人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(録画編)2011年 ホセ・クーラ、ミラノ・スカラ座で道化師のカニオを歌う

2020-03-29 | オペラの舞台―道化師

 

 

世界を覆う新型ウイルス拡大の脅威のもと、各地のオペラハウスは公演キャンセル・閉鎖を余儀なくされています。そんななか、多くの劇場が、外出禁止のため自宅で過ごさざるをえない人々のために、公演のライブ放送や録画のアップをしてくれています。本当に感謝です。

今回は、イタリアのテレビ局RaiがネットサイトRaiPlayにアップしてくれた、ホセ・クーラ主演のレオンカヴァッロのオペラ、道化師を紹介したいと思います。

2011年1月~2月、イタリアのミラノ・スカラ座での公演です。指揮はダニエル・ハーディング。通常通り、カヴァレリア・ルスティカーナ(トゥリッドウが故リチートラ)とのダブルビルで上演されましたが、現在(3/29時点)公開されているのは道化師だけのようです。日本でもNHKの深夜枠で放映されたので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。

オペラ情報サイトのoperawire.comによると、2020年4月6日と12日に、この道化師とカヴァレリアの2作品が同時にストリーミングされるそうです。これは、スカラ座がRaiと協力して、3月23日から4月21日までの間、オペラを無料ストリーミングする一環のようです。RaiPlayなどで、2008年から19年に上演された、バレエを含む30の作品が公開されるそうです。ストリーミング後も、1か月ほどはオンデマンドで視聴可能なようです。素晴らしい作品、第一線のアーティストによる舞台がずらりと並んでいますので、ぜひ興味のおありの方はチェックされてみてはいかがでしょうか。

 

 

 


 

 

 

PAGLIACCI 
TEATRO ALLA SCALA 2011

Directed : Mario Martone
Scenes: Sergio Tramonti
Costumes: Ursula Patzak
Orchestra: Orchestra of the Teatro alla Scala
Conductor: Daniel Harding
Choir: Chorus of the Teatro alla Scala
Chorus Master: Bruno Casoni
Lights: Pasquale Mari

Nedda:  Oksana Dyka
Canio:  José Cura
Tonio:  Ambrogio Maestri
Beppe: Celso Albelo
Silvio: Mario Cassi

 

 

*この画像に、Raiの動画サイトRaiPlayの道化師のページにリンクを張ってあります(全編、約1時間20分)。

このリンク先がいつまで視聴可能なのかわかりませんが、4月6日に道化師とカヴァレリアがストリーミングされ、その後も1か月はオンデマンド放送されるそうですので、リンク切れの際は、RaiPlayで検索してみてください。

 

 

 


 

 

≪舞台の様子≫

 

この道化師のプロダクション、現代的で、なかなか美しい舞台です。カニオ一座の劇団員たちや、観客など、それぞれが生き生きと演技をしていて、ドラマティックに緊迫感を増していくクーラの演技・歌唱とも、しっかり相互に支え合っているように思います。

 

 

 

何より見どころは、クーラが演じる道化師一座の座長カニオです。クーラはいかにも支配欲、権力欲が強い、嫉妬深く暴力的な夫の役をいやらしく演じています。自然でリアル、ドラマティックな演技、一瞬たりとも気を抜かない、役柄になりきったクーラの姿は、クーラ本人がこういう嫌な性格の人物かと錯覚するほどです(笑)。特に、ラストシーンに向けて、たたみかけるような緊張感と緊迫感。客席まで巻き込んで巧みに動線をつくった演出、ラストのクーラの迫力は、最前列の観客をかなり驚かせたらしいです。

クーラのこのようなドラマティックな歌唱には賛否両論あり、この公演でも初日は天井桟敷からブーも出たそうです。批評でも、ドラマ性を評価しつつ、歌のフレージングが失われているというような指摘もありました。このあたりは、好みもありますし、オペラに何を求めるか、ということもあるかと思います。現代のオペラのあるべき姿として、キャラクターの人間性とドラマを演技と歌唱によってリアルに描きつくすことをめざしているクーラ。キャラクターとドラマのリアリティためにはメロディや音を歪ませることも厭わないと考えています。この点については、様々なお考えの方がいらっしゃることと思いますが、私にとっては、ここがクーラに惹きつけられる大きな魅力のひとつでもあります。

