人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(録画)2022年 ホセ・クーラ、自作の音楽劇「もし私が死んだら」をマルタで上演

2022-12-09 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

ホセ・クーラは2022年10月2日、地中海にうかぶ島国マルタの首都バレッタのマノエル劇場で、アルゼンチン歌曲のコンサートを行いました。

そして12月7日にクーラがFBで、コンサート前半部分の動画がアップされていることを教えてくれました。とても魅力的でドラマティックなコンサートだったので、動画リンクをご紹介したいと思います。

動画では、はじめにクーラがアルゼンチン歌曲を歌いながら入場、聴衆にあいさつした後、英語で語りかけ、携帯電話をチェック(笑)をお願いしたり。その後、さらに1曲歌った後、クーラの解説をはさんで、この日のメインである、クーラ作曲の音楽劇「もし私が死んだら」(上演時間約25分ほど)が上演されます。全体で約40分です。

この音楽劇は、チリの世界的詩人でノーベル文学賞受賞者のパブロ・ネルーダの詩「愛と死のソネット(百の愛のソネット)」から、7篇の詩にクーラ自身が1995年から2006年にかけて作曲したもの。ネルーダと妻のマチルデとの激しく深い愛と死への思いを描いた詩を、マチルデ役の女優ジェーン・マーシャルさんによる朗読とクーラの音楽と歌で熱くドラマティックに表現されています。

これまでに、クーラのCDアネーロに一部が収録され、2015年にはプラハ交響楽団のコンサートでオーケストラ版が世界初演(ピエタリ・インキネン指揮)されました。また抜粋してコンサートで歌ったりもしてきましたが、まとまって動画で公開されるのは初めてではないかと思います。ただ残念ながら動画の最後の部分がなぜか途中で終わっています。

マルタの文化局のYouTubeチャンネルに掲載された動画のリンクを紹介するとともに、クーラのこのネルーダの詩と作曲にかけた想いをこれまでのインタビューなどから補足的に紹介したいと思います。

クーラが愛したネルーダの詩とクーラのドラマティックな音楽、ぜひリンク先の動画をご覧になってみてください。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

●動画を紹介したクーラのFB

 

 

 

●動画リンク

José Cura Concert in Malta

 

 

 

 

 


 

 

 

Jose Cura Concert in Malta
2 October 2022    Teatru Manoel
José Cura 
Jane Marshall (Actress)
Sofia Marmania   (Pianist)

Part I

Desde el fondo de ti   by Hilda Herrera (a cappella song)
Postal de guerra   by María Elena Walsh
Canción del árbol del olvido   by Alberto Ginastera
Neruda sonnets - Si muero, sobrevíveme!  by José Cura 
    • Amor mío, si muero
    • Es bueno, amor
    • De noche, amada
    • Pensé morir  
    • Si muero, sobrevíveme! 
    • Quienes se amaron como nosotros? 
    • Cuando yo muera
 
Part II (Carlos Guastavino)
Violetas
Pájaro muerto
Prestame tu pañuelito
Elegía para un gorrión
Se equivocó la paloma:
Las niñas (piano solo)
La rosa y el sauce :
Ya me voy a retirar
Yo, maestra
Jardín antiguo
Soneto IV
Cuando acaba de llove
El albeador
 
Duration: 2 hours (including interval)

*コンサート後半のアルゼンチンの作曲家カルロス・グアスタヴィーノの曲の部分は動画には収録されていません。

 

 

動画で公開されたのはコンサートの前半だけでしたが、この小規模だけれど美しく歴史的建造物でもあるマノエル劇場での公演は、とても親密な雰囲気で、大成功だったようです。ある参加者は、SNSにつぎのように感想を述べていました。

” ホセ・クーラは真のプロフェッショナルであり、聴衆と関わる驚くべき能力を備えている。マノエル劇場での素晴らしいパフォーマンス!”

 

この音楽劇「もし私が死んだら」は、クーラが渡欧後、国際的な活躍を始めた時期、32~33歳頃に作曲を始めたものだそうです。オペラ公演の楽屋に匿名で届けられたネルーダの詩集に感銘を受けて、3曲を書きあげ、「アネーロ」のCDにも収録されています。その後、2002年に他の4つの詩に作曲し、2006年に全体が完成しました。さらにオーケストレーションを手がけ、プラハで2015年に初演されました。

クーラはこのネルーダの詩と自らの作曲について、これまでにも何度か紹介していますが、以下のように述べています。

 

 

―― ネルーダの言葉には演劇とドラマが満載されている

 

「ネルーダの詩は感覚を目覚めさせ、昔ながらの方法で演劇的。それぞれの選択肢は、言葉にそってメロディーを書いたり、音楽を書くこと、しかしそれは、ネルーダの魅惑的な世界を開く感覚的な豊かさをともなうことが必要だ。」

「音楽の複雑さはテキストの複雑さに関係しているので、純粋なメロディーを聴く必要はない。メロディーそれ自体を提示することから離れて、詩に集中しなければならない。」


「ネルーダの詩に曲をつける時、きわめて注意深くなればいけない。クリスタルガラスの間を歩くようなもの。彼の言葉、詩はとても豊かで、完璧だから、すべての音が聴衆の注意をそらすリスクを負う。」

 

 

―― 私の心と魂にふれてほしい


「私の曲で、私の心と魂にふれてほしい。ネルーダのドラマの中で、親密な愛の物語を描きたかった。この作品は音楽だけでなくドラマ。パブロと妻との会話。人間が書くことができる最もロマンチックで官能的な言葉。」

「パブロ・ネルーダの詩は非常にエモーショナルであり、ステージ上であまりにそれに入り込みすぎないよう、注意深くする必要があった。詩の言葉が、本当に観客の胸を打つように、私は音楽に妥協点を見つけたと思う。」

 

* * * * *

 

 

この曲についてのクーラの発言や、そのうちの2曲分だけですが詞の私訳(お粗末なものですみません)などを、これまでのブログでも紹介しています。

 

ホセ・クーラが作曲し、歌う、パブロ・ネルーダの詩 / Jose Cura and Pablo Neruda

2016年 ホセ・クーラ ドイツとルクセンブルクでラテンアメリカの曲コンサート

 

 

 

●公演当日の様子――バレッタ文化庁のFBより

 

 

 

 

――マルタの文化庁・劇場などによる告知報道

 

●コンサート告知の短いインタビュー

VCA - Concert by José Cura - Mro José Cura Interview

 

 

●コンサートの内容紹介とリハーサル風景

 

Jose Cura and Jane Marshall - Manoel Theatre in Malta a collaboration with Valletta Cultural Agency

 

 

●劇場と文化庁による広報動画ーークーラのコンサート告知と2023年のトスカ演出を発表

 

 

来年2023年3月には、このマニエル劇場で、クーラが新制作トスカの演出をし、カヴァラドッシとして出演もすることも告知されています。

 

 

 

 

 

 


 

 

クーラの音楽劇、とても美しくドラマティックで、今回の動画では、マルタのベテラン女優さんも参加したことで、いっそう劇的な緊張感も高まって感動的でした。

ただ最後が途切れていたようで、なぜかはわかりませんが、これで全部ではないと思われます。ぜひ近いうちに、CDやDVDなどで全体が視聴できるようにしてほしいものです。

またこうしたアルゼンチン歌曲やクーラ作曲の作品をメインにしたコンサート、ぜひ日本でも企画してもらえないものでしょうか。長く続くコロナ禍ですが、幸いコンサートやオペラ公演などは来日公演も含め、かなり復活しているようです。2006年以来、来日のないクーラですが、オペラ歌手だけでなく円熟のアーティストとして発展してきたクーラの現在の到達を、ぜひ日本でも見せてほしいと切望します。

 

 

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2021年 ホセ・クーラ、ドイツのザールブリュッケンでコンサート

2021-10-01 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

 

ホセ・クーラにとって、この夏は、長いコロナ禍による困難なときを乗り越え、非常に多忙で、実り多い時期となりました。

2021年9月19、20日、ドイツのザールブリュッケンにあるザールラント州立劇場で、先日ご紹介したルーマニアのエネスクフェスティバルに続き、自作曲の世界初演が実現しました。今回は2曲、ギター協奏曲「復活のための協奏曲」と、クーラ作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」をオーケストラのために編曲した交響楽組曲です。

この記事では、ザールブリュッケンでのコンサートの様子をSNSの投稿などからお伝えするとともに、現地のメディアに掲載されたクーラのインタビューも抜粋して紹介したいと思います。

ザールブリュッケンは、ドイツ南西部にあり、フランス国境に接した町。クーラは来年2月にも、このザールラント州立劇場に出演し、オペラガラコンサートを行う予定になっています。

 

 

 


 

 

 

1. SINFONIEKONZERT 

SPAZIERGANG DURCH DIE ZEITEN

19 & 20 SEPTEMBER

José Cura’s Suite Sinfonica, from the opera ≪ Montezuma e il Prete Rosso ≫ (world premiere)

José Cura’s Concierto para un Resurgir  (world premiere)

and Respighi’s Trittico Boticelliano

 

 

 

ザールラント州立劇場

第1回シンフォニーコンサート 「時代を歩む」
ホセ・クーラ作曲 「モンテズマと赤毛の司祭」交響楽組曲
ホセ・クーラ作曲 「復活のための協奏曲」
レスピーギ    「ボッティチェリの3枚の絵」

 

