人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(本番直前編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-06-29 | 演出―プラハのナブッコ




ホセ・クーラの新プロダクション、ヴェルディのナブッコ。6月28日の初日に向けて、ドレスリハーサルの写真が劇場や出演者のフェイスブックにアップされました。ちょうど今、現地では、初演の舞台が始まっています。

26日のドレスリハーサルには、プラシド・ドミンゴの息子で、プロデューサーや映画監督などをされているアルヴァロ・ドミンゴ氏が訪れ、クーラらと交流したようです。トップの写真がその時のもので、劇場のFBからお借りしました。

今回のクーラのプロダクションは、抽象的なデザインのセット、画家のワシリー・カンディンスキーの絵と理論からインスピレーションを得て、色彩と心理の関係を重視した演出構想ということで、どんな舞台になるのかとても謎めいています。大変興味深いです。本当はプラハに行って生の舞台を見たいのですが、諸事情からそうもいかず・・最新の写真や発言などから、できるだけ手掛かりを得たいと思っています。そのため何度も同じような記事になっていますが、お許しください。

先日の記事で取り上げた記者会見の続報も掲載されましたので、合わせて紹介したいと思います。

→ これまでのプラハのナブッコの記事一覧はこちらへ





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel

≪公演予定≫
2018年――6月28、29日、7月1、3日、9月13、15日、10月30日、11月20日
2019年――3月4、18日、4月15日、5月14日、6月11、22、25、29日



≪リハーサルの画像より≫

●舞台全景と群衆

これまでのリハーサルの写真では、幾何学的な神殿の柱を思わせるメインのセットだけが映っていましたが、本番では、歴史的背景である紀元前のバビロニアで使われていた楔形文字の文様が照明で投影されるようです。

また主役たちの衣装のカラフルで強烈な色使いと対比的に、コーラス=群衆はシンプルでシックな色調に統一されています。
こうして舞台全体を見ると、とても美しいです。




●主役たち

主要なキャラクターには、それぞれの色が割り当てられ、それらによる心理的効果が期待されているようです。
黄金色(?)の衣装は、このオペラのタイトルロール、バビロニアの王ナブッコです。




赤と黒が、激しい気性と野心をもつドラマティックなアビガイッレ、ナブッコの長女であり、実は奴隷の子。
青い衣装の男女が、アビガイッレの妹で正妻の娘であるフェネーナと、ナブッコが征服をもくろむエルサレムの王の甥イズマエーレ。2人は愛し合っている。




●さまざまなシーン

赤い衣装の一群は兵士たちのようです。
幾何学的な形のセットが場面で回転し、照明がそれぞれのシーンに合わせて色彩を変えるとともに、時には人物の影を大きく投影するなどして効果を出しています。
劇場のアシスタントディレクターのパブロビッチさんのFB掲載の写真です。



楔形文字が彫り込まれた粘土板(?)が投影された壁の前で、もう1人のアビガイッレ役アンダ - ルイーズ・ボグザさんと、副ディレクターのシルヴィアさん。




≪記者会見の詳報記事より≫

――ホセ・クーラはプラハで、非常に心理的で、オリジナルに忠実なナブッコの新プロダクションを開く

プラハ、6月27日 - アルゼンチンのテノールであり演出家のホセ・クーラは、明日プラハでジュゼッペ・ヴェルディのナブッコの新バージョンを初演する。
クーラは、王ナブッコの養子になった娘、主人公のアビガイッレの心理ドラマを強調した。

「アビガイッレのドラマは、心理学的には劣等感に分類される。彼女は巨大なコンプレックスを抱く女性であり、なぜなら彼女は自分の血統について何かが納得できないと感じていたからだ。"私の母はどこ?" "なぜ私は父に似ていないの?"―― それは、彼女がその訳が書かれた手紙を発見するまでつづく」
クーラは説明する。