 

 

 

 

 

≪クーラとスカラ座≫

 

クーラは1991年、母国アルゼンチンから、祖母の出身地でもあったイタリアに移住しました。まずは親戚を頼って、イタリア北部、トリノやジェノヴァに近いサント・ステーファノ・ベルボという町に行ったようです。

その後、北部のジェノヴァやヴェローナ、トリノ、そしてミラノなどの劇場で活動の場を得て、テノール歌手として知られるようになっていきました。1997年1月には、このミラノ・スカラ座で「ジョコンダ」のエンツィオ役でデビューを果たします。それ以降、98年(マノン・レスコー)、99年(運命の力)、2011年(道化師)、15年(カルメン)に出演しています。

クーラのミラノへの思い、当時の様子、移民として重ねた苦労、キャリアが順調になるまでの苦闘については、これまでのいくつかのインタビューを紹介しています。クーラの人となりがよくわかりますので、お読みいただけるとうれしいです。

→ 「インタビュー 私にとってミラノは、壮大な都市であり、成功へのハードな闘争の象徴

→ 「2013年 ホセ・クーラ キャリアを拓くまでの苦闘、決断と挑戦、生き方を語る

 

またクーラの道化師の作品論と解釈、カニオ論についても、以下の記事などで紹介しています。

→ 「カヴァレリア・ルスティカーナと道化師の演出

→ 「道化師の解釈 "私は仮面の背後にいる"

→ 「2005 ~ 2016年 ホセ・クーラ ベルリンの道化師

 

 

 

 

ーーこれらのインタビューから、いくつかの言葉を

 

●ミラノで開け始めたキャリア

1991年、私は2つの目的をもってイタリアに到着した。1つは、私自身のルーツを再発見するため。母方の祖母はイタリアのクーネオ県サント・ステーファノ・ベルボ Santo Stefano Belbo の出身だった。もう1つは、仕事を探すことだった。

私はオーディションを探し、エージェントをまわった。しかし、誰も私を評価してはくれなかった。私の最後のカードを使うことに決めた。テアトロ・コロンの歌の教師からもらった電話番号にかけた。テノールのフェルナンド・バンデラだった。彼は電話にでて、ミラノで会う約束をしてくれた。この街に着いたのは4月で、重い雨が降っていた。

(2015年インタビュー)

 

 

●ミラノで受けたオーディション

マエストロ・バンデラは、彼をミラノに来るように言った。そしてホセは、小さいビアンキで高速道路上のトラックの間にはさまれながら、再び大洪水のなか、風の中の葉っぱのようにミラノに向かった。

「私はミラノに初めて行ったので道に迷い、30分遅れて到着した。」

彼がバンデラの前に姿をあらわした時、先生は遅れのためにほとんど時間がなくなっていたが、ホセは3分間のチャンスを懇願した。

「認めよう」と彼がついに言った、「君は何を歌いたい?」

「アンドレア・シェニエの『ある日、青空を眺めて』を」とホセ

「それは偉大なテノールのためのものだ。難しすぎる」

「見てほしい。私に何らかの才能があるかどうか、あなたに示すのにはたった2分しかかからない。それは完璧ではないだろうが、あなたが判断するのに役立つはずだ」

生き残った。ピアノで伴奏していたバンデラ氏は、手を止め、そのような声がどこから来たのかと尋ねた。彼は自分の話と、帰国のチケットがあと数日で期限切れになるという事実を語った。「どこにも行ってはならない!」、バンデラ氏は急いで、エージェントに電話した。遅かれ早かれ何かがクーラに起こるだろうと確信し、イタリアで1か月暮らすための資金を提供しながら、ホセに忍耐するよう求めた。

(2013年)

 

 

