人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2019年 ホセ・クーラ、ブダペストの国際的写真展からの招待

2019-11-24 | 写真を撮る

 

 

 

ホセ・クーラは、今年(2019年)の10月、ブダペストのアートフェスティバルに招待され、写真のブースを出展しました。今回はその様子と、クーラの写真についての思いやハンガリーでの今後の活動について、インタビューから抜粋して紹介したいと思います。

クーラは少年の頃からカメラに親しみ、プロのミュージシャンとして活動しながら、趣味として写真を楽しんできたといいます。そして出版社に勧められて2008年に写真集を出版、またコンサートの際に、関連企画として写真の個展を開催したこともありました。(クロアチアのドゥブロヴニクザグレブでの写真展を以前の記事で紹介)

今回は、これまでの写真展と違って、プロの写真家、美術家のための展示・即売会のようです。「アートマーケット・ブダペスト」という名称のこの展示会は、「中央ヨーロッパ最大のアートフェアであり、30か国の代理店から約500人のアーティストによる数千の作品を展示している」と紹介されています。写真、絵画、彫刻などの現代アートの展示に加え、様々なパフォーマンス、多くのワークショップなどが行われたようです。

 

 


 

 



≪アートマーケット・ブダペストの様子≫

 

なぜクーラがこのアートフェアに招待されたのかについて、写真展のリーフレットには、アートマーケット・ブダペストの創設者でありディレクターであるAttila Ledenyiの言葉が以下のように書かれていました。

「私たちが最初に注目したのは、ホセ・クーラの写真作品の品質であり、情熱、そして美しさである。アートフォト・ブダペストは、さまざまな高品質の写真を訪問者が利用できるようにするとともに、写真の芸術を新しい聴衆に提示することを目的として設立されており、それらをすぐに聴衆と共有したいと考えた。最高品質の音楽を愛する人々にとって、アートフォトブダペストでのホセ・クーラの写真作品の展示は、必見の体験になるだろう。」

 

●クーラがFBで紹介した写真展のリーフレット 

 

 

●アルゼンチン大使館のFBで紹介された会場の様子

クーラの作品ブースの入口のようです。

展示の様子

●クーラの展示を紹介したスペイン語ニュース

 

 

フェスティバルのFBより、今年を振り返って

アートフェスティバルの様々な写真が紹介されています。規模の大きさ、多彩さがわかります。

 

 

 


 

 

≪インタビューより≫

 

ーーホセ・クーラの音楽世界がビジュアルに


ホセ・クーラは何年もの間、世界で最も著名なテナーの1人であり、現在56歳、彼は、写真に関心をもち、ブダペストのアートマーケットで初めて作品を展示している。

オープニングイベントで、クーラは、彼の作品の背後にある哲学は、「あらゆる表情の豊かさにおいて」人間に集中していると説明した。「国や都市を区別しない。私によって自発的な瞬間を盗まれた人物の、その背後にある人生の物語を理解しようとしている」と、クーラは語った。

アートマーケット・ブダペストでの展覧会「アートフォト・ブダペスト」の一部として、すべて白黒の写真8枚が展示され、10月6日まで訪問者に公開される。2008年に、クーラは「ESPONTÁNEAS(自発的の意)」というタイトルで写真を集めた本を出版した。

「展示されている写真は、私の本『ESPONTÁNEAS』に収録されており、そのほとんどすべてが、90年代にライカとキヤノンのカメラを使用して撮影された」とクーラは言う。

彼の写真への情熱は、45年前に母親が彼に、今でも使えるコダックを贈ったときに始まった。しかし、クーラは、自分をプロの写真家とは考えてはいない。

「今まで、写真は単に情熱であり、世界を分析する方法であり、写真が発達させる観察力を、私の役柄の研究と特徴付けに適用するためのものだった」とアルゼンチンのアーティストは付け加えた。「私の写真には、私の音楽と同様に、人間的感情への傾倒がある。私は芸術を単純な技術的演習とは考えていない。それが私の心を動かさないなら、それは私には合っていない。」

(「laht.com」)

 

 

 

ーーホセ・クーラ 「写真は子どもの頃から私の情熱だった」


第9回アートマーケット・ブダペストは、10月3〜6日、ミレナリス展示ホールで特別なアートを取り揃えて訪問者を待っている。イベントの一環として、伝説的なオペラ歌手であるテノールのホセ・クーラが、ブダペストで初めて彼の写真芸術を披露する。ハンガリー放送芸術協会の最初の常設ゲストアーティストである彼に独占インタビューを行った。


Q、歌、指揮、作曲、演出、教育活動、そして写真撮影。自分をどのようなアーティストと定義する?

A(クーラ)、著名な雑誌がかつて、私について、”真に博識、真のルネッサンス精神”と書いたことがあった。しかしあなたが私に尋ねるなら、芸術などの人間活動について不必要な定義を探している、と私は答えるだろう。なぜなら、定義することは、まさに抑圧に最も近いものだからだ。何世紀にもわたる苦い経験を通じて、私たちは、アーティストを箱に入れることは無用であるだけでなく、危険でもあることを学んだ。歴史において、勇敢に冒険した人々は常に避けられた。


Q、10年以上前、2008年にその写真集「Espontáneas」がリリースされたが、写真アートはおそらく読者の大半にとって最も魅力的なもの。写真をどうやって見つけた?

A、これは言わなければならないが、私はプロの写真家ではない。また、少なくともこれ以前にそうだったことはない。そしてもちろん、神は、ブダペスト・アートマーケットの後に何が起こるであろうことを知っている。

写真は、私の子ども時代からの燃える情熱だった。後に、歌手・俳優としてのキャリアを始めたとき、写真によって、自分のまわりの世界を別の方法で観察し、受け入れることによって、自分の視野をさらに広げることができることに気付いた。スイスの出版社が私の個人的なコレクションに興味をもち、私の写真を公開したいと考えたために、私の写真集は11年前に公開された。


Q、ブダペストのアートマーケットへの出展は、どのような出会いから?

A、フェアの主催者も私の写真集を見て、私に、展示することに興味があるかどうか尋ねた。私はプロの写真家の世界に入るつもりはなかったが、こうした人々の信頼を光栄に思った。そして私は「なぜ試そうとしてみないか?」と考えた。


Q、ハンガリーおよびブダペストと特に密接な関係を持っているが?

A、私は2000年からハンガリーで仕事をしており、多くの都市や劇場で演奏している。ハンガリーのアーティストには、私に対するアーティストとして、また個人的にも、信頼と敬意を通じた強い絆がある。私はサルバヴィータ財団(障がい者の雇用支援に取り組む)と緊密に連携しており、ヴェスプレーム市の名誉市民であり、そして今シーズンからは、ハンガリーの放送芸術協会の最初の常設ゲストアーティストとして働いている。


Q、2020年1月、リスト音楽院の大ホールで、自ら作曲した新作オペラである「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演を指揮するが?

Q、1987年のある日、友人が本を私に手渡して、これはオペラだと言った。当時、なりたての作曲家として私はそれを試してみたが、当時の私には、オペラを作るための武器と経験がなかった。この本は、私がホコリを被ったコレクションの中から再び見つけ出すまで、30年間、私の書斎に置かれていた。

あっと言う間の仕事だった。当時できなかったことを、経験を重ねた作曲家、パフォーマーとして、私は短期間で達成することができた。

それはコメディ、英語で「マッド・キャップ」(衝動的な、向こう見ずなの意)とわれるような作品が生まれたネオバロックの「タッチ」とモダンなリズムを使って、室内オペラのように作品を書いた。あなたは私がどれほど興奮しているか想像できるだろう。作曲を始めてから35年後、これが私の最初のオペラだからだ。リハーサルを始めるのが待ちきれない。ハンガリー放送交響楽団のような素晴らしいチームでこれを行うことができることは特別な誇りだ。


Q、今シーズンを見てみると、歌い、作曲し、指揮をする。将来はどうなる?1つの領域にもっと焦点を合わせる?それとも多様性を保つ?

A、多様性は喜びだ。そして、ルーティンはアーティストにとっての終わりの始まりだ。

(「papageno.hu」)

 

 

 

 

 


 

 

FBで紹介されたパンフレットで、クーラは、「写真は45年間にわたって私の情熱であり、母が私に最初のカメラをくれた。今も持っているコダックで、それはまだ完全に機能している。初めの頃は、写真が、新しい役柄を準備する時の大好きなツールの1つになるとは思っていなかった。写真がフォトグラファーの内部で発展させる細部への注意の度合いは、それが私の仕事に不可欠になるまで、私が理解していなかったものだ」と語っていました。

写真はあくまで趣味だったといいますが、それが様々な形、意味合いで、クーラの芸術活動の豊かさ、深さを支えるものの一つになってきたのでしょう。それは作曲、指揮、演出・舞台デザインなど、クーラが歌に加えて多面的な芸術活動を行い、それらが相互に影響しあっていることと同じです。ルーティンには耐えられず、それはアーティストとしての終わりにつながるとまで言うクーラ。この点はいろんな意見もあることでしょう。クーラ自身も、長年、「もっと歌に専念すべき」と繰り返し批判され、「なぜいろんな活動をするのか」と問われ続けてきました。もちろん、1つの分野にひたすら専念し、道を究める生き方もまた尊く、同時に、クーラのように、「やむにやまれぬ」情熱にかきたてられ、さまざまな活動にチャレンジしていく姿もまた、好奇心とエネルギーにあふれたアーティストとしての正直な生き方なのだと思います。

この12月5日で57歳(1962年生まれ)になるクーラ。Operabaseなどに表示されるようなオペラ出演はかなり減らしていますが、毎日、仕事のスケジュールでいっぱいのハードワークな毎日を送っているようです。健康の維持を願うばかりです。

 

 

*画像はクーラや関係者のSNS、HPなどからお借りしました。

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2019年 ホセ・クーラ、ヴェルディのレクイエムを指揮 with ハンガリー放送交響楽団

2019-11-17 | ハンガリー放送芸術協会と指揮・作曲・歌 2019~

 

 

ホセ・クーラは2019年の秋から、ハンガリー放送芸術協会のゲストアーティストとしての活動を開始しています。すでに紹介しましたが、11月4日に開催されたハンガリー事件犠牲者追悼コンサートで、協会傘下のハンガリー放送交響楽団を指揮し、ベートーヴェンのエグモント序曲、クーラ作曲Modusなどを上演しています。

*その時の様子と動画のリンク → (録画・ライブ放送告知編)2019年 ホセ・クーラ ハンガリー事件の犠牲者追悼コンサートで指揮

そしてクーラが参加した初の本格的なシーズンプログラムとして、11月13日、ブダペストの芸術宮殿(ベーラ・バルトーク国立コンサートホール)で、ヴェルディのレクイエムのコンサートが行われました。

今回は、そのリハーサルや本番の様子、当日インターネットラジオで生中継され、現在もオンデマンドで聞くことができますので、そのリンクなどを紹介したいと思います。

 

 

 ●ハンガリー放送芸術協会のHPより

 

VERDI: REQUIEM - CONDUCTED BY JOSÉ CURA

Müpa - Bartók Béla National Concert Hall

2019-11-13 szerda 19:30

Verdi: Requiem

Artists: Hungarian Radio Symphony Orchestra and Choir
Eszter Sümegi, Erika Gál, Attila Fekete, András Palerdi

Conductor: José Cura

 

コンサート用パンフより(画像に元ページリンク)

 


 

 

 ≪当日の様子≫

当日は、美しいブダペスト芸術宮殿いっぱいに観客が入り、コンサートは大きく成功したようです。クーラはFBで、 "ライブで起こりうる小さなミスはあったが、本当に楽しいパフォーマンスだった"と報告していました。 


●公演の直後のクーラのFB投稿

 

 

●ハンガリー放送芸術協会のFBより

84枚の写真が掲載されています。観客でいっぱいの美しいホール、クーラの指揮姿、終了後、嬉しそうなソリストの様子、共演者を労うクーラの姿など、たくさんです。右上のFマークをクリックすると直接FBで見ることができます。

 

 

 

 

 

 ≪バルトークラジオで生中継とオンデマンド録音≫

 

当日は、ハンガリーのネットラジオ、バルトークラジオで生中継されました。音質もよく、トラブルなく中継されてほっとしました。

いつまで可能かわかりませんが、現在はオンデマンドで聞くことができます。ただし日本とハンガリーは8時間の時差があるために、クーラやハンガリー放送芸術協会がFBでシェアしたリンクは、動作しなくなっているようです。

興味ある方は、少し面倒ですが、下の画像に貼ったリンクから、プログラムページを見てください。

 

①画面の上の方はテレビの番組表、下にスクロールするとラジオの番組表があります。

②並んでいる日付から11月13日をクリックし、バルトークラジオの列を見つけてください。


③バルトークラジオの列を下にスクロールして、19:35のボタンを押して下さい。すると番組説明と黄色いバナー(「ラジオを開始」とハンガリー語で書いてある)が現れます。


④黄色いボタンを押すと、次のようなプレーヤーが新しいウインドゥで現れます。自動的に開始します。

↓ ご覧のように、すでに時間がずれていますし、番組名も別のものになっていますが、大丈夫です。このまま聞いてください。

初めは男性の解説の音声がしばらく続き、拍手、チューニングの音と重なります。3分過ぎくらいに拍手が大きくなり、4分半過ぎくらいから始まります。

ここで注意していただきたいのは、一時停止、ストップのボタンを押したり、飛ばすためにバーを動かすと、なぜか再度、再生した時に別の番組になってしまうことです(!)。たぶん時差の関係だと思うのですが、とにかく一度聞き始めたら最後まで聞き続けなければなりません(笑)。もし良い解決方法をご存知の方がいらしたら、ぜひ教えてください。

まずは一度、録音してから聞くことをおすすめします。音質はとても良好だと思います。また直接リンクを張ると、そのリンク先がまた別番組に切り替わってしまうため、ご面倒ですが、バルトークラジオの番組表から聞いていただくのが一番確実のようです。

 

 

 

≪リハーサルの様子≫

●ハンガリー放送芸術協会のFBに掲載されたリハ風景

ジェネラル・リハーサルのようです。この時期、ハンガリーでも気温が下がっていると思いますが、相変わらずクーラは半袖Tシャツ一枚です。

 

 

●ハンガリーのテレビM5で放送されたニュース動画、クーラのショートインタビューとリハ風景

こちらはテレビのニュース動画で、リハーサルの様子、クーラのインタビューが収録されています。ハンガリー語通訳が被さり、聞き取りにくいです。

 

 

≪インタビュー動画≫

同じくテレビM5のインタビュー番組にクーラが出演した際の録画です。約8分くらいで、とても画質が良いです。

リラックスした雰囲気で、今回のレクイエムのことやハンガリーとの協力のこと、また来年のクーラ新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」のことなども語っているようですが・・。クーラは英語、ところがこれも、ハンガリー語の通訳音声が被さって、残念ながら、ほとんど何を言っているのか聞き取れません。せめて英語の字幕でもあれば助かりますが、興味深いインタビューだけに本当に残念です。

 

 

 

≪以前の録音、動画より≫

クーラはこれまでもヴェルディのレクイエムを指揮しています。ただしテノールとして全曲歌ったことは、私の調べた範囲ではないように思われます。その代わり、テノールの有名なソロ"Ingemisco" をローマの教会でのリサイタルで歌った動画があります。本当に美しく、魅力的な歌唱です。

 

●クーラ指揮 2008年 VERDI REQUIEM :"LIBERA ME.."  live recording 2008.feb

 

●クーラ独唱 1999年 VERDI REQUIEM :"Ingemisco" 1999 

 

 


 

ホセ・クーラがハンガリーで指揮したヴェルディのレクイエム、動画はありませんが、美しい写真とラジオ放送で見聞きすることができて、本当にうれしかったです。

あらためて、久しぶりに聞いたヴェルディのレクイエム、あちこちにアイーダやドン・カルロ、リゴレットなど、ヴェルディの傑作オペラを想起させるメロディが沢山あります。美しく、切なく、時に雄弁、怒り、悲しみ、嘆き、祈り・・あらゆる感情が音楽で表現されています。そして最後は、デズデモーナの祈りから、つながっていく、まるでオテロの死。全編にわたり、ヴェルディの描く人間ドラマそのものです。ヴェルディのドラマティックな役柄のプロフェッショナルとして活動してきたクーラが指揮するには、本当にぴったりだと思いました。

私には、正直なところ指揮の良し悪しは良く分からず、評価することはできませんが、情熱的で、よく歌い語るヴェルレクだったと思います。ドラマティックに人間的な感情にあふれ、ダイナミックで、そして温かみを感じます。もしかすると、きっちり構築された精緻な演奏を求める人、宗教曲としてのスタイルを重視する方には向かないかもしれません。しかし私にはクーラ指揮の今回の演奏は、クーラがアーティストとして長年追求、探求してきた、ヴェルディの人間ドラマを凝縮したもののように思いました。

この秋から始まったホセ・クーラとハンガリー放送芸術協会とのコラボレーション。すでに2回のコンサートが、動画とラジオでそれぞれ生中継され、オンデマンド視聴もでき、ファンにとって本当にありがたいことです。またクーラは、自身が作曲したオラトリオ「この人を見よ」を、同時並行でレコーディングしています。クリスマス頃には、何らかの形でリリースされるようです。当初の告知では、クーラ指揮、テノールにラモン・ヴァルガス、メゾにカサロヴァという国際的なキャスティングのようです。やはり、ラジオ、テレビ、オーケストラ、合唱団を傘下におくハンガリー放送芸術協会とのコラボは、これまでクーラがチャレンジしたくてもできなかったことを次々に実現させるチャンスとなっているように思います。もしかすると、来春のクーラ作曲の新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」も、何らかの形での放送が期待できる?!かもしれません。楽しみです。 

 

*画像は、クーラや主催者のFB,HPなどからお借りしました。

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(旅行編)2019年 ホセ・クーラ、上海でオペラアリア・コンサート

2019-11-06 | コンサート ②

 

 

ホセ・クーラの10月20日上海でのオペラアリアコンサート、これまで(告知編)、(当日編)、(インタビュー編)でご紹介してきました。

今回は、クーラのコンサートを主目的に、わずか2泊3日の旅でしたが、上海へ行ってきた様子をまとめてみました。期間が短すぎて、旅行記とはとてもいえないものですが、はじめての中国・上海、その一端を駆け足で見た印象を書いてみたいと思います。 

 

 

 

東シナ海に面する中国沿岸の都市、上海は、居住人口が2400万人ともいわれる巨大都市。羽田から約3時間、時差1時間という近さですが、この地図を改めて見てみると、日本の九州からは、単に距離的な面では、東京に行くよりも近い位置にあるのですね。

今回、クーラのコンサートが最優先だったので、チケットが入手できるかどうかが、まず一番の課題でした。実はここが、今回の旅行で苦労した点でした。

航空券、ホテルの手配も、チケットが確保できてからと考えていました。ところが、10月20日のコンサートで、会場の上海東方芸術中心のHPや、中国上海芸術祭のHPには告知が出ているのに、チケットの売り出しは、8月後半に入っても始まりません。中国の場合、販売開始が遅めというのは情報として耳に入っていましたが、同じ会場の10月27日のウィーンフィルのコンサートのチケット販売が始まっても、まだクーラのコンサートは販売されません。ようやく9月に入ってからだったと思いますが、発売が開始され、大喜びしたのも束の間。(告知編)(当日編)でも書きましたが、結局、中国の銀行口座を持ち、中国の携帯電話がないと、公式HPでも、プレイガイドでも、直接ネットで購入することができないことがわかりました。

結局諦めて、ネットで見つけたチケット仲介業者に問い合わせたものの、返事が来ない・・。別の業者に連絡して、チケット手配が完了したのは、9月半ばを過ぎていました。手数料はかかりましたが、幸い、希望の席を取ってもらうことができたのはうれしかったです。それからあわてて航空券とホテルを確保。中国の場合、短期の観光の場合はビザが必要なく、助かりました。

 

 

 ≪羽田~上海≫

出発の前の週は台風19号の影響で各地で大災害がひろがり、出発当日も、東京は大雨。不安でいっぱいでしたが、幸い、今回の旅行に直接の影響はありませんでした。台風15号による千葉県の被害をはじめ台風・大雨災害で被害に遭われた方々には、心からお見舞い申しあげるとともに、一日も早く日常生活が取り戻せるように願っています。


●雨の羽田空港

 

●到着した上海

羽田からの直行便は、行きは、上海市の中心部に近い、市西部にある虹橋空港に到着。第一ターミナルです。入国審査では、電子化したシステムで手の指のすべての指紋が採取されます。とはいえ意外とスムーズにすすみました。 

 

上海は快晴、3日間とも雨はなく、晴れと曇りで助かりました。気温は日本とほぼ同じくらいということでしたが、雨続きの天候不順の日本から行った私にとっては、日中、暑いくらいでした。空港から地下鉄の入口に向かう通路で、金木犀のとてもよい香りが漂ってきました。上海市内のあちこちで香っていて、調べたら、中国が原産地で、日本には江戸時代に渡来したとのこと。どうりで上海に巨木が多いわけです。 

 

≪両替と支払い方法≫

到着後、まずは両替です。今回、出国時に持って出たのは日本円だけ。虹橋空港で手続きを終えて出たところの右側にある両替所で、とりあえず最低限の両替をしました。1元は約16円くらいということですが、手数料もかかるので、実際は?? 

事前に読んだ情報では、中国では、現金の支払いは非常に少なくなり、ほとんどがスマホによる決済になっているということで、クレジットカードも日本で通常使うようなブランドは使えないこともあると書かれていました。現金もカードも使えなかったらどうしようと、このことも悩んだ点でした。事前に、中国で使えるという銀聯カードも準備しました。クレジットカードも数種類、持っていきました。

結局は、コンビニ、スーパー、土産物店、レストランなど、だいたい、そのうちのどれかで支払いができました。地下鉄構内にコンビニのファミリーマートが設置されていて、そこでの買い物も、現金、カードとも大丈夫でした。

実は一番苦戦したのが、自動販売機。お金の支払い方、入れ口が分からなかったり、タッチの仕方が悪いのか動作しなかったりと、最新の機械なのですが、結局、一度も買うことができませんでした。

 

 

  

≪便利な上海地鉄(地下鉄)≫

 

上海市内には地下鉄の路線網が張り巡らされていて、どこに行くにも便利です。事前の情報で、毎回支払う他に、プリペイドカード、1日券、3日券などがあるということでしたので、3日券を購入することにしました。係員のいる窓口、改札横のボックスのようなところで購入できます。虹橋空港第一ターミナルの地下鉄10号線入口で買うことができました。3日乗り降り自由で45元。

改札でタッチするだけでとても便利なのですが、タッチしたあと、バーを回転させて入場する仕組みで、大きい荷物を持ってもたもたしていると、うまく通れないことがありました。それで何度もタッチしたためかエラーマークが出て、大慌て。親切な若い女性が、助けようと英語で話しかけてくれ、こちらは英語も十分理解できないのですが、何とか通ることができました。

各路線は複雑に交差していて、それぞれ乗り換えでき、また表示も分かりやすいので、迷うことはありませんでした。

 

●上海市内の地下鉄路線図 (上海地鉄HPより 画像をクリックすると公式HPにリンクしています)

 

 

 

●立派な駅構内

上海の地下鉄は、利用したどの駅もホームドア完備、到着までの残り時間を秒単位で知らせるパネルも設置されていました。

駅の設備は清潔できれいに整備されているのですが、日本と大きく違うのは、改札の前に必ず手荷物検査があることです。小さなバッグ類は免除のようですが、リュックや買い物袋、トランクなどを毎回持ち上げて金属探知機を通すのは、ちょっと大変でした。

また一番困ったのは、駅のトイレ。どこもちゃんと整備されていて、自動洗浄機能や手洗いも自動水栓だったりと現代的な設備なのですが、なぜかペーパーはなし。日本でもしばらく前は、駅や公衆トイレにはペーパーがなかったのを思い出しました。ガイドブックなどにはその情報が見当たらなかったため、ポケットティシュ数個しか持って行きませんでした。その紙を買ったり、水や食品を買ったりと、駅構内のコンビニにはお世話になりました。

不思議だったのは、車両内の座席が、日本のようなクッションではなく、プラスティック系のベンチのような固いものだったこと。でも車内の雰囲気は日本と変わらず、スマートフォンを見ている人が多く、若い人たちは皆、おしゃれな印象でした。

 

●地下鉄の乗車券の各種販売機 3日券を買ったので、結局使わず

●地下鉄車内の行き先掲示板

 

 

≪上海動物園≫

 

上海虹橋空港から地下鉄10号線でひと駅と、とても近い上海動物園。上海動物園駅の出口すぐに、動物園の入口があります。

当初、行くつもりはなかったのですが、ガイドブックなどで、金魚の展示コーナーがあることを知り、鯉、金魚などに子どもの頃から親しんできた私としては、これは是非とも見ておかなければと(笑)。パンダもいますし。

地下鉄駅から上がってすぐ先に、チケット販売コーナーがあります。大人1人40元、意外にそれなりの金額です。

空港から大きな荷物を持ったまま行っても大丈夫。正面入り口を入ってすぐ右奥のツーリストサービスセンター(下の写真右の建物)の中に荷物預かり所がありました。ただし外部から入れるこのセンターの表入口ではなくて、動物園の入場門を入ってから、同じ建物の裏手に回る形です。1個あたり2元とか3元くらいだったかと思います。夕方4時半までと言われました。

 

 

 

●広大な園内

とにかく広大な敷地、動物の種類の多さを誇る上海動物園。面積は、日本の多摩動物公園の約1・5倍の70㌶超、飼育動物も約620種、7,000頭を飼育しているそうです。上野動物園が約350種、2,500頭だそうですので、上野と比べても、さらに多種多様です。 

 

●金魚のコーナー 金魚楼

金魚は中国原産とのことで、いろんな種類が、野外の池や水槽、屋根付きの半分屋内におかれた水槽の中に多数展示されています。

野外におかれた沢山の巨大水柱には驚きました。ここに紹介した写真はそのごく一部です。日の光を浴びて、きらきら光る多数の水槽が置かれ、そのなかで巨大でカラフルな金魚が泳ぐ様子は、空中浮遊のようで、不思議な印象でした。 

こういうオブジェのような水槽が10個?ほど、野外に

ユニークな水泡眼

 

●自然豊かな園内

広すぎて、駆け足でざっくり回っただけなのが残念ですが、井の頭公園のような大きな水鳥のいる池や、代々木公園のような広場など、緑が沢山の自然豊かな園内です。ミニ遊園地もあって、子どもたちが遊んでいました。各所に売店があり、中国風のおでんやフランクフルト、トウモロコシ、アイスクリームなどを売っています。カップ麺を食べている人も多く見かけました。

 パンダは中国でも人気で、人だかりができていました。ただし、なかなかこちらを向いてくれず、かわいいおしりを見ました。

その他、とにかく広大な敷地に、沢山の動物、鳥類、爬虫類・・とても回り切れません。そのため園内を走る乗合バスのような乗り物も人気でした。とにかく体力を使い果たすわけにはいかないので、全部回るのはあきらめて、早々に引き上げました。

 

≪上海の普通の街並み≫

市の中心部から少し離れた、宿泊したホテル最寄りの地下鉄駅周辺の様子です。比較的古い街並みと、高層の新しいビルが混在しています。道路は車の交通量も多いうえに、車線の両脇は、大量の自転車とオートバイが混在して走っています。面白いと思ったのは、ほぼすべてのバイクが電気のモーターで走っているようで、走行音がほとんどしないこと。排出ガス規制のために電動化をすすめているのでしょうか。なぜ日本では電気バイクが普及していないのか不思議です。そのバイクと自転車が競うように走っている様子、また交差点ではそれらが入り乱れるのを見て、とても私には、恐ろしくて上海で運転はできないと思いました。

 

何気なく彫刻やオブジェのようなものが、街角に。

雰囲気のある路地

夜の住宅街。高層アパートの前にはびっしりと路上駐車。車を見てみると、ベンツ、BMW、Audiなど、欧州の高級車が並んでいます。日本車は、私が見た限りでは少数でした。

駅前をはじめ、あちこちにショッピングモールのようなビルが。日本のユニクロや無印などのお店が入っているところも。買い物したスーパーには、日本のお菓子が沢山売られていて驚きました。

 

 

≪豫園=よえん≫

上海の伝統的な中国庭園として有名な豫園。ところが残念なことに10月いっぱいは閉園でした。そのため、周囲の商店街でお土産を買ったり、昼食をとったりして終わりました。

豫園の地下鉄駅を降りると、中国風の建物と現代的な高層ビル、工事中の建物などが混在しています。日曜日ということで、非常に大勢の人が豫園の方向に流れていきます。豫園の庭園を取り巻くように作られている豫園商城と呼ばれる大きな商店街がお目当てなのでしょうか。

豫園商城の入場門。内部は、小さな路地が迷路のように広がり、ところどころに広場があって、どこを歩いているのかわからなくなります。ぐるぐる同じところを回って、また同じ広場に出てきたりと、何度もうろうろしてしまいました。

とにかく人でいっぱいです。有名な行列の絶えない小籠包のお店の前も通りましたが、結局、並ぶのはやめてしまいました。お土産を少し買いました。

お昼は、3階建てのすべてのフロアーが食堂になっている、カフェテリア形式のお店で。とにかく色とりどり、各種、沢山の料理が並び、そこから好きなものをトレイにとり、最後にまとめて会計をする仕組みでした。美味しそうなものがお手頃の価格で表示されていて、どれも食べてみたいのですが、意外に一皿の量が多く、結局、ほんの数皿だけ、ようやく食べきりました。周りを見渡すと、中国の人らしき家族やカップルが、大量の料理を運んできて食べています。後から、あれも食べてみたかった、これも・・と思い出してしまいましたが、大勢でいかない限り、とても無理でしょうね。

 

≪南京東路~外灘≫

上海でいちばんの繁華街、まるで巨大な銀座のような南京路。南京東路の地下鉄駅を出て、500メートルほど歩いて、かつてイギリスの租界時代の建物が並ぶ外灘地区をめざします。

 


通りの向こうに見える、高層ビル群

外灘の洋風近代建築群

 

外灘の黄浦江の河畔は、土手の上が広い遊歩道のように整備されていて、外灘地区と対岸の高層ビル群が立ち並ぶ浦東地区を見渡すことができます。大勢の観光客が来ていました。旅行者向けの案内所や公衆トイレも整備されています。飲み物の屋台もありますが、冷やさないのが中国風らしいです。

黄浦江の沿岸に並ぶ高層ビル群

 

≪上海~羽田≫

帰りは、虹橋ではなく、上海市東部の新しい浦東空港からでした。地下鉄の3日券を買っていたので、2号線に乗って1本で行けると思い、のんびり地下鉄で向かいました。ところが下調べが不十分で、思った以上に遠かった・・。だんだんと駅間が長くなり、地上に出て、その風景も田園風景に。途中から浦東までリニアモーターカーが走っていますが、そちらに乗り換えれば、かなり早いようです。時間がだんだんおしてきて、かなり焦りながら、到着。第1ターミナルビルからです。

空港で、最後の残った中国元を使ってお土産を買い、羽田行きに乗り込みました。

地下鉄車内から、浦東空港のビルを眺める

 

 


 

 

クーラのコンサート目的の上海旅行、無事に行って来れて、何よりも、素晴らしいコンサートを鑑賞できて、大満足です。

また短い期間でしたが、発展する中国・上海のごく一部ですが、見ることができました。古い伝統と新しいものが混在しながらも、全体として大きく経済発展がすすんでいることが実感できました。

一方、私たちが日常使っているインターネットのSNSが全くつながらないことには困りました。ホテルなどではWi-Fiが使えるのですが、グーグルの検索もできないし、フェイスブック、ツイッター、LINEなども使えず、家族に「無事着いた」のメッセージも送れませんでした。中国には独自のSNSがあるそうです。またグーグルなどを使えるようにする方法もあるらしいですが、今回は2泊3日という短期間のため、あきらめました。ネットでチケットが買えないこと、インターネットが規制されていることについては、距離的には近いお隣の国でありながら、壁を感じた一面でした。

歴史問題、経済関係、領土問題、人権問題・・日中の間には様々な課題を抱えています。香港での報道にあるように、中国政府が、国民の人権抑圧、管理統制をつよめていることには大きな懸念があります。これらの課題をふくめ、諸問題の平和的で民主的な解決の方向で、両国が今後、文化的にも、政治的にも、経済的にも、平和な友好関係を築いていけることを願っています。

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(録画・ライブ放送告知編)2019年 ホセ・クーラ ハンガリー事件の犠牲者追悼コンサートで指揮

2019-11-05 | ハンガリー放送芸術協会と指揮・作曲・歌 2019~

 

 

*11/5 録画リンクを追加しました!


終了後、割とすぐに録画がアップされました。クーラがFBで録画リンクを紹介してくれました。
いつまで見られるかわかりません。また、回線の状況によっては、途切れ気味かもしれませんのでご了承ください。
 
 
 
曲目の順番は以下

1、ホセ・クーラ:Modus 
2、リスト:2つの伝説
3、ベートーヴェン:エグモント-序曲
 
 


 
 
この秋から、ハンガリー放送芸術協会の客員アーティストとしての活動がスタートするホセ・クーラ。上海の10月20日のコンサートを終えると、すぐにハンガリー入りして、コンサートのリハーサルやレコーディングの準備の活動をすすめています。それらについては、また別の記事で紹介したいと思います。
 
今回は、こうした今シーズンの活動のはじめとして、ハンガリー・ブダペストの聖シュテファン大聖堂で本日(2019年11月4日)、クーラが指揮するコンサートについての緊急のお知らせです。
 
ハンガリーのインターネットTV・M5で、ライブ中継されることが決まりました。
現地時間で、今晩(!)11月4日(月) 午後6時~7時、日本時間では、5日(火)の2時(深夜)です。
生中継後、オンデマンド放送されるかどうかはわかりません。

→ 録画


このコンサートは、1956年のハンガリー事件(ハンガリー革命、ハンガリー動乱などとも)とよばれる出来事を記念し、そのすべての犠牲者を追悼するためのコンサートということです。当時、旧ソ連によってソ連型の政治経済、社会体制をおしつけられていたハンガリーで、ソ連による政治的支配と抑圧、そのもとでの政府の支配に反対して、多くの市民が立ち上がりました。それに対しソ連が軍事介入し、弾圧、大勢の市民が犠牲になったのがこの事件です。
 
会場は、ブダペストのカトリック教会で非常に美しい聖ステファン大聖堂です。無料で事前申込制だったようですが、すでに満席となっているそうです。コンサートの後、聖ステファン広場にろうそくの明かりが灯されます。


放送は、日本時間だと夜中の2時からの1時間の予定です。しかも今日、あと数時間後ということですので、視聴の条件はきびしいと思いますし、ネットの通信状況によっては、日本からきれいにみられるかどうか、不安もあります。
 
また、開始が若干開始が遅れるかも(数分?)という情報が、クーラのFBに掲載されました。


”今日の午後6時の記念コンサートは生放送されるが、少し遅れる。彼らは、それは技術的な理由のためで、ほんの数分だけと言っている。もし18:00に何か他のものが表示されていても心配しないで。我慢して!”


さらに不安が増しましたが(笑)、もし興味をお持ちの方がいらしたら、以下の画像から、M5TVにリンクを張っていますので、お試しになってみてください。なお、クーラは指揮者で、歌は歌いません。

ネットTVの画面右上のEloのマークがライブ放送のボタンです。そこからM5を選んでください。


 



 


≪プログラム≫


2019年11月4日月曜日
喪の日
18:00 聖シュテファン大聖堂での記念コンサート
 

ベートーヴェン:エグモント-序曲
リスト:2つの伝説
ホセ・クーラ:Modus
 
ハンガリー放送交響楽団と合唱団
ホセ・クーラ指揮

 



●ハンガリーのネットテレビ、M5TVで生放送 日本時間5日(火)深夜2時~3時(開始が若干遅れる可能性あり)
 (画面右上、Eloの紫のボタンをクリックし、M5を選んだください)
                                                                                                          

 
 
●会場 ブダペストの聖シュテファン大聖堂
 
 
 
  


●聖シュテファン大聖堂のコンサート告知ページ
 
 
 
 
 
●プログラムの紹介(コンサート告知報道より)
 
ベートーベン:エグモント 序曲

エグモント序曲は、エロイカなど、ヒーローに焦点を当てたベートーヴェンの交響曲の一連の作品に続いている。
ゲーテのエグモントは、自由の英雄であり、外国人の抑圧に対抗して人々の側に立ち、そのために王によって処刑される理想的な騎士。
 
ホセ・クーラ:Modus
 
プラハで初演されたModusは、チェコの首都プラハ、より具体的には中世のプラハに触発された作品。作曲は一種の長い瞑想であり、主旋律が何度も繰り返され、繰り返されるたびに各クライマックスに到達する一種のマントラ。その後、作品はゆっくりと下降し、2本のフルートの柔らかい息で終わり、音楽のモチーフを反映する。
 
リスト:2つの伝説
 
1860年代初頭に作品が生まれ、おそらく1863年に2つの作品が完成した。当時ローマに住んでいた作曲家が、教会のために作った。彼は人前でピアノを弾かず、世俗的な仕事を書かなかった。彼の理想はもはや英雄ではなく、慈悲を具現化した敬虔な聖人たちだった。聖エリザベス、アッシジの聖フランシス、または彼の守護聖人であるパオラの聖フランシス。
 
 
 
●クーラによるFBでの告知 

 

●クーラがシェアした、ハンガリー放送芸術協会のFBでの告知

 

”月曜日11月4日に、1956年のハンガリー革命のすべての犠牲者を追悼する記念コンサートがM5チャンネルでデジタルライブ配信されることを、マエストロ・ホセ・クーラのすべてのFBフォロワーにお知らせできることは、私たちにとって喜びです。マエストロ・クーラは、このコンサートシーズンから始まるハンガリーの放送芸術協会のメインゲストアーティストです。彼はハンガリー放送交響楽団と合唱団を指揮します。”

 


 

 

いよいよクーラとハンガリー芸術文化協会との本格的なコラボレーションが始まりました。

続いて11月中に、ヴェルディのレクイエムを指揮するコンサートが開かれ、またクーラ作曲によるオラトリオの録音も行われます。来年1月は、クーラが作曲した初のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演(コンサート形式)も実現します。

今回のコンサートがライブ生中継されるというのも、とても幸先がよいことで、今後がとても楽しみです。

自由を愛し、公正な世界を求めることを芸術活動においても信条としているクーラ。今回のハンガリーのコンサートも、”社会主義”を名乗る旧ソ連が、自由と民主主義を求める他国民を軍隊を派遣して踏みにじるという衝撃的な、世界史上の大事件であったハンガリー事件の犠牲者を追悼するもので、母国で軍政を経験しているクーラにとっても、深い思いがあるのではないかと思います。

今後、クーラがかつて作曲した、フォークランド戦争の犠牲者追悼レクイエムも、ついに初演が実現することとなりました。独立したアーティストとして、商業主義におもねず、多面的な芸術の道を開拓してきたクーラ。ハンガリー放送芸術協会との協力関係で、長年の夢をひとつひとつ実現し、さらに新しい展開にむかうことが期待されます。

 

 

 

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(インタビュー編)2019年 ホセ・クーラ、上海でオペラアリア・コンサート

2019-11-02 | コンサート ②

 

 

2019年10月20日に上海で行われた、ホセ・クーラのオペラアリアコンサート。無事に大成功しました。

今回のクーラの上海滞在はとても短い期間でしたが、クーラの到着やリハーサルの様子、インタビューなどが、写真や動画で現地メディアに掲載されましたので、そこからいくつか、抜粋して紹介したいと思います。

 → なお、コンサートの内容は(当日編)(告知編)をご覧ください。

 いつものように、誤訳直訳、ご容赦ください。文末や画像に元記事のリンクがありますので、そちらからご覧ください。

 


 

≪上海に到着≫ 

現地のネットニュースに掲載された写真です。1人で、カジュアルすぎる姿で、上海の空港に到着、花束で迎えられたクーラ。マドリードから上海まで、十数時間、いつにも増して飾らず、リラックスして、ちょっとそこまで散歩・・という雰囲気(笑)ですが、今回は中国上海国際芸術祭の招聘であり、もちろんVIPとして歓迎されたようです。


●空港で

 

●送迎の車の中

 

 

≪報道より≫

ーーホセ・クーラ、上海の眠れない夜

 

光に満ちた夜の外灘を背に、手すりに寄り掛かったアルゼンチンの有名なテノール歌手、ホセ・クーラ。彼の顔はまだ、10時間以上の長距離飛行と数杯の赤ワインでも色あせることなく、このなじみのない街の素晴らしい夜景を大変興味深く楽しんだ。

旅の初日は1日中、上海フィルハーモニー管弦楽団のリハーサル室でのリハーサル。翌日の夜は、ホセ・クーラのコンサート「誰も寝てはならぬ」の公演。その翌日に帰国するクーラは、昨夜が外灘の美しさに会う唯一のチャンスだったかもしれない。夕食会後、クーラはサラ・ブライトマンの歌「Time To Say Goodbye」を歌った。彼がまた来たいと願っている上海のために。

マドリードから上海に到着した航空機は、予想より1時間早く到着した。昨夜6時、クーラはカジュアルなTシャツとスウェットパンツで、1人で浦東空港を出て、笑顔で歓迎の花束を取った。迎えのバスに乗るとすぐに、クーラはチケット販売のことを気にして、宣伝に協力する必要があるかどうか尋ねた。ブローカー(仲介者?)について、クーラは、ブローカーはおらず、適切なプロジェクトに応じた契約のみを持っていると述べた。彼は寛大に自分のメールアドレスを渡し、微笑んで言ったーー「次回は直接連絡ができ、仲介が違いを生むことはない」。


オールラウンドなミュージシャン、非常に包括的な音楽的才能

彼の声のパフォーマンスは、非常に包括的だ。指揮し、プロの作曲家をめざして学び、舞台デザイン、演出をした。彼が指揮をしたオーケストラのリストには、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団とロンドン交響楽団も含まれている。

明日の夜のロマンチックなオペラの夕べは、いくつかの古典的な西洋オペラからの抜粋で構成されている。クーラは、トゥーランドットやオテロなどの古典的なオペラの有名なアリアを歌うだけでなく、ヴェルディの「ナブッコ」から刺激的なオーケストラ序曲と、「イタリアの第2国歌」として知られている有名な合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って(Va, pensiero)」を指揮する。クーラは、コンサートがカラフルであることを望んでいる。彼が指揮することは、間違いなく多くの可視性をもたらす。


良き家庭人として

かつてハンサムで、現在もハンサムなアルゼンチン人は、今日では「幸せな脂肪」をもっている。送迎のための広々としたメルセデス・ベンツのビジネスカーに座って、ゆっくりとリラックスして、2つの席を占有して寄りかかった。彼は、この車は家族と一緒に休暇を過ごしたり、フルーツやステーキのグリルでピクニックに行ったりするのに本当に適していると感じたようだ。

毎日自宅で料理をしているトップレベルのテノール歌手?これは事実だ。クーラは料理が好きなだけでなく、ガーデニングも大好きだという。毎朝、家族のためにパンを焼き、夕食にサラダを作ったり、家族とバーベキューに出かけたりする。


中国のクラシック音楽の未来

ホセ・クーラは何度か上海に来た。夕食の席で、彼は箸を巧みに使い、「美味しい」と「乾杯」と言うことを学んだ。次の機会に、彼は公演で中国の歌を歌いたいと言った。上海訪問の際、いつも急ぎの旅で、上海の街を訪れる時間がない。 機会があれば、彼は本当に上海に1か月住んで、もっとパフォーマンスをし、いくつかのマスタークラスを行い、若い人たちと音楽を演奏し、楽しくて面白い作品をやりたいと思っている。

また、クーラは記者に、中国人に対する観察を明らかにした。生活のなかで中国人は、しばしば真面目で恥ずかしがり屋に見えるが、コンサートホールに入ると、コントラストが現れる。津波のような拍手と「ブラボー」は、彼に中国のファンの激しい熱気を感じさせた。いわゆる内気さは、彼らの保護色にすぎない。今日、中国は、さらなる研究のために、ますます多くの才能をヨーロッパと米国に派遣している。しかし、西洋の音楽産業による中国の理解は、中国の西洋に対する理解ほど深くはない。クーラは次のように述べたーー「文化の発展は1、2年では成功しないが、50年、100年...最終的な勝者は中国になるだろう」。

 

●簡単なQ&A 


Q、24時間はどのように調整される?

A(クーラ)、仕事でいっぱい

Q、好きな中華料理は?

A、ローストダック

Q、上海の印象は?

A、整然として、近代性に満ちている

Q、このパフォーマンスに期待することは何?

A、上海フィルハーモニー管弦楽団の専門レベルも非常に高い。私たちは良好な協力関係を持ち、2人の中国の歌手と協力し、新しい火花を放つと信じている。

Q、ファンに一言!

A、Carpe diem!(ラテン語:今を楽しめ)

(「new.qq.com」)

 

●上海の高層ビル群と、対岸の外灘のイギリス租界時代の歴史的建造物を背景に。上海には実質2日ほどの滞在のみ

 

●画質が良くないですが、こちらは動画。空港到着から、若手バリトン歌手の共演者とバスの中で語っている様子などがあります。

 

  

 

 

テノール、ホセ・クーラが上海を再訪ーー今夜は誰も眠らない...

 

「ただ歌手としてだけでなく、歌える俳優」ーー-批評家は、アルゼンチンの有名なテノール歌手、ホセ・クーラについてこう説明する。 いつでもどこでも、魅力的な容姿、背が高く、力強い声のこの歌手は、容易に注目の的となる。

18日の夕方6時に浦東国際空港に到着、20日夕方の上海オリエンタルアートセンターで「誰も寝てはならぬ」と題したクラシックオペラコンサートを行うため、ホセ・クーラは上海国際芸術祭を訪れた。旅行は大急ぎで、上海に滞在した時間はわずか2日だった。

「初めて上海に来たのは10年以上前。当時の上海は非常に騒がしく、スピード違反のバイクが飛び回る蚊のようだった。しかし今ではまったく違う」
上海シンフォニー交響楽団のリハーサルホールで、上海のメディアからインタビューを受けたとき、ホセ・クーラは窓を指し、「非常に静かで、人々に非常に良い体験を与える。上海の都市オペレーティングシステムは大きな変化を遂げている」と語った。この2日間、彼は「空港、ホテル、コンサートホール」のほぼ3点のライン上にいたが、上海の街を垣間見ることは彼に深い印象を残した。

多くの視聴者は、12年前のクーラのパフォーマンスを覚えている。2007年、彼は上海大劇院のプッチーニのオペラ「トゥーランドット」に出演し、「誰も寝てはならぬ」を歌った。12年後、再び訪れたホセ・クーラは、コンサートを「誰も寝てはならぬ」と名付け、プログラムには、「道化師」、「ナブッコ」、「オテロ」、「サムソンとダリラ」などのオペラの古典的な曲からの抜粋を含んでいる。「世界の各地で、『誰も寝てはならぬ』を歌った。プッチーニの音楽を愛さない人はいない」とクーラ。

 

 

コンサートの準備のため、クーラは、彼の古いパートナーである指揮者マリオ・デ・ローズに、上海フィルハーモニー管弦楽団と上海フィルハーモニー合唱団とのコンサートを一緒に行うよう招待した。マリオ・デ・ローズは、アルゼンチンの多くの主要なオーケストラ、室内楽オーケストラなどと取り組んでおり、アルゼンチンのラプラタのオペラ劇場の監督を務めた。2005年以来、この2人はイタリア、スペイン、ドイツ、チェコ、ロシアなどのヨーロッパ諸国で連続して公演している。「彼は常に私の最も信頼できる指揮者だ。今回の上海のようなコンサートでは、私たちに許されたリハーサル時間は非常に限られており、私はよく彼を招待する。彼は誰もが必要とするものを知っているからだ」とクーラは語った。

バリトン歌手の洪之光と上海大劇院のソプラノである徐小英もコンサートに参加し、クーラと同じステージに立った。「未来は私のものではなく、若い歌手のものだ」ーーホセ・クーラはインタビューで、才能のある若い歌手を常にサポートしたいと述べた。「上海シンフォニー管弦楽団の90%以上が若いことをとてもうれしく思う。彼らは非常に専門的で、高いレベルの音楽を持っている」と。

 

●リハーサル中

 

実際、優れたオペラスターであることに加えて、彼はよく訓練された作曲家、指揮者、オペラ監督、舞台デザイナーでもある。

クーラは、彼の芸術的経歴の思い出をこう語った。彼が7歳か8歳だったとき、彼の父親は彼にピアノを習うように言ったが、2か月後、教師はホセがピアノに興味がないと感じたため、彼は家に帰るように言われた。

「12、3歳のときに音楽に戻った。今回はギターを学んだ」、その後、彼は音と歌の才能を発見し、作曲と指揮を学び始めた。「幅広い芸術的背景は、私の歌手としてのキャリアを大きく助けてくれた。今まで、作曲の趣味をやめていない」。

その夜、「誰も寝てはならぬ」という最後の高音で、クーラは聴衆を魅了した。

「私は今年57歳だ。まだ年老いてはいないが、若いわけではない。若いとき、私たちはいつも、明日、明後日、そして来週を考える。今、私は、人生が非常に短いことを知り、すべてが『今日』始まることがわかっている。 」

(「jfdaily.com」)

  

 ●会場となった上海東方芸術中心のコンサートより

 

 

 

●動画 オケ、合唱団とともにリハーサル中のクーラ

 

 

 


 

クーラの人柄やライフスタイルも伝わってくるインタビュー記事でした。本当に、上海での長期滞在が実現し、マスタークラスや連続公演が可能になったら素晴らしいですね。

経済的に大きく発展し、変貌を続ける中国・上海。今回、クーラのコンサートを含む1か月間、開催される上海国際芸術祭の規模や内容を見ても、そのスケールの大きさ、招聘アーティストの国際的な水準の高さ、バラエティとも素晴らしいものです。数多くの才能が存在し、世界各地で活躍しつつあります。クーラの言うように、今後の世界を考えると、中国の文化的な地位と役割は、クラシック音楽の分野でもますます大きくなることと思われます。

長い歴史と豊かな文化とともに、急激な変貌と発展は刺激的であり、とても魅力的です。今後、さらなる経済的社会的な発展とともに、文化・芸術の発展とは切り離せない課題である、人権、民主主義や自由の問題をどう解決していくのか、それらを含め、私も中国への関心が深まりました。また機会があればぜひ訪問してみたいです。

 

*画像は、報道や劇場サイトなどからお借りしました。 

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