人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(レビュー編)ホセ・クーラ 道化師でオマーン王立歌劇場にデビュー / Jose Cura's Pagliacci in Royal Opera House Muscat:Oman

2018-03-22 | オマーンの道化師




中東オマーンの首都マスカットの王立歌劇場で、レオンカヴァッロのオペラ道化師に出演したホセ・クーラ。イタリアのローマ歌劇場ツアーによる3月15、17日の2公演でしたが、湾岸諸国の各地から観客を集め、スタンディングオベーションを受ける大成功だったようです。


この公演の告知と概要、リハーサルの様子、クーラのインタビューなど、これまでの記事で紹介しています → 記事まとめ「オマーンの道化師」


今回は、レビューを紹介したいと思います。アラビア語はまったく理解できませんが、幸い、英語のレビューがありました。大歓迎、大好評だったことがわかりました。そこから抜粋しています。またローマ歌劇場のHPに掲載されたニュースも今回の公演の背景がわかるので紹介しました。訳の不十分さをご容赦ください。

写真は王立歌劇場マスカットのHPフェイスブックからお借りしました。元のページには、カラフルな40枚近い画像がアップされています。ぜひご覧になってください。









≪道化師の涙、愛と血の切ない物語≫


「先週、ローマ歌劇場は、ルッジェーロ・レオンカヴァッロの1892年作の暗い喜劇「道化師」2公演を発表した。80分の長さで、このオペラはしばしばダブルビルで行われるが、木曜日の夜、王立歌劇場マスカットでは、2幕によるメイン公演(もともと1幕だが間に休憩を入れている)として行われた。この1992年のプロダクションは、世界的に有名なイタリアのステージと映画監督のフランコ・ゼフィレッリによって制作され、ステファノ・トレスピディによって王立歌劇場の舞台で忠実に復活した。その演出は、にぎやかで、カラフルかつ非常に活気にあふれ、現代世界に設定された現代的な作品を創造しようとするレオンカヴァッロの意図を反映している。・・」

「ローマ歌劇場の65人のコーラスメンバーと58人のパントマイムとエキストラは、1950年代と60代のファッションを混合した服装を着ていた。ソリストと11人のアクロバットは、2003年にゼフィレッリと共同でライモンダ・ガエターニにデザインされた、戯画化された伝統的なピエロのコスチュームを身に着けて、群衆の前に現れた。・・・」

「55歳のアルゼンチンのテノール、ホセ・クーラが演じた一座の座長のカニオが夜の公演を告知する。クーラは、2007年にこのオペラを再構想した「La Commedia e Finita」をはじめ、30カ国の異なるプロダクションで何百回もCanioを演奏してきた。王立歌劇場での彼のパフォーマンスは、彼を国際的な名声に導いた暗いバリトンのような音色とともに、彼独特の大胆かつ鮮やかなテノールの品質を示した。・・・」

「孤独で、カニオは絶望的な強迫観念のなかに追い込められる。彼は心が壊れているにもかかわらず、ピエロを演じなければならない。ホセ・クーラは第1幕の終わりに、ドラマのカーテンが降りるように、魅力的な『衣装をつけろ "Vesti La Guibba"』を歌った(顔に化粧をしながら)。・・」

「・・(後半)悪意のある道化者役のトニオが、再びカニオの嫉妬に火を付けた。聴衆をそのリアリティによって魅了した。・・・激怒しながら、カニオはネッダを刺し、死にかけたネッダがシルヴィオと叫んで助けを求め、彼の身元を知らせたため、彼も刺された。

その悲劇的な音でオペラは突然終了したが、幸いなことにオマーンでは、アクロバットが講堂に現れ、座席の裏側を歩いて一輪車に乗ってサーカスを演じた。これが第3幕となり、彼らが30分間に渡って騒がしく動き、劇場ホールにまで移動した。」

omanobserver.om












≪フランコ・ゼフィレッリ監督「道化師」へのオマーンへの熱意≫

「湾岸諸国からの国際的な聴衆による熱狂的な拍手が、ローマ歌劇場のアンサンブルによってマスカットのロイヤル・オペラハウスに持ち込まれたレオンカヴァッロの道化師のパフォーマンスを歓迎していることを示した。フランコ・ゼフィレッリの演出と素晴らしい音楽の貢献との非常に成功した結合によって成功を収めた。パオロ・オルミの指揮によるオーケストラとロベルト・ガッビアーニ指揮の合唱団が祝福された。