●スカラ座のブーイングについて

これは全ての観客に関係することではない。また私だけにあることでもない。これらの人々は、個性あるアーティストをターゲットにして否定し、ブーイングの恐ろしさに対して何も配慮することがない。スカラでは多くのアーティスト、カラスでさえその対象にされた。口笛は、設計者ピエル・マリーニの時代以来、劇場の歴史の一部だ。今では、反対の意思表示以上のものになっている。

20年以上のキャリアを経て、私は、アーティストに敬意を示してくれる場所で観客の前に行き、演奏する喜びを感じている。非常に残念なことだ。オペラ劇場としてのスカラ座は、オーケストラ、合唱団、技術設備、もっとも優れたものを兼ね備えており、本当に驚くべき素晴らしさであるのに。

(2015年)

 

 

 

 

 


 

 

 

ミラノなどのイタリア北部の町々、ミラノスカラ座やボローニャ、トリノ、ヴェローナ、ジェノヴァと、それぞれの町にある世界でも有名な歌劇場の数々ーーそれらはクーラにとって、欧州移住とデビュー、キャリアの開始と展開の地であり、第2の故郷ともいえる場所ではないかと思います。クーラもスカラ座を愛し、スカラ座のオケ、合唱団、スタッフを高く評価しています。しかし、前述のインタビューでも紹介したように、天井桟敷に象徴される特殊な問題もあり、また緊縮財政、劇場首脳の経営方針等も相まってか、2015年のカルメン以来、残念ながらクーラはスカラ座には出演していません。

現在、イタリア北部は、新型ウイルスで非常に困難なたたかいを強いられています。クーラが現在住んでいるマドリードも、そして私たちの日本、東京も・・。世界中で劇場閉鎖も続いています。劇場の厚意で、無料のストリーミングや動画アップがなされているのは、本当に嬉しいし、大歓迎です。でも一方で、本来、これらによって収入を得ることができたはずの劇場、アーティスト、技術者やスタッフの方々が苦境におかれるのは困ります。

そんな中、欧州の国々の多くで、芸術文化事業、アーティストやフリーランスの方々に対し、助成金や給与補償などが実施されていることは本当に素晴らしい、希望ある動きだと思います。日本でも早く実現してほしいと切に願います。そして早く事態が好転し、安心して芸術・文化を楽しめる日が訪れることを。何よりも、クーラと、スカラ座をはじめとする劇場関係者、イタリアの皆さんが健康を維持され、再び劇場再開の日を無事に迎えられることを心から願っています。

 

 

*画像は動画や報道などからお借りしました。

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(名古屋公演チケット発売編)2020年 ホセ・クーラ、来日してアイーダのラダメスを再び歌う?! バーリ歌劇場来日公演

2020-03-22 | バーリ歌劇場来日公演アイーダ

*画像は2005年伊ヴェローナでの舞台より

 

*6/1追加 残念ですが公演キャンセルとなったようです。 → (公演中止)編

*4/29追加 名古屋の先行発売は、コロナ禍による業務縮小にため中止になったとのことです。

*4/1追加

大阪堺市のフェニーチェ堺が、バーリ歌劇場のアイーダを告知しました。ラダメスにホセ・クーラの名前が!そしてアイーダは、チェドリンスです。チケットの一般発売は5月末からとのことです。

これでクーラ出演は、名古屋(11/15)と堺(11/13)が明らかになりました。あとは、東京でしょうか。情報が待たれます。

 

 

 

 


 

 

世界的に猛威を振るう新型ウイルスによって、市民生活と社会に重大な影響が及び、劇場の閉鎖をはじめ、アーティストにとっても深刻な打撃が広がっています。とりわけ、オペラ発祥の地イタリアの困難な現状を伝えるニュースを見るたびに、本当に胸が痛みます。一日も早く、事態が好転、収束に向かうことを願っています。

この影響がいつまで続くのか、楽観視することも予断を持って語ることもできません。そういう状況のもとではありますが、今年の秋、2020年11月のバーリ歌劇場の来日公演のヴェルディのアイーダについて、名古屋でのチケット発売をはじめ、いくつか新しい情報がありますので、とにかくまとめてみました。まだ全容は明らかになっていません。