≪ 解説 劇場HPより ≫

ホセ・クーラは、現代のヴェリズモを代表する人物の1人。第1回交響曲コンサートでは、指揮者と作曲家の2つの役割でゲストを務めている。
2020年1月、彼はハンガリーで彼のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」を初演した。ヴィヴァルディが執筆したオペラ「モンテスマ」の起源を扱った作品であり、このクーラの管弦楽組曲も、完全にバロックの精神に基づいて、その独特の妙技で楽しませてくれる。

彼の作曲「復活のための協奏曲(Conciertoparaun Resurgir)」は、彼の故郷である南米で最も重要な楽器の1つであるギターに捧げられている。これによって、ラテンアメリカのフォルクローレの比類のないサウンドがザールブリュッケンにもたらされる。

オットリーノ・レスピーギは、サウンドペインティングの達人でもあり、彼の音楽の色で物語全体を伝える方法を知っていた。「ボッティチェリの3枚の絵( Trittico Botticelliano)」では、ルネッサンスの画家ボッティチェリによって描かれた3枚の絵を音楽に変えている。

 

 

 


 

 

≪ クーラのFBより ≫

 

 

●自作曲の初演成功を報告

” ミッション達成。本日、素晴らしいザールブリュッケン交響楽団と、ギタリストであるバルボラ・クビコバの名演奏により、私の「交響組曲」と「復活のための協奏曲」が初演された。「テ・デウム」(同じく9月にルーマニアで初演)と合わせて、今月は3つの作品が日の目を見ることになった。これほど誇らしいことはない。”

 

 

●クーラ作曲のギター協奏曲を演奏する楽器のひとつ、コンガの調子をみる

 

 

●リハーサル風景ーークーラが作曲したギター協奏曲の一部が聞けます

 

 

 


 

 

 

 

 

≪ ホセ・クーラ、州立管弦楽団を指揮 ≫

 

ホセ・クーラは歌手として世界的スターだが、ザールブリュッケンでは、日曜日と月曜日にザールランド州立管弦楽団の指揮台で他の2つの役割を演じる。シンフォニーコンサートで、自作の作品を2曲演奏する。

前の晩、彼は自宅のあるマドリッドから飛んできた。現在、クーラはザールラント州立劇場アーティスト・イン・レジデンスとして、州立オーケストラとの最初のリハーサルを完了した。そして彼は、今、世界中の指揮者を悩ませている問題にため息をつく。それは、ミュージシャンが離れた場所に座っていながら、有機的なアンサンブルのサウンドを作り出すという課題だ。

1962年生まれのアルゼンチン人であるクーラは、指揮者であるだけでなく、ザールブリュッケンのコングレスホールの今季最初の交響曲コンサートで、彼自身の作品の2つを初演している作曲家でもある。しかしまだ、この二重のキャリアよりも、歌手としての彼の名声の方が勝っている。テノールとして、クーラは世界のスターであり、ヴェリズモの珍しい代表であり、表現力豊かな解釈と暗いバリトンの響きを伴う力強く輝く音色で知られている。そして、彼はどのようなシーンが歌手にとってうまくいくか、そしてどれがうまくいかないかを正確に知っているので、彼が演出するオペラのために自分で舞台を設計する。クーラには、印象的な写真の撮影もあるが、仕事とのバランスをとるためのものと彼は割り切っている。

オールラウンドなアーティストである彼を、マスコミが「普遍的な天才」と称するのも不思議ではない。「私は多くの才能に恵まれた。これらの才能を組み合わせることができるのは幸運な人間だ」とクーラは語る。もちろん、行き詰まって失敗することを恐れることもある。 「だからそれが、人の3倍の仕事をしている理由だ」

しかし、彼は自分を仕事熱心な人間だとは見なしていない。「私は好きな仕事をするという特権を楽しんでいる。50歳の誕生日を迎えてからは、残された時間を大切にするようになり、コロナパンデミックの時期も前向きとらえられるようになった。たぶん、それは私たちの目を本質に向けて開くだろう。何かを失って初めてその良さが分かることがよくある。今を楽しめ!Carpe diem!」

クーラは、ロックダウンの期間を使ってギター協奏曲を作曲した。彼の「復活のための協奏曲」はザールブリュッケンで初演され、オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」のオーケストラ組曲も初演される。 同時に、レスピーギの「ボッティチェリの3枚の絵」が演奏される。このように音楽の世界が融合しているのが、クーラらしいところといえる。歌手として、彼は古典的なイタリアのオペラのレパートリーで特に優れているが、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの現代のオペラでデビューしている。

この幅広さは、彼の作曲作品にも反映されている。クーラは、伝統を生かして再調和させる。例えば彼のモンテズマの管弦楽組曲は、ネオバロック様式の要素にもとづいている。そして「透明感のある音で、かき消されやすいシャイな楽器ギター」のための協奏曲では、彼の故郷のフォルクローレに近づけている。そのために、あえて理解しやすい声調言語を選択したとクーラは説明する。現代音楽の大きな問題点の1つとして、「聴衆がそれを理解できないために、拒否反応を示す」ことがしばしばある。 「それがおそらく、演奏会のプログラムに現代的な曲がほとんどない理由だ」と残念がる。

「しかし、音楽はコミュニケーションだ。そのために、作曲家は理解しやすい言葉を目指して努力する必要がある」とクーラは強調する。

「バッハの後、音楽に新しいものは何も発明されなかった。したがって、独創性を求める声に対しては、大胆さや目立ちたがり屋ではなく、真正さと誠実性によってのみ満たすことができる。観客は、あなたが真実で信頼できるかどうかをすぐに見抜く。技術は常に同じ。それをどのように組み合わせるかが芸術だ」と説明する。

「私は指揮者のメンタリティで歌う。そして歌手の知識を持って指揮をする。そして歌手のために作曲するとき、歌手のニーズを意識して作曲する。作曲後、私はあらゆる声を試してみる。そして、私自身が喜びをもって対処できないときは、修正する。不自然に感じる音楽を歌うのは嫌だ。」

コンサートは、9月19日日曜日午前11時と午後3時。9月20日月曜日午後7時30分、コングレスホールにて。2月13日、クーラはSSTに戻り、歌手として、オペラアンサンブルで、午後6時にキャリアの中で最も美しいアリアとデュエットを披露する。

 

(「saarbruecker-zeitung」)

 

 


 

 

今回のコンサート、クーラは作曲家・指揮者としての出演です。コロナ禍でのステイホームの時期、自宅に籠らざるを得なかった時に作曲・編曲した曲が、この間、次々に初演されています。困難な時期はまだ過ぎ去ったわけではありませんが、クーラはまた新しい実りの時期を迎えているように思います。

残念なことに2006年以来、来日がないために、クーラの指揮者・作曲家としてのキャリアは、日本ではまったく知られていません。昨年2020年にアイーダのラダメスで久しぶりの来日公演が予定されていましたが、コロナ禍によりキャンセルになってしまいました。ぜひ、今後は、オペラももちろんですが、アルゼンチン歌曲、指揮者、そして作曲家としてのクーラなど、多面的な姿に焦点をあてて、招聘、企画していただくプロモーターさんがでてこられることを心から願うばかりです。

 

 

*画像は関係者のSNSや報道、動画などからお借りしました。

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(インタビュー編) ホセ・クーラ、初演含む自作の3曲を指揮ーージョルジェ・エネスクフェスティバル

2021-09-18 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

前回の記事でご紹介したように、ホセ・クーラは2021年9月5日、ルーマニアのジョルジェ・エネスクフェスティバルに出演し、指揮者・作曲家として、自作の宗教的作品3曲を演奏しました。

その際、いくつかのインタビューにこたえています。フェスティバルの公式サイトやメディアに掲載されたインタビュー記事より、抜粋して紹介したいと思います。

いつものように訳が不十分ですが、原文へのリンクをはっていますのでご照会いただくようお願いいたします。

 

 

 


 

 

 

≪ ジョルジョ・エネスク国際フェスティバルでのホセ・クーラの記者会見より ーー ラジオ・ルーマニア ≫

 

ーー初めてホセ・クーラを見たのは14年前、やはりエネスク音楽祭で、ブカレスト国立歌劇場で行われたビゼーの「カルメン」の公演だった。そのとき、このような公演に参加し、生のホセ・クーラを見ることができたことがどれほど嬉しかったことか......。

その時、最初の印象は、彼、ホセ・クーラがショーを牽引しているということだった。もちろん、彼にはそれに見合うメゾソプラノのパートナーがヒロインを演じていた。私はあの公演を一生忘れることができないと思う。ピットのオケの演奏者からダンサー、ソリスト、コーラスまで、すべてのアーティストがクーラのドン・ホセの周りに集まり、彼らを自分の舞台に引き込んだように思えたからだ。すべてが生きていて、真実であり、舞台上の感情を我々全員が体験したのだった。

私は長い間、ホセ・クーラを世界で最も偉大なテノールの一人として記憶してきた。そして、彼はまず本当の意味での音楽家であり、優れた指揮者であると同時に、興味深いオペラ作品を生み出す才能ある演出家でもあることに気づいた。

ここ、2021年のジョージ・エネスク国際フェスティバルにおいて、ホセ・クーラは、彼自身の作品の作曲家および指揮者という全く異なる装いで戻ってきた。宮殿の大広間でのコンサートを2日後に控えた9月3日、リハーサルの最中に、ホセ・クーラはジャーナリストを招いて記者会見を開いた。彼の作品の新しいリハーサルが始まるラジオ・ホールのステージで行われたのは、形式にとらわれない会見だった。実際、それは会見というよりも、どんな質問にも答えてくれる対談相手との、友人同士の会合のように感じられた。そしてもう一度、私はホセ・クーラ、彼の自然さ、彼のカリスマ性に魅了された。……

