーのデ・グリューの音楽の声域は、リリック・テノールのもので、例えばリゴレットのマントヴァ公爵のテノールのようなもの。しかし、特に現在のオーケストラでは、オーケストレーションは非常に重く、音域が444Hzかそのあたりの場合、音は非常に明るく、力強い。だからそれは、ラ・ボエームのテノールのために書かれた、ワルキューレのオーケストレーションをもったオペラ。マノン・レスコーは、プッチーニの「ワグネリアン」の時期に書かれたものだ。
これはテノールが1時間かそれ以上歌う、プッチーニのただひとつのオペラだ。
だからマノン・レスコーのためには、声と技術が必要だが、度胸も必要となる。








――1998年のインタビューより
●芸術は喜びと愛と苦痛の入り混じったもの

もし人々が、「クーラはコレッリほど良くない」と言うのなら、それで良い。それは真実だ。しかし、彼らが、「ステージの上のクーラは、CDのクーラほど良くない」という時、私は重大な危機にさらされている。最近、私が受けた最高の賛辞の1つは、次のようなものだった――「CDは、あなたの声の素晴らしさを50%しか反映していない」。

一部の批評家は言った。舞台上で、すすり泣くべきではない、ステージ上でこれらの役柄をやっているのであって、キャラクターが感じている痛みなのだから、と。
マノン・レスコーでは、あなたの腕の中で彼女が死んでいく。その時、涙にむせぶことなく、一体、あなたは何をしようというのか。
ある人々が、感情、情熱なしに音楽を録音しようとする方法は、私には理解できない。

たぶん私は、彼らの前では、キャリアが終わり、「古い」ものになるかもしれない。しかし、私は、私の芸術は、喜びと愛と苦しみが入り混じったものであると考えている。
それが人生だ。









****************************************************************************************************************************************

スカラ座でのクーラは、まったく易々とデ・グリューを歌っているように思っていましたが、プッチーニのスコアの詳しい分析をふまえて、相当な覚悟と構えで、この役にのぞんでいたのですね。

2010年、クーラは48歳になる年に、再度、このタフな役柄、デ・グリューに挑戦しました。
このウィーンでの舞台は、残念ながら正規の録音や動画はありませんが、幸い、Youtubeに、いくつかの場面がアップされてます。音も画像もあまり良いとはいえませんが、クーラの声の響きが聞き取れるのがうれしいです。批評も好評だったようです。




2010年、ウィーン国立歌劇場でのマノン・レスコーより、第1幕、デ・グリューが歌う「栗色、金髪の美人たちの中で」
José Cura - Manon Lescaut - Tra voi, belle





2010年、第1幕、マノンの美しさに心を奪われたデ・グリューの「見たこともない美人」
José Cura - Manon Lescaut - Donna non vidi mai





2010年、第2幕、デ・グリューと引き離され、金持ちの愛人として贅沢な生活をしているマノンのところに、突然あらわれたデグリュー。責めるデ・グリューにマノンは許しを請い、すがりつく。デ・グリューはマノンの魅力に負け、許し、抱き合う。「ああ、私が一番きれいなのね~あなたなの、あなたなの、愛する人」~
Olga Guryakova、José Cura - Manon Lescaut - Tu, tu, amore, tu






2010年、第3幕、パトロンのもとを逃げ出したことで逮捕され、アメリカに囚人として送られるマノン。港で助けようとしたが、できず、涙ながらに「自分も連れて行ってほしい」と訴える、デ・グリューの「狂気の私を見てください」
José Cura - Manon Lescaut - No, no, pazzo son





(おまけ)
2000年ブダペストのコンサートより、クーラが指揮する、マノン・レスコーの間奏曲。
クーラはもともと指揮者、作曲家志望で、15歳で合唱指揮者としてデビュー、大学でも指揮、作曲を専攻している。
José Cura (conductor) Intermezzo from Manon Lescaut Budapest


こちらは音声だけですが、1999年のコンサートから、「栗色、金髪の美人たちの中で」。若々しく軽やかな歌声です。
Jose Cura "Tra voi belle" Manon Lescaut


同じく、1999年のコンサートから、「見たこともない美人」
Jose Cura "Donna non vidi mai " Manon Lescaut


*****************************************************************************************************************************************