キャストは非常に重要だった。カニオの情熱的な解釈によって成功した素晴らしいホセ・クーラによって導かれた。ダビニア・ロジェリゲス(ネッダ)、マルコ・ブラトーニャ(トニオ)、ゲジム・ミシュケタ(シルヴィオ)、フランチェスコ・ピッタリ(ベッペ)と一緒に。」


「この約50年間に近代化されてきたが、アラブ諸国におけるこのローマ歌劇場のツアーは、スルタンのカーブース・ビン・サイード(国王)の先見の明によって、このように成功した。熱心に西洋文化に開放され、大規模で素晴らしいモスクのまわりにオペラハウスの建設を同時期(2007年)に始めた。その当時、アラビア半島で唯一のものだ。

優秀な音響と最先端の技術設備を備えた王立歌劇場は、ローマ歌劇場の最初のオマーンツアーを主催した。カルロ・フオルトス監督は、『この歴史的な機会は、ペルシャ湾岸の一部の国、特にオマーンの、ヨーロッパと西側に向かって発展しているという大きな文化的開放によって可能になった』と語った。スルタンは、彼らの伝統を守りながら、世界の他の国々との橋渡しを特に慎重に行ってきた。『道化師』のようなレアなドラマのプロダクションを主催することを決定することは、かなりの勇気の証である。1992年にローマ歌劇場でゼッフェレッリによるプロダクションを選択した。中東の国の多くから愛された演出家であり、2011年には、劇場は彼の演出によるトゥーランドットで開幕した。そして再び、イタリアのプロダクションのスキルと優雅さが認められている。」

operaroma.it」ローマ歌劇場ニュース




指揮者のオルミさんのFBに掲載された新聞の画像



ゼフィレッリ財団のツイート



劇場のフェイスブックに掲載された、道化師公演のダイジェスト動画。総大理石造りの豪華な劇場のロビー、内部や公演の一部が見られます。後半部分にクーラらしき姿が少し映っています。ただし、背景に流れている歌は、残念なことにクーラではない別のテノールのものです。








初日の後、ローマ歌劇場の文化協力プロジェクトのマネージャーであるパオロ・ペトロセッリさんと。同氏のインスタより

Ridi, Pagliaccio @josecuragram #opera #operoma #zeffirelli #rohm #oman #pagliacci

Paolo Petrocelliさん(@paolopetrocelli)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-03-13T19:35:33+00:00"> 3月 13, 2018 at 12:35午後 PDT</time>




クーラの父方の祖父母は中東のレバノンの出身です。母方の祖父母はスペインとイタリアの出身で、クーラは中東、スペイン、イタリアをルーツに持つ移民一家の一員として、アルゼンチンで生まれ育ちました。祖父母のルーツの地域での公演に、クーラ自身も「感情的な愛着」を感じたとインタビューで述べていました。

そういう点では、イタリアと中東との文化交流事業としてのオペラ公演で、主役としてクーラは、出自の点でも、キャリアのうえでも、最も適任だったと思います。発表された当初は、なぜオマーン?と思いましたが、中東との文化交流を担う重要な文化大使の役割だったわけです。

今回は短い公演旅行、しかもクーラ自身は、その直前直後ともにスケジュールが詰まっていて、非常にあわただしい旅だったと思います。幸い体調を維持し、無事に公演が終えられて本当に良かったです。

オマーンは治安が安定しているそうですが、祖父母の故郷レバノンは、シリアとイスラエルに隣接し、とりわけシリア情勢の悪化にともない、多方面で甚大な影響を受けていることが伝えられています。中東全体が平和と安定への方向に前進し、祖父母の地レバノンでも、クーラが欧州と中東との文化交流大使として、オペラ公演を再び実現する日が遠くないことを願わずにいられません。








*画像は劇場のHPFBなどからお借りしました。
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(インタビュー編)ホセ・クーラ 道化師でオマーン王立歌劇場にデビュー / Jose Cura's Pagliacci in Royal Opera House Muscat:Oman

2018-03-18 | オマーンの道化師






初日を大好評のうちに終えた、オマーンの王立歌劇場マスカットの道化師の公演(3月15、17日)。今晩は2回目、最後の公演がそろそろ始まるころです。

この公演の前日に、オマーンで、ホセ・クーラとローマ歌劇場の出演者らが記者会見を行ったようです。
いくつかの記事から、主にクーラの発言部分、それに触れた記述を抜粋して紹介したいと思います。