4つの部分からなる叙情的なドラマは、旧約聖書のバビロニアの王、紀元前586年にエルサレムを征服したネブカドネザルに触発されている。一方、その娘のフェネーナは、エルサレム王の甥イズマエーレと恋をして、姉のアビガエッレと対峙して奴隷のヘブライ人を解放しようとしている。

スペイン国籍を持つアルゼンチン・ロサリオ出身のアーティスト、クーラは、プラハ国立歌劇場から委託されたヴェルディのオペラのこの新プロダクションを作った。1年半の準備を経て、明日6月28日、国立歌劇場が補修工事中であることから、カーリン・ミュージック シアターで初演される。

クーラは、物語の主人公が「コンプレックスを攻撃性に変え、他者への虐待的行為に変え、常に一種の戦争状態にある」と指摘する。
ここでは、ルーマニアのAnda-Louise BogzaとクロアチアのKristina Kolarが、ソプラノにとって様々な役柄の中でも最も難しいと考えられているこの役を担う。
「彼女たち(アビガエッレ)の歌における挑戦は、音の強さ=デシベルのための戦いではなく、彼女の巨大な心理的外傷を伝達するための方法だ」とクーラは言う。

「アビガエッレは、スタイルの意味でのワルキューレではなく、それは常にコロラトゥーラだが、それはまた常に、ヴェルディの発展方向であるベルカントとメロドラマの始まりとの境界の上にある」と彼は付け加えた。
したがって、クーラは、アビガエッレは「悲鳴をあげる歌手」ではなく、音楽を通じて多くの異なるカラーを伝えなければならず、一般に言われてる「声が大きくて騒々しい」キャラクターとは反対であると語る。





クーラによると、「ナブッコはまだ若いヴェルディによって作られた"図像オペラ"であり、オテロのような、作曲家がますますシンフォニックな歌唱に近づいていった後のオペラと比べて、まだ多くのオーケストラの仕事がある」。
 
作品としては、55歳のアーティストであるクーラの意見によれば、「基本的に、メロドラマの歴史の中で、またヴェルディ自身にとって、もしナブッコが最も重要な作品ではないとしても、ナブッコが成功したという事実が、非常に危険な心理的な状態からヴェルディを抜け出させることとなった」。これ以前の作品の失敗と、妻と2人の子どもを失うという悲劇の後、このオペラの成功は彼のキャリアを継続するために彼を立ち上がらせた。

「ナブッコは、オテロとファウストと結びつけるメロドラマの発展のためのキックオフだった」とクーラは語る。

プラハのステージングでは、クーラは"台本を礼儀正しく尊重する"忠実さを選択した。
ステージングに関しては、クーラの協力者であるSilvia Collazuolがサブを務めた。それについてクーラは、人間の魂の色の影響に関するヴァシリ・カンディンスキーの理論に基づいて、「それは非常に純粋主義的で、線、光、色のみ」であると語る。抽象化の先駆者であるロシアの画家の影響は、「各キャラクターの心理学にもとづいて」幾何学的な形や色で示されている。

ヴェルディはまた、作品自体に社会的または政治的意味合いを求めてはいないが、1842年の初演は、イタリア国家の創設に関連したナショナリズムの成長という文脈の中で行われた。
「私は自分のプロダクションでは常にニュートラルでありたいと思う。聴衆自身がその結論を引き出すのであり、私は私の精神的妄想を満足させるために、劇的な手段や納税者の税金を使うつもりはない。それでは敬意を欠くからだ」とクーラは言う。

プラハでは、2019年6月までにこのナブッコの公演が17回予定されている。準備が整ったら、国立歌劇場で上演されることになる。

「lavanguardia.com」





≪リハーサルの様子を伝えるスペイン語のニュース映像≫

現在のところ、映像として舞台の様子を知ることができるのは、このニュース動画だけです。
短いですが、いくつかのシーン、記者会見でクーラが語る様子のカットも。

José Cura estrena en Praga un Nabucco muy psicológico y fiel al original


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リハーサルも順調にすすんだのでしょうか。リラックスした様子のクーラの写真も、共演者のFBに掲載されています。
今のところ中継や録画放送などの情報は入ってきていません。初日の成功を願うとともに、このプロダクションが何らかの形で映像化されることを願っています。