イタリアは現在、最も深刻な感染拡大に苦しむ国のひとつであり、半年以上先の11月とはいえ、バーリ歌劇場の引っ越し公演が可能になるのかどうか、私にはまったく判断する材料はありませんので、ご注意ください。いずれにしても、今後の状況、推移をみまもり、情報を待つしかありません。

 

*バーリ歌劇場来日公演アイーダの情報については、これまでのブログ記事もご利用ください。

 (緊急告知編) (緊急告知編その2) (残念編) (名古屋クラシックフェスティバル告知編)

 

 

 


 

 

≪チケット発売のお知らせーー第38回名古屋クラシックフェスティバル・愛知県芸術劇場≫

 

ホセ・クーラの出演が、現時点(3/21)では唯一、公表されているのが、名古屋市の愛知県芸術劇場での公演です。中京テレビ主催の第38回名古屋クラシックフェスティバルの一環です。”ラダメス:ホセ・クーラ”と明記されています。

すでにチケット発売の告知ページもHPに作成されています。

*4/29追加 先行発売は、コロナ禍による業務縮小にため中止になったとのことです。

 

特別先行予約ーー ウェブ 4月23日(木)10:00~ 4月26日(日)23:59まで

            電話  4月25日(土)10:00~ 一日限り

一般発売 ---ー    5月29日(金)10:00~

 

チケット代金や学生券について、また電話番号やウェブによる購入の入り口など、詳細について、フェスティバルの以下のサイトに掲載されています。ぜひ直接ごらんください。

 

           

 

 

 

 

 

 

≪公表されている公演予定について≫

 

このブログの(緊急告知編その2)で、イタリアの報道を紹介しましたが、そこでは、バーリ歌劇場の日本ツアーは9都市、12公演と書かれてありました。具体的な都市名では、東京、津、堺、大津、名古屋、浜松、松戸、高崎、水戸の名前があがっていました。

現時点(2020年3月21日)で私が調べた範囲では、上記の名古屋を含め、5つの都市の劇場が公演予定を公表しているようです。

 

 

●11月12日(木) 三重県津市 三重県文化会館   *チケット 7月12日(日)10時発売

●11月14日(土) 滋賀県大津市 びわ湖ホール(2020年プログラムPDF) *チケット 一般5月31日(日) 友の会29日(金) キャスト:アイーダ=マリアグレギーナ、ラダメス=カルロ・ヴェントレ他  

●11月15日(日) 愛知県名古屋市 愛知県芸術劇場  (上記・名古屋クラシックフェスティバル)

●11月16日(月) 静岡県浜松市 アクトシティ浜松 (2020年プログラム) *チケット 友の会6月7日(日) 一般販売6月13日(土)

●11月19日(木) 群馬県高崎市 高崎芸術劇場 (ただし劇場HPには未掲載。ソースは「ONTOMO」より)

 

ONTOMO」の記事より

       

 

 

まだ東京、大阪などをはじめ、他の4都市の情報はつかめていません。

またキャストは、ラダメスが名古屋でクーラのほかは、びわ湖でカルロ・ヴェントレーと公表されていますが、それ以外は後日公表となっています。

とりわけ東京でいつ、どこで、そして誰が歌うのか、情報が待たれます。もしご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせいただけるとありがたいです。

 

 

 


 

 

いずれにしてもこの新型ウイルスの感染拡大が阻止され、命と健康、くらしが守られる保障がなければ、オペラの来日公演も実現できませんし、マドリード在住のクーラやイタリアのアーティストたちが安心して出演することも、私たちが心から芸術を楽しむこともできません。

今回の事態によって、あらためて、グローバル化がすすんだ現代の社会が、地球規模で密接に結び付き、世界のどこかで起きた危機があっという間に飛び火、拡大し、さまざまな社会と市民生活に深刻な影響を及ぼしかねない時代なのだということを、とてもリアルに実感させられました。

