人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(解説編3ー作曲について)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-29 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

ホセ・クーラの新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の解説編、3回めになります。解説編としては、たぶんこれで最後と思われます。

前回の(解説編2)では、台本についてのクーラの解説を紹介しています。また(リハーサル編)では、オペラの一場面のリハーサル動画リンク(クーラのFBに掲載)も掲載していますので、ご覧いただけるとうれしいです。

今回は、クーラがFBに投稿した「作曲について」を中心に紹介しています。クーラがもうひとつのリハーサル動画をアップしてくれましたので、そのリンクも掲載しました。

また、ハンガリーでのインタビューで、同じく音楽についてクーラが語った部分を抜粋して和訳しています。いつものように、不確かな訳のため、ぜひ原文をご覧ください。

クーラがFBのコメントで、”オペラの主役は、マティアス・トシ(男爵・モンテズマ)、ドナト・ヴァルガ(赤毛の司祭・ヴィヴァルディ)。 リハーサルは順調に進んでいる!”と報告していました。初日は2020年1月29日、場所はブダペストのリスト音楽院大ホール、セミステージ形式で、1公演のみです。

 

なお、1月29日の初日がラジオでライブ放送されることについては(緊急告知・ラジオ生中継、オンデマンド放送編)でもお知らせしましたが、クーラがFBで告知しましたのでリンクを。

 


”明日(2020年1月29日)のラジオ放送へのリンクはこちら。アクションを見ずにオペラを聞くのは、少し当惑させるものだということを知っている。 ほとんどの場合、これまでに見たことのないオペラでは、頭のなかで絵をイメージすることはできないが、何もないよりはまし。 楽しんでもらえればうれしい!”
リアルタイム放送:1月29日19:30 ハンガリー時間。(日本時間1月30日3時30分頃~)

 

 

 


 

 

≪クーラのFBより≫

 

●作曲についてのクーラの説明

 

ーーモンテスマと赤司祭の物語の最後のエピソード

作曲について

 

いわゆる「現代的」なシステムのほとんどが激しくドラマティックであるとき、コミックオペラを作成するためにどのような音楽的な言語を使用すべきだろうか。

全くの不協和音、クラスター(密集和音)、セリエル音楽(音列主義)、電子機器・・等々は、作曲家がそれらを知的に使用するならば、猛烈なドラマを強調するために最適だ。しかし、それらをコミカルに使用する方法は?

私は各キャラクターの性格を定義するために、さまざまな音楽のモチーフを演奏してみたが、前の投稿で言及した音楽の引用を選んだ後、ついに「モンテズマと赤毛の司祭」のために、ネオバロック様式(「新古典主義」)の音楽言語で折り合いをつけることに決めた。

さらに、ヴィヴァルディ、ヘンデル、スカルラッティが、重く編曲された音楽の層(レイヤー)のもとで生き返るのをみるのは間違っているように感じた。それは彼らの時代にはあまりにも奇妙だっただろう。だから自分の作品には、小規模なオーケストラを使用することにした。

また、私が以前、作曲を試みたオペラ「マッチ売りの少女」(1992)のいくつかの曲は、新しい作品のいくつかの場面にぴったりすることがわかった。ガヴォット、メヌエット、ワルツなどのようなダンスの「香り」と結合させて、それらの音楽を蘇らせることができたのは非常にうれしかった。

ラテンアメリカのキャラクターを特徴づけるために、カリブ音楽のスウィングが存在する必要があり、オペラを開けたり閉じたりする簡潔だがキャッチーなルンバを書いた。

作品にバロック風の雰囲気を追加するために、私はある種類の対位法を使用し、カーペンティエ―ルの小説の一部である時間的な分離を強調するために、ジャムセッションも含めた...…。「ペスト」の時(*主人公が旅先で疫病の蔓延に遭遇し、従者を病で失う)の「ラクリモサ "Lacrymosa"」の瞬間は、私が1994年に書き、南大西洋戦争(マルビナス戦争・フォークランド紛争)40周年にあたる2022年に初公開される予定の「レクイエム・ミサ」から引用した。

 

 

●もうひとつのリハーサル動画

このリハーサルの場面では、ヴァイオリニストがヴィヴァルディの有名な「四季」の一節を弾いています。これはオケメンバーによる伴奏ではなく、主人公のひとりであるヴィヴァルディの役のテノールの方だそうです。これ自体がオペラの一場面。出演者の多くは、歌手であるとともに楽器を演奏することが求められ、またオーケストラのメンバーも、演技でドラマに参加することが求められているそうです。マルチタスクのクーラらしい発想、ドラマの作り方ですね。

 

”昨日のリハーサルのある瞬間...” by ホセ・クーラ

 

 

 

≪出演者とハンガリー放送芸術協会のFBより≫

●ヴィヴァルディ役の紹介

こちらの動画は、クーラの動画でヴァイオリンを弾いていた、ヴィヴァルディ役のドナト・ヴァルガさんが、同じ動画を短縮してアップしたものです。そしてそれをシェアした放送芸術協会が、彼についての紹介を書き込んでくれていました。

 

 

”ドナト・ヴァルガは、コメディオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」では主人公の1人、ヴィヴァルディを演じている。この役では、ドナトは彼のバイオリンと歌のスキルを同時に磨くことができる! ドナト・ヴァルガは1976年にセゲドで生まれ、8歳の時にセゲド音楽学校で音楽の勉強を始めた。彼は後にリスト・フェレンツ音楽大学(リスト音楽院)とスイスで楽器のスキルを磨いた。2007年まで、彼はセゲド国立劇場のオーケストラのコンサートマスターだった。彼は2005年に歌い始め、それ以来、コンサート、オペラパフォーマンス、演劇の定期的なソリストを務めている。ビデオでは、彼はヴィヴァルディの四季のバイオリンを演奏しているーーオペラの一部として!”

 

 


 

 

≪クーラのインタビューよりーー作品に関する部分の抜粋≫

 

 

 

Q、役にミュージシャンを選んだ理由は?

A(クーラ)、それは私の仕事ではなく、オーケストラの芸術監督がそれを担当した。 彼らのほとんどは以前から知っていたし、2か月前にこの作品の最初のリハーサルの準備をしていた時から一緒に働いてきた。

キャラクターに多様性があるために、適切な人物を見つけることは困難だった。たとえばヴィヴァルディは、作曲家であるだけでなくバイオリニストでもあったため、この作品の上演には、楽器を演奏できるテノールが必要だった。私たちは、素晴らしいヴァイオリニストであり、同時にテノールであるドナト・ヴァルガを得て、非常に幸運だ。

 

 

Q、物語はメキシコの男爵がヴェネツィアへと旅立ち、そこでモンテズマはヴィヴァルディと出会う。ヴィヴァルディはアステカの王についてのオペラを書く。どのようにして視聴者を1700年代に押し戻す?

A、オペラの音楽的言語はバロック様式の美学に従うーーステージ上には40人だけの小さなオーケストラがいて、テキストがより致命的に重要になる。

対照的に、ロマン派の時代には、レチタチヴォや対話の最中にもオーケストラ全体が演奏し、時にはその連続性を中断する。ちなみに、バロックは音楽史上私のお気に入りの時代で、音楽の始めと終わりであるバッハの大ファンだが、ヴィヴァルディ、ヘンデル、スカルラッティも私の心に近いものだ。

 

 

Q、この喜劇オペラの観客は?

A、これはとても賢明で危険な質問だ!(笑) 

モンテズマは幅広い聴衆向け。これは、他の作品への多くの言及を含む知的なコメディオペラだ。聴衆は事前に知識がなくても楽しむことができるが、ヒントを知っていれば舞台は最も楽しくなる。

同じことが他の芸術分野にも当てはまる。事前にモナリザについて何も聞かずにルーブル美術館に行くと、笑顔の女性を見るだけだが、誰かがその絵の背後にある根本的な意味、色、絵筆の使用、絵に込められた思慮の深さを説明してくれるなら、より多くの意味をもたらす。認識はより多くの楽しみに役立つ。

 

 

Q、オペラに引用されているものは?

A、カルペンティエール(原作「バロック協奏曲」の作者)は音楽史家でもあったので、多くの音楽作品を引用している。モンテズマでは、ヴィヴァルディ、ヘンデル、スカルラッティに加えて、ヴェルディのオテロ、イーゴリ・ストラヴィンスキーのサーカス・ポルカ、シェイクスピアのロミオとジュリエットの作品などを引用している。またジョークとして、ウォルト・ディズニーの物語を、ワーグナーの幻想的な世界と並べて参照した。

 

 

Q:モンテズマはあなたの最初のオペラ。作曲がキャリアでこれまで無視されてきた?

A、テノールとして、私は年間100回の公演をしてきたため、作曲する時間はとれなかった。

作曲はフルタイムの仕事。モンテズマの音楽をオーケストレーションしたとき、私はスタジオで誰とも話をしないで数週間を過ごした。その時、外の世界は私にとって消えていた。

 


Q、近い将来、より多くの曲を作曲する予定は?

A、別の台本を探しているが、見つけるのにまた30年もかからないことを望んでいる(笑)。今日、最大の挑戦は音楽ではなく、人々の興味を引く完璧な台本を見つけることだ。

 

 

 

 

 

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(緊急告知・ラジオ生中継、オンデマンド放送編)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-29 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

2020年1月29日に、ホセ・クーラが脚本・作曲を手がけた新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」が初日を迎えます。

うれしいことに、ハンガリー放送芸術協会が、クーラのオペラがラジオ生放送され、さらに録音を30日間のオンデマンドで聞くことができると告知してくれました。ライブラジオ放送の時間は、ハンガリーの現地時間1月29日19時35分から、日本時間では1月30日3時35分からの予定です。

以下、現時点でわかっている放送関係の情報をまとめてみました。

なお、クーラの新作オペラについての詳しい情報は、これまでの投稿まとめをご覧いただけるとありがたいです。

 

 


 

 

 

≪放送の告知ーーハンガリー放送芸術協会のFBより≫

 

●芸術監督のインタビューで告知

 

 

”ハンガリー放送芸術協会の芸術監督であるジョージ・イグリックは、昨日の朝、M1TVのライブ放送で、コメディオペラ「モンテスマと赤毛の司祭」の起源と特別な特徴について講演した。 彼は、ほとんどのキャストに完璧なボーカルスキルだけでなく、指揮者ホセ・クーラによる「総合的で芸術的」なパフォーマンスが期待されると語った。明日の夜のリスト音楽院での世界初演のパフォーマンスは、観客に間違いなく忘れられない体験を提供する!
購入可能なチケットは限られている。

https://www.jegymester.hu/.../8180.../Dohnanyi-berlet-II-2019/20

オペラは、水曜日の夜に19.35からバルトークラジオで生放送される。”

 

 

●中継・録音リンクの紹介

 

”海外の視聴者向けの更新:ホセ・クーラの新しいオペラのライブオーディオ放送”

「モンテズマと赤毛の司祭」は、次のリンクからアクセスできる。

https://mediaklikk.hu/bartok-radio-elo

時間:1月29日、水曜日、19.35ローカルブダペスト時間(UTC + 1)  
録音は、コンサートのホームページで1月30日木曜日から30日間利用できる。

http://radiomusic.hu/…/jose-cura-montezuma-and-the-red-pri…/

 

 

 

≪オンデマンド予定のHP≫

 

こちらがハンガリー放送芸術協会の「モンテズマと赤毛の司祭」のHPです。画像にリンクがはってあります。

現地時間1月30日以降、こちらのページでオンデマンド可能になるそうです。30日間限定の予定。

 

 

 

 

≪バルトークラジオのサイトより≫

 

●告知

 

●番組表

 

 

●ライブラジオ放送

ライブで聞かれる方は以下の画像をクリックしてください。バルトークラジオの生放送が始まります。

ライフ放送は、日本時間1月30日午前3時35分~の予定です。

 

 

 

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(リハーサル編)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-26 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

ホセ・クーラが脚本・作曲した新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」、数日後に迫った世界初演(2020年1月29日)にむけて、リハーサルもいよいよ大詰めを迎えています。

今回は、(告知編)(解説編)(解説編・その2)に続き、(リハーサル編)ということでまとめてみました。

サプライズは、クーラがリハーサルのワンシーンを動画で公開してくれたことです。貴重な初演前の新作オペラ、ごく一部ですが、リハーサル室でクーラが指揮し、オケと合唱が演奏している場面を見ることができたのは、とてもうれしいことです。

以下でリンクを紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。

 

 

 


 

 

 

JOSÉ CURA: MONTEZUMA AND THE RED PRIEST – opera buffa (ma non troppo) – world premiere – half-staged version

Prologo
Francisquillo – János Alagi
El Amo – Matias Tosi
La Amante – Katalin Károlyi
Backstage voices:
A Woman – Gabriella Sallay
A Man – Péter Tóth

Quintet:
1. Nóra Ducza (also Donna 2 in Stornello)
2. Bernadett Nagy (also Donna 4 in Stornello)
3. Kornélia Bakos (also Donna 1 in Stornello)
4. József Csapó (also Uomo 1 and Pignatta in Stornello)
5. Szabolcs Hámori (also Uomo 3 in Stornello)

Il Carnevale
Vivaldi – Donát Varga
Host – Róbert Rezsnyák
Filomeno – Zoltán Megyesi
Händel – Domonkos Bazsó
Scarlatti: József Gál 

Stornello
Donna 3 – Katalin Süveges
Uomo 2 – Gábor Pivarcsi

L’Ospedale
Orderly Noun – Borbála László
Orphans orchestra:
Bianca Maria – Fruzsina Varga (flute)
Claudia – Melinda Kozár (oboe)
Cattarina – Yoshie Toyonaga (clarinet)
Luciett – Dóra Béres (trumpet)
Pierin – Ildikó Fazekas (violin)
Bettina – Katalin Madák (viola)
Margherita – Rita Keresztes (cello)
Giuseppina – Gerda Kocsis (double bass)

Il Cimitero
The Gondoliere and the Friar – Róbert Rezsnyák

La Prova
Motezuma – Matias Tosi
Teutile – Nóra Ducza
Ramiro – Kornélia Bakos
Fernando – Bernadett Nagy
Mitrena – Katalin Károlyi
Stage Manager – Pál Kálmán Könyves
Spectator – Péter Tóth

Hungarian Radio Symphony Orchestra and Choir (choirmaster: Zoltán Pad)

Organ, harpsichord, continuo: Soma Dinyés

Conductor: José Cura

 

*リスト音楽院のHPに掲載されたもので、各場面ごとの詳しい配役と出演者のリストのようです。プロローグを含め、全部で7場で構成されているということでしょうか。

 

 


 

 

≪リハーサルの動画ーークーラのFBより≫

 

 

”リハーサルでの短い瞬間ーーフランシスキーリョの死の間際のディエス・イレ(Dies irae=怒りの日)の断片” by ホセ・クーラ

 

 

 

≪SNSより、リハーサルの様子≫

 

●ハンガリー放送芸術協会のFBから、アーティストとリハ中のクーラ

全部で10枚の写真が掲載されています。右上のFBをクリックしてご覧ください。

 

 

”来週、1月29日水曜日に、ホセ・クーラの新しいコメディ「モンテズマと赤毛の司祭」を演奏する。初演まであと1週間、オーケストラとボーカルのアーティストとソリストが、作曲家・指揮者とハードに働いている。写真は今朝Radio 6スタジオで撮影された。”

 

 

●同じくハンガリー放送芸術協会のFBより、主演のマティアス・トシの紹介

 

 

●ハンガリー放送芸術協会のインスタより

こちらも同じ協会によるリハの風景ですが、FBとは違う写真が10枚、掲載されています。

 

 
 
 
 
 
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#mrmemost #rehearsal #JoséCura #Montezumaandtheredpriest #music #teamwork

MagyarRádióMűvészetiEgyüttesei(@magyarradiomuveszetiegyuttesei)がシェアした投稿 - <time style="font-family: Arial,sans-serif; font-size: 14px; line-height: 17px;" datetime="2020-01-23T13:03:17+00:00">2020年 1月月23日午前5時03分PST</time>

 

インスタの10枚の写真のうちから2枚を。

主要なキャストの方たちなのでしょうか、ピアノを囲み、クーラの説明を聞いているようにみえます。

 

ヴァイオリンを弾くクーラ。ヴィバルディなど作曲家が主要なキャストで、音楽がふんだんに出てくるドラマのため、ヴァイオリンを弾く役、シーンをやってみせているのでしょうか。

 

 

●出演者のFBより

ヘンデル役の方がアップされていたリハ風景。とても楽しそうです。

 

 

 


 

 

1月29日の初日が迫っています。この時点で、ゲネプロの直前という頃でしょうか。

リハーサルは笑いが絶えないなかですすめられたそうです。ハンガリーに滞在中の日本の音楽家の方がSNSでクーラのリハの様子を紹介されていましたが、英語、ハンガリー語、イタリア語、フランス語が入りまじり、バロック音楽、モダン音楽、ジャズが入りまじり、そして喜劇で笑いが絶えない現場、マエストロ・クーラが面白すぎる、という内容を記されていました。これを読むだけで興味がかきたてられます。クーラのユーモア、リーダーシップとカリスマ性、出演者、同僚、劇場関係者へのフランクで寛容な姿勢、そして劇場と音楽、芸術を深く愛するクーラの全面的な能力とパワーが発揮され、初演へと着実に前進しているのだと思います。

クーラが数年がかりで執筆、作曲をすすめてきた新作オペラ。どんなものなのか、どんな音楽なのか、話を聞くだけではあまりイメージしにくかったのですが、今回、クーラが1場面を紹介してくれたおかげで、期待が大きくふくらみました。主人公の従者の死の場面、ヴェルディなどレクイエムでおなじみの「怒りの日」、とても迫力ある音楽、ドラマティックな合唱の場面でした。わくわくして、もっと聞きたいと思います。ぜひ、放送をお願いしたいです。

 

 

*写真はハンガリー放送芸術協会、関係者のFBなどからお借りしました。

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2019年 ホセ・クーラ、アテネとモスクワでコンサート

2020-01-23 | コンサート ②

 

 

今回は、昨年2019年末のホセ・クーラのコンサートについて紹介したいと思います。

11月のアテネでのオペラ・アリアコンサートと、12月31日大晦日に開かれたモスクワのコンサートです。会場の規模や内容も違っていますが、それぞれクーラのユニークな個性と魅力が発揮された公演だったようです。SNS上で、感動や感嘆のコメントもたくさんアップされていました。

今年2020年11月に、びわ湖ホールでアイーダに出演することが劇場によって告知(紹介した記事のまとめはこちら)されていますが、もし本当に来日が実現するのであれば、ぜひ、クーラの現在の多面的な魅力が味わえるコンサートも企画していただきたいと願っています。

  

  


 

  

≪11/22 ギリシャ・アテネーークリスマスシアターでオペラアリア・コンサート≫

 

 

 

JOSE CURA in Concert

Tchaikovsky Symphony Orchestra
Directed by Davide Dellisanti (David Delisadi)
mezzo-soprano Eleni Voudourakis
soprano Eleni Koutsoubi

FRIDAY 22 NOVEMBER 2019
CHRISTMAS THEATER
CLOSED OLYMPIC GALATSIA STAGE (VEIKOS)


ホセ・クーラ コンサート クリスマスシアター

2019年11月22日

 

2019年11月22日、ギリシャの首都アテネで、アテネ・オリンピックの競技会場だった巨大アリーナを改装したホールでのコンサートです。客席数も大規模ですが、完売したとのことです。

オペラ・アリアコンサートで、クーラは歌と指揮。レオンカヴァッロの道化師のアリア、プッチーニのトスカ「星は光りぬ」をはじめ、今回はメゾとソプラノの2人の女性歌手がゲストということもあり、カヴァレリア・ルスティカーナ、蝶々夫人、カルメン、サムソンからのデュエットが歌われました。巨大な会場のため、マイクを使用していましたが、ネットにアップされた録音、録画では、クーラはとても好調で、高音も軽々と歌っていました。観客も大喝采、熱狂的だったようです。

コンサートの正規の録画・録音はありませんが、関係者がSNSにアップしてくれた画像を中心に、コンサートの様子を紹介します。 

 

 

 

ーー指揮者デリサンティさんのFBより


●クーラの歌声 トスカのアリア「星は光りぬ」(部分)

まずは、ひとつだけですが、クーラの歌声を。コンサートの定番、プッチーニのトスカからアリア「星は光りぬ」を。指揮者のデリサンティさんがFBにアップしてくれたものです。(アリアの後半のみ)

 

 

●カーテンコール?

こちらは全員で喝采を受けている様子でしょうか。

 

 

●コンサートの前に

リラックスしているので終演後かと思いましたが、コンサート前と書いてありました。

 

●デリサンティさんのインタビューより 

コンサートの少し前、現地でオケとリハーサル中に受けたインタビューで、クーラについて語った部分を紹介します。

 

「ホセ・クーラはいつも私のアイドルの1人であり、一緒に音楽を作ることができるのは待ち遠しい。」

「有名なヴィットリオ・テッラノーヴァ国際大会(クーラのイタリアでの声楽の先生の名を冠した大会、東京で本選)の予選で、ミラノでホセ・クーラと出会った。そしてそこから、この偉大なアーティストとの美しい友情が生まれた。今、私たちはついに、信じられないような場所で、そして世界で最高のオーケストラの1つと一緒に音楽を作る機会を持つことになる。」

(「youreporter.it」)

 
 

ーー共演のメゾソプラノ、エレニさんのFBより


●エリニさんとクーラとの舞台写真

”私のホセ・クーラ! 魔法の夜!この素晴らしい、そしてカリスマ的な人と一緒に歌うのは、名誉であり、真の喜びだった。彼はポジティブで創造的なエネルギーの源であり、黄金の心、輝く魂、驚異的な声、真の芸術家。” (写真はサムソン&ダリラのデュエットから)

 

 

●ポスター ちょっとレトロな感じがまたよい雰囲気



ーーカメラマンのマノス・マニオスさんのFBより


●素敵な舞台写真がたくさん

右上のFBをクリックしてご覧ください。

”素晴らしくて非常にヒューマンなホセ・クーラと!!”

 

●「誰も寝てはならぬ」

こちらはアンコールの「誰も寝てはならぬ」をクーラが歌っているところのようです。歌詞がつけてあります。

 

 

ーークーラのFBより 


●コンサートでのちょっとした楽しいエピソード 

”このかわいい女の子は、金曜日のアテネの夜、劇場の最初の列に母親と一緒に座っていた。 ステージの上で私についてくるように招いたとき、彼女は一瞬もためらわなかった。 私は彼女のために道化師のプロローグを歌った。この写真で、私は彼女に道化師の涙を見せていた。”

 

とても子ども好きなクーラ。コンサートで小さな子の姿を見かけると、舞台にあげることもよくあります。クーラと”共演”したことがよほど楽しかったらしく、彼女は終演後、再びクーラに会って、抱っこしてもらったようです。また彼女の家族はクーラのFBに、「彼女はあの夜以来、あなたを探し続けていました!素晴らしい夜、素晴らしいエネルギー、あなたがくれた人生のインスピレーションをありがとう!私たちにとってこれまでの人生で最高の出来事でした!!!!」とコメントをしていました。

 

 

●コンサートの翌朝? ホテルの部屋から

丘の上に見えるのはパルテノン神殿でしょうか。

 

 

ーーリハーサルの様子


●アテネでのリハーサル風景 オーケストラ関係者のFBより

右上のFBをクリックして元のページから、リハーサルの動画を見ることができます。

 

 

ーーレビューより 

 

「クーラは解釈的なアプローチで聴衆を感動させた。彼はオペラアリアを現代的なアプローチで再定義し、それを人々にもたらした。」

「自分の目と耳で、彼がプロフィールに書いていることが真実であることを見つけた。クーラは、彼がオペラ・スター以上であることをステージで証明する。彼は作曲家および指揮者、オペラ演出家、ステージデザイナーであり、素晴らしいパフォーマー、自然なショーマンだ。彼は最高の音楽を選択し、楽しみ、訓練をすることを決意した。」

 

 

ーー告知記事より

 

 

 

 


 

 

 

 ≪ロシア・モスクワーーモスクワ音楽院で指揮とアリア、アルゼンチン音楽≫



 

 

 

Jose Cura
31 December 2019

Orchestra of the Moscow Academic Musical Theater. K. S. Stanislavsky and Vl. I. Nemirovich-Danchenko
Conductor — Felix Korobov
Polina Shamaeva (soprano)

≪Program≫
H. Herrera "Desde el fondo de ti"
C. Guastavino ”Sonnet 4” ”Anhelo” "Las ninas" "El albeador" "Campanilla" ”Cuando acaba de llover”
C. Saint-Saens ”Bacchanalia (from the opera Samson and Delilah)” Aria “Mon Coeur” (from the opera “Samson and Delilah”)
A. Hinaster "Los trabajadores agricolas" ("Peasants"), dancing from the ballet   "Estancia"
N. Rimsky - Korsakov "Flight of the Bumblebee"
A. Manzanero ”Somos Novios” "Esta Tarde Vi Llover"
A. Piazzolla "Tangazo" "Chiquilin De Bachin"
I. Strauss Polka "Thunder and Lightning"
F. Lehar “Lippen Schweigen” from the operetta “The Merry Widow”

Puccini "Nessun dorma"

 

2019年12月31日 モスクワ音楽院大ホール 

ホセ・クーラ

フェリックス・コロボフ=指揮

ポリナ・シャマエバ=ソプラノ

 

12月31日、2019年の大晦日。伝統あるモスクワ音楽音大ホールのコンサートは、アテネのコンサートとはまた趣向を変えて、アルゼンチンの曲、南米の作曲家の曲がメインだったようです。プログラムにあるように、 グアスタビーノ、マンサネーロ、ピアソラなどの歌や曲を歌ったり、指揮したりしました。ロシアの観客になじみのない曲であるため、クーラが英語で説明しながら進行したようです。

またオペラアリアを期待してくる観客にこたえるためか、サムソンとデリラからのデュエット、レハールの「唇は語らずとも」、そしてアンコールには定番中の定番「誰も寝てはならぬ」を歌いました。またプログラムにはありませんが、カルメンからのデュエットも歌ったようです。

 

 

ーークーラの指揮と歌声


●サムソンとデリラ「「あなたの声に私の心は開く」

共演のポリナさんがアップしてくれたもので、クーラは指揮をしながらの二重唱です。

Polina Shamaeva and Jose Cura. "Mon coeur s'ouvre a ta voix" from "Samson et Dalila" C. Saint-Saëns

 

 

ーーソプラノのポリーナさんのFBより

 

●サムソンとデリラの二重唱の写真

 

●終演後、笑顔で

”2019年、音楽院の大ホールでホセ・クーラと共演した。ここでは言葉は不必要だーーあらゆる幸福が彼らの顔にある!このようなパートナーと一緒にステージをつくることは、まさに夢だ!みなさん明けましておめでとう!!!”

 

 

ーーFBの投稿より


●舞台の様子をいくつかの写真から

ギターを手にしているのは、イエスタディの弾き語りをしたからです。また左下の少年は、やはり客席最前列に座っていたところをクーラに招かれて壇上にあがり、リムスキー=コルサコフの「くまんばちの飛行」を見事に指揮したのでした。もちろんクーラがリハーサルしているとはいえ、少年はあらかじめ準備されていたのか?それとも全くの当日のハプニングなのか?いずれにせよ観客とともにクーラも楽しんだようでした。

 

 

ーー リハーサル風景

 

●ポリナさんがアップしたリハーサル風景

 

●リハーサルでダンスを踊る2人

「唇は語らずとも」の伴奏中にダンスを踊ったようです。チェロは指揮者のコロボフさん。日頃ダンスは苦手と言っていたクーラ、本番はうまくいったのでしょうか。

 

●指揮者のインスタより

 

 

 

 

 

 

 

 


 

  

この秋から年末にかけて、クーラは、ハンガリーでのヴェルディのレクイエムの指揮や、自作のオラトリオの録音、そして今年2020年1月29日に初演を迎えるクーラ脚本・作曲の新作オペラの準備やリハーサルなどで、きわめて多忙だったと思います。 その合間をぬってのコンサート、それぞれ趣向を変えながら、魅力的な内容のコンサートだったようです。

作曲・指揮の活動紹介が続きましたが、まだまだ現役の歌手として、素晴らしい声とカリスマ的パフォーマーであるクーラ。なかなか現地にいくことができないのが残念ですが、コンサートの録音や録画の断片をネットで見聞きでき、クーラの今の声を味わえるのも、現代ならではのことです。

 いよいよクーラの新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」初演も近づいてきました。準備も大詰めになっていることと思います。クーラやハンガリー放送協会の解説記事も楽しみです。無事に成功することを心から願っています。

 

 

*画像は、出演者、関係者のFBなどよりお借りしました。

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(解説編2ー台本について)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-20 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

2020年1月29日のクーラの「モンテズマと赤毛の司祭」初演にむけて、引き続き、オペラの詳細な情報が発信されています。

前回の(解説編)に続いて、2回目をまとめました。このシリーズ、たぶんまだまだ続きそうです。今回、まったくのオリジナルの脚本・音楽の新作オペラであり、成功させるために、クーラも、ハンガリー放送芸術協会も、可能な限り、このオペラを理解してもらえるように努力し、キャンペーンをしているのだと思います。

オペラの内容・背景について、説明が古典文学や歴史的事実に関わっていることもあり、教養に欠ける私の和訳はいつも以上に不十分かと思います。間違いや事実誤認、誤訳等、お許しいただき、ぜひ元の記事を見ていただければと思います。 

 

 


 

 

≪クーラのFBより≫

 

●台本についてのクーラの説明

 

先週、「モンテズマと赤毛の司祭」を私が書くことになった理由を紹介した。
今日は、台本の起源についてもっと話したいと思う...。
 
【台本について】
 
ーー独自の加筆と参考資料

前述のように、「モンテズマと赤毛の司祭」は、アレホ・カルペンティエールの小説にもとづいている。
もっと適切な言い方をすれば、それに触発された。実際、例えばモンテズマの死につながった出来事の説明など、多くの瞬間が、カルペンティエールの本にはなく、明らかにドラマ上の理由から、追加が必要だった。
 
したがって、ディエゴ・ドゥラン『ヌエバ・エスパーニャのインディアスの歴史』、ベルナル・ディアス・デル・カスティーリョ『メキシコ征服記』、エルナン・コルテスの皇帝チャールズ5世との2番目の手紙や、フランシスコ・デ・アギラールの『Relación breve de la conquista de la Nueva España』は必須だった。
 
これらの歴史的なテキストとは別に、執筆の過程で、愛するシェークスピアへのオマージュを含める必要性を感じた。ロミオとジュリエット第1幕5場から選んだ断片を引用した。正確には、舞踏会が準備されている場面の数節、主人が怠惰な召使を探しまわる様子など。
 
ーーデカメロンをヒントにイタリアの恋愛詩を挿入
 
しかしもし1つの大きなライセンスというなら、「Stornello(ストルネッロ)」(*補足=イタリアの恋心を歌うイタリアの庶民的な詩で、14世紀から十六世紀に大流行したものらしい)を挿入したことだろう。男性と女性がお互いに、どちらが最も小粋な戯れ歌を思いつくかを競う。14世紀の2編の詩にもとづくもので、タイトルがボッカチオの『デカメロン』に引用されている。調査に長い時間がかかったが、ついにこの2編の全文を、ジョズエ・カルドゥッチ(*イタリアの詩人、古典文学者で、ノーベル文学賞受賞者)著の「Cantilene e ballate、Strambotti e Madrigali」という本のなかに見つけた。
 
ーーオペラで使う言語をどうするか
 
台本をすすめるうえで決定的な決断の1つは、その主要言語を定めることだった。ヴェルディのオペラ「運命の力」のように、スペインを舞台にイタリア語で人々が語りあったり、または、ワーグナーのパルシファルのように、イギリスの物語(中世の騎士道物語、英アーサー王伝説に登場する騎士パーシヴァル)をドイツ語でーー無数のなかの2つの例だが、確かにこのようにすることも可能だった。しかし、ヴェルディとワグナーの時代にはほぼ必須条件だったが、今日の台本作家は、このジレンマを処理するためにもっと多くの自由裁量権を持っている。
 
2012年に50歳になったとき、最も親しい友人の何人かとパーティーを開催した。私がさまざまな国に住んでいたこと、また、それぞれからの友情の結果として祝福されていることを考えると、避けられないことだが、私の家はまるで国際的な規模での不協和音のように聞こえた…。しかし驚いたことに、誰もが自分の言語を話していても、理解しようと努力し、面白いジェスチャーを使って、最終的には彼らはみんな、コミュニケーションをとることができた。イエス、いくつかの誤解があったが、これらはイベントを楽しくした要素の一部となり、コメディが提供された。
 
多言語を使うことによる喜劇の可能性
 
その個人的な経験をもとに、また多言語アプローチにより可能になる喜劇の可能性を試してみたいと考え、私はオペラのすべての登場人物に、自分の母国語で自分自身を表現させることにした。彼ら自身のバックグラウンドに応じてやるように。 
 
これがマッドキャップ・コメディではなく、よりリアリスティックな作品の場合は、互いを適切に理解する方法の特定の技術について議論することもできるだろう。しかし、ここでの言語の衝突は、単一の統一された舌よりも、作品の性質をより優れたものにするだろう。

来週は、音楽についての詳細を!
 
 
 

 


 

 

 

≪ハンガリー放送芸術協会FBより≫

 

●メディアのインタビューをうけるクーラ

1月29日、私たちはリスト音楽院(音楽アカデミー)で、ホセ・クーラによる新しいオペラ「モンテズマと赤毛の司祭ーーオペラブッファ・マ・ノン・トロッポ」を初演する。公演の10日前の今日、私たちはプレス向けの日を持ち、マエストロ・クーラはいくつかの機関に対し、この作品の特徴について語った。

 

 


 

 

≪リハーサルの様子≫

 

リハーサル風景などの写真はまだほとんど公開されていませんが、新作オペラであり、すでに昨年からリハーサルは始まっていたようです。登場する3人の作曲家のうちの1人、ヘンデル役の方が投稿してくれました。

 

●ヘンデル役のバス・バリトン、ドミニク・ブラソさんのFBより

”ホセ・クーラ率いる「モンテズマ」のリハーサルがすでに始まっている。マエストロ・クーラと一緒に働くのは大変に光栄だ。”

 

 

 


 

 

今回のクーラの解説を読んで、脚本を執筆・仕上げるにあたって、クーラが、様々な参考文献を研究し、内容を豊かによりドラマティックに、面白くするために努力してきたことがよくわかりました。

メキシコのアステカの王モンテズマを主人公としたドラマを描くために、アステカ帝国を侵略、征服した側のスペイン人による著作や手紙などを読み込み、またドラマを豊かにするために、シェークスピアやボッカチオなど古典文学の世界を探求して材料を集めるなど、さまざまな努力と苦労があったようです。プロの作家、脚本家にとっては当然のことでしょうが、クーラのように、ミュージシャンとして公演をこなし、作曲や指揮をしながらの作業は、いかにハードワーカーのクーラにとっても、かなり大変な時間のかかることだったのではないかと思います。しかしクーラ自身には、楽しく、好奇心がそそられる知的探求という面がつよかったのかもしれません。

リハーサルの写真には、ピアノと譜面を前に、キャストらしき人とクーラの姿が見えます。全くの新作、書下ろしのオペラであり、初めて音になるわけで、作曲家・指揮者のクーラにとっても大きなチャレンジ。キャストの方たちもオケのメンバーにとっても当然ですが、初めての物語であり初めての音楽です。とてもエキサイティングであり、自分が譜面に書いたオペラが、実際に音として鳴り、歌として歌われ、キャストとオーケストラによって音楽ドラマとして組み立てられていく様子に立ち会うのは、どれほどわくわくすることでしょう。公演の映像化とともに、ぜひ、準備過程を含めたメイキング・ビデオのような形で紹介してほしいものです。

 

 

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(解説編)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-18 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

  

 

ホセ・クーラの新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演まで、あと10日余(2020年1月29日、於リスト音楽院)となりました。クーラやハンガリー放送芸術協会のFBで、オペラの内容や背景、登場人物などに関する紹介記事がアップされはじめています。

初演の日まで、引き続きこうした記事が出されていくと思いますが、(告知編)に続き、まず1回目の(解説編)として、現時点でのいくつかの記事を紹介してみました。

もともとのヴィバルディのオペラがあり、それを題材にしたカルペンティエールの空想的な小説があり、クーラはそれらを題材にして、史実も加えて脚本・オペラ化したということで、少々、話が込み入っています。クーラやハンガリー放送芸術協会などによる解説を、そのままざっくり訳して掲載していますので、分かりにくいかもしれません。ダブりや訳文の不十分さと合わせ、ご容赦ください。

今のところ、まだ放送予定の情報は出てきていません。ライブ中継、または録画やラジオ放送など、ぜひ、何らかの形で公開してほしいと切に願います。

  

 


 

 

≪クーラのFBより≫


●オペラ脚本のきっかけとなった、友人からのプレゼントの小説『バロック協奏曲』と献辞の写真。そして完成までの経過などについて


「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演開始へのカウントダウン

ー長い構想の物語
1988年、私の友人であるディエゴ・ヴィデラ・グティエレスーー若いセットデザイナー(当時私たちは皆、非常に若かった)が、私の26歳の誕生日にアレホ・カルペンティエールの『バロック協奏曲』の本をプレゼントしてくれた。著者がメキシコ皇帝モンテズマとベネチアの巨匠アントニオ・ヴィヴァルディとのありそうもない出会いを想像するファンタジー小説。カルペンティエールはその物語の中で、ヴィヴァルディに彼のオペラ「モテズマ=Motezuma 」を書くことを促す。

本の内側に記されたディエゴの私への手書きメッセージは、この素晴らしい小説からオペラを作るというアイデアの種を私に植えつけてくれた。そこで私はすべてのページを読み、記録した。しかし当時、私はすでにレクイエムを書き、オラトリオ「Ecce Homo」を制作中だったが、オペラを書くとなるとどこから始めたらよいのかわからなかった。

この本は、2017年に家族の蔵書整理を決断するまで、29年にわたって私の図書室で「眠った」。2世代のクーラが収集したかなり濃密な品揃えの蔵書で、私の母が50年以上前にその始まりを手がけたものだった。その過程で『バロック協奏曲』は棚から落ち、私の膝に戻った。今回は友人の予言がここに留まった。

私は小説を読み直し、それがコミックオペラの台本に完璧に収まることに感銘を受けた。「喜劇」が、意図的に笑いを誘うという意味だけでなく、無鉄砲な風でありながら、展開に沿っていくつかの興味深いモラルが見つかるという物語の構成の方法においても。私が副題をつけたように、”An opera buffa, ma non troppo”(「オペラ・ブッファ、マ・ノン・トロッポ」=音楽用語「しかし、甚だしくなく」)。

ある午後に台本の最初の草案を書き(もしくは30年がかりで?)、2017年の夏に音楽をつけた。それから1年半の間、この作品を「休ませ」、時々「香り」をかいで熟成プロセスをチェックし、そして最終的に2019年にオーケストレーションを行った。

 

  

 

≪ハンガリー放送芸術協会FBより≫


●クーラの写真をシェアして、初演までの2週間に、脚本、制作方法、作品のあらすじ、登場人物などについて詳細な情報提供を行うと告げた記事

2020年1月29日、ハンガリー放送芸術協会の最初の常設ゲスト・アーティストであるホセ・クーラが、作曲家および指揮者として再び、音楽アカデミー(リスト音楽院)に迎えられる。初演されるのは、ホセ・クーラの新しいコメディ・オペラ、「モンテスマと赤毛の司祭」。「モンテズマ」の物語、オペラのプロットは、ハンガリーでも出版されたアレホ・カルペンティエールの「バロック協奏曲」にもとづいている。

初演までの間、私たちは非常に興味深く、また難しいリハーサルを行う。これがオペラの最初の舞台であり、ハーフステージのパフォーマンスになるためだ。次の2週間、劇、その起源、あらすじ、キャラクターについての詳細な情報を提供するために取り組み、この特別なショーに皆様を迎えられることを楽しみにしている。

写真は、ホセ・クーラ所蔵「バロック協奏曲」スペイン語版、1988年。

 

  

●ヴィヴァルディの「モンテズマ」の楽譜と再発見の様子を紹介する記事

 

「モンテズマと赤毛の司祭」ーー これは、1月29日に音楽アカデミーで紹介する、ホセ・クーラの新しいコメディオペラのタイトル。約束どおり、オペラの初演まで、劇の背景について多くの詳細を共有する。

オペラのタイトルは、実在の2人の名前を指す。アステカ帝国の第9代の王であるモンテズマ2世(1466-1520)と、赤毛の司祭は有名なバロック作曲家のアントニオ・ヴィバルディ。

1733年、ヴィバルディはオペラ全体をモンテスマに捧げたが、作品の音楽は失われ、テキストだけが残された。しかしソビエト連邦の崩壊後、ベルリン・ジングアカデミーの貴重な楽譜がドイツに返還された時、ヴィバルディの作品であることが音楽学者ステフェン・ヴォスによって特定され、数年後、そのオペラの音楽はロッテルダムのコンサートで演奏された。そう、ホセ・クーラの新作オペラの出発点は、そのオペラ ーーつまり、オペラ、音楽、バロック音楽の誕生である。

写真は、オリジナルの作者ヴィバルディによって書かれた、オペラ「モテズマ」の楽譜(1733)。

 

 

●原作「バロック協奏曲」のあらすじ紹介

 

1733年、アントニオ・ヴィバルディは新しいオペラに特別なテーマを選択したーーアステカのモンテズマ王。そして、このエキゾチックなテーマについて作曲家にインスピレーションを与えたものとは?奇妙な出会いではないか?キューバの作家アレホ・カルペンティエールのファンタジーと彼の小説「バロック協奏曲」のなかに、まさに答えがある。

1709年、ヴェネツィアのカーニバルに、多色の鳥の羽の特徴的な衣装を着たメキシコの支配者モンテズマが現れる。キューバ人の従者フィロメノとともに。運命の気まぐれは、2人の旅行者を、赤毛の友人ヴィヴァルディ、ナポリ人のスカルラッティ、そしてたくましいヘンデルに巡り合わせた。

陽気な一行は、ピエタ慈善院の夜の静寂に反響させ、3人のミュージシャンは初心者のバンドと見事なバロックコンサートを即興演奏する。これが、アレホ・カルパンティエールの空想小説において3人の作曲家が出会った方法であり、こうしてアントニオ・ヴィバルディのオペラ「モンテスマ」は生まれた!

この短編小説のプロットに基づくホセ・クーラのコメディオペラは、1月29日に音楽アカデミーで初演される。
写真はハンガリー版「バロック協奏曲」の表紙。

 

 


 

 

≪ハンガリーでのインタビューより≫


Q、これは初めてのオペラ?

A(クーラ)、厳密に言えば3番目だが、実際には最初のもの。これをどう理解する?

とても若かった頃ーーあえて思い出したいとは思わないが(笑)、子ども向けのオペラを書いた。時が経つにつれて、私はその作品に非常に批判的になり、最終的に原稿を破ってしまった。最初の元の形では何も残っていない。もちろん、その時書いたフレーズの多くは、後に使用したけれど。その後まもなく、「Ecce homo」というオラトリオを書いた。ミュージシャンは、ジャンルとしてのオラトリオがオペラと見なすことができることを知っているが、ステージプレイはない。それゆえ私の本当の最初のオペラは、初演されようとしている「モンテズマと赤毛の司祭」だ。

 

Q、ストーリーは?

A、ヴィバルディが「モンテズマ」という題名のオペラを書いたことを知っている人は多くない。「モンテズマ」は1733年にヴェネツィアで初演された。台本は、タイトルキャラクターのアステカのルールに暗に従っているのみで、元のオペラの歴史でさえほとんどフィクションだ。非常に特別なことは、台本は最初の演奏の後も生き残ったが、音楽は失われたこと。2002年までそれが再び見つかることはなかった。長い再構成プロセスの後、2005年にステージにかけられた。最初はコンサート形式のようなパフォーマンスで、後にステージングされた。

私のオペラはほぼ完全にファンタジーの結果だ。物語では、メキシコの旅行者がヴェネツィアのカーニバルに予期せずに登場する。モンテズマのコスチュームに身を包んだ異邦人は、彼のアイデンティティを隠し、旋風を起こす。彼は偶然ヴィバルディに出会う。その場所でメキシコ人はモンテズマの物語を語り、ビバルディを感銘させた。その結果、巨匠はオペラを書く。その続きは教えられないが、エキサイティングなものになることを保証する。

ヘンデルやスカルラッティなどのキャラクターも登場する。ヴィバルディの時代の音楽やスタイルだけでなく、未来の、ストラヴィンスキーやワーグナーなどについても多くの会話を聞くだろう。

 

Q、そのメキシコの旅行者がモンテズマについてあなたに教えてくれた?

A、ほとんど、そうだ。 ただ、私は元のプロットに従っていたが、それ自体は刺激的なオペラには十分でないと感じた。私は既存のフレームに、リアルな歴史的な断片と対話を加えた。 私の情報源は通信と文書であり、それらを研究し、勉強することに多くの時間を費やした。たとえば、フェルナンド・コルテス(アステカを征服したスペインの植民者)の手紙から、オペラを美しく補完する情報を使うことができた。

もちろん、物語のすべてのキャラクターはおそらく同じイベントを異なる方法と異なる重みで伝えるため、そのような情報源がどれくらい古いと信じられるかは常に疑問がある。一定の時点で、私は取り組みのアプローチを決定する必要があった。したがって、私はそれが歴史的なオペラであると主張することも、また、すべてが確かにありのままに起こったと主張することもできない。

(「zene-kar.hu」)

 

 

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(インタビュー編・カルメンの解釈)2019年ホセ・クーラ、オマーン王立歌劇場のシーズン開幕公演カルメンに出演

2020-01-15 | オペラの舞台ーーカルメン

 

 

前回の記事でも紹介しましたが、その後も(1/15現在)まだ、ホセ・クーラのカレンダーは更新されていません。バーリ歌劇場来日公演のアイーダにクーラが本当に出演するのか、本当だとしたら日程、場所は・・と、カレンダーの更新が待ち遠しいですが、HPリニューアル中ということですので、まだしばらく待つ必要があるようです。

今回は、アイーダと同様に、人気のオペラ、ビゼーのカルメンについての話題です。昨年2019年の9月にクーラは、中東オマーンで、王立歌劇場マスカットのシーズン開幕公演のカルメンに出演(「告知編」はこちらを)しました。その際のインタビューで、オペラ・カルメンの解釈、ドン・ジョゼ(ドン・ホセ)の人物論、解釈、作品論についてクーラが語っていましたので、内容を抜粋して紹介したいと思います。

またインタビューの最後に、今後の予定について、とても興味深いスケジュールを紹介していました。ぜひ最後までお読みいただけるとうれしいです。

 

 


 

 

 

 

≪ホセ・クーラが「カルメン」のドン・ホセとしてマスカット王立歌劇場に戻る≫

 

Q、ドン・ホセのキャラクターについてどう思う?また、ロールデビューで覚えていることは?

A(ホセ・クーラ)、オペラ・カルメンとの関係は80年代にさかのぼる。当時私は、若い作曲家として、スペイン楽器とシンフォニックのグループが上演するために、作品の主要部分を1時間半にアレンジした。

1996年にサンフランシスコでドン・ホセの役でデビューし、パートナーのオルガ・ボロディナもまたカルメンの役でデビューした。私たちは皆とても若かった。

 

Q、キャラクターは長年の間にどのように成熟してきた?ドン・ホセについては?

A、ドン・ホセ・リザラベンゴア(原作であるメリメの小説『カルメン』のホセの本名)との基本的な混乱があり、スペインに関するテーマの、美しい、しかし非現実的なフランスの読解から生まれた。カルメンでは、内向的なバスク人と、屈託のないアンダルシア人との根本的に正反対の性格が、文化的な衝突に直面する。それは今日でもテレビシリーズのテーマであり、たとえば「Ocho apellidos vascos」(「8つのバスクの姓」という意味)のような映画(2014年)もある。こうした事実にもかかわらず、カルメンに代表される女性主人公のアンダルシア人の性格は、ほとんどコミックのように誇張され、ドン・ホセの、幼稚な行動、気まぐれな半ば愚か者の典型のようなドン・ホセの解釈を確認する。

ドン・ホセは若いが、ショックを受けて成熟するよりずっと以前から、少年の初々しさはなくなっている。・・・ドン・ホセはゲームの結果をめぐる議論から2人の友人を殺し、裁きを逃れるために、当時、戒厳令によって保護された軍隊に入った。軍人としても彼は時限爆弾だ。上司が彼に与えた最初の屈辱は、予測できない結果で爆発する。そのような心理的社会的不安定性のある人物が、官能的でとらえどころのない致命的な女性と交差する。言葉の語源的な意味で致命的な、運命にかかわる、カルメンのようなーー本当に恋をするよりも、花を摘むという事実を楽しむ女性と。19世紀の抑圧的な文学では、愛という言葉は必ずしも感情そのものを表すのではなく、性の婉曲表現を示していることを忘れないでほしい。・・

フレンチスタイルへの敬意と両立させるため、私は、最初の2幕をかなり控えめな方法で歌い、第3幕が進むにつれて徐々に不機嫌さを解き放ち、愛を請う人物の哀れみから、屈辱的なやり方で拒否された人の野蛮な憎しみへと進んでいく。
屈辱ーーここにキーワードがある。ドン・ホセは、拒否されたからカルメンを殺したわけではない。彼は、人生の旅の初めに2人を殺したのと同じ理由でカルメンを殺した。そして同じ理由で、小説(メリメの原作)では、将校の1人とカルメンの夫、ガルシアを殺す。その誰もが、公の場で彼を辱めたからだ。

この作品との30年以上の関係の後、私の意見では、こうした読み取り方が、この壮大な作品をマンネリズムのない現代的な解釈に照らして、ランスとスペインのような音楽と文化の両面で対照的な2つの世界の利点を最大限活用する唯一の方法だ。


Q、すでにオマーンで道化師を歌った(2018年、ブログ記事)。マスカットの劇場とオマーンの国について?

A、マスカットは高層ビルのない穏やかな街で、家の中の太陽の影響を最小限に抑えるために建物は白い。永遠に青い空と素晴らしい海を背景に、新しい、しかし伝統的な建築物と柔らかな砂の色のコントラストは、大きな平和をもたらす。その暑さに耐えさえすれば・・。
また一方で、オマーンは異文化間および宗教間の寛容の明瞭な例だ。常に慎重な謙虚さを持つ人々は、恐れることなくヨーロッパで服を着て回ることができ、首に十字架をかけることさえできる。他宗教の教会もある。そして王立歌劇場はこのすべての鏡だ。非常に効果的な劇場であり、素晴らしい芸術的およびロジスティックな落ち着きで機能する美しい建築だ。

 

Q、あなたの国であるアルゼンチンのオーケストラと合唱団と一緒にオマーンへ旅行することは?

A、道化師の成功の後、どの劇場とオマーンに戻りたいかを尋ねられたとき、少しもためらわなかった。私は両政権間の連絡役および交渉役を務めている。合意とプロフェッショナリズムにより、海外で私たちの国の大使を務める際に、アルゼンチンの劇場の模範性について疑う余地のない先例を設定する合意が設定されている。

 

Q、またオマーンで、テアトロコロンのオーケストラと合唱団とベートーベン「第9交響曲」を指揮する?

A、イエス、私がこれまで最も多く指揮したのはベートーベンの作品。人生の法則により、歌手としてのパフォーマンスを減らし、オーケストラの指揮と作曲へ復帰することは、私のキャリアの中で自然なことだ。プラハ交響楽団との契約(レジデントアーティスト、2015~18年、紹介記事まとめ)を終え、ハンガリー放送のメイン・ゲストアーティストとして契約した。彼らと一緒に、まずは、オラトリオ「Ecce Homo」(クーラ作曲)の録音、オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」(クーラ脚本・作曲)のコンサート形式での世界初演(2020年1月29日)を行う。そして2022年には、アルゼンチンのレクイエム(クーラ作曲)の世界初演で、テアトロコロンの合唱団を迎えたいと思っている。

 

Q、舞台監督・演出家としてはどのように?

A、2018年、ボンとモンテカルロ歌劇場でのブリテンのピーター・グライムズ(主演も)、プラハでのヴェルディ・ナブッコ、エストニアのタリンでのプッチーニ・西部の娘で監督をした。2020年にオテロの新しいプロダクションで舞台演出を再開する。

 

(「operaactual.com」)

 

 


 

 

いつものようにクーラは、作品、登場人物のキャラクターについて、原作や社会背景、民族的背景などを含めて研究、分析し、深めた独自の解釈に立って語っています。ただ美しく歌うのではなく、また心情的な解釈や思い入れで演じるのではなく、あくまでも、脚本と音楽にもとづきドラマとキャラクターの心理を深め、解釈し、歌い演じることこそ、現代のオペラをつくることだというのがクーラの確信です。こうした研究と分析に支えられて、クーラのドラマティックな演技力と舞台上の存在感が生きるのだと思います。

今後の活動については、すでに紹介してきた、クーラ作のオラトリオの録音、オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」初演に加えて、2022年には、アルゼンチンとイギリスの間に戦われたマルビナス戦争(フォークランド紛争)の犠牲者追悼のためのレクイエムの初演がついに実現するようです。

そして今年、ヴェルディのオテロの新演出に挑戦するということも報告されていました。クーラは2013年にテアトロコロンでオテロの演出・主演をしていますが、次のオテロは、いったいどの劇場で、主演は誰なのでしょうか。クーラがまた主演もするのなら、ぜひとも行きたいものです。ますますカレンダーの更新が楽しみです。

 

 

 

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(告知編)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-01-10 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

今年2020年11月に予定されているバーリ歌劇場のアイーダへの出演がどうなるのか、ホセ・クーラの公式カレンダー更新を今か今かと待っていましたが、1/9現在、まだ更新されていません。1/3にクーラがFBで公式HPをチェックするよう告知し、HPがリニューアル中だということが知らされました。カレンダー発表は、もう少し待つ必要があるようです。

そしてHPには、新年の大きなニュースとして、3つが紹介されていました。

①1月29日、ブダペストのリストアカデミーで、クーラ作コミックオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演
②クーラ作曲オラトリオ「Ecce Homo」録音、イースターにむけてリリース。 詳細については、Facebookページですぐにお知らせ予定
③3月29日、4月1日、4日、7日、サムソン(オペラ「サムソンとデリラ」)で、ウィーン国立歌劇場へ戻る  → 告知とライブ放送紹介記事

 

そこで今回は、世界初演が間近に迫ったクーラの初オペラ作品について、公開されている情報を、クーラのSNSやインタビュー、オケや劇場のHPなどからまとめて紹介したいと思います。

なお、この世界初演の場を提供したハンガリー放送芸術協会は、今シーズンからクーラを主席客員アーティストとして迎え入れ、歌、作曲、指揮など、多面的な活動でのパートナーシップを結んでいます。当面する今シーズンプログラムこれまでの活動についてもブログ記事で紹介しています。

 

 

●クーラの公式HPより

 

  

●クーラ FBでオペラ初演の告知とメッセージ

 

”私のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演まであと20日。誰もがそれを楽しむことを望んでいるが、人々がそれを好む、好まないは、正当な選択肢だ。しかし、何が起こっても、そこに参加した人たちは常に、「私はそこにいた」と言うことができる...。お見逃しなく!”

 

 


 

 

≪ハンガリー放送芸術協会HPの告知≫

 

 

 

José Cura: MONTEZUMA AND THE RED PRIEST   – comic opera (world première)

Hungarian Radio Symphony Orchestra and Choir (choirmaster: Zoltán Pad)
Conductor: José Cura

Music Academy, Great Hall 2020-01-29 szerda 19:30

(Cast)

The Baron/Motezuma: Matias Tosi
Francisquillo: János Alagi    The Lover/Mitrena: Katalin Károlyi         Filomeno: Zoltán Megyesi
Vivaldi: Donát Varga      Scarlatti: József Gál        Händel: Domonkos Blazsó        
The Nun: Borbála László  The Innkeeper/The Gondolier/The Friar: Róbert Rezsnyák         Teutile/Quintet 1/Woman 2: Nóra Ducza
Fernando/Quintet 2/Woman 4: Bernadett Nagy        Ramiro /Quintet 3/Woman 1: Kornélia Bakos
Pignatta/Quintet 4/Man 1: József Csapó              Quintet 5,/Man 3: Szabolcs Hámori
Woman 3: Katalin Süveges     Man 2: Gábor Pivarcsi
Woman voice: Gabriella Sallay      Man voice/A spectator: Péter Tóth        Stage Manager: Pál Kálmán Könyves

The Orphans:
Bianca Maria: Fruzsina Varga (flute)       Claudia: Melinda Kozár (oboe)     Cattarina: Yoshie Toyonaga (clarinet)
Lucietta: Dóra Béres (trumpet)     Pierina: Ildikó Fazekas (violin)      Margherita: Rita Keresztes (violincello)
Giuseppina: Gerda Kocsis (contrabass)

Organ, harpsichord continuo: Soma Dinyés

 

「モンテズマと赤毛の司祭」 コミックオペラ(世界初演)

2020年1月29日 19時30分~22時

ホセ・クーラ 脚本・作曲

マティアス・トッシ(バリトン) 他
ハンガリー放送交響楽団、合唱団(合唱指導:ゾルタンパッド)
指揮者:ホセ・クーラ

リスト音楽院大ホール ブダペスト 

”ホセ・クーラ自身が、オペラブッファ「モンテズマと赤毛の司祭」の台本を書いた。その出発点は、アレホ・カルペンティエールの幻想的な小説『バロック協奏曲(”Concierto barroco”)』(1974年)であるが、これは明らかに、ヴィヴァルディのオペラ『モンテズマ』の誕生に関するものであり、文学的、そして当然、音楽的な想像力の両方に巨大な想像力を提供している。”

 

 

 

≪リスト音楽院HPの告知より≫

 

 

 

”ここ数年、私は歌のリクエストをあまり受け入れてこなかった。そしてようやく、最初の決断、私が実際にプロのミュージシャンになるために勉強した職業に戻ることができた。これは作曲と指揮に他ならない。”  

(上記の告知記事で紹介されたクーラの言葉) 

 

 

 

≪ハンガリーでのインタビューより≫ 

  

 

 

 

Q、来年1月(記事は2019年公表。2020年1月に初演)、あなたのオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演が、ハンガリーのブダペストにあるフランツ・リスト音楽アカデミーで開催される。あなたはオペラを指揮する。そのオペラを作曲するのに何年かかった? 

A(クーラ)、込み入った答えになるだろう。1987年、私の友人が最初のページに献辞を記した小説をくれた。「この小説にはとても良い台本を見出すことができる」と。当時、私は非常に若く、オペラの経験がなかった。どこから始めればいいのかわからず、あきらめた。

30年後、2017年に、娘が私に尋ねたーー「パパ、図書室を整理しようか?乱雑だから、本を探す必要があるたびに、それを見つけることができない」。蔵書の全体を並べ替えている間に、小さな本が再び出てきた。私はそれを開いて、ある午後、台本の草案を書いた。

私は妻に言ったーー「おお、私は天才じゃないか!午後だけで台本全体を書きあげた」。妻は答えたーー「あなたは間違っている。午後だけでそれを書いたのではなく、30年かかって書いた」。彼女は正しかった。ある午後にその台本を書きおろすには、30年の経験が必要だった。

しかし、私は2017年の夏に2ヶ月でその音楽を作曲した。それを1年半の間、熟成するために落ち着かせてから、オーケストレーションするために2019年に再び取りだした。これで準備は完了したが、初演後にまた調整すべきことがでてくるのは確かだ。こうするのは日常的なことだ。

 

Q、バロック、古典派、ロマン派、20世紀のどの音楽の時代があなた自身の音楽に影響を与えている?