*写真は劇場や共演者のFBなどからお借りしました。
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(リハーサル編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-06-27 | 演出―プラハのナブッコ




ホセ・クーラが演出・舞台デザイン、照明を担当したヴェルディのナブッコ。プラハで6月28日初演です。クーラは歌いません。

これまでに (告知編)(準備編)(会見編)を掲載してきました。
今回は、劇場のFBに掲載されたリハーサルの画像を中心に紹介したいと思います。

現在発表されている公演スケジュールは以下のようになっています。
プラハ国民劇場のサイトで詳細情報の確認、チケットの購入ができますので、プラハ旅行を予定されている方、興味のおありの方はぜひご検討ください。

2018年――6月28、29日、7月1、3日、9月13、15日、10月30日、11月20日
2019年――3月4、18日、4月15日、5月14日、6月11、22、25、29日





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel


舞台で演技をつけているクーラ。右側はバビロニアの王ナブッコ役のバリトン。
   

情熱的な赤い衣装は、ナブッコの長女、実は奴隷の子であるアビガイッレ役のソプラノ。クーラが相手役に演じているようだ。


右の青い衣装の女性は、ナブッコの娘フェネーナ。アビガイッレの妹として育てられるが、ナブッコはフェネーナに王位を譲るつもりでいる。敵対するエルサレムの人質となっている。


中央の青い衣装の男性はテノールのイズマエーレ。ナブッコが征服しようとしているエルサレム王の甥。フェネーナと愛し合っているが、アビガイッレからも思いを寄せられる。
1995年にクーラはパリでこのイズマエーレを歌っている。


合唱の場面か? いつもクーラは、演出の際、群衆の1人ひとりに人格、役割を明らかにしながら動きをつけている。


主役級4人がそろった場面。アビガイッレが倒れているので、アビガイッレが毒を飲み、息絶える最後のシーンか。
中央オレンジとベージュの衣装がナブッコ?




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前回の記事で、記者会見の内容を少し紹介しましたが、このナブッコのプロダクションでは、色彩、色が大きな意味と役割をもっているようです。

プロダクションの副ディレクターで衣装デザインを担当したSilvia Cullazuoさんによる以下のような説明が、会見の報道で紹介されていました。

「セットと衣装をデザインするとき、ワシリー・カンディンスキーの絵からインスピレーションを得た。彼の色彩の理論によれば、芸術と魂は互いに影響を与える。
カンディンスキーは、人間の魂は多くの弦を持つピアノであり、そのキーは色であり、ハンマーは観客の目である弦を打ち、アーティストは鍵を演奏する手であると主張している。したがってアーティストは、色を使ってメロディーを演奏し、芸術作品を見て聞いているすべての人びとの魂の中の弦に触れる。

そして私たちが引き出したコンセプトでは、ステージは空白のシートであり、回転舞台を使用することによって、幾何学的空間内を移動する。
理論的には、場面の転換、カーテンの昇降は必要ではない。私たちは継続した連続性を継承を持つことができた。その中でキャラクターは、衣装、とりわけその色彩を使って物語を語る。」
(「prague.tv」)





少し調べた範囲で恐縮ですが、ロシア出身の画家であるカンディンスキーは、抽象画の道を開いた美術史上での革新的な存在だそうで、色彩によって人間の内面に働きかけ、色彩によって精神的な内容を表現するということをめざしたのだそうです。
私はこれ以上の詳しいことは知りませんが、当然、クーラと副ディレクターとで一致してこうした舞台コンセプトを採用したのだと思います。これまでのクーラのプロダクションは、リアルで具体的な舞台装置が多かったように思いますが、今回は、ガラリと方向性を変えて、抽象的な舞台セット、クーラは照明も担当しているので、衣装と照明の色彩によって、キャラクターの心理を表現する舞台になるのでしょうか。