こうした感染症にくわえ、地震や自然災害などが、毎年のように私たちのくらしを脅かしています。気候変動と地球温暖化など、早く対策をうたなければ簡単には後戻りできない課題があります。さらに戦争の勃発や核攻撃は、いったん起きてしまったなら、現代の私たちが享受している「便利」な生活も、また豊かな文化や芸術も、そして健康な体や命さえも、あっという間に奪われてしまいます。いかに現代の生活が、一見、安定しているかのようで、危ういものの上に構築されていることか、深く考えざるをえません。とりわけ国民の命やくらしを守る政治と社会のシステムが脆弱な日本ではなおさらです。

大好きな歌手の歌声を聞き、音楽を楽しみ、芸術によって人生を豊かにしたい、そのためには、今の政治や社会のあり方に無関心ではいられなし、できることで共同しあうことが大切なのだとつくづく思います。

 

 

 

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(公演編)2020年 ホセ・クーラ、ハンブルクでオテロを歌う

2020-03-20 | ハンブルクのオテロ2020

 

 

 

ホセ・クーラは、2020年3月12日と15日の2公演、北ドイツのハンブルク歌劇場でヴェルディのオテロを歌う予定でした。 

しかし急速に世界中に広がった新型ウィルスによる感染対策で、ドイツ政府は屋内では1000人以上のイベントを中止するよう勧告しました。当初は、ハンブルク市当局の方針をふまえて、個別に判断し、対策をしっかりとったうえでの公演続行を表明したハンブルク歌劇場でしたが、ドイツ国内での急速な感染拡大を背景に、3月13日から4月30日までの公演キャンセルを発表しました。  
 
こうした経過をうけて、3月12日のクーラのオテロはぎりぎりで開催され、ハンブルク歌劇場が長期閉鎖になる前の最後の公演となりました。不幸中の幸いというべきか、一公演のみが実現したオテロ、さまざまな人々の思いをうけ、奇跡的な一夜となりました。
 
SNSや劇場のHPなどから、今回のオテロについて紹介したいと思います。
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
*劇場HPのオテロ告知ページ。ただし舞台写真に写っているのはクーラではなく、初演時のマルコ・ベルティ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
≪急激に広がった感染対策による劇場閉鎖≫
 
 
 
●クーラのFB
 
日本時間の3/11、現地では10日に更新されたクーラのFB記事です。すでに欧州での感染拡大が深刻化し、ドイツ国内での感染の拡がりもふまえて、確か9日だったと思いますがドイツ政府が、1000人以上集めるイベントを中止するように勧告しました。そういう状況のなかで、多くのファンが心配していることを考慮して、このコメントを出してくれました。
 
 
 
 
”親愛なるみなさん。多くの人たちが状況を考慮して、私がハンブルグでオテロに出演するかどうかを聞いてきている。私は、私たちキャストが皆、ここにいて、ショーをする準備ができていることを伝えて、みなさんを安心させたいと思う。しかし、状況は刻一刻と変化しているため、今後48時間でどうなるかはわからない。だから、警戒を怠らず、最善を尽くそう。 ホセ ”
 
 
 
 
●劇場によるオテロの告知
 
劇場側もハンブルク市当局と相談のうえだと思いますが、いったんは、公演続行を公表。オテロの告知が出され、その時はほっとしたのでしたが・・。
 
 
 
 
 
●公演キャンセルを伝える劇場HP
 
その後、さらに人数にかかわらず、イベント中止を求める当局の勧告が出されたこと、EU域内での感染拡大など、急速な事態の進展を背景に、ハンブルク歌劇場も、3月13日から4月30日までの公演キャンセルを発表しました。前後して、欧州の歌劇場のほとんどが、公演キャンセル、閉鎖をつぎつぎと決めていきました。ドイツ政府の対応、EUの状況、劇場の対応などが、わずか数日の間に急激に変化していった渦中のできごとでした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
●オテロ初日の前日3/11に出されたFBでのキャンセル告知
 
 
 
 
 
 
 
≪閉鎖前の最後の公演に≫
 
 
1夜のみでしたが、日々激変する状況のなか、幸いにも実現したクーラのオテロの公演。時期的な偶然とはいえ、ハンブルク歌劇場のつよい意志も感じました。イタリアオペラを特集する企画の一環として取り組まれたものでした。
 