A、私たちの時代の人々は、500年から600年の音楽の偉大な財産を受け継いでおり、幸運だ。ただひとつの時代に影響されていると言うのは非常につまらないことだ。

今日の作曲家の秘密は、過去から受け継いだすべての要素を使用し、それらを組み合わせて、そこから何かを作りだすことだ。オリジナルになる唯一の方法は、すでに発明されたものを発明しようとすることではなく、その経験をすべて大きなカクテルグラスに注ぎ込んでシェイクし、素敵な飲み物を作ろうとすること、そしてあなた自身の他とは違う個性を通してそれを引き出すことだ。それが、結果として作品をユニークにするのに十分だ。

ヨハン・セバスチャン・バッハの後、この世で新しいものは何もない、とモーツァルトと呼ばれる男は言ったが…。

 

 


 

 

インタビューでもふれていましたが、クーラは、50歳になって以降、徐々に歌の公演を減らし、本来の志望であった指揮者、作曲家、そして演出家としての活動の比重を高めてきました。もちろんオペラやコンサート出演など、歌を続けてきましたし、またワーグナーの仏語版タンホイザーへの挑戦や、ブリテンのピーター・グライムズの演出・主演など、歌手としても新たなチャレンジをしながらですが、指揮、演出・舞台デザイン、衣装・照明、作曲作品の上演など、多面的な芸術活動を発展させてきました。今回の新作オペラの世界初演は、こうした多面的な活動のひとつの結晶であり、あらたな大きなチャレンジです。

クーラのオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の原作、アレホ・カルペンティエールの小説『バロック協奏曲』は、日本でも翻訳・出版されていました。現在は入手しにくくなっているようですが、私はサンリオSF文庫の中古本を入手して、読んでみました。決して長くはないのですが、なかなか突拍子もない物語で、時代を超えて話が展開していきます。旅する主人公がイタリアで、ヴィヴァルディとヘンデル、スカルラッティという3人の巨匠と出会い、ヴィヴァルディのオペラ「モンテズマ」が誕生していく様子が描かれています。そこにワーグナーの話がでてきたり、ルイ・アームストロングのトランペットが音楽を奏でたりと、意表を突くドタバタ喜劇のような展開をしながら、南アメリカのアステカの王モンテズマと、アステカを征服し滅ぼしたスペイン、植民地宗主国の存在、こうした歴史的な構造も示されていきます。作者カルペンティエールはキューバ出身、音楽の素養が深く、音楽学者でもあり、作家、評論家だったそうです。このような複雑で少し難解、幻想的で魅力的、そして不思議な物語を、クーラはどのような脚本に仕上げ、どのような音楽をつけたのでしょうか。放送や映像化を期待せずにはいられません。

 

 

 

これらの題材となったヴィヴァルディのオペラ「モンテズマ」は、楽譜が行方不明になって幻の作品となっていたのが、最近になって2002年発見されるという、ドラマティックな経過をもっているようです。ネットに、上演された「モンテズマ」の録画がありましたのでリンクを掲載しておきます。

 

Motezuma - Vivaldi 1-2

 

Motezuma - Vivaldi 2-2

 

 

*画像はハンガリー放送文化協会のHP、クーラのFBなどからお借りしました。

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ホセ・クーラ、2019から2020年へ、年末年始のごあいさつ

2020-01-03 | お知らせ・その他

 

 

あけましておめでとうございます。2020年が激動する世界と日本にとって少しでも良い年になることを、平和と安定、社会的公正の実現へ前進できる年になることを、心から願っています。今年もよろしくお願いいたします。

 

さて、昨年末には、ホセ・クーラが2020年11月に14年ぶりに来日する(!?)という大サプライズ情報が、びわ湖ホールの2020年度プログラム発表で明らかになりました。前回前々回の記事でご紹介しましたが、バーリ歌劇場日本ツアーでのヴェルディ・アイーダです。1月3日現在、まだクーラの公式カレンダーは更新されていないため、まだ半信半疑ですが、続報を楽しみに待ちたいと思います。

バーリ歌劇場来日ツアーは、びわ湖だけでなく、全国各地で12公演ということもイタリアで報道されていました。いま日程が判明しているのは、11/14びわ湖、続いて11/16の浜松も公式に発表されています。キャストはどうなるのか、クーラはびわ湖ホールのほかにも歌うのか、もし歌うならそれはどこか、とても気になります。ぜひキャンセルなく来日が実現してほしいと思います。

 → 2020年1月初旬時点での、バーリ歌劇場ツアーとクーラのびわ湖ホール出演に関するブログ記事

 

今回は、年末年始に更新されたクーラのフェイスブックでの投稿を紹介したいと思います。また昨年の末から始まったハンガリーでのチャリティー活動など、最近の活動に関する情報もあります。12/31のモスクワでの大晦日コンサートについても沢山の情報が入ってきていますが、それについてはまた後日、まとめて紹介する予定です。

 

 


 

 

 

 ≪年末年始のメッセージーークーラのFBより≫

 

モスクワ音楽院大ホールでのジルベスターコンサートのため、新年をロシア・モスクワで迎えたホセ・クーラ。フェイスブックに「赤の広場」でのカウントダウンと花火の様子を掲載してくれました。一家そろってモスクワに行き、リハーサルやコンサートで多忙だったとは思いますが、家族で年末年始を過ごすことができたようです。

 

●FBに掲載された新年のごあいさつ

 

”さようなら2019-こんにちは2020。今夜00:00にクレムリンの上空の花火ーーモスクワからのHappy new year!”

 

 

 

●モスクワに向かう前(12/28)に掲載されたメッセージ

 

親愛なる皆さん。私は大晦日コンサートのリハーサルと公演のため、明日モスクワに向かう。コンピューターは持っていかない(家族に殺されるので...)。

2020年が皆さんにとって、最高の年になることを願っている。
2020年が、多くの意味で、私たちに非常な困難を与えるだろうことは秘密ではない。だからこれまで以上に、私たちは皆一緒に強くなり、お互いを見守り、互いに助け合い、お互いを守り、喜びを与えなければならない。そして、とりわけ悲しい瞬間にともに居なければならない。

いつものように。そう。しかし2020年は、「いつも通り」の年ではないだろう。だから、愛のコミットメントを増やす必要がある。
人類はそれを必要としている。さもなければ、影から、私たちの存在を彼らの利益のために操作している者が勝つ。

Peace & Love 
José

 

  


 

 

≪ハンガリーでのチャリティー活動≫

 

2019年秋から、ハンガリー放送芸術協会の首席客演アーティストに就任したクーラ。さっそく、多彩な活動が展開されています。コンサート、レコーディング、そしてクーラ作曲の新作オペラの世界初演の日(2020/1/29)も迫っています。そして年末の時期には、いくつかのチャリティー活動にも参加しました。 

 

 

●未熟児で生まれた子どもたちを支援するキャンペーンへの協力

 

公共メディアと慈善団体による、早産などで特別な治療を必要とする赤ちゃんを支援するチャリティ活動。クーラが協力を呼びかける動画に出演しています。ハンガリー語の吹き替えが被さって、クーラが何を言っているのか理解できないのは残念です。

 

 


●チャリティーオークションへの出品

 

クーラが出品したギフトボックス。ホセ・クーラとオリガ・ボロディナが出演、C・デイヴィス指揮のサン=サーンス「サムソンとデリラ」 (全曲)2枚組CD、1996年にロンドン・ロイヤルオペラハウスでのサムソン出演時にクーラが着用したかつら(!)、メッセージカード付、サイン入りです。すでに落札されています。

 

 

 

●”音の彫刻”オークション

 

クーラがコンサートなどで何回も出演している音楽ホール、Mupa(ブダペスト芸術宮殿)を中心としたチャリティ活動のようです。ホールに出演したアーティストの音楽のイメージを、著名な彫刻家が木工作品にして、それをオークションにかけて販売するという企画らしいです。売上金は、ある貧しい地区において木工工場で雇用を増やす事業に使われるとのことです。

クーラをはじめ、指揮者のアダム・フィッシャー、イヴァン・フィッシャー、ズービン・メータ、歌手・演出家のローランド・ヴィラゾンら、多くのアーティストが参加して、自分の音をイメージした作品にサインをしました。実は少し前までは、それぞれのアーティストのページが公開されていて、そこにアーティスト紹介と各人による音楽ファイルが掲載されていたのですが、現在はアクセスできなくなっています。

写真は、”音の彫刻”にサインするクーラと、完成した彫刻です。

 

 

 

 


 

 

今回は、昨年末のハンガリーでのチャリティ活動について紹介しましたが、クーラはこれまでもチャリティに熱心で、可能な限り協力してきました。アーティストとして社会への関心を常にもち、自由と平和と社会的公正を求めるクーラにとって、当然のことなのだと思います。

そのことは、年末のメッセージにもよく表れています。激動の世界、困難な課題は山積し、紛争、難民問題、貧困、気候変動と環境破壊・・そのもとで多くの人々が苦しんでいます。クーラはそういう世界だからこそ、愛と連帯、互いの協力と尊敬を忘れず、世界を変えるチャンスを求め続けることを訴えているのだと思います。

今年は16年ぶりに、クーラの来日が実現するかもしれません。びわ湖ホールの公式発表によると、オテロでもサムソンでもなく、またオペラアリアコンサートやアルゼンチン歌曲のリサイタルでもなく、なんと初来日時の演目であるアイーダの青年将校ラダメスです。57歳のクーラが、円熟の解釈と表現力を久しぶりの日本で見せてくれるのを、そしてそれが本当に実現することを、楽しみに待ちたいと思います。

 

 

*画像はメディア、関係機関のFB、動画などからお借りしました。

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