宗教的対立のテーマそのものにはポイントを置いていないということです。あえて時事問題にはからめず、元の脚本に忠実であることが、現代ではかえって新鮮でオリジナルだと考えたようです。
クーラはもともと現代社会の問題について関心が高く、批判的精神を常にもっている人ですが、オペラの演出に関しては、社会問題を直接的に演出コンセプトに取り込むというより、オペラの脚本と音楽が描きだそうとしている人間ドラマを、今日の社会に生きる私たちにとって価値ある形で表現する、という姿勢に立っているように思われます。

今回も、青年ヴェルディが新しい革命的挑戦として、音楽によって描き出そうとした人間ドラマとしてのナブッコ、その先に傑作オテロへと結実していったヴェルディの先駆的なドラマを、キャラクターの苦悩や葛藤、愛と憎しみ、群集の動きに重点をおいて、現代社会に通じるものとして豊かな感情で描こうとしているのでしょうか。どんな舞台になるのか興味深いです。






多忙な仕事の合間に、劇場関係者と一緒にリフレッシュしている様子がSNSにアップされていました。
音楽でも有名なモルダウ川のクルージングをしたようです。バックにプラハ城が見えるとクーラがコメントしていますが、プラハの街をモルダウ川から眺めるというのは、本当に美しいでしょうね。残念ながら寒い日だったようで、厚手の上着を着た上に毛布を被っている写真もありました。







最後に、クーラがイズマエーレを歌ったパリの舞台から、イズマエーレ、フェネーナ、アビガイッレの3人の愛憎激しいドラマティックなシーンを。
Jose Cura 1995 Nabucco " Fenena! ... O mia diletta! "



左クーラ、中央は副ディレクターでクーラと長い協力関係にあるシルヴィアさん、右はアビガイッレ役クリスティーナ・コラーさん。


舞台全景、場面転換で回転する。

*写真は劇場やクーラのFBなどからお借りしました。
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(会見編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-06-25 | 演出―プラハのナブッコ




ホセ・クーラが演出、舞台デザイン、照明を担当しているヴェルディのオペラ、ナブッコ。6月28日からチェコのプラハで始まります。
初日1週間前の6月21日、クーラが出席して、この新プロジェクトについての記者会見が行われました。
なお、このプロダクションではクーラは歌いません。

会見に出席したのは、クーラと、指揮者のアンドレアス・セバスティアン・ワイザー、衣装と共同舞台デザインのSilvia Collazuol、ナブッコ役マルティン・バルタ、アビガイッレ役クリスティーナ・コラーや劇場関係者のようです。

発言全文は出ていませんが、いくつかの報道で、今回のプロダクションの特徴などについてふれられていましたので、紹介したいと思います。
写真は、劇場のFBよりお借りしました。

公演の概要などこれまでの記事は → (準備編)(告知編)をどうぞ。





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel






≪ホセ・クーラは、プラハでヴェルディの「ナブッコ」を元の台本に忠実に演出する≫


プラハ、6月21日
アルゼンチンのテノールであり作曲家のホセ・クーラは、プラハ国立オペラ座と、ヴェルディによる有名なオペラ・ナブッコの新プロダクションを演出する。6月28日にチェコの首都で初演される。それは元の台本に忠実であるだろう。

「様々な取り扱いが可能な、繊細な作品だ。ヒトラーと強制収容所のバージョンを作ることは"デジャヴ"だと思う。オペラをつくる最善の方法は、オリジナルのバージョンを作ることだ。それはあまり行われておらず、それが最もオリジナルだ」
クーラは記者会見で語った。

アルゼンチン・ロサリオ出身のクーラが設計する舞台と照明、イタリアのSilvia Collazuolがデザインした衣装によるこのナブッコは、国立歌劇場が2年間の改修工事中のため、カーリン・ミュージック・シアターで上演される。

