人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(録画)2022年 ホセ・クーラ、自作の音楽劇「もし私が死んだら」をマルタで上演

2022-12-09 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

ホセ・クーラは2022年10月2日、地中海にうかぶ島国マルタの首都バレッタのマノエル劇場で、アルゼンチン歌曲のコンサートを行いました。

そして12月7日にクーラがFBで、コンサート前半部分の動画がアップされていることを教えてくれました。とても魅力的でドラマティックなコンサートだったので、動画リンクをご紹介したいと思います。

動画では、はじめにクーラがアルゼンチン歌曲を歌いながら入場、聴衆にあいさつした後、英語で語りかけ、携帯電話をチェック(笑)をお願いしたり。その後、さらに1曲歌った後、クーラの解説をはさんで、この日のメインである、クーラ作曲の音楽劇「もし私が死んだら」(上演時間約25分ほど)が上演されます。全体で約40分です。

この音楽劇は、チリの世界的詩人でノーベル文学賞受賞者のパブロ・ネルーダの詩「愛と死のソネット(百の愛のソネット)」から、7篇の詩にクーラ自身が1995年から2006年にかけて作曲したもの。ネルーダと妻のマチルデとの激しく深い愛と死への思いを描いた詩を、マチルデ役の女優ジェーン・マーシャルさんによる朗読とクーラの音楽と歌で熱くドラマティックに表現されています。

これまでに、クーラのCDアネーロに一部が収録され、2015年にはプラハ交響楽団のコンサートでオーケストラ版が世界初演(ピエタリ・インキネン指揮)されました。また抜粋してコンサートで歌ったりもしてきましたが、まとまって動画で公開されるのは初めてではないかと思います。ただ残念ながら動画の最後の部分がなぜか途中で終わっています。

マルタの文化局のYouTubeチャンネルに掲載された動画のリンクを紹介するとともに、クーラのこのネルーダの詩と作曲にかけた想いをこれまでのインタビューなどから補足的に紹介したいと思います。

クーラが愛したネルーダの詩とクーラのドラマティックな音楽、ぜひリンク先の動画をご覧になってみてください。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

●動画を紹介したクーラのFB

 

 

 

●動画リンク

José Cura Concert in Malta

 

 

 

 

 


 

 

 

Jose Cura Concert in Malta
2 October 2022    Teatru Manoel
José Cura 
Jane Marshall (Actress)
Sofia Marmania   (Pianist)

Part I

Desde el fondo de ti   by Hilda Herrera (a cappella song)
Postal de guerra   by María Elena Walsh
Canción del árbol del olvido   by Alberto Ginastera
Neruda sonnets - Si muero, sobrevíveme!  by José Cura 
    • Amor mío, si muero
    • Es bueno, amor
    • De noche, amada
    • Pensé morir  
    • Si muero, sobrevíveme! 
    • Quienes se amaron como nosotros? 
    • Cuando yo muera
 
Part II (Carlos Guastavino)
Violetas
Pájaro muerto
Prestame tu pañuelito
Elegía para un gorrión
Se equivocó la paloma:
Las niñas (piano solo)
La rosa y el sauce :
Ya me voy a retirar
Yo, maestra
Jardín antiguo
Soneto IV
Cuando acaba de llove
El albeador
 
Duration: 2 hours (including interval)

*コンサート後半のアルゼンチンの作曲家カルロス・グアスタヴィーノの曲の部分は動画には収録されていません。

 

 

動画で公開されたのはコンサートの前半だけでしたが、この小規模だけれど美しく歴史的建造物でもあるマノエル劇場での公演は、とても親密な雰囲気で、大成功だったようです。ある参加者は、SNSにつぎのように感想を述べていました。

” ホセ・クーラは真のプロフェッショナルであり、聴衆と関わる驚くべき能力を備えている。マノエル劇場での素晴らしいパフォーマンス!”

 

この音楽劇「もし私が死んだら」は、クーラが渡欧後、国際的な活躍を始めた時期、32~33歳頃に作曲を始めたものだそうです。オペラ公演の楽屋に匿名で届けられたネルーダの詩集に感銘を受けて、3曲を書きあげ、「アネーロ」のCDにも収録されています。その後、2002年に他の4つの詩に作曲し、2006年に全体が完成しました。さらにオーケストレーションを手がけ、プラハで2015年に初演されました。

クーラはこのネルーダの詩と自らの作曲について、これまでにも何度か紹介していますが、以下のように述べています。

 

 

―― ネルーダの言葉には演劇とドラマが満載されている

 

「ネルーダの詩は感覚を目覚めさせ、昔ながらの方法で演劇的。それぞれの選択肢は、言葉にそってメロディーを書いたり、音楽を書くこと、しかしそれは、ネルーダの魅惑的な世界を開く感覚的な豊かさをともなうことが必要だ。」

「音楽の複雑さはテキストの複雑さに関係しているので、純粋なメロディーを聴く必要はない。メロディーそれ自体を提示することから離れて、詩に集中しなければならない。」


「ネルーダの詩に曲をつける時、きわめて注意深くなればいけない。クリスタルガラスの間を歩くようなもの。彼の言葉、詩はとても豊かで、完璧だから、すべての音が聴衆の注意をそらすリスクを負う。」

 

 

―― 私の心と魂にふれてほしい


「私の曲で、私の心と魂にふれてほしい。ネルーダのドラマの中で、親密な愛の物語を描きたかった。この作品は音楽だけでなくドラマ。パブロと妻との会話。人間が書くことができる最もロマンチックで官能的な言葉。」

「パブロ・ネルーダの詩は非常にエモーショナルであり、ステージ上であまりにそれに入り込みすぎないよう、注意深くする必要があった。詩の言葉が、本当に観客の胸を打つように、私は音楽に妥協点を見つけたと思う。」

 

* * * * *

 

 

この曲についてのクーラの発言や、そのうちの2曲分だけですが詞の私訳(お粗末なものですみません)などを、これまでのブログでも紹介しています。

 

ホセ・クーラが作曲し、歌う、パブロ・ネルーダの詩 / Jose Cura and Pablo Neruda

2016年 ホセ・クーラ ドイツとルクセンブルクでラテンアメリカの曲コンサート

 

 

 

●公演当日の様子――バレッタ文化庁のFBより

 

 

 

 

――マルタの文化庁・劇場などによる告知報道

 

●コンサート告知の短いインタビュー

VCA - Concert by José Cura - Mro José Cura Interview

 

 

●コンサートの内容紹介とリハーサル風景

 

Jose Cura and Jane Marshall - Manoel Theatre in Malta a collaboration with Valletta Cultural Agency

 

 

●劇場と文化庁による広報動画ーークーラのコンサート告知と2023年のトスカ演出を発表

 

 

来年2023年3月には、このマニエル劇場で、クーラが新制作トスカの演出をし、カヴァラドッシとして出演もすることも告知されています。

 

 

 

 

 

 


 

 

クーラの音楽劇、とても美しくドラマティックで、今回の動画では、マルタのベテラン女優さんも参加したことで、いっそう劇的な緊張感も高まって感動的でした。

ただ最後が途切れていたようで、なぜかはわかりませんが、これで全部ではないと思われます。ぜひ近いうちに、CDやDVDなどで全体が視聴できるようにしてほしいものです。

またこうしたアルゼンチン歌曲やクーラ作曲の作品をメインにしたコンサート、ぜひ日本でも企画してもらえないものでしょうか。長く続くコロナ禍ですが、幸いコンサートやオペラ公演などは来日公演も含め、かなり復活しているようです。2006年以来、来日のないクーラですが、オペラ歌手だけでなく円熟のアーティストとして発展してきたクーラの現在の到達を、ぜひ日本でも見せてほしいと切望します。

 

 


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