クーラは、インタビューのなかでも述べていますが、ルーツのひとつが中東にあります。父方の祖父母がレバノンからの移民であり、クーラの黒い髪、彫の深い顔立ちは、この地の人々の面影を感じさせるように思います。

またインタビューでは、オペラ道化師の物語に関連して、この間、ハリウッドの映画界から始まった、セクシュアル・ハラスメントや性暴力へのNO!を表明する#MeTooキャンペーンについて言及しています。オペラは、現代の社会と深く結びついている、そうでなければならない、というのがクーラの信念でもあります。

いつものことですが、語学力不足による誤訳、直訳、お許しください。
なお、クーラの「道化師」についての解釈、カニオ論などについては、これまでの記事でも紹介しています。

 →「ホセ・クーラ 道化師の解釈 "私は仮面の背後にいる"」
 →「カヴァレリア・ルスティカーナと道化師の演出」








≪イタリア歌劇「道化師」は、現代の時代への完璧なメッセージを持っている≫


「今日の世界を見ると、最も欠けていると思われるひとつは、仲間に対する敬意(リスペクト)だ」――男性の主役を演じるアルゼンチン人のクーラは語った。

「数ヶ月前、#MeTooキャンペーンがソーシャルメディア上を席巻した。この道化師のドラマは、本質的に、男性が女性をどのように扱っているのか――まるで彼の所有物にすぎないかのように――ということについて、非常に重要なメッセージを送っていると思う。誰かをひどく扱うならば、それは自分を悩ますために戻ってくるだろうということだ」とクーラは言う。


イタリア人の劇作家、ルッジェーロ・レオンカヴァッロによって書かれた道化師では、カニオは孤児の女の子ネッダを拾って育てる。その後、彼は彼女と結婚する。彼女を引き上げるのと引き換えに、彼は彼女に完全な服従を期待するが、それはネッダが表面上だけで適応している状態だ。ネッダとカニオは旅芸人で、南イタリアの村で一座の仲間と公演する予定だ。カニオが村にいる間に、別の男シルヴィオがネッダに愛を告白する。夜の芝居の間・・カニオは感情を抑えこみ、彼の顔は青白くなる。観客は、メイクアップのために彼の顔色が青くなっていると思い、彼のパフォーマンスを賞賛する。芝居を忘れ、カニオはネッダの相手の名前を知ろうとするが、彼女は言うことを拒否する。激怒し、カニオは感情のおもむくままの犯罪でネッダを刺すが、それは当時、罪にはならず、それからシルヴィオを舞台の上で突き刺し、演技を終わらせる。カニオはその後、シルヴィオを刺したことによって、それは殺人とみなされ、逮捕される。


「道化師の物語にはたくさんのプロットがあると思うが、それは、カップルが日常的に実際の生活の中で直面する問題のいくつかのコレクションだ。もちろん、あなたはそれらのすべてに直面したわけではないだろうが、演劇は常に、我々の日常生活の中で起こっていることの反映である。このように関連づけできることが演劇の強さだと思う」とクーラは語った。

「ネッダはカニオに対して、彼女に対するひどい待遇はもうたくさんだと伝え続けたにもかかわらず、彼は聞く耳を持たない。そうだ、彼は彼女を何もないところから引き上げてきた。しかしそれは、“彼がしてきたことは立派な心からのもので、彼女はすべてを彼に負っている”ということを意味しない」――クーラは付け加えた。

timesofoman.com











≪この週末、王立歌劇場マスカットでイタリアオペラ「道化師」≫


オペラ道化師は、自分自身の人生が崩壊する間にも、人々を笑わせる一座の道化師・カニオの人生における、悲劇的な皮肉についての実話に基づいている。
スターテノールのホセ・クーラによって歌われたカニオは、悪意をもつトニオから、妻ネッダが恋人シルヴィオと逃げようとしていることを知らされ、嫉妬を深める。劇場は人生を映し出し、暴力が現実になる。


クーラは言った。「私はレバノンにルーツを持っている。したがって私はオマーンに来て、感情的な愛着を感じている。この間、私たちはホテルから舞台裏にいて、今、われわれは豪華なオペラハウスとその回廊を見ることができた。この巨大な機構の一部になることは素晴らしいと感じられる。」