アーティストとしての芸術的、知的誠実さ、自己検討を大切にしていると語っているクーラ。そういう立場から、ワーグナーやピーター・グライムズへの挑戦で新境地を開く一方、これまで大切に歌ってきたなかでも、大胆に撤退する役柄もある。50代半ばにさしかかるテノールとして、ひとつの節目の時期にあるのかもしれません。

近年は、演目の変化だけでなく、歌中心から、本来の志望であった指揮、そして演出の活動へも、軸足を少しずつ移しつつあります。しばらく中断していた作曲の仕事も、再開、オペラの作曲も手掛け始めていると、フェイスブックでコメントしていました。

美しく魅力的なテノールの役柄でクーラの歌と演技が見られなくなるのは、正直、残念ではありますが、今後の挑戦とあらたな活動を、心から応援していきたいと思います。










コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

妖精ヴィッリ 美しいプッチーニのオペラ第1作 / Jose Cura / Le Villi / Puccini

2016-05-03 | オペラの舞台―プッチーニ


妖精ヴィッリ(Le Villi)は、プッチーニの第1作目のオペラです。2幕上演時間約1時間強の短いオペラで、あまり上演されることの多くない作品です。

でも、ホセ・クーラは、このオペラになかなか縁があります。クーラのキャリアのなかで、初めてのCDがこのヴィッリのライブ録音でした(1994年)。
2006年には、ウィーン国立歌劇場に同じプッチーニの蝶々夫人で指揮者として出演した際に、交互にこのヴィッリのロベルトで歌手として出演するということもありました。またウィーン国立歌劇場におけるクーラ唯一のプルミエ作品(2005/06)がこのヴィッリということです。





その2006年のウィーン国立歌劇場出演の時のインタビューで、ヴィッリについてつぎのように語っていました。

Q、プッチーニの最初のオペラ妖精ヴィッリから蝶々夫人への発展は?
A、途方もないものだ。ヴィッリのオーケストレーションは単純で、ハーモニーはナイーブだ。他の作曲家が30年間必要とした開発を、彼は短期間でやった。

プッチーニが26歳の時に初演された第1作目のオペラであり、それ以降の数々の作品と比べるなら、まだまだシンプルな作品ということでしょうか。
一方でクーラは、ヴィッリについて、「とても情熱的な内容で、発想の豊かさがうかがえる。初期の作品でありながら、成熟した作品。1つおいてマノン・レスコーを作曲した。質の高さは明らかだ」(1997年BBC作成グレートコンポーザーシリーズ)と高く評価しています。

   

短いけれど、あまり上演されないけれど、クーラの言葉どおり、情熱的で、発想が豊か、本当に美しく、情感豊かなメロディがたくさんです。第1作からして、プッチーニらしさあふれる作品といえるのではないでしょうか。

クーラとチェドリンスがコンサート形式で歌った、2007年ジェノヴァの舞台から、主な場面(音声のみ)を紹介します。
美しい声が響きあう、魅力的な録音です。
オテロなどの作品では、あえて暗く重く、くぐもった声で歌っているクーラですが、ここでは、のびやかに美しい歌声を味わえるのではないでしょうか。

第1幕 遺産をもらうために旅立つロベルトが、アンナにすぐ戻ると慰めるシーン。
Jose Cura Le Villi 2007 Duo


第1幕 ロベルトの旅たちを見送るシーン。アンナと父グリエルモ、ロベルトの3重唱と合唱
Jose Cura 2007 "Padre mio, benediteci!" Le Villi


第2幕 都会で誘惑され暮らしていた女性に捨てられ、帰ってきたロベルトが、アンナとの幸せな暮らしを思って歌う。有名なアリア
Jose Cura 2007 "Torna ai felici dì" Le Villi


第2幕 自分を待ちこがれて死んだアンナのことを知り、罪を悔い、許しをこうロベルト
Jose Cura 2007 "O sommo Iddio" Le Villi


第2幕 最後のアンナとロベルトの二重唱
Jose Cura 2007 Le Villi last duet


ウィーン国立歌劇場でのヴィッリの紹介動画
Jose Cura 2005 Le Villi


最後に、ウィーンでのクーラの"Torna ai felici dì"を。
Jose Cura "Torna ai felici dì" Le Villi


                  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2008年 プッチーニのエドガール 4幕版 世界初演 Puccini / Edgar / World premiere