「ナブッコはヴェルディの革命の始まりであり、人間的なドラマ(メロドラマ)の始まりであり、それはオテロで完璧につながった。ナブッコのおかげだ」
演出家クーラは言った。

「宗教的な問題を強調することなく、物語は色彩で語られている」と、プロダクションの副ディレクターであり、2006年からクーラのキュレーターを務めているSilvia Collazuolは語る。
Collazuolは、この舞台芸術を、人間の魂に対する色の影響に関するワシリー・カンディンスキーの理論に基づいていると説明した。

「opi97.org」







≪ナブッコは、未来の音楽を試してきた若い作曲家の作品≫

ナブッコが、ヴェルディのわずか3作目のオペラであることは注目に値する。

「このオペラは、音楽を実験して、未来を予期してきた若い作曲家の作品だ」

演出のクーラは語る。クーラは、歌だけでなく、指揮や作曲、演出、写真、そして若い才能を教育するなど、多くの芸術的分野で長年、活動してきた。

「ナブッコはヴェルディの新しいオペラスタイルの始まりだった。ドニゼッティ、ベッリーニ、ロッシーニの影響は依然として聞こえているが、ベル・カント時代の巨匠たちのアリアとアンサンブルは、劇的な緊張と降下に奉仕するものへ完全に退いた。ナブッコは、将来のヴェルディを予測できるもので、非常に重要だ。ナブッコの主要な重要性とは、オペラの旅の地図の一種であるということ。このオペラがなければ、ヴェルディはオテロを書くことができなかっただろう」

これはまた、ヴェルディにとって典型的で頻繁な、父と娘の関係、バリトンの主要な役割についての、ヴェルディの最初の描写でもある。

「classicpraha.cz」





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28日の初日はもう目前に迫っています。
この間、リハーサルの写真もアップされていますので、次回また紹介したいと思います。
今回は、フェイスブックにアップされたいくつかの画像のリンクを掲載します。


「アビガイッレの孤独」とクーラがコメントをつけてアップした写真。神殿を思わせる幾何学的なシンプルなセットです。背景を照らす照明を様々に変えることによって、登場人物の心理状況を示しているのでしょうか。会見で説明されたワシリー・カンディンスキーの理論にもとづいて「色」と「心理」の関係を探求しているのでしょうか。このあたり、クーラの解説が待たれます。



立ち上がったばかりのセット。



衣装を着けていたり着ていなかったり。ナブッコは王冠を被っているけど短パン姿、ザッカリアはブーツを履いているが下着姿・・などなど、まだ衣装もバラバラな様子を面白がってクーラがアップした写真です。



有名な合唱「行け、わが 想いよ、黄金の翼に乗って」の場面のリハ。



リハーサル室での初期の様子。



衣装のデザイン画を前にした打ち合わせのようです。



こちらはリハーサルの合間のひと時。出演者の方の自宅のホームパーティのようです。クーラが赤ちゃんを抱いていますが、どなたか出演者のお子さんでしょうか。
交流を深め、リラックスしながら、長いリハーサルと公演の期間をのりきっていくのでしょうね。



*写真はプラハ国民劇場のFBやクーラと出演者のSNSからお借りしました。
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(旅行編)2018年ホセ・クーラ、ボロディナとマリインスキーでサムソンとデリラ / Samson et Dalila /Jose Cura & Olga Borodina in Mariinsky

2018-06-22 | サンクトペテルブルクのサムソンとデリラ




ホセ・クーラが出演した、2018年5月5日のロシア・サンクトペテルブルク、マリインスキー劇場でのサムソンとデリラから、早くも2か月近くがたちました。
(鑑賞編)でもふれましたが、今回の公演を直接、現地で体験することができたことは、私にとって大きな喜びでした。

舞台の簡単な感想は(鑑賞編)に掲載しましたので、今回は、だいぶ遅くなりましたが、初めて訪問したロシア・サンクトペテルブルクの街について、あくまで旅行の個人的な記録ですが、若干の写真を紹介したいと思います。