彼は、オマーンは比較的若いオペラオーディエンスだと付け加えた。「年齢ではなく、経験の点では若い。しかし、新しい人々に対して演じることはいつも良い。なぜなら地面はまだ肥沃なので、人々の気持ちをつかみやすくなるからだ。」


クーラは、道化師の本質を現代と比較して、進行中の#metooの動きを考慮しても、オペラの内容は今日の世界と結びついている、と言った。「ハッシュタグについては、議論もあるかもしれないし、#metooに関して、過度の反応や政治的な立場があるかもしれない。しかし、オペラは現代の問題に関連している」と語った。

muscatdaily.com







*画像はローマ歌劇場のFBや報道などからお借りしました。
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(ドレスリハーサル編)ホセ・クーラ 道化師でオマーン王立歌劇場にデビュー / Jose Cura's Pagliacci in Royal Opera House Muscat:Oman

2018-03-15 | オマーンの道化師




いよいよ現地時間の3月15日夜、日本ではすでに今日になっていますが、オマーンの王立歌劇場マスカットのオペラ、道化師が初日を迎えます。

ローマ歌劇場のツアーに同行し、主役を務めるホセ・クーラ。すでに1週間にわたってオマーンの首都マスカットでリハーサルに取り組んできました。
前回の(リハーサル編)以降にも、実際にメイク、衣装を着た本番さながらのドレスリハーサルの様子が、SNSを通じてたくさん発信されています。今回はこうした画像を中心に紹介したいと思います。




王立歌劇場マスカットのHPより







≪道化師チームの集合写真≫

下↓の写真は、クーラのFBローマ歌劇場のSNSに掲載されたものです。

今回の公演は、イタリアのローマ歌劇場によるオマーンへの引っ越し公演で、その主役にクーラがキャスティングされています。
最終リハーサルの時なのでしょうか。総大理石造りの王立歌劇場のロビーに、ローマからの出演者、スタッフ、オケ、そしてオマーンのキャスト、スタッフ含め、今回の道化師の関係者、全員集合の写真のようです。

まるで“ウォーリーを探せ”のようですが、ちょうど中央部分に、道化師の扮装で服も顔も白いクーラが見えると思います。

それにしても大変な人数ですね。ひとつのオペラ公演を行うために、これだけのたくさんの人々が関わり、支えているわけです。
こういう集合写真は私はあまり見たことがありません。とても貴重な一枚ではないでしょうか。




●クーラのコメント
"The Pagliacci team in full!"  「『道化師』チーム全員!」


クーラのいるあたりを拡大したのがこちら↓。なぜか小さい子どもを抱いているようですね。子役でしょうか、それとも出演者のお子さんでしょうか。
子どもが大好きなクーラ、小さい子どもたちを見かけると、抱っこしたり、かまったりせずにはいられない人のようです(笑)






≪ドレスリハーサルの舞台から≫

このローマ歌劇場の道化師は、ゼッフィレッリによる演出のプロダクションです。カラフルで美しい、古典的な舞台、衣装です。

ローマ歌劇場がSNSに投稿した写真よりお借りしています。それぞれリンクを張っていますので、ぜひ直接ご覧ください。
こちらはクーラのカニオが「衣装を着けろ」を歌っている場面でしょうか。




ローマ歌劇場のFBから。トップに掲載した写真も含めて、道化師一座による劇中劇のシーンのようです。
白い衣装、顔にも白いメイクをした、一座の座長、道化師カニオを演じるクーラ。ネッダはソプラノのダビニア・ロドリゲスさん。






現実の妻の不倫に苦しみ怒り、芝居の最中にもかかわらず、「もう道化師じゃない」と、カニオが本心をむき出しにして歌い始めるシーンのようです。








≪クーラや出演者のバックステージ写真≫


クーラと出演者たちによる楽しい写真がたくさんアップされています。

クーラがアップした、道化師のメイク中の写真と、一座の“ボス”、カニオの扮装をした写真。(クーラの私服ではありませんよ)

  


クーラと道化師一座。ネッダのダビニア・ロドリゲスさん、左側ベッペ役のフランチェスコ・ピッターリ、中央がトニオ役のマルコ・ブラトーニャ。クーラはマルコのスキンヘッドに頬を乗っけていて、なんだかおかしいですね。