 

(クーラ) 「ラジオ合唱団は素晴らしい...。素晴らしい数日間を過ごすことができた。とても感動的な時間で、彼らは全力を尽くしてくれた。

昨日、私が初めて自分の作品である「テ・デウム」を聴いたことは知っているだろう(注*世界初演なので作曲者のクーラも演奏を聞くのは初めてのこと)。私は泣かずにはいられなかった。最高水準の音楽で、エキサイティングな数日間だった。声は質が高く、合唱団の指揮者がとてもよく準備してくれたので、文句のつけようがなく、すべてが素晴らしかった。もちろん、フィルハーモニア管弦楽団とは25年間一緒に仕事をする機会がなかったし、合唱団とオーケストラを一緒にする時間もほとんどなかったが、両方のアンサンブルを別々に聴いてみると素晴らしいサウンドだった。

ソリストについては、ロクサナ・コンスタンティネスクとは昔からの知り合いで、ウィーン国立歌劇場で一緒に歌ったこともある。私にとっては驚きではなく、プロとして、また同時に友人として再確認した。私はここでマリウス・ブドイに会ったが、彼は非常によく準備されていてプロフェッショナルだ。この作品での彼の役は「悪い奴」なので、彼の声色は危険な男を想像させなければならない。あるリハーサルで、彼が私に尋ねた。

” マエストロ、僕はもっとエレガントであるべき?”

” いや、いや...。危険であってくれ、『悪いやつ』になるのは悪くない。”

そう私は彼に言った。」

 

ーーコンサートで演奏される曲がすべて宗教的なものである理由を聞かれたホセ・クーラはこう答えた。

(クーラ) 「私が書いた曲のすべてが宗教的なわけではない。コミック・オペラを書いている。今回は宗教的な音楽のコンサートだが、『テ・デウム』はミハイ・コンスタンティネスクの招待で書いた。彼はこのフェスティバルの25回記念のために何か書いてほしいと依頼してきた。私はそうすると約束したが、しかしそのときは、いつそんなことができる時間がとれるのかと自問自答していた。その後、コロナのパンデミックが起こり、急に時間ができた...。この間ずっと、私は作曲をしていた。『テ・デウム Te Deum』、ギター協奏曲、交響的組曲を書いていた。『Te Deum』は今ここブカレストで初演され、11月15日にドイツ・ザールブリュッケンのコンサートでも演奏され、交響的組曲も初演される。初めての3曲を演奏するコンサートを2回開催できて嬉しい。」

 

(romania-muzical.ro)

 

 

 

 


 

 

≪ 私たちは、文化が多くの問題を抱える世界に生きている ≫



ホセ・クーラ  "私たちは、文化が非常に苦しんでいる世界に生きている。ある音楽祭が25回目を迎えるということは、並大抵のことではなく、これは大きな声で叫ぶ必要がある。"

"ホセ・クーラは真に純粋なアーティストであるとともに、現代において最も誠実で妥協を許さないアーティストの1人であり、芸術においても人生においても常に誠実さを保ち続けている" (Classical Singer Magazine)

1962年にアルゼンチンで生まれたホセ・クーラは、指揮者、作曲家、ヴォーカルソリスト、演出家として、世界の大舞台で賞賛される複合的な音楽家だ。9月5日には、ブカレストで初めて彼の自作曲の指揮を見る機会がある。

 

Q、あなたはブカレストに戻り、エネスク・フェスティバルで特別なコンサートを行う。2007年には、ブカレスト国立歌劇場で「カルメン」を歌ったが?

A(クーラ)、イエス。ブカレストはこの数年でずいぶん変わったと思うが、再びこの街を見るのが楽しみだ。

 

Q、あなたは非常に多才なアーティストであり、今回は指揮者、作曲家としてのあなたに会うことになる?

A、指揮と作曲は、大学での私のキャリアであり、それは私がミュージシャンになった理由だった。その後、歌えることに気づき、ソリストとして素晴らしいキャリアを積むことができた。だから元のキャリアに戻るのは自然なこと。今有名になったからやっているのではなく、自分のルーツに戻っているだけだ。だからといって、もう歌わないという意味ではない。つい最近も、ブルガリアのプロブディフで「トスカ」に出演した。

 

Q、パンデミックの制限期間はどのようなものだった?

A、 他の人と同じように、家にいた。幸い、家が大きいので、それほど苦痛ではなかった。もちろん、私たちミュージシャンにとっての最大の苦痛は、本来の呼吸の場であるステージに立つことができないことだ。私はたくさんのステージの機会を失った。幸い、家族を亡くすことはなかったが、何人かの友人を失った。悲しくて辛い1年だった。

 

Q、パンデミックの間に、ブカレストで世界初演となる「テ・デウム」と、同じく9月にザールブリュッケンで初演される「ギター協奏曲」の2つの作曲を完了したとを聞いている。今回のテ・デウムは、このエネスク音楽祭の記念に捧げられたが?

A、2019年にこの作品を紙にスケッチしたのだが、ミハイ・コンスタンティネスク氏がこの音楽祭に招待してくれたとき、25回目ということもあって、ブカレストで最初の初演を行い、作品をこのイベントに捧げることができたら嬉しく光栄に思うと伝えた。

いま、文化が苦境に立たされている世界に私たちは生きており、あるフェスティバルが25回目を迎えるということは並大抵のことではなく、このことを声高に叫ぶ必要がある ーー ”我々はまだ生きている、我々はここにいる!”と。このような制限のある時代に、このような大きなイベントを開催することがどれほど難しいか、私はよく知っている。このフェスティバルの記念日は、ある意味で英雄的な行為であり、このイベントに参加できたことを誇りに思う。

 

 

 

 

Q、また、1980年代にあなたが作曲した「レクイエム」のキリエの部分である「Modus」も?

A、レクイエムは1985年に書いたものだ。私たちの世代(1962年から1963年生まれ)は、アルゼンチンとイギリスの間で起こった愚かで無駄な戦争(注*フォークランド紛争やマルビナス戦争と呼ばれる)を戦った世代だということを知っておいてほしい。私には戦争で戦った多くの友人がいるが、私は幸運にも招集されず、予備役にいただけだった。だから私は、両陣営で失われたすべての命に敬意を表してこのレクイエムを書いた。

20世紀から21世紀にかけて、いまだに戦争が行われているのはとても愚かなことだ。戦争には勝者と敗者がいるのではない。実際には、敗者、損失しかない。

この作品は、アルゼンチンとイギリスの2国間の和解と平和のシンボルとして、少なくとも1度はアルゼンチンとイギリスの合唱団によって演奏されるという夢をもって、2つの合唱団のために書いた。初演はアルゼンチンかイギリスでと考えていたが、政治的な問題もあって、作曲から36年後の今日まで実現しなかった。

この作品は、2022年にブダペストで、ハンガリー放送管弦楽団と合唱団との共演で、ついに完全な形で初演されることになった。いつそれが可能かわからなかったので、ここ数年は、他のコンサートでレクイエムの一部を紹介してきた。このキリエ(別々に歌うときはModusと呼ぶ)だけでなく、ディエス・イレやラクリモサの一部も、私のコミックオペラ『モンテズマと赤毛の司祭』に組み込んでいる。いつの日か、ブカレストのエネスク・フェスティバルで、このレクイエムを完全な形で演奏できるのを願っている。

 

Q、プログラムの最後に、オラトリオ「この人を見よ(Ecce Homo)」が演奏される。この作品をつくるアイデアはどのようにして生まれた?

A、第1部のマニフィカトは、1988年にさかのぼる。私の妻は2回の妊娠を流産し、非常に辛かったが、3度目の妊娠で幸運にも第1子を授かることができた。このマニフィカトは、やっと父親になれたという喜びを込めて、オマージュとして書いた。

1年後、マニフィカトを補完する意味でスターバト・マーテルを作曲し、さらに数年後に、2つのパートをつなぐカルバリウム(ゴルゴダの丘)を作曲した。つまり、「マニフィカト」はキリストの人生の始まり、「カルバリウム」は受難、「スタバト・マーテル」は十字架の上で息子の死を見守る聖母マリアの祈り、という3つのパートがある。

 

Q、あなたは声楽とオーケストラのための曲を書くのが最も好きで、それがあなたの考える完全な作曲方法だということだが、ブカレストのプログラムを見ると、宗教的なものがあなたの芸術の重要な部分を占めていると言えるのでは?

A、私にとって音楽のアルファとオメガ(第一歩であり、究極のもの)は、ヨハン・セバスティアン・バッハであり、声を大にして言うことができる。私の宗教音楽への情熱は、バッハから来ていると思う。信仰の観点からだけでなく、精神性や、極めて演劇的なテキストの強さという点でも、バッハは重要だ。

演劇の起源は、教会での祝祭にある。キリストの生涯は、祈りであり、神学と信仰の問題であるとともに、ある意味、驚くべきドラマ、おそらく最も有名で強力なドラマといえる。

 

Q、自分の作品を指揮することになるが、これは特別な経験になる?

A、それは大変な経験だ!(笑)。作曲家はすべての音を頭の中に入れていて、すべてを自分が思い描いたとおりにしたいと思っている。作業をしているときは、常に変更を加えなければならないと考えていて、それは継続的なプロセスだ。作曲家でなければ、それほど感情的に関与することがないので、おそらくそれほど苦しむことはないだろう。

作者としては、最高のものを求める。今回は、世界最高のオーケストラ、素晴らしい合唱団、世界最高のソリスト、そして友人のラモン・バルガスがイエスの役を歌ってくれるということで、私はとても恵まれている。通常、『Ecce Homo』をプログラムに入れる時は、私がこの役を演じ、別のマエストロが指揮をしている。他の誰かのイエス役を私が指揮するのは今回が初めてで、これは私にとって重要な瞬間だ。

 

Q、音楽以外の趣味では、写真に興味が?

A、アーティストは誰でもそういうものを持っている。それ以外の多くの人にとっての趣味は音楽だ。しかし音楽家である以上、何か他の趣味を見つけなければならない。健康であるためにも。私の場合は写真だが、他のミュージシャンの場合、多くは絵だ。でも、それはプロであるということではなく、ただの楽しみだ。2008年にスイスの出版社から私の写真集が出版されたが、私はそれを自分の魂の単なる反映だとみなしているだけで、自分が撮ったという事実を除けば、特別なことは何もないと思っている。

 

festivalenescu.ro

 

 

 

 

 


 

 

≪ ベートーヴェンの交響曲第9番は人類の遺伝子の中にある ≫

 

ホールでリハーサルが始まる前に、ホセ・クーラに会った。リラックスして、冗談を言っているが、自分が何であるか、そして何ができるのかについて、自身にも周りの人々にもしっかり示していることに変わりはない。彼は世界的にも最高の一人と言うことができるにもかかわらず、自身と自分の才能を惜しみなく提供することを選択した人物との対話を以下で読んでほしい。それは贈り物だ。

 

Q、あなたは世界中で公演をしてきた。今回、ブカレストにはどこから?

A(クーラ)、マドリッドの家から。

 

Q、キャリアについて。いつも外出中のこのような生活はどのようなもの?

A、30年のキャリアの中で、約3000の公演とコンサートを行ってきた。毎年100回ほどで、かなりの数になる。

しかしこの自転車に乗っている時は、ペダルを漕いでいると、自転車にダイナモがあり、ダイナモが電球に電気を送り、電球が周りの人々や自分の顔を照らしてくれる。前方からこの光が差し込んでくるので、まわりはあまり見えない。それゆえただひたすらペダルを漕ぎ、あるところにたどり着き、また止まらずに、ただ漕ぎ続ける、そういうようなものだ。

それから、ある日、コロナパンデミックがやって来て、自転車の車輪の間に棒を差し込んだ……PANG! 再スタートできず、それはすぐにSTOP!だった。そしてさっき話したライトもすぐに止まった。

最初は、誰もが経験することだが、周りを見回しても何も見えない。明かりが消えて真っ暗になり、どうしたらよいものかと思っていた。しかし、残念なことに、しばらくパンデミックが続いているため、目が暗闇に慣れ、今まで気づかなかったものが見られるようになってくる。そして驚いて、周りの人たちに「ねえ、これを見て!」と言うと、「昔からあったけど、光のせいで見えなかった」と言われる。私はこうしたことを、周りの多くのことや人々、家族、子供、妻、庭、友人と一緒に経験した。突然、それまで自分の光に目がくらんで、今まで見たことのないものがたくさん見えてきた。そして、それは最も愚かなことだった。他人の光に目がくらんでいるなら、それはそれだが、自分で目を見えなくしていたのなら愚かなことだ。

 

Q、未来は今どのように見えている?


A、わからない。しかし絶対にもうあの自転車には乗らない。

もうすぐ599歳になる。引退した自転車で(笑い)、周りを照らすけれど自分は目立たないという、この生活が気に入っている。今では、慎重にペダルをふみ、そして、私はルーマニアに来て、素晴らしい芸術家、コーラスと美しい場所を発見することができる。もう、大きな車輪に乗ってメットやコベントガーデンにいるわけではない。私は今、他の場所を見る機会があるわけだが、本当に見ることができる。その自転車に乗っていたために気づかなかった場所、スピードを落とせば見えてくる世界がある。

 

 

 

 

Q、上から「教育する」ことに抵抗があるということだが、音楽教育に関心があり、多くのマスタークラスを提供している?


A、誤解しないでほしいが、私は教育に反対するものではない。私が問題にしているのは、「私たちがあなたを教育する」という姿勢であり、それは完全に間違っている。

自分が素晴らしい人生を送ることができたのは特権的だったと私は言うし、そう思っている。困難はあるが、人口の98%と比べればかなり恵まれている。自分自身が蓄積してきた情報や経験を、死ぬまでに共有できなければ非常に悔しいし、愚かなことであり、何のために生きてきたのかということになる。


だから情報を求めている人に提供して、これらの人々から順番に学んでいける場がとても好きだ。鏡のように機能すると思うから。だからといって、「私はソクラテスの生まれ変わりであり、人生が何であるかをすべて教える!」などと言って歩き回るわけではない。人生の一定の時期を経ると、その点が変わる。若い頃はそんな風に考えて、理想主義者でロマンチスト、そして動くものはすべて撮影したくなる。50歳を超えると、例えば、ストイックな理想主義者になって、本当に必要なときしか撮らなくなる。これが大きな違いだ。

 

Q、6つの楽器を演奏すると聞いたが?

A、いやいや! 6つを演奏できるわけではない。 音楽の訓練の一環として、これらの6つの楽器を演奏するテクニックを学んだが、歌うこととは別。もし今、トロンボーンを演奏するとしたら、とても辛い経験になると思う(笑い)。

 

Q、想像するとして、現代音楽は、70年後、または100年後、何と呼ばれる?

A、どこに線を引くかわからないので、複雑な話になる。

ジャンルと時代のこの境界線はどこにあるのか?ベートーヴェンの交響曲第9番は、今では一種のポップミュージックであり、人気があり、人々のものであるという意味で、博物館の中にはない。

ポップミュージックはレゲトン(ラテン音楽)を意味する?もちろん違う。レゲトンは唯一のポップのジャンルか?もちろん違う。ポップミュージックの本当の定義は、業界が売るためにつくるものではなく、人々がすぐに結びつき、共感するような、力づよく、深く示唆に富んだ音楽のことだ。誰かに第九を聞かせれば、誰もが「ああ、そうか」と納得するだろう。「これが『歓喜の歌』だ」と。

「歓喜の歌」はポップソング?イエス、ポップだ。ポップスとは、人々のものであり、人々の心と魂の奥底にあるものだとう意味で、おそらく他のどの音楽よりもポップスだ。今年の夏に流行っている音楽が来年の夏には忘れられるとしても、ベートーヴェンの第9交響曲は誰も、絶対に忘れないだろう。それは人類の遺伝子の中にある。

より正確に言えば、呼称は本質的にラベルと同等だ。しかし、クラシック音楽は、誰かが分離しなければならないと決める前には存在しなかった。それ以前は、聖楽と俗楽しかなく、その中にクラシックが入っていた。20世紀になると、レコードやアーティストを販売するために、レーベルの多様化が進み、ポップミュージックが生まれ、クラシック音楽は退屈な少数派のものと認識されるようになった。史上最高の音楽はクラシック音楽から生まれ、それに触発され、クラシック音楽教育を受けたミュージシャンによって書かれたものであり、フレディ・マーキュリーはその最高の例だ。コンピューターを使って音楽を作る方法ではなく、クラシック音楽を学び、彼の分野で最高の偉大なアーティストだった。

 

Q、フェスティバルの今年のテーマは「愛の物語」。 あなたのラブストーリーを音楽でどのように表現する?


音楽は、他の人の前に座り、一緒に愛をもって何かを作る絶好の機会。私が譜面台に立ち、オーケストラと一緒になって、音楽への愛情をもって何かをするときのようなものだ。だから、音楽や譜面台に向かって、攻撃的で、独裁的で、傲慢で、うんざりするような態度でやってくる人のことは理解できない。彼らは何も理解していない。それは特権であり、あなたはその一部なのだ。

festivalenescu.ro

 

 

 


 

 

すこし長くなってしまい、申しわけありません。相変わらずクーラは、多岐にわたる話題に、縦横に答えています。

若い頃にクーラが作曲したレイクエムに触れた時、「いまだに戦争が行われているのはとても愚かなことだ。戦争には勝者と敗者がいるのではない。実際には、敗者、損失しかない」と語っていました。本当に、21世紀の今でも、各地で紛争とテロ、戦争、大国の介入などによって、多くの人々が苦しみ続けています。クーラの作曲の動機が、困難な世界と人々の苦しみに対する思い、よりよい世界をめざす情熱が土台にあることを思わされます。

また印象的だったのは、バッハの影響とバッハへの情熱です。これまでもクーラは、バッハのミサ曲やマニフィカトなどを指揮してきたし、バッハの魅力を語っていましたが、クーラにとっては、「私にとって音楽のアルファとオメガ」というほどの存在だったのですね。そこから宗教音楽への情熱が生まれ、クーラ自身のカトリックの信仰とも結びついて、多くの宗教的な作品を作曲することにもつながってきたのだということがよくわかりました。同時に、宗教的なものも、とりわけそのドラマとしての素晴らしさとしてつかんでいることも理解できました。

「作曲はやむにやまれぬものであり、創造的なものはすべて、その人の内面と深く結びついたものだ」と語っていたクーラ。作曲家としての姿勢や楽曲を知ることは、クーラ自身の人となり、生き方を深く知ることにつながると実感しました。

 

 

 

*画像は、フェスティバルのFB、動画などからお借りました。

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(公演編) ホセ・クーラ、初演含む自作の3曲を指揮ーージョルジェ・エネスクフェスティバル

2021-09-09 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

ホセ・クーラは9月5日、前回の記事で告知した、ルーマニアのブカレストを中心に開催中のジョルジェ・エネスクフェスティバルでのコンサートで、イギリスのフィルハーモニー管弦楽団を指揮して、自作の3曲を演奏しました。

長引くパンデミック下でさまざまな困難な条件があったと思いますが、コンサートは無事終了、フェスティバルの公式サイトで生中継、終了後12時間のオンデマンドということで、世界中で視聴することができました。オンデマンド視聴はすでに終了していますが、今回は報道やSNSなどの情報から、当日の公演の様子などをお伝えしたいと思います。

また、クーラが作曲した3曲は、音楽の美しさやドラマティックな展開が感動的ですが、聖書のなかのキリストをめぐる物語を題材としているために、宗教の素養のない私には言葉やその意味がわからないという問題がありました。フェスティバルの公式サイトに、曲の内容と場面に関する簡単な解説が掲載されましたので、それも紹介したいと思います。

 

 


 

 

 

PHILHARMONIA ORCHESTRA, LONDON

George Enescu Festival 
Sunday, September 5, 2021 19:30 - 20:40

≪Artists≫
José Cura – conductor
Polina Pasztircsák – soprano
Elisa Balbo – soprano
Roxana Constantinescu – alto
Ramón Vargas – tenor
Marius Vlad Budoiu – tenor
Nicolas Testé – bass
Ciprian Ţuţu – choirmaster
Radio Romania Academic Choir
Răzvan Rădos – choirmaster
Radio Romania Children’s Choir

≪Programme≫
JOSÉ CURA Modus (from Argentinian Requiem)
JOSÉ CURA Te Deum
— Interval —
JOSÉ CURA Ecce Homo

 

≪出演者≫

フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン
ラジオアカデミック合唱団
ルーマニア放送子ども合唱団

ホセ・クーラ作曲家&指揮者

 

≪プログラム≫

ホセ・クーラ作 「Modus」(「アルゼンチンのレクイエム」よりキリエ)

ホセ・クーラ作 「テ・デウム」 フェスティバル25周年記念ヴァージョン(世界初演)
 POLINA PASTIRCHAK ソプラノ

ホセ・クーラ作 「この人を見よ」 (3曲構成=マニフィカト、ゴルゴダ、スターバト・マーテル)
   エリーザ・バルボ (マリア役・ソプラノ)
   ラモン・バルガス(キリスト役・テノール)
   ロクサナ・コンスタンティネスク(アルト)
   MARIUS VLAD BUDOIU (テノール)
   二コラ・テステ (バス)
   VLAD IVANOV   (ナレーター)

 

 

 

 

 

≪ クーラのFBより ≫

 

●無事成功し、満足そうな表情のクーラと出演者、オケ。合唱団の子どもたちに囲まれるクーラの姿も

 

 

"ミッション達成! コロナ禍の影響で困難を極めたが、やり遂げることができた。ミュージシャン、合唱団、ソリスト、カルメン・ヴィドゥ率いるビデオクルー、ロベルト・ガブリエル率いるラジオクルー、そして気配りのできる控えめな警備員を含むバックステージチーム、全員の努力に感謝する。スタンディングオベーションは皆さんのためにある。皆さん、ありがとう”

 

 

 

≪ 多彩な映像によって表現されたステージの様子 ≫

 

●クーラのFBで紹介されたカメラマンのアルバム

 

 

 

今回のコンサートでは、カルメン・ヴィドゥさんを中心とした映像チームによって、クーラとの打ち合わせをふまえ、舞台背景に様々な画像が投影され、曲のイメージをふくらませ、メッセージをより鮮明にするうえで効果を発揮していました。

前回の記事で紹介しましたが、クーラは映像チームに対し、”聖書の場面を使うのではなく、今を語ってほしい”と依頼したのだそうです。上記のカメラマンのFBに掲載された多数の舞台写真を見ていただければわかるように、基本的にはそのクーラの要望どおり、多くの、現代の世界をめぐる困難、紛争、難民、差別、貧困と格差の実態を示す画像がありました。苦しみと悲しみ、苦悩、絶望、怒り、そしてそれに抗して立ち上がる人々の姿、「人間の優しさを求めて」というプラカードにもあったように、祈り、善意、行動と連帯、愛と人間の温かさ、子どもたちの姿に託された未来への希望などを象徴するような画像もたくさん表示されていました。

クーラが3曲のキリストと聖書を題材にした曲を書いたのも、単に聖書の物語やキリスト教の世界観を表現したかったというより、現在の世界の困難を見すえ、それを変えていく方向で困難に打ち勝とうとする努力と行動、人間性、ドラマを描き出したのだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ 曲の解説ーーフェスティバル公式サイトより抜粋 ≫

 

フェスティバルの公式サイトに掲載された公演後の記事に、曲目の理解を助けてくれると思われる内容がありましたので、抜粋して紹介されていただきます。

 

●「Modus」について

” 最初の曲「Modus」(「アルゼンチンのレクイエム」からの抜粋の「キリエ」と表記)は、コラールボーカルによる聖歌で、ピアニッシモからクレッシェンドを経て、最後は破壊的なフォルテで終わり、宇宙に散るように退く。ヴォーカルはシンプルなメロディーラインだが、神を崇める賛美歌のようなイメージを持っている。”

 

●「テ・デウム」について

” 2021年の25周年に向けて、多面的な芸術性をもつクーラが作曲した、ソリスト、合唱団、児童合唱団のための「テ・デウム」が、伝説的なロンドン・フィルハーモニア管弦楽団の演奏によって、ブカレストの人々に初めて披露された。この作品は、合唱団(ルーマニア・ラジオ放送局のラジオ・アカデミック合唱団と児童合唱団の演奏で始まり、ソプラノのポリーナ・パスティルチャク(Polina Pastirchak)が加わった。会場は温かい拍手に包まれた。”

 

 

 

 

●「この人を見よ」について

” 最後はオラトリオ「この人を見よ Ecce Homo」で、1988年に作曲をスタート(Magnificat)、数年後に継続されて(Calvarium)、その後(Stabat Mater)で終結ーー聖書の場面、キリストの生涯の始まりの第1部と、受難と十字架にかけられたイエスのそばでの聖母マリアの祈りである残りの2部で構成された重厚な3部作が生まれた。

合唱団に加え、ソリストとしてエリーザ・バルボ(ソプラノ:マリア)、ラモン・ヴァルガス(テノール:キリスト)、ロクサナ・コンスタンティネスク(メゾソプラノ:マグダレーナ)、マリウス・ヴラド・ブドイウ(テノール:ユダ、トリビューネ、イオアネス)、ニコラ・テステ(バス:ヴォックス・クリューラエ、カイファ、ピラトゥス)、ナレーターのヴラド・イワノフが参加した。

オラトリオの構成は、プロローグ(「昔々、あるところに王がいた...予測不可能な王が...」)が語られた後、救世主イエスを讃えるソプラノの歌声が、澄んだ声色で、高音のアクセントがしっかりと支えられたデクラメーション(「私の魂は主を讃える...慈しみは世代を超えてとどまる」)で構成されていた。Calvariumへの準備にはほとんど光がなく、その後、テノールの宣言が特徴的であった(「父よ、私の魂を叱らないで。私の骨は傷つき、私の魂は悩んでいる」)。よく知られている「あなたたちの1人が私を売るであろう」は、「彼を十字架につけろ!」というシーンの前にイエスが発した予兆であり、コーラスの叫び声とオーケストラの効果が交互に繰り返され、ドラマを盛りあげている。子どもたちの声は求められる純粋さをもたらす。しかし、「父よ、彼らをお許しください。彼らは自分が何をしているのかわかっていないのだ」という答えが返ってくると、「彼らを十字架から降ろして」という猛烈な叫び声が聞こえてくる。

最後の「Stabat Mater dolorosa」(泣いている十字架のそばで)では、ソプラノが素晴らしい嘆きを歌い、メゾソプラノが「通り過ぎる人たち、私のような悲しみがあるかどうか見に来てください」と告げる。フィナーレは、イエス・キリストが「あなたの手に私の魂を委ねる」と言う。ECCE HOMO。アーメン。

作曲家はここで止めた。なぜか?主の復活の奇跡は現実から遠すぎるということかもしれない。

指揮者であるホセ・クーラは、慎重で規律正しい歌手としての生涯の経験から、劇場のピッチやコンサートのステージからヒントを得ずにはいられなかった。彼は正確に、入口を与え、ニュアンスを高め、快適に、大げさでなく。卓越した器楽奏者と素晴らしい合唱団が、ソリストたちとともに見事に応えてくれた。… "

festivalenescu.ro

 

 


 

 

 

 

 

 

≪ 視聴可能な録音と録画 ≫

 

●クーラの公式YouTubeチャンネル「José Cura MUSIC」より

 

クーラが公式に提供している動画チャンネルのなかで、これまで数回、「この人を見よ」の録音の抜粋をアップしています。

音声のみですが、2つリンクを紹介します。

 

Ecce Homo - Antiphona

 

 

 

 

●オペラ動画チャンネルにアップされた抜粋

 

こちらはオペラ動画チャンネルに今回演奏された「この人を見よ」の動画の一部がアップされ、そのリンクを紹介したツイートです。

いつまで視聴可能なのかわかりません。

 

 

 


 

 

≪ 出演者のSNSより ≫

 

多くの出演者、舞台、放送関係者、合唱団関係者などの方々が、たくさんSNSで発信していました。

 

●合唱団関係者のコメントから

なかでも印象的だったのは、合唱団の指導者、関係者の方たちのコメントです。子ども合唱団もふくめて、クーラの今回の作品には合唱の役割がとても大きかったのですが、本当に素晴らしく、ドラマを盛り上げ、展開させ、希望の光をもたらす役割を果たしてくれました。

 

” リハーサルは終了した。私たちは皆、アーティストであるホセ・クーラの個性に魅了されている...このコンサートがさらに数日後であれば、リハーサルの独特の雰囲気をもう少し長く楽しむことができたのにと、本当に思った。なんて美しい時間だったことか。しかしコンサートは今夜なので、合唱団、オーケストラ...みんなの努力の集大成にしたいと思う。”

 

また別の方からは、こういうコメントも。

” 何千もの感情。一生に一度のコンサートで一日が終わる。ホセ・クーラは芸術の魔術師であり、私たちを人間としての優しさ、つまり感謝に満ちた愛の状態に戻すために生まれてきた魂だ。… このような貴重な体験ができたことは、この上ない喜びだ。”

 

 

●アルトのロクサナさんのFB

その他、出演者の投稿のなかから1つだけ、アルトのロクサナさんがFBにアップしてくれた写真を紹介させていただきます。

今回の曲は、いずれも女声の役割はとても大きかったのですが、マリア役のエリーザさんをはじめ、みなさん本当に美しく、素晴らしいドラマティックな歌唱を披露してくださいました。もちろん、男声のラモン・ヴァルガスさん、二コラ・テステさん他、またナレーター役のルーマニアの俳優さんなど、全ての出演者の方々とオケの力が発揮されての成功だったと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

*画像などは動画や出演者、関係者のSNSなどからお借りしました。

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(生放送告知編) ホセ・クーラ、初演含む自作の3曲を指揮ーージョルジェ・エネスクフェスティバル

2021-09-03 | 指揮者・作曲家として 2020~

*この画像は、2017年プラハでの「この人を見よ」初演時のものをお借りしました。

 

ホセ・クーラは、2021年9月5日(日)、ルーマニアの首都ブカレストといくつかの都市で開催されているジョルジェ・エネスクフェスティバルに出演します。

今回は、プログラムがすべてクーラが作曲した世界初演を含む3曲で構成され、オケはイギリスのフィルハーモニア管弦楽団、指揮はクーラ自身が務めます。フェスティバルの公式サイトで生放送される予定です。

ジョルジェ・エネスクはルーマニア出身の作曲家で、ヴァイオリニストとしても著名だったそうで、今年は生誕140年(1981~1955年)にあたるそうです。エネスクを冠したこのフェスティバルは、東欧最大の規模を誇り、約4週間にわたり、国際的なオケ、指揮者、ソリストなど大勢が出演した沢山のプログラムが組まれています。

出演者のうち、目についた主な名前をあげただけでも、パーヴォ・ヤルヴィ、サイモン・ラトル、ウラディーミル・ユロフスキ、ジョイス・ディドナート、ユジャ・ワン、ダイアナ・ダムラウ、フィリップ・ジャルスキー、パトリシア・コパチンスカヤ、ソーニャ・ヨンチェヴァ、サイモン・キーンリーサイド等々、各分野で世界的に有名なアーティストがずらりと並んでいます。あまりにプログラムが沢山すぎて全容はよくわかっていませんので、ぜひフェスティバルの公式サイトをご覧ください。

クーラが出演するコンサートは、現地時間9月5日の午後7時半から。日本時間では、2021年9月6日午前1時30分からになります。終了から12時間はオンデマンドで視聴できるようですので(6日の午後2時半頃まで可能か?)、興味のある方はぜひ、下のリンクからどうぞ。

 

 

 


 

 

 

 

PHILHARMONIA ORCHESTRA, LONDON

George Enescu Festival 
Sunday, September 5, 2021 19:30 - 20:40

≪Artists≫
José Cura – conductor
Polina Pasztircsák – soprano
Elisa Balbo – soprano
Roxana Constantinescu – alto
Ramón Vargas – tenor
Marius Vlad Budoiu – tenor
Nicolas Testé – bass
Ciprian Ţuţu – choirmaster
Radio Romania Academic Choir
Răzvan Rădos – choirmaster
Radio Romania Children’s Choir

≪Programme≫
JOSÉ CURA Modus (from Argentinian Requiem)
JOSÉ CURA Te Deum
— Interval —
JOSÉ CURA Ecce Homo

 

≪出演者≫

フィルハーモニア管弦楽団、ロンドン
ラジオアカデミック合唱団
ルーマニア放送子ども合唱団

ホセ・クーラ作曲家&指揮者

 

≪プログラム≫

ホセ・クーラ作 「Modus」(「アルゼンチンのレクイエム」よりキリエ)

ホセ・クーラ作 「テ・デウム」 フェスティバル25周年記念ヴァージョン(世界初演)
 POLINA PASTIRCHAK ソプラノ

ホセ・クーラ作 「この人を見よ」 (3曲構成=マニフィカト、ゴルゴダ、スターバト・マーテル)
   エリーザ・バルボ (マリア役・ソプラノ)
   ラモン・バルガス(キリスト役・テノール)
   ロクサナ・コンスタンティネスク(アルト)
   MARIUS VLAD BUDOIU (テノール)
   二コラ・テステ (バス)
   VLAD IVANOV (ナレーター)

→ クーラの「この人を見よ」については、リュブリャナフェスティバルの記事や、初演時リハーサル編等をご参照いただけると幸いです。

 

 

≪ 生放送・オンデマンド(12時間のみ)リンク ≫

 

*この画像をクリックしてください。フェスティバル公式サイトのストリーミングのページにリンクしています。

 

●生放送は、日本時間2021年9月6日(月) 深夜 午前1時30分~

 オンデマンドは終了後、12時間可能 (6日の昼過ぎまでと思われます)

 

 

 

 

≪ フィルハーモニア管弦楽団のサイトよりーープログラムとクーラの紹介 ≫

 

 

 

”ルーマニアのエネスクフェスティバル2021での2回目の公演では、音楽的博学者のホセ・クーラが、21年ぶりにオーケストラ(フィルハーモニア管弦楽団)に戻ってきたことを歓迎する。

オペラの最も並外れたテノールのひとりとして世界中で知られているアルゼンチンのアーティスト、ホセ・クーラは、もともと指揮者として訓練を受けていた。彼は今夜、オーケストラ、合唱団、ソロのボーカリストのために書かれた彼自身の3つの作品の演奏で指揮台に上がる。

前半の「Modus」は、フォークランド紛争の犠牲者に捧げるクーラの大規模な作品「Argentinian Requiem」の中からの、非常にパーソナルな1曲。

ソプラノのPOLINA PASTIRCHAKが、25周年を記念してエネスクフェスティバルから特別に委託されたクーラの「テ・デウム」のワールドプレミアに参加する。20分間の演奏では、ルーマニア放送アカデミック合唱団と児童合唱団と力を合わせ、オーケストラ全体と一緒に演奏する。

最後に、クーラの記念碑的な「Ecce Homo(この人を見よ)」は、非常にスピリチュアルな3楽章のオラトリオで、最近ハンガリーで初めて録音された。今夜のパフォーマンスでは、ソリストとしてエリーザ・バルボ、ラモン・バルガス、ロクサナ・コンスタンティネスク、Marius Vlad Budoiu、二コラ・テステが出演する。”

 

 

 

≪ フェスティバルのプロデューサーのFBより ≫

 

 

”ホセ・クーラとの強烈なコラボレーション。指揮者であり作曲家でもあるホセ・クーラは、「この人を見よ」のビジュアル(*コンサートの背景に放送される映像のことと思われる)で、聖書の場面を再現することを望まなかった。彼は私に、「今」について話してほしいと言った。

抗議行動、#MeToo、Black Lives Matter、#resist、ランペドゥーサ、シリア-アレッポの「ガス攻撃」、アフガニスタン、気候変動、地球温暖化など...。

ヴラド・イワノフが9月5日の夜、パレス・ホールでのストーリー・テラーとしてチームに加わった。ジョルジェ・エネスク・フェスティバルでお会いしましょう。”

 

 

 


 

 

前回の記事で紹介しましたが、先月末のリュブリャナ・フェスティバルでも、後半にクーラの「この人を見よ」が演奏されました。

なぜ今、キリストの磔と死をめぐる宗教曲オラトリオなのか。その点は私もなぜなのか不思議でしたが、エネスクフェスティバルのプロデューサーのFBでのコメントで、とても納得しました。

クーラはプロデューサーに対して、自分の曲を表現する映像作品には、聖書の場面を入れるのではなく、現代のことを語る、様々な現代の世界をめぐる諸問題に対して、沸き起こっている抵抗運動、改革を求める運動の一場面で構成した映像作品となることを求めたということでした。このことから、これまでもクーラはいっかんして芸術や音楽の社会的役割、アーティストの責任ということを問い、訴え続けてきたように、キリストや宗教をテーマにした音楽においても、今の視点でとらえなおし、現代を生きる私たち自身に関わるものとして表現し、訴えているのだということがよくわかりました。

オラトリオ「この人を見よ」は1989年にクーラが書いた作品で、その後長らくテノールとして活動するためにしまい込まれていたそうですが、2017年にプラハで初演されました。「Modus」はプラハ響のレジデントアーティストの時代の書下ろし作品で2017年にプラハで初演されました。その後、クーラが1984年に作曲したフォークランド紛争の犠牲者を追悼するレクイエムを改訂し、その中に組み込んだようです。「テ・デウム」は、昨年来のパンデミックでコンサートやオペラがキャンセルになるもとで、自宅に籠らざるを得ない時間を使って、新たに作曲した曲だそうです。それぞれ、若い頃、作曲家をめざしていたクーラが、長年の歌手としての経験を経て、熟成させ改訂、または新たに作曲した音楽であり、クーラの人生を様々に反映したものということができると思います。

深夜の生放送ですが、月曜日の昼くらいまでオンデマンドが可能です。そのあとは削除されてしまうようですので、条件のある方はお早めにご覧になることをおすすめします。

 

 

 

●フェスティバルのクーラ紹介ページ

 

 

 

*画像はフェスティバルやオケのSNS、HPなどからお借りしました。

 

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2021年 ホセ・クーラ、ディアナ・ダムラウ夫妻とマルタ・フィルを指揮

2021-08-14 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

2021年8月11日午後9時、ホセ・クーラが指揮し、ディアナ・ダムラウとニコラス・テステのご夫妻らが出演した、マルタフィルハーモニー管弦楽団のシーズン最後のコンサート、グランドフィナーレが、インターネット上で放映されました。日本時間では12日の早朝4時から。約1時間の放送でしたが、音質画質とも良好で、しかも現在のところオンデマンドで視聴が可能です。

収録された場所は、イタリアのシチリア島の南側、地中海に浮かぶ島々からなるマルタ共和国の首都バレッタで、史跡である聖エルモ砦の中庭でした。とても美しい場所で、白い建物に囲まれた明るい園内が、徐々に日が傾き、夜になって美しい照明で彩られていく様など、視覚的にも楽しめるコンサートでした。

クーラがマルタフィルを指揮し、美しいダムラウの歌唱、ダムラウ・テステ夫妻の息の合ったデュエットやマルタの若い歌手の歌などがありました。冒頭はプッチーニの「西部の娘」序曲から始まり、歌の合間にクーラが指揮した、ヴェルディの「シチリアの晩鐘」序曲、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲なども、ドラマティックで美しい演奏でした。

今回はクーラは指揮のみという告知でしたが、終盤にサプライズ出演も!カルメンの第1幕、カルメンがドン・ホセを誘惑する場面で、メゾソプラノが歌い始めた「セギディーリャ」の場面で、指揮者のクーラがテノールのパートを歌ったのでした。

とても美しく楽しいコンサート、オケのYouTube公式チャンネルのリンクをはっていますのでご覧ください。またオケがSNSにアップしたリハーサルの様子などを含む告知動画や、舞台写真なども紹介しています。

 

 

 

 


 

 

 

Malta Philharmonic Orchestra
Grand Finale
DATE: 11/08/2021
TIME: 9:00 PM till 10:00 PM

Performers
José Cura Conductor
Diana Damrau Soprano
Nicolas Testé Bass
Marvic Monreal Mezzo-Soprano
Charles Buttigieg Baritone

 

 

 

≪ コンサート動画 オンデマンド ≫

 

●マルタフィルのYouTube公式チャンネルにアップされたコンサート映像(約1時間)

Grand Finale – Malta Philharmonic Orchestra

 

≪PROGRAM≫
GEORGE GERSHWIN  Bess, you is my Woman Now
VINCENZO BELLINI  Casta Diva from Norma
JACQUES OFFENBACH  Belle nuit, ô nuit d’amour from Les Contes d’Hoffmann
GIUSEPPE VERDI  Mercè, dilette amiche from I Vespri Siciliani
PIETRO MASCAGNI  Intermezzo from Cavalleria Rusticana
GIOACHINO ROSSINI  Largo al Factotum from Il Barbiere di Siviglia
GEORGES BIZET  Seguidille from Carmen
FREDERICK LOEWE  I Could have Danced all Night from My Fair Lady

 

 

●サプライズ出演!?

こちらも同じ動画ですが、クーラが歌いだす直前からスタートします。

 

 

 

 

 


 

 

≪ 舞台写真 マルタフィルのFBより ≫

 

 

●指揮をするクーラとダムラウ

 

 

●放映の翌日アップされた舞台写真 マルタフィルのFBより

 

 

 

 

●会場となったマルタの聖エルモ砦の中庭の様子 マルタフィルのFBより

 

 

 


 

 

≪ 告知動画とリハの様子 ≫

 

 

●本番舞台からの抜粋、マルタフィルの予告動画①

 

 

●野外会場でのリハーサルやバックステージ風景など、マルタフィルの予告動画②

 

 

●屋内でのリハーサル風景など、マルタフィルの予告動画③

 

 

●リハ―サルの写真 ニコラス・テステ氏のFBより

 

 

●ビハインド・シーン動画 コンサート動画が100万人にアクセスされたとオケFBに掲載

 

 

 

 

 

 

 


 

 

7月のプロヴディフでのオペラ、トスカ出演に続いて、今回もクーラの元気な姿を見ることができました。

長引くコロナ禍、気候変動による熱波や洪水…、いろいろな困難が相次ぐもとで、夏のフェスティバルでもキャンセルが起きたりと、欧州でもアーティストがこれまでのように活動することがなかなか難しい状況があります。

今年59歳になるクーラ、今回のように、指揮や作曲に活動の比重を移しつつありますが、カルメンでの歌で聞いたクーラの声は、これまで通り美しく、力強く、ドラマティックで、一気にその場の雰囲気を変える力をもっていたと思います。まだまだ歌手としても活動を続けてほしいと思います。

今回のコンサートにむけて、マルタフィルのオケのメンバーの方がFBに書き込んだ記事から抜粋させていただきます。

”39度の熱波に見舞われた一週間だった。しかし、素晴らしいホセ・クーラと一緒に演奏し、レコーディングすることができた。素晴らしい歌声とカリスマ的な性格、そして分かりやすい指揮。……90年代からの大ファンで、あなたに会って話をすることができてとても嬉しかった。……ロンドンに住んでいた頃、彼のことをよく覚えている。颯爽としたルックスと素晴らしい声!彼はここで私たちを指揮していたのだが、彼が『カルメン』のドン・ホセを歌いながら同時に指揮するところを見ることができた。そのたびに鳥肌が立った。.とても情熱的だった。” ”彼のために演奏するのは本当に楽しかった。非常に困難な暑さの中、素晴らしいエネルギーと献身を受け取った!」

 

 

*画像はオケのSNSや動画からお借りしました。

 

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2019年 ホセ・クーラ、オマーンでベートーヴェンの第九交響曲を指揮

2020-12-18 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

今年2020年は、作曲家ベートーヴェン(1770~1827)の生誕250周年のメモリアル・イヤーです。12月16日が誕生日といわれています。

ホセ・クーラにとっても重要な作曲家であり、指揮者としての活動において最も多く指揮した作曲家の1人が、ベートーヴェンなのだそうです。またコロナ禍で来年2021年8月に延期となりましたが、ベートーヴェン生誕地のドイツ・ボンで開催されるメモリアル・コンサートに出演する予定もありました。

今回はベートーヴェン生誕250周年にちなんで、クーラが昨年2019年に、中東・オマーンの首都マスカットでベートーヴェンの交響曲第9番を指揮した時のことを紹介したいと思います。クーラはビゼーのオペラ「カルメン」のドン・ジョゼにテノール歌手として出演しながら、その合間をぬって第9を指揮しました。

クーラ自身がその公演の動画をアップしていますので、リンクも掲載しています。

 

 

 


 

 

≪ベートーヴェン生誕を祝う王立歌劇場マスカットのツイート≫

 

●王立歌劇場マスカットのツイッターより

オマーンの王立歌劇場マスカットが、クーラが指揮した第九の写真を掲載して、ベートーヴェン生誕250年をお祝いしていました。

 

 

 

 

≪クーラ指揮、王立歌劇場マスカットでのベートーヴェン交響曲第9番≫

 

●クーラのFBより (2019年9月14日)

” ベートーヴェン第9番第3楽章のスナップショット。素晴らしいパフォーマンスだった。 一緒に素晴らしいコンサートをしてくれたアルゼンチンの仲間たちに感謝。”

 

 

●クーラの公式YouTubeチャンネルにアップされた第九の録画(全編)

 

Beethovens Ninth Symphony, Muscat 2019 (YouTubeのページにとんでから視聴できます)

Orchestra and Choir of the Teatro Colón in Buenos Aires
Solistas: María Belén Rivarola, Guadalupe Barrientos, Enrique Folger, Cristián Pellegrino.
Director: José Cura

 

”2018年、プラハ国立歌劇場でナブッコのプロダクションのリハーサルをしていた時、友人であり王立歌劇場マスカットの芸術監督であるウンベルト・ファンニ氏からの電話を受けた。

―― あなたに、私たちの劇場の2019/2020シーズン開幕に出演してほしい。もしその時期フリーで、望むのなら、どの劇場と一緒に行きたい?

彼は聞いてきた。「テアトロコロン」、一瞬の迷いもなく私は答えた。そこで、2019年9月、ビゼーの「カルメン」とベートーベンの第9交響曲でシーズンをスタートさせた。

テアトロコロンの芸術グループの歴史の中で初めて、この素晴らしいアンサンブルが大西洋を横断し、彼らの比類のない品質を証明できたことをとても誇りに思う。

これはベートーヴェン第9交響曲のコンサートのライブ録音。アーカイブ用の固定カメラとマイクだけで録画されたものであるが、その夜のすべての人たちのエネルギーとコミットメントの鮮明な証拠だ。楽しんで!”

 

 


 

 

≪ 2019年公演当時の劇場や関係者のサイト、SNSより ≫

 

 

*王立歌劇場マスカットの告知サイト

 

Soprano María Belén Rivarola
Mezzosoprano Guadalupe Barrientos
Tenor Enrique Folger
Bass Christian Peregrino

Conductor
José Cura

Choir and Orchestra of Teatro Colón of Buenos Aires

 

●王立歌劇場マスカットのFBより

 

 

●同行取材した記者のFBより

 

●クーラの友人であり、王立歌劇場マスカットの芸術監督ファンニ氏のインスタより

 
 
 
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A superb Beethoven’s Ninth Symphony conducted by José Cura at Rohm

Umberto Fanni(@umbertofanni)がシェアした投稿 -

” ホセ・クーラがロームで指揮した素晴らしいベートーヴェンの第9交響曲"

 

●共演したテアトロコロンのテノール歌手のFBより

" ベートーヴェンの第9交響曲を彼のバトンの下で歌うことができたのは、何という喜び、興奮、そして特権だろうか。
もっとたくさん! ”

 

 
●プレ企画として音楽研究者との講演会の様子 参加者のインスタより
 

 

 

 

 


 

 

≪ 公演当時のレビュー ≫

 

 

●普遍的な自由と喜びを達成する音楽の勝利
  17/09/2019

現在オペラ「カルメン」を上演中である王立歌劇場マスカットは、金曜日の夜、ブエノスアイレスのコロン劇場のオーケストラとコーラスによるベートーヴェンの第9交響曲の見事なパフォーマンスをおこなった。オペラのキャストが声を休ませている間、ピットのミュージシャンが、世界中のコンサートホールでもめったに提供されない壮大なプレゼンテーションのために、ステージ中央に配置された(カルメンの闘牛場のセットを背景にして)。

さらに特別なのは、ホセ・クーラが、「カルメン」の主役テノールのドン・ジョゼから、公演のマエストロに役割を変えて、ベートーヴェンが1824年に作曲した偉大な合唱交響曲のために、100人の強力なオーケストラと90人の合唱団メンバーを指揮したことだ。

コンサートの前にチケット購入者は、教育およびアウトリーチ部門を代表する王立歌劇場の取締役会顧問であるナセル・アル・タイ博士による、ベートーヴェン最後の重要な交響曲の背景を説明する講演会に招待された。その音楽構造、モチーフの周期的使用、そして作曲家の人生のなかで作品がどう位置付けられるかを明快に分析した。このような洞察力を武器に、4つの楽章による70分間の公演が、より多くのコンサート参加者にとって、よりアクセスしやすく、楽しむことができた。

1公演だけのパフォーマンスが売り切れただけでなく、劇場は、予備席もない状態で立見席まで詰め込まれていたといっていいだろう。照明が消え、ミュージシャン、コーラス、ソリストの全員がステージに上がり着席するまでに数分かかった。最後に指揮者のホセ・クーラが、コンサートマスターのフレディ・ヴァレラ・モンテロを伴って表彰台に上った。

・・(中略)・・

クーラのバトンが降ろされると、劇場内は爆発的な拍手に包まれた。 ホセ・クーラは舞台上を飛び回ってソリストを抱きしめ、その夕べのさまざまなソロミュージシャンが彼らにふさわしい拍手を受けられるように指示した。それは驚異的なパフォーマンスに対するエネルギッシュな結論だった。

(「omanobserver.om」)

 

 

*画像は、劇場のSNSや報道などからお借りしました。

 

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2020年 ホセ・クーラ、作曲家としてウィーンの音楽出版社ドブリンガーと契約

2020-11-23 | 指揮者・作曲家として 2020~

 

 

 

ホセ・クーラ、作曲家として、また新しいステップを踏み出しました。

クーラが作曲した作品やこれから作曲する作品を、オーストリアの老舗音楽出版社であるムジークハウス・ドブリンガー(ドブリンガー社・DoblingerMusikverlag)から出版(楽譜として販売)する契約を、この10月に結んだのだそうです。本格的にプロフェッショナルな作曲家として活動をすすめるうえで、発表の場を公式に得たということだと思います。

これまでもクーラが作曲した作品は、何回も演奏されてきましたが、それはクーラ自身が直接かかわった公演に限ってのことであり、他のアーティストや一般の音楽愛好家が気軽にクーラの曲の楽譜を入手して演奏できる環境はありませんでした。

しかしこれからは、クーラの作品がドブリンガー社の楽曲目録の中に加えられ、ウェブでも検索でき、楽譜を店頭で手にしたり、ネット通販で入手することも可能になるということです。

 

 


 

 

≪ドブリンガー社とのコラボレーションの開始ーークーラのFBより≫

 

 

 

伝説的なオーストリアの音楽出版社であるムジークハウス・ドブリンガーとのコラボレーションの開始を発表できることを、私は嬉しく、そして誇らしく思う。

このウィーンを拠点とする名門の出版社は、間もなく、作曲家としての私の作品を公開する予定であり、誰もが「この人を見よ ”Ecce Homo”」、「ネルーダのソネット ”Neruda Sonnets”」、または私のギター協奏曲「復活のための協奏曲 ”Concierto para un Resurgir”」(パンデミック封鎖中に書かれた)やその他の作品のスコアにアクセスできるようになる。

このような世界的な苦悩の瞬間にこの文化的な関係を築くことができたのは、本当に素晴らしいことであり、コロナ禍のトンネルの終わりに光が差している証拠であるだけでなく、歌手としてのキャリアのため長い間一時停止してきた、私の作曲家としての仕事を再開したことを確認するものでもある。

これは私が演奏をやめるという意味ではないから、心配しないでほしい。しかし、過去30年間で3000回近く演奏してきた後に、芸術的生活のバランスをとるうえで、これ以上良い方法を考えることはできない...。

私の「テ・デウム ”Te Deum”」と「復活のための協奏曲 ”Concierto para un resurgir”」のワールドプレミアは来年(2021年)に予定されており(コロナの感染状況が許すならば...)、同様に、「この人を見よ "EcceHomo"」と「もし私が死んだら "Simuero、sobrevíveme"(ネルーダのソネット)」の録音のリリースも予定されている。

また2022年には、1982年にアルゼンチンとイギリスとの間の南大西洋戦争(フォークランド紛争、マルビナス戦争とよばれる)から40年に合わせて、私の「アルゼンチンのレクイエム  "Requiem Argentino" 」が初演されrる予定だ。

これらの作品のスコアは、まもなくドブリンガー社の音楽出版カタログに追加されるだろう。

 ……

Peace & Love!

(ホセ・クーラ 公式FBより)

 

 

 


 

 

≪ドブリンガー社のサイトより≫

 

 

 

 

ドブリンガー社は、ウィーンで1817年に設立された音楽関連の会社を起源にもち、1876年から音楽出版社として活動している歴史ある出版社です。200年以上も音楽の都ウィーンを拠点に、大資本の下に組み込まれていない個人の出版社として自由な活動を展開し、現在でも14000の利用可能なタイトルを保持しているそうです。そして、クラシックから現代音楽まで、毎年、約100の新作を公開し続けているとのことです。

実際にクーラの曲が楽譜として出版され、店頭に並ぶ、またはネット販売される日が楽しみです。

 

 

 


 

 

FBの記事で、歌手としての演奏活動もやめるわけではないと、クーラが明言してくれたのでホッとしました。

本来ならば、この2020年11月に、バーリ歌劇場とのヴェルディ・アイーダで14年ぶりの来日を果たすはずでした。厳しいコロナ禍のもと、来日は中止が決定、さらに今年のスケジュールは、3月のハンブルクでのオテロ1公演以後、すべてキャンセルとなってしまいました。アーティストにとって非常に厳しい年となりましたが、クーラの作曲家としての活動が新しい展開を見せたというのは、本当に希望を感じさせる出来事です。

最後に、いくつか、クーラの作曲作品をご紹介します。すでにこのブログの記事でも何度かとりあげています。すでに録音予定もあるようですので、コロナ禍で困難な状況が続きますが、CDやデジタル販売でリリースされるのを期待して待ちたいと思います。

 

●オラトリオ「この人を見よ」より

Ecce Homo - Antiphona

 

男女2声ずつ、4人のソリストとオケによる曲だそうですが、ここに収録されているのは、女声2人によるとても美しい祈りの歌です。すでに録音もすんでいると聞いています。

 

 

●ネルーダ「ソネット」より、「私は死ぬと思った」

Pensé morir

 

クーラがチリのノーベル賞詩人ネルーダの詩「愛と死のソネット」に作曲した組曲からの1曲。とても美しく切ない、クーラの色気のある声が胸を打ちます。

 

 

 

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