とはいえ、3泊5日のオペラ公演メインの超短期旅行のため、旧市街全体が世界遺産という素晴らしいサンクトペテルブルクのごくごく一部を、さっと眺めてきたにすぎません。クーラのマリインスキー劇場オペラデビューというきっかけがなければ、私自身ロシアに行こうとは思わなかったでしょう。そのおかげで、ロシアの文化的な素晴らしさを、わずかとはいえ実感できたことは、とても得難い体験でした。






サムソンとデリラの公演は当日ライブ中継され、現在でも録画が視聴できます。



Samson et Dalila opera in three acts (concert performance)

Dalila: Olga Borodina
Samson: José Cura
High Priest of Dagon: Vladimir Moroz
Abimélech: Oleg Sychov
Old Hebrew: Yuri Vorobiev

The Mariinsky Orchestra
Conductor: Emmanuel Villaume





≪成田から、ヘルシンキを経て、サンクトペテルブルクのプルコヴォ空港へ≫

ホセ・クーラとボロディナのサムソンとデリラの鑑賞のため、初めてのロシアへ。

今回は幸いにして、日本のゴールデンウィーク中の5月5日に公演があったため、旅行の日程を確保することができました。
フルタイムの仕事、かつ、家庭・子育ての責任を抱える私にとっては、海外オペラ遠征はとても無理だとあきらめていました。しかもクーラはオペラ出演を大幅に減らしつつあり、来日も絶望的・・。クーラの生舞台を観たい、と切に願っていた私には、この公演予定がクーラの公式カレンダーに掲載されたとき、絶対に逃すわけにはいかない絶好のチャンスに思えました。

早々にネットで公演チケットを購入、その後、旅行社を通じて航空券とホテル、ロシア滞在のビザを手配しました。成田から、ヘルシンキ経由サンクトペテルブルク行き、フィンエアーで出発です。



約10時間の飛行の後、到着したヘルシンキ空港。新しくすっきりした美しい空港です。国際的なハブ空港としてのいっそうの発展をめざして、大規模な拡幅工事中でした。







ヘルシンキでサンクトペテルブルク行きに乗り継ぎです。
ヘルシンキ空港からは、フィンランド湾を越えれば、すぐそこはロシアです。陸続きでもあります。






ロシアとスウェーデンにはさまれ、両大国の侵略に長く苦しめられた歴史をもつフィンランド。一方、対岸のサンクトペテルブルクは、ロシアにとっては交易と軍事の要所であり、ロシア帝国の首都として発展しました。
飛行時間は1時間の予定ですが、実質30分ほど飛行するとすぐに着陸態勢に。本当に近いというのが実感です。


≪サンクトペテルブルク・プルコヴォ空港に到着、旧市街へ≫







目的地サンクトペテルブルク・プルコヴォ空港も新しい建物です。こちらもまだ拡張中とのこと。
日本のゴールデンウィークは新緑の季節ですが、ヘルシンキやサンクトペテルブルクはまだまだ早春。長い冬がようやく終わり、わずかに木の芽が出始めたという感じでした。

空港と旧市街は少し離れていて、バスと地下鉄の乗り継ぎが必要です。初めてで不安なため、行きは旅行社の迎えの車を利用しました。広大なロシアの大地の一端を感じながら、途中、韓国や日本の自動車メーカーの工場や、巨大なショッピングセンター、高層住宅群などを眺めながら、約1時間のドライブでした。








≪サンクトペテルブルク旧市街とネフスキー大通り≫

サンクトペテルブルク旧市街のメインストリートが、ネフスキー大通りです。通りのあちこちに歴史的建造物があり、またどの方向、どの横道を見ても、街並みが美しいのにはびっくりしました。










ネフスキー大通りは、5月9日の戦勝記念日に向けて装飾がされていました。ナチスドイツ軍によって900日近く包囲され、70万人ともいわれる市民が犠牲になった旧レニングラード。これに耐え抜き、爆撃で破壊された市街も戦後、再建したとのことです。