そしてクーラのちょっと怖めの道化師メイク。

  


カニオとDanilo。もう一枚はカニオとネッダ。

  



どの写真も和気あいあいとした感じで、リハーサルも順調にすすんだのでしょうか。
それにしても、これだけの規模での引っ越し公演、人数、機材、楽器、スタッフ、キャスト・・。たいへん大掛かりな事業であることがよくわかります。

そしてクーラは、この大規模プロジェクトの主役を演じます。道化師一座の座長であり、この引っ越し公演の座長ともいえる立場です。チームワークを大切にし、常に仲間と一緒にオペラをつくりあげることに情熱とすべてのエネルギーを注ぐクーラ。責任もたいへん重いですが、充実の毎日だと思います。
クーラをはじめとする出演者の皆さんが、好調を維持し、オマーンの人たちに素晴らしい声と演技、存在感でオペラの魅力を伝えてくれることを期待しています。


最後に、クーラの歌う「衣装をつけろ」を。音声のみですが、2009年メトロポリタン歌劇場での道化師から。
Jose Cura 2009 "Recitar! ... Vesti la Giubba" Pagliacci






*画像はローマ歌劇場や王立歌劇場マスカット、クーラ、共演者のSNSなどからお借りしました。
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(リハーサル編)ホセ・クーラ 道化師でオマーン王立歌劇場にデビュー / Jose Cura's Pagliacci in Royal Opera House Muscat:Oman

2018-03-10 | オマーンの道化師




ホセ・クーラは現在、中東オマーンの首都マスカットにある王立歌劇場マスカットで、レオンカヴァッロの道化師のリハーサル中です。

2月いっぱいピーター・グライムズの公演でモナコで過ごし、その後、ドレスデンのオテロにピンチヒッターとして急きょ出演。ようやくマドリードの自宅に帰った3日後には、もうオマーンに出発するというハードスケジュールでした。相当疲労もたまっているでしょうし、欧州を襲った寒波のなか、クーラの体調を心配していましたが、元気にリハーサルをしている様子が伝わってきました。

今回の公演は、イタリアのローマ歌劇場による引っ越し公演で、ゼッフェレッリ演出のプロダクションです。そのためローマ歌劇場がHPファイスブックで情報を発信してくれていますので、そこに掲載された画像や共演者、関係者のSNSの情報をお借りして紹介したいと思います。

(告知編)では、総大理石造りの豪華な劇場の様子も紹介しています。


ローマ歌劇場HPのツアー情報ページに掲載された案内





(告知編)でも紹介しましたが、クーラはマスカット王立歌劇場ははじめてで、今回が劇場デビューです。クーラの父方の祖父母は、オマーンとは距離が離れていますが同じ中東のレバノン出身で、クーラのこの地域への思いは深いものがあるのではないでしょうか。

今回の共演者、トニオ役のバリトン、マルコ・ヴラトーニャは、プッチーニのエドガールやオテロ(メトやリセウ)などで何度も一緒に歌っています。指揮者のパオロ・オルミ氏は、新国にも何度か出演しているベテラン、イタリアを中心に活動されているので、クーラとも共演しているのではないかと思います。


≪ローマ歌劇場の画像より≫

どの場面かはっきりわかりませんが、クーラ演じるカニオが舞台の中心で歌っています。後方にネッダがいて、まわりを人々が取り囲んでいるので、オペラ後半、劇中劇の場面から、カニオの「おれはもう道化師ではない」あたりでしょうか?










こちらは劇場がインスタにアップした画像。ドラマの最終局面に向かって、カニオが妻の不貞を確信し、激高して相手の名前を言えと詰め寄っているシーンのようです。







そしてトップに掲載したこの写真は、興奮して妻の浮気相手シルヴィオを刺し殺した(この演出では妻も殺害したようです)カニオが、我に返り、呆然と立ちつくすラストシーンだと思われます。





以下は、マスカット王立歌劇場で、ゼッフェレッリが演出、設計した舞台の立ち上げ中の様子。










ローマ歌劇場のフェイスブックです。







ローマ歌劇場のインスタグラム

Il 15 e 17 marzo siamo in Oman con #Pagliacci per la regia di Franco #Zeffirelli. Ecco alcuni momenti delle prove! #workinprogress

Teatro dell'Opera di Romaさん(@opera_roma)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-03-08T14:21:35+00:00"> 3月 8, 2018 at 6:21午前 PST</time>



こちらは劇場関係者と思われる方のインスタ

Rome Opera at Royal Opera House Muscat! Getting ready for an amazing performance of Pagliacci, with the legendary production by Franco Zeffirelli #operaroma #rohm #opera #zeffirelli #oman

Paolo Petrocelliさん(@paolopetrocelli)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-03-09T12:22:42+00:00"> 3月 9, 2018 at 4:22午前 PST</time>




共演のシルヴィオ役のゲジム・ミシュケータがアップした、クーラとの写真。
ピーター・グライムズ用に伸ばしていた髪と髭を切って、とてもすっきり、爽やかな笑顔のクーラです。ハンサム(?)なカニオになりそうですが(笑)、メイクでどう変わるのでしょうか。舞台姿も楽しみです。





今回、クーラたちが公演するオマーンは、とても治安が安定しているといわれています。豪華な歌劇場、中東屈指のオーケストラ、イタリアからのオペラの引っ越し公演・・今回の道化師の公演にあたっても、子どもたちを対象にした事前ワークショップを開くなど、とても文化に力を入れている国のようです。

しかし中東全体は、現在も激動と混乱のさなかにあります。隣国イエメンは内戦が続き、飢餓、伝染病蔓延などで重大な人道的危機に瀕していると報道されています。シリアでは今この瞬間も激しい空爆で、大勢の子どもたちが犠牲になっています。クーラにとっては祖父母のルーツに近い中東の国々、そして平和と社会正義をつよく願い、アーティストの役割は「平和の種を蒔くこと」という信念をもつクーラにとって、今回のツアーは、特別な意味をもつものになりそうです。

公演が無事に成功することを祈るとともに、とにかくクーラとローマ歌劇場の一行が何事もなく無事に帰国できること、そして1日も早く中東全体の平和と安定が実現し、人々の幸せな日常が戻ることを願わずにはいられません。





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(SNS編) 2018 ホセ・クーラ、ドレスデンのオテロに代役で出演 / Jose Cura sings Otello at Semperoper Dresden

2018-03-06 | オペラの舞台―オテロ


*この画像は同じプロダクションの2016年ザルツブルクの舞台より


3月3日、ホセ・クーラは、急きょ、ドレスデンのゼンパーオーパーのオテロに出演しました。
キャンセルを受けた代打としての出演で、その経過は前回の記事で報告しましたが、2月28日までモナコでピーター・グライムズに出演し、次の道化師の出演のために中東オマーンに渡航するまでのわずかな間をぬってのことでした。

1日だけの代演のため、今のところレビューは見当たりませんでしたが、同じ公演の出演者たちが、期待以上にたくさん、SNSで発信してくれました。
ハードな日程になったクーラですが、劇場のピンチを救い、公演も大成功したようで、とても満足そうです。

写真から見ると、クーラはグライムズのために伸ばしていた髭をすっきり剃ったようですね。当日の美しい舞台写真が見ることができないのが残念ですが、こうしてSNSを通じて出演者たちの様子を知ることができるのは、本当にうれしいことです。



≪クーラのフェイスブックから≫



無事に3月3日の公演を終えて、クーラがFBにアップした写真↑です。以下のコメントが添えられていました。

「昨日の共演者たち、私が飛び込んだドレスデン・ゼンパーオーパーのオテロの公演で。
今(3/4)、帰宅した。水曜日(3/7)に、ローマ歌劇場とのゼフィレッリの道化師のプロダクションのためにマスカット(中東オマーンの首都)に行く。」


モンテカルロ歌劇場でみずから演出・主演したピーター・グライムズのために1か月間もモナコに滞在し、もしかするとそのままドレスデンに直行したのかもしれません。
そして帰宅して数日後には、初めてのオマーンへ。国際的に活躍するオペラ歌手は皆、こうした旅から旅の生活をしているとはいえ、55歳になったクーラ。疲れがないわけではないでしょう。



≪カーテンコール動画≫

こちら↓は、デスデモーナ役ヒブラ・ゲルズマーワさんのマネージャーがインスタに投稿してくれたカーテンコール動画です。この動画を見ると、クーラの活力の秘密がわかるような気がします(^^)


●添えられたコメント
「ドレスデンでの2回目のカーテンコール! オテロ=ホセ・クーラ、デスデモーナ=ヒブラ・ゲルズマーワ、指揮者ダニエレ・カッレガーリ! 昨夜は非常に情熱的なパフォーマンスでした! アルゼンチン - アブハジア - イタリアの血は、熱いエネルギーでホール全体を包んでいました!!! 🔥🔥🔥」


このカーテンコールで印象的だったのは、クーラと出演者が熱い一体感で結ばれているように見えたことです。
病気のキャンセルが相次いだなかで、主役のクーラも指揮者も急な代役で出演。リハーサルの時間もほとんどとれず、困難もあったと思いますが、それを乗り超え、キャストが一致団結して、音楽的にもドラマとしても、情熱あふれる充実した公演をつくりあげることができたからでしょうか。こういう瞬間は、生の舞台に立つアーティストたちにとって、何ものにも代えられない喜びであり、次に向かうパワーの源にもなっているのかもしれません。

これまでいろんな舞台のカーテンコールの動画を見ましたが、とりわけこの動画からは、クーラ自身の大きな満足感と喜びが感じられました。
以下は動画から。


① カーテンコールで登場し、大喝采に手を挙げて応えるクーラ
② 大きく手を広げて、指揮者を迎える 
 

③ 指揮者を迎えてハグ、指揮者の足元がよろけるほど(笑)の固く熱い抱擁
④ 戻ったクーラを手を広げて迎えるデズデモーナを抱きしめてキス💕
 



指揮者のダニエレ・カッレガーリさんは、新国立劇場にも出演されたことがあるようですが、これまでクーラとも、バルセロナのリセウ大劇場でカヴァレリア・ルスティカーナ/道化師で共演したり、またクーラが演出・舞台デザインをしたストックホルム王立歌劇場のラ・ボエームの指揮をした方のようです。
さらに、今年9月にサンフランシスコオペラで、クーラが演出・舞台デザインしたカヴァレリア・ルスティカーナ/道化師のプロダクションの指揮を行う予定になっています。
信頼でき、気心も知れた指揮者であり、たぶん、ヴェルディのオテロの音楽解釈においても、クーラと一緒に情熱的な舞台をつくりあげる方だったのでしょう。



≪共演者とともに≫

それぞれの共演者の満足そうな様子が、他の画像からもうかがえます。


――こちら↓はデズデモーナ役のヒブラ・ゲルズマーワさんとクーラ。とても美しい2人です。舞台で見たかった・・。



●添えられたコメント
「私は昨日、"オテロ"をゼンパーオーパー・ドレスデンで歌いました。偉大なテノールであり素晴らしい俳優であるホセ・クーラ、素晴らしいマエストロ、ダニエレ・カッレガーリと共に! ❤」



――指揮者のダニエレ・カッレガーリさんがツイッターに投稿した写真↓。


●添えられたコメント
「我々のオテロの公演の後で、ホセとリラックスして」



――ロドヴィーコ役ルーカス・コニェチェニーさんと↓。



●添えられたコメント
「ゼンパーオーパー・ドレスデンでオテロのリバイバル公演の後に、驚くべきオテロのホセ・クーラ、デズデモーナとして素晴らしいヒブラ・ゲルズマーワ、偉大なマエストロ・ダニエレ・カレガリ、そしてすべての素晴らしい仲間!
Bravi tutti !!」



――「Araldo」のチャオ・デンさんと↓



●添えられたコメント
「オテロとしてのホセ・クーラは素晴らしい❤️❤️❤️❤」



それぞれの出演者が、公演の成果に満足し、互いに健闘を称えあっているのが伝わってきます。
とりわけクーラが好調を維持し、共演者を驚かすような素晴らしいオテロだったようで、本当にうれしいです。
円熟期にあるクーラのオテロ、ぜひ生の舞台で観たいという思いがますますつのります。


――最後に、カッレガーリさんのツイッターより、みんなそろってのカーテンコールの写真を。

●添えられたコメント
「素晴らしい成功、ドレスデンでの我々のオテロのオープニングの夜、・・」




*画像は出演者の方々のSNSよりお借りしました。それぞれリンクを張ってありますので、元の記事・ツイートなどをぜひご覧ください。
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(緊急告知) 2018 ホセ・クーラ、ドレスデンのオテロに代役で出演 / Jose Cura sings Otello at Semperoper Dresden

2018-03-03 | オペラの舞台―オテロ




3月2日の夜、ツイッターで入ってきたニュースです。
とても急な話でびっくりしましたが、ホセ・クーラが、翌3月3日(すでに今日のことですが)、ドイツ・ドレスデンのゼンパーオーパーのオテロに出演するというのです。その後、HPにも掲載されました。




*この劇場HPの写真はクーラではありません。


Otello/ Giuseppe Verdi

Saturday 3 Mar 2018 7 pm
Semperoper Dresden

Conductor= Daniele Callegari
Staging= Vincent Boussard , Set Design= Vincent Lemaire
Costume= Design Christian Lacroix , Collaboration Costume Design= Robert Schwaighofer
Lighting Design= Guido Levi , Video= Isabel Robson , Choreography= Helge Letonja
Choir= Jörn Hinnerk Andresen , Dramaturgy= Stefan Ulrich

≪Cast≫
Otello= José Cura
Jago= Markus Marquardt
Desdemona= Hibla Gerzmava
Cassio= Mert Süngü
Rodrigo= Simeon Esper , Lodovico= Lukasz Konieczny
Montano= Martin-Jan Nijhof , Emilia Jelena Kordić
Araldo= Chao Deng , Engel= Sofia Pintzou

Sächsischer Staatsopernchor Dresden
Staatskapelle Dresden
Co-production with the Salzburg Easter Festival





どうやら、もともと予定されていたキャストのペーター・ザイフェルトが病気でキャンセル、そしてその代役にたてられたロバート・ディーン・スミスがまた病気でキャンセル。そのまた代役をクーラが急遽引き受けたということのようです。

クーラ出演は3日の1回だけのようで、その後は元のキャストに戻るようです。
指揮者も病気で交代ということで、劇場側は相当大変だったことでしょう。


クーラは2月28日に、モナコのモンテカルロ歌劇場で、自ら演出・舞台デザインを手がけ、主演したブリテンのピーター・グライムズを終えたばかり。
約1カ月、モナコ滞在に滞在し、マドリードの自宅に帰宅したものと思っていました。




上はクーラのFBに掲載されたコメント。
「グライムズは終わった。素晴らしい1か月――非常に素敵なカンパニーと全てのレベルで優れた劇場のチーム。このように仕事をする喜び。さようなら、モンテカルロ。3年後に会いましょう。」



最後の数日、南欧も寒波に襲われて、モナコでも珍しく雪が積もったようでした。そうしたなか、しかも疲れもたまっていると思われますが、休息する間もほとんどないまま、急遽、ドイツへ。ドレスデンで同じように病気(インフルエンザの流行か?)にかからないことを祈ります。

別の記事でも紹介していますが、この3月、クーラはスケジュールが詰まっていて、中旬に中東オマーンでオペラ道化師に出演(3/15,17)、その翌週、プラハに戻って指揮者としてドビュッシーとラヴェルを演奏(3/21,22)し、そして月末にはハンガリーのブダペストで「ホセ・クーラの音楽的世界」と銘打たれたクーラ作曲の3曲を上演するコンサートが予定されています。

それぞれ、歌手、作曲家、指揮者として、独自の準備が必要な仕事なため、例によってハードワークでやりきるのだろうと思っていましたが、さらにこのオテロを引き受けるとは、いくら心身ともに頑強なクーラとはいえ、驚きです。

とはいえ、クーラなら可能だという理由もあります。もともとこのドレスデンのオテロは、2016年のザルツブルク復活祭音楽祭が初演で、その際、クーラが、ヨハン・ボータの病気キャンセル(そののち惜しくも死去)を受けて出演したのでした。

→ ザルツブルク復活祭音楽祭のオテロについての記事


ティーレマンが指揮したこの公演は、すでにDVDとして発売もされています。賛否両論あった演出ですが、なかなか美しい舞台でした。衣装もクリスチャン・ラクロアのシックで凝ったデザインで、クーラに似合っていました。映像は日本でもクラシカ・ジャパンで何回も放映されています。






ついでにネットにアップされている動画のリンクも。

Othello 2016, Salzburg - Cura, Roeschmann, Alvarez, Bernheim, Thielemann




以下、ザルツブルクの舞台から、いくつかクーラの画像を。

1回だけのピンチヒッターのため、今後、レビューや情報もほとんど出てこないと思いますが、クーラの献身的な奮闘で、公演が成功することを祈っています。











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