事前に告知されていたキャストからの変更もありました。デズデモーナは、ベテランのストヤノヴァから、若手のアメリカのソプラノ、アイリーン・ペレスに。指揮者も公演直前に、ダニエル・カレガリに変更になりました。新型肺炎対応もあり、落ち着いてリハーサルする時間も十分確保できなかったのではないでしょうか。
 
しかしオテロの公演は大成功、劇場閉鎖前の最後の一夜ということもあって、感動的な公演になりました。
 
 
 
 
●1夜だけとなったオテロの公演を前にーークーラのインスタより
 
 
 
”今夜のオテロの準備中。ハンブルク歌劇場が閉じる前の最後のショー。本当に奇妙で、悲しく感じる。 このトリッキーな瞬間、問題を抱えている皆さんに幸運を。一緒にいて、すぐに再起動する準備を !!! ”
 
 
 
 
 
●クーラがFBでシェアしたカーテンコールのスタンディング・オベーションの動画
 
 
 
”昨日のスタンディングオベーション。 感情的なショー!”
 
 
 
このカーテンコール動画は、ドイツのオペラ雑誌Das Operanglasがアップしたものです。「とても感動的な舞台」とクーラが語ったように、この動画をみるとわかりますが、終演後も拍手が長く続き、最後は大勢の観客が舞台前に詰めかけてスタンディング・オベーション。エキサイティングな公演、素晴らしい出演者への喝さいと、劇場閉鎖前の最後の夜に名残を惜む思いが込められていたように思います。
 
 
 
 
●指揮者のカレガリ氏のツイート
 
 
 
”木曜日は、この悪名高いコロナウイルス(による閉鎖)の前の、ハンブルク歌劇場での最後のオテロの公演だった .... この悪夢がもうすぐ終わることを望む .... 全世界のすべてのアーティストに大きなハグを🙏”
 
 
 
 
●デズデモーナ役アイリーン・ペレスさんのFBより
 
 
 
”ハンブルク歌劇場でホセ・クーラとともに歌うことができたのは、とても名誉なことだった。彼は、舞台上での信じられないほどの芸術性と優雅さで、私が若い歌手として尊敬した最初のラテン系アーティストの1人。 彼のオテロとデスデモーナを歌えることができて、夢が叶った。”
 
 
 
 
 
 
 
 
 
●イアーゴ役アンドレイ・ドバー氏のFBより
 
 
 
”この写真は、「オテロ」公演の後、ちょうど1週間前にハンブルク歌劇場で撮影された。それ以来、世界は急速に変化したが、私たちは再び会って歌うだろう、きっと!”
 
 
 
 
●エミリア役のマリア・クリスティーナ・ダミアンさんのFBより
 
 
 
”昨日、ハンブルク歌劇場で最初で最後のオテロのパフォーマンスがあった。ユニークなホセ・クーラとステージを共有できたことに感謝。非常に驚くべき、理屈抜きの声、そして圧倒的な個性。まさに「Ecco il Leone」”
 
 
*「Ecco il Leone」=「これがライオンだ」ーーオテロは「ライオン=獅子」と称えられた勇敢な指揮官。ただしオテロの物語において、この言葉は、第3幕の終わり、イアーゴが、自らの策略に嵌り、自滅、混乱し倒れ込んだオテロを足蹴にしながら言い放つ。
 
 
 
 
 
●観客のSNSより
 
 
 
 
 
 
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●帰国ーークーラのFBより 
 
 
 
”バックホーム、安全と健全さを! 休息し、たくさんの新しい音楽を作曲する時間 ... みんな元気で。慎重に、注意を。遅かれ早かれ、これらは終了し、私たちは一緒に再起動する必要がある!!!”
 
 
 
 

 

 

感染症対策のため、世界各地で劇場をはじめとする文化施設が閉鎖されています。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場では、今シーズン(2019/20年、5月まで)の残りの公演を全てキャンセルし、劇場のオケ、スタッフ、合唱団の歌手らは一時解雇というニュースも流れてきました。日本でも、オーケストラ、文化団体、劇団、フリーランスのアーティスト、技術者など、大勢の方たちに深刻な影響が及んでいるようです。本当に辛い状況になってきました。

フランス、ドイツなどでは、公的助成を充実させるという動きもあるようです。ぜひ、人間のくらしと世界をより豊かに、美しくしてくれる、なくてはならない存在である文化と芸術の担い手のアーティストの皆さんが、権利と尊厳、そして生活が保障されるように、公的な助成の充実をつよく願っています。そして何よりも、一刻も早く、新型感染症が制圧され、事態の収束が図られることを。

さまざまな困難、懸念を乗り越えて、ハンブルク歌劇場の閉鎖前最後の公演、オテロを成功させてくださった、劇場関係者、クーラとアーティストの皆さん、指揮者とオーケストラ、技術者、スタッフの皆さんに、心からのお礼と感謝の思いを伝えたいと思います。ありがとうございました。
 
 
 
 
 
*出演者、関係者等のSNSよりお借りしました。
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2020年 ホセ・クーラ、ドイツでアルゼンチン音楽のコンサート

2020-03-04 | アルゼンチンや南米の音楽

 

 

2020年2月28日、ホセ・クーラはドイツ南西部の都市ルートヴィヒスハーフェン・アム・ラインで、母国アルゼンチンなど南米の音楽をプログラムとするコンサートに出演しました。

先日、今年11月にホセ・クーラが、愛知芸術劇場(名古屋)でバーリ歌劇場のアイーダに出演するということが、中京テレビ(主催)から公式発表されましたが、依然としてクーラの公式カレンダーは沈黙のまま(苦笑)です。今年は、オテロの演出も予定され、またハンガリー放送芸術協会の客員アーティストとして多彩なプログラムやレコーディングの計画も進行中のため、多忙なのはわかりますが、すでに今年も3月になっているのに年間のスケジュールがわからないのには困り果てています。

そうしたなかで、フェイスブックやネット上の記事で告知されていた公演のひとつが、この2月末のドイツのコンサートでした。今年初の歌の公演ではないかと思います。

主催者は、ルートヴィヒスハーフェンに本社をおく世界的化学会社BASFで、企業の文化事業として様々な企画が行われているようです。今シーズンは「ビッグフォー」という企画で、クーラの他、エリーナ・ガランチャなども招聘されたようでした。会場は、BASF社が運営するファイアアーベントハウスというコンサート会場です。 

 

 


 

 

*画像はハンガリー放送芸術協会のインスタより

 

 

José Cura, tenor
Hungarian Radio Symphony Orchestra

program "Argentinian Songs"

Feb 28 2020 8 p.m.
BASF Feierabendhaus

 

 

コンサートは、上の写真に見るように、ステージの上に室内楽オケを配置し、その中央にクーラが座って、指揮をしながら歌うというスタイルでした。最近は、このスタイルで、アルゼンチン歌曲を歌うのがコンサートの定番のひとつとなっているようです。オケは、ハンガリー放送交響楽団。ギターのソリストとして、チェコの若いギタリスト、バルボラ・クビコバさんが共演しました。

 

 

≪パンフレット≫

PDFで7ページ分のパンフレット。ドイツ語です。画像にリンクを張っています。

 

 

 

≪プログラム≫

 

プログラムには、クーラが愛するアルゼンチンの作曲家の歌曲がびっしりと並んでいます。クーラが、チリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの詩に作曲した曲も加えられています。全体で、約2時間くらいのコンサートだったようです。

 

~前半50分~

Hilda Herrera (1933~)  ヒルダ・エレーラ
„Desde el fondo de ti“

María Elena Walsh  マリア・エレナ・ウォルシュ
(1930 – 2011)
„Postal de guerra“

Carlos Guastavino  カルロス・グアスタヴィーノ
(1912 – 2000)
Tres canciones
„Violetas“
„Pájaro muerto“
„Donde habite el olvido“
„Se equivocó la paloma“
„Prestame tu pañuelito“
„El albeador“
„Romance de José Cubas“

Felipe Boero(1884 –1958)  フェリペ・ボエロ
„Funeral Coya“

Alberto Ginastera(1916 –1983)  アルベルト・ヒナステラ
„Canción del árbol del olvido“

José Cura(1962~)  ホセ・クーラ
„Pensé morir“

(休憩)

~後半45分~

Carlos Guastavino  カルロス・グアスタヴィーノ
„La rosa y el sauce“
„Flores argentinas“
„Cortadera, plumerito“
„Campanilla“
„¡Qué linda la madreselva!“
„La flor del aguapé“
„Ay, aljaba, flor de chico“
„Cuando acaba de llover“
„Yo, maestra“
„Ya me voy a retirar“
„Los días perdidos“
„Las nubes“
„Jardín antiguo“
„Alegría de la soledad“

 

「タンゴ以上。 ホセ・クーラは、現代のヴェリスモ・オペラを代表する偉大な人物の1人。 アルゼンチン人は30年間ヨーロッパに住んで働いてきた。しかし彼は、常に子ども時代のメロディーに引き戻される。ホセ・クーラは祖国を心の奥深くに運び、印象的な舞台の存在感と思いやりのある控えめな方法で、人々に、彼らの魔法を特別なものにすることができる。
クーラが考案したこのプログラムには、信じられないほど親密な歌が含まれている。それらのすべては、詩と音楽の間の密接な関連を持っている。例えば、クーラがパブロ・ネルーダの詩に基づいて書いたオリジナルの作曲や、『アルゼンチンのシューベルト』として知られるカルロス・グスタヴィーノの作品には、叙情的な熱意と飽くことのない憂鬱が込められている。感傷的ではない、哀愁でいっぱいの夜。」

(コンサート紹介文より)

 

 

 

≪コンサートの様子~オケのインスタより≫

 

 

 
 
 
 
 
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#fridaynight #JoséCura #HungarianRadioSymphonyOrchestra #BarboraKubikova #ArgentinianSongs

MagyarRádióMűvészetiEgyüttesei(@magyarradiomuveszetiegyuttesei)がシェアした投稿 - <time style="font-family: Arial,sans-serif; font-size: 14px; line-height: 17px;" datetime="2020-02-29T14:27:07+00:00">2020年 2月月29日午前6時27分PST</time>

 

 

 

≪レビューより≫

 

*この写真は、以前、ルートヴィヒスハーフェンを訪れた時のもののようです。

 

” 魅惑的なラテン系のいい男という呼び声は依然として彼の前にあった。しかし一方で、アルゼンチンのテノール、ホセクーラは、BASFファイアアーベントハウスの「ビッグフォー」に出演した際、偉大なアーティストに成熟していた。そのカリスマ性によって、彼はハンガリー放送交響楽団とともに、聴衆を2時間以上にわたって魅了した。

哀愁と官能に満ちた夕べーー昨年、伝統的なハンガリーのオーケストラは、ホセ・クーラとの長期的なコラボレーションを発表した。 「これは私の家族だ」と、世界のスターは最初に言った。 歌手、指揮者、ステージデザイナー、ディレクター、作曲家、モデレーターとして、彼はコンサートを続けている..…”

(以下は有料記事で読むことができませんでした)

 

 

 

≪関係者がアップしてくれた動画≫

 

主催者や共演者のFBに、会場内からとった短い動画が紹介されていました。アンコールの際のようです。

クーラがおしゃべりで場内を笑わせながら、コミュニケーションをとっている、とても親密なコンサートの雰囲気が伝わります。

 

 

 

 

 

こちらは、コンサートの告知用に掲載された動画

 

 


 

 

今回のコンサートのような、決して大きすぎない会場で、室内楽オケ、またはピアノ伴奏による、クーラのアルゼンチン歌曲の公演、ぜひ、11月に来日した際にも、どこかで企画していただけないものでしょうか。すでに1998年にクーラは、「アネーロ」というアルゼンチン歌曲のCDを出しており、このコンサートで歌った曲も多数収録されています。なじみのある曲も少なくないと思います。14年ぶりの来日のチャンス、クーラの円熟の魅力を、親密なアルゼンチン歌曲のコンサートで味わいたいものです。ぜひぜひ、よろしくお願いいたします!

 

 

*写真などは関係者のSNSよりお借りしました。

 

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