≪美しい書店、ドム・クニーギ≫

ネフスキー大通りに面したこの立派な建物が、有名な本屋さん。



1階にはいろんなグッズ、お土産品がたくさんあって楽しい売り場です。奥には文具。
2階には充実した絵本、幼児書コーナーもありました。充実した書架を見て回り、何か記念に一冊とも思いましたが、何しろロシア文字がまったく読めないため、断念しました。


≪血の上の救世主教会≫





ガイドブックで観る以上に素晴らしかった、血の上の救世主教会。外見も凄いですが、内部は本当に圧巻です。全面すべてが美しいモザイク画で装飾されています。高い天井までも黄金のモザイクで描かれた絵が。内部全体が金色に輝き、圧倒されました。



 


建築には20年以上の歳月がかかったこの教会、帝政ロシアの財力、支配が可能にした豪華建築です。そして「血の上」と称されるのは、圧政への抵抗勢力によって皇帝が暗殺された、その地の上に建てられており、故皇帝を弔う目的だったとのこと。ロシア激動の歴史の一端を物語る建造物のひとつです。


≪カザン聖堂、ロシア美術館≫

時間がなくて残念ながら前を通りかかっただけですが、ネフスキー大通りに面したカザン聖堂。




この黄色の巨大な建物はロシア美術館。収蔵品の量も巨大だそうですが、本館ミハイロフスキー宮殿、建物自体も世界遺産です。



ロシア美術館前の公園のカラス。ロシアのカラスはツートンカラーのようですね。ロシア美術館の横には、ミハイロフスキー劇場があり、ここでクーラがガラコンサートをやったことがあります。



この他にも、マリインスキー劇場まで歩いていく途中で、これも世界遺産の聖イサアク大聖堂、マリインスキー宮殿、ホテル・アストリアなどの前を通りましたが、眺めるだけで写真はとりませんでした。



≪運河の街≫

サンクトペテルブルクは、フィンランド湾に臨み、大河ネヴァ川と数々の運河に面した街です。川沿いの風景がまたとても美しい。







ネヴァ川の橋を渡って対岸に見えるペトロパヴロフスク要塞、高い尖塔は、ロシア皇帝を埋葬しているペトロパヴロフスキー大聖堂だそうです。ここも遠くから眺めるだけです。




旧市内の歴史地区が世界遺産に指定され、とにかく街中に世界遺産、歴史的建造物が連なっているサンクトペテルブルク。とても3泊5日、実質2日間の旅では、ほんの一部をのぞくしかきません。
この時期、サンクトペテルブルクの気候は、日本の3月くらいの印象でした。本格的な春から白夜の季節には、どれほど美しいだろうかと思うと、また訪問してみたくなります。




≪エルミタージュ美術館≫

クーラの公演と並ぶもう一つの目的は、エルミタージュ美術館です。事前にチケットをネットで購入できます。
とにかく圧巻です。建物だけ見ても本当に素晴らしいです。正直なところ、広くてとても見て回りきれません。



そのごく一部、美しい展示室の数々を。それぞれ意匠を凝らし、天井、シャンデリア、壁面・・豪華絢爛です。



















こちらは中庭


もともとあまり写真を撮るつもりではなく、携帯電話のカメラで撮った写真でアングルも適当で、たいへん恐縮です。
実物はもっともっと見事ですので、この画像で失望されないようお願いします。


≪交通機関≫

サンクトペテルブルクの地下鉄とバスを利用してみました。地下鉄、バス、トローリーバス、乗合タクシーなど、各種市民の足が縦横に走っているようで、もっといろいろ利用してみたかったです。

ロシアっぽいトローリーバス。



私たちは普通のバスを利用しましたが、通常の車両が2台連結した大型のバスでした。乗ると係員がチケットを切ってくれて、1回40ルーブル。



地下鉄と構内の路線図。モスクワの地下鉄は有名ですが、サンクトペテルブルクも地下鉄が発達しています。利用するには専用コインを購入します。自動販売機もありましたが、お金の入れ口がよくわからず、窓口で買いました。
地下深く、そのエスカレーターの速さと長さにはびっくりです。また地下鉄車両の走行速度もびっくりする速さ!もっと地下鉄内を撮っておくんだったと後から思いました。