2016-03-04 | オペラの舞台―プッチーニ


ホセ・クーラは2008年、トリノのレージョ劇場で、プッチーニのオペラ「エドガール」(Edgar)の4幕版の世界初演に主演しました。
エドガールはプッチーニの2作目のオペラ。1889年4月21日にミラノ・スカラ座で初演されたそうですが、脚本が荒唐無稽であるなどのため不評で、その後3幕版に改訂されました。4幕版は失われたと考えられていたそうです。
エドガール自体が、あまり上演されないうえに、この時は、復活した4幕版のはじめての上演でした。

この公演はDVDになり、現在も購入可能です。日本でも一度、NHKで放送されました。ぜひ、このユニークで美しいオペラに多くの人に接していただきたいと思います。
この時の思いやクーラの解釈などについて、2015年9月にスロバキア国立歌劇場に出演した時に、インタビューにこたえて語っています。そこから興味深い内容を抜粋しました。また、YouTubeからいくつかの場面を紹介します。



出演:ホセ・クーラ、アマリッリ・ニッツァ、マルコ・ヴラトーニャ
トリノ・レージョ劇場 2008年世界初演
World premiere with act IV
Artists: José Cura, Amarilli Nizza, Julia Gertseva, Marco Vratogna, Carlo Cigni
Conductor: Yoram David
Direction: Lorenzo Mariani
Orchestra e Coro del Teatro Regio di Torino



●出演のきっかけ
2008年に、トリノ・レージョ劇場が私に「ジャコモの最後の後継者シモネッタ・プッチーニがエドガールの4幕版の公表を決めた」と語った。
私はすぐに、ぜひ、この「ワールド・プリミエ」のエドガールになりたいと言った。

     

●4幕版の意義
実際には、エドガールは、第1、2、3幕では、決して素晴らしいオペラではない。しかし、第4幕は、信じられないほどの発見だ。
ほぼすべてのプッチーニのオペラの萌芽が、このエドガールの第4幕のなかにある。私はおそらく、プッチーニ自身が、この驚くべき違いを認識していたために、このスコアを「隠す」ことにしたのだと思う。
エドガールの音楽は、彼の30にのぼるその後の作品の大部分に影響を与えている。プッチーニはこのことを秘密にしておこうと考えたのだろう。4幕版のエドガール世界初演へ出演は、偉大な歴史的な特権だった。



●DVDについて
私はこのDVDのカットの方法には満足していない。画像と音楽の両方の面でだ。
このレコーディングの品質は非常に良好だ。しかしこの歴史的イベントとしては、より丁寧な仕事が必要だったと思う。

クーラのHPのDVD紹介
 

●音楽業界の変化
私はまた、1994年に、プッチーニのオペラ「つばめ」の最終バージョンの世界初演に、テノールとして参加する偉大な歴史的機会があった。14年の間に、2回の大きな栄誉だった。
しかし今日では、私は、業界がこうした偉大な文化的イベント(初演版の発掘など)に興味があるとは、もはや感じることはできない。「時と金」(ミニット&マネー)、これが今日の世界を動かす唯一のものだ...。



**********************************************************************************************************************

第2幕エドガールのアリア「快楽の宴、ガラスのような目をしたキメラ」
Puccini Edgar. José Cura


エドガールのアリアはコンサートでも歌っています。2000年ブダペストのコンサートより。
José Cura Puccini: Edgar Budapest 2000


クーラが「プッチーニのオペラの萌芽のすべて」があると絶賛するエドガールの第4幕から、本当に美しいデュエット。
トスカの最後のデュエットにそっくりという指摘もありますが・・。いかがでしょうか?
ホセ・クーラとアマリッリ・ニッツァ Jose Cura , Amarilli Nizza Edgar last duo




初演の際のリハーサルの様子やインタビューが見られるメイキング動画。おすすめです!
Puccini - Edgar - Prima Della Prima





*写真はクーラのHPなどからお借りしました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする