(モンテカルロ歌劇場HPに掲載されたタンホイザーのリハーサルの写真)
ホセ・クーラがはじめて挑戦するワーグナー、タンホイザーのパリ版フランス語上演の初日が、いよいよ目前、2月19日(日)に迫りました。劇場はモナコのモンテカルロ歌劇場、プロダクションは、ドイツのボン劇場との共同制作だそうです。
4日間の公演のチケットは、すでに全席完売とのことです。
リハーサルも順調にすすんでいるようで、劇場や指揮者がさまざまな画像をネットにアップしてくれていますし、クーラ自身も、まだ少ないですが、新たにはじめたインスタグラムで発信しはじめています。
まずはリハーサルの様子を中心に、いくつか画像をお借りして紹介したいと思います。
モンテカルロ歌劇場は、モナコの有名なカジノに隣接した、非常に豪華絢爛の建物のようです。
クーラは、これまでこの劇場で、ヴェルディのスティッフェリオに出演、アルゼンチン音楽のリサイタルも開いています。
座席数は、わずか524!
これはこれまでクーラが近年出演している劇場のなかで、最も小さく、巨大劇場のテアトロコロン(2487席)、メトロポリタン歌劇場(3088席)をはじめ、欧州の主要劇場のスカラ座(2030席)、ウィーン国立歌劇場(1709席+立見席)や日本の新国立劇場(1814席)と比べると、その小ささがわかります。小規模といわれるチューリッヒ歌劇場(1189席)でもモナコの倍の規模です。
しかし、これほど贅沢な劇場はないといえます。歌手の表情や演技も近くに見え、声もよく響くことでしょう。クーラにとっても、ワーグナー初挑戦には、最適ともいえますね。
TANNHÄUSER Richard Wagner
2017年2月19日(日曜日) - 15H
2017年2月22日(水曜日) - 20H(GALA)
2017年2月25日(土曜日) - 20H
2017年2月28日(火曜日) - 20H
Conductor= Nathalie Stutzmann
Directer= Jean-Louis Grinda
Set&Light= Laurent Castaingt , Costumes= Jorge Jara
Tannhäuser= José Cura
Hermann, Landgrave de Thuringe= Steven Humes
Wolfram= Jean-François Lapointe
Elisabeth, nièce du Landgrave= Meagan Miller
Vénus= Aude Extrémo
Walther= William Joyner , Biterolf= Roger Joakim , Henry= Gijs van der Linden
Reinmar= Chul-Jun Kim , Un Pâtre= Anaïs Constans
指揮者のナタリー・シュトゥッツマンがFBに掲載した、リハーサルの様子。
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いつもは、リハーサル期間に、インタビューや役柄解釈などについて、いろんな投稿を掲載してくれるクーラですが、今回は、初のワーグナー挑戦のためか、ほとんど、フェイスブックでの発信はありませんでした。
●『Das Opernglas』誌の表紙とインタビューに登場
一方、ドイツの有名なオペラ雑誌『Das Opernglas』2017年2月号に、表紙に登場し、ワーグナーのタンホイザーでのデビューや、5月のボンでのピーター・グライムズ演出・主演などについてのインタビューが掲載されました。
まだ実物を入手していないので内容はわかりませんが、「私は全く新しい世界を発見する過程にいる」と見出しがたてられていて、初挑戦のワーグナーで苦闘しつつ、新たな世界へチャレンジしていることなどが語られていると思われます。
『Das Opernglas』誌は、記事ごとのPDFでも、1冊でも、ネットで購入できるようですので、興味のある方は、ぜひHPをご覧になってください。
→ 『Das Opernglas』 HP
●南西ドイツ放送(SWR)で2時間の特集番組(2月19日までオンデマンドで日本でも可)
またドイツの公共放送、南西ドイツ放送(SWR)がラジオで2時間のクーラ特集番組を放送しました。タンホイザー初日の2月19日の午後3時まで(現地)、ネットでオンデマンドで聴くことができます。日本時間だと19日(日)の夜11時まで可能だと思います。
内容は、インタビューとクーラの歌や指揮した曲など。最近のアルゼンチン・南米の歌のコンサートでの歌唱をはじめ、かつてのプッチーニアリア集からの「誰も寝てはならぬ」など、たくさんの曲が放送されてます。クーラは英語で話していますが、ドイツ語の通訳が被っていますので、ちょっと私には聞き取りが困難ですが、主に、クーラの人生とキャリアについて、問われて語っているようです。
クーラはFBで、「SWRがこんなに素晴らしいプログラムで私を賞賛するとは思わなかった。 ありがとう、SWR!」と驚いたことを書いていました。
→ クーラの番組へのリンク SWR南西ドイツ放送
以下、指揮者シュトゥッツマンやモンテカルロ歌劇場がアップしてくれた、リハーサルの画像をいくつか紹介しながら、以前のクーラのインタビューからタンホイザーへの思いについて触れた部分を抜粋して、再掲したいと思います。
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このお花畑のようなところがヴェーヌスベルクでしょうか?メルヘンの世界のようです。
リハーサル中のクーラや出演者たち。
――クーラのフェイスブックから フォロワーの質問に答えて(再掲)
Q、ワーグナーへの挑戦は?
A、タンホイザーの音楽、一般にワーグナーは、私のように、音楽と演技とのリアルな結びつきを求める者にとっては、理想的とはいえない。しかしこれはスタイルの問題であり、私が解決すべき問題だ。
それには関係なく、ワーグナーの音楽は、信じがたいほどの音のモニュメントだ。残念なことに、台本は愚かしいけれど...。
とにかく私は、タンホイザーをやってみたかった。
なぜなら、私は少なくとも一生に一度は、ワーグナーのオペラを演じたかったからだ。ドイツ語は私には手が出せないので、この「フランス語上演」のチャンスを手放すことはできなかった。
――ついに実現するワーグナーでのデビュー(2016年9月のリエージュでのインタビューより再掲)
Q、2007年のインタビューでは、2010年にコンサート形式でパルジファルを歌うと聞いたが?
A、私はドイツ語を怖れ、自分のスコアを知っていたが、コンサート形式なら可能だろうと思い、受け入れた。しかしコンサートは残念ながらキャンセルされた。
Q、ついに2017年2月に、モンテカルロでワーグナーのタンホイザーにデビューするが?
A、タンホイザーは、偉大で、巨大な、非常に難しい役柄であり、私は怖ろしく怯えていることを告白しなければならないが、もし私がマスターしていない言語でそれを解釈しなければならないならば、それは単に不可能だっただろう。少なくとも、フランス語版のおかげで、私はワーグナーを歌うことができる。
ピアノドレスリハーサルの様子(指揮者のFBより)。歌合戦の場面でしょうか?
Q、このフランス語版タンホイザーのプロジェクトはどのように始まった?
A、私がヴェルディのオペラ、スティッフェリオのためにモンテカルロ歌劇場に行った時、Jean-Louis Grindaは、タンホイザーのパリ版をやりたがっていた。彼が私に提案し、私はやりたかったと答えた。そして、それがフランス語で正式に書かれた唯一のワーグナーであるので、私の唯一のワーグナーへの挑戦となるだろうと思う。
Q、言語だけでなく、長さも問題になる?
A、私はタンホイザーと苦闘している。キャラクターのなかに意味を見いだすために、多くの労力を費やす。音楽が展開するにつれて、つぎつぎ現れ、3秒で表現されている可能性すらあるメッセージをつかみとるために。
レトリックはワーグナーのスタイルの一部であり、その音楽の美しさは信じられないほどだ。しかし、イタリアオペラのリズムに慣れ、「リアリズム」の演技のなかにいる人間には、多くの思考が必要であり、私はバランスを見つける必要がある。
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●現地の公演紹介企画より
公演紹介のHPに紹介されていたタンホイザーの衣装のスケッチ画。
●指揮者のFBより
ナタリー・シュトゥッツマンのフェイスブックには、いろいろなリハーサル中の写真がアップされています。演出家の娘を出演者が交代で子守りしてる様子など、リラックスしている家族的な雰囲気です。
子ども好きのクーラ、演出家の娘とツーショット。
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初日をいよいよ数日後に控え、ドレスリハーサルの写真も続々と発信されつつあります。次回は、それらや、本番の舞台の情報などを紹介したいと思っています。
どの写真をみても、わくわくするようなものばかりです。実際にモナコに飛んで行けないのが、つくづく残念です。
とにかく、初挑戦のワーグナー、困難はあったでしょうが、無事にリハーサルがすすんだことは本当に良かったです。本番の成功を心から願っています。
*画像は、クーラや劇場、指揮者シュトゥッツマンなどのHP,FBからお借りしました。