≪歴史的な街と現代社会≫

旧市街は歴史的な街並みで統一されていますが、その内部は現代的に改装され、日本の私たちにもおなじみのファーストフードもたくさんありました。看板は控えめで、街並みを大きく乱さないようにしているようです。

ネフスキー大通りをずっと東にすすみ、モスクワ行きの列車が発着するモスコーフスキー駅近くには、巨大なショッピングモールがありました。
モールの入口すぐには、ユニクロも。モールの中は若い人々、家族連れでいっぱいで、様々なファーストフードが集まるフードコートもあり、日本とも共通する風景でした。



ロシアのスーパーを見てまわるのも、とても楽しかったです。チーズ、ヨーグルトなどの乳製品が豊富で味は濃厚、巨大な精肉、ハム・ソーセージが並んでいました。パン、お菓子類も豊富、果物も洋ナシを買って食べましたが、安くて美味しかったです。写真は撮らなかったのですが、外国のスーパーというのは本当に魅力的ですね。
ロシアのチョコレートをお土産に購入しました。帰宅後の撮影です。



レトロで可愛い公衆電話、しかし使い方がよくわかりません。




≪マリインスキー劇場で大興奮の一夜≫



今回最大の目的地は、ホセ・クーラとボロディナのサムソンとデリラの舞台、マリインスキー劇場です。
すでに(鑑賞編)で紹介していますので繰り返しませんが、クーラの姿にくぎ付け、大興奮の一夜でした。
マリインスキー劇場も世界遺産に登録されています。古くなってはいますが、エメラルドグリーンを基調にした建物は美しく、内部も豪華です。




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今回、幸運にもクーラとボロディナのサムソンを鑑賞することができ、またサンクトペテルブルクの街をわずかながら見て回る機会を得ました。
かつて強大な権力を誇った帝政ロシア、そしてロシア革命の舞台の地、第二次世界大戦の壮絶なたたかいと破壊から復活した街。去年2017年にはロシア革命100年を迎えています。
歴史と文化、芸術の街、見どころがたくさん、そして食事も美味しく、魅力的な街でした。
スリや治安面の問題がガイドブック等で注意されていたので警戒しましたが、幸い、何事もなく良かったです。

またロシア語が話せない私たちでしたが、空港からホテルまで案内してくれたガイドの若い女性、ホテルのフロント、レストランやファーストフードの店員さん、劇場の職員の方たち、バスや地下鉄の係員さん・・観光の街だからでしょうか、それぞれ親切に対応してくれてとても有難かったです。
私にとっての最大の難点は、路上喫煙の多さ(笑) いずれ改善されることを願うばかりです。
できることなら、時間をとって、また文化、文学、歴史を学びなおしのうえ、再訪したいものです。





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2018 ホセ・クーラと展覧会の絵 with プラハ交響楽団 / Jose Cura & PICTURES AT AN EXHIBITION

2018-06-10 | プラハ交響楽団と指揮・作曲・歌 2018~




紹介がたいへん遅くなってしまいましたが、今回は、今年の春、2018年3月13、14日に開催された、プラハ交響楽団とのコンサートを紹介したいと思います。

2015年秋から、プラハ交響楽団のレジデント・アーティストとして、毎シーズン3回の公演に取り組んできたホセ・クーラ。
ある時は歌手として、または作曲家として、指揮者として、それぞれの公演ごとにクーラの多面的な魅力を発揮するユニークなプログラムが組まれてきました。

→ これまでの公演について紹介した記事

そしてこの3年間のレジデント契約は、今季2017/18シーズンでひとまず終了します。
現在(2018年6月)、クーラはプラハに滞在中で、6月28日に初日を迎えるヴェルディのナブッコの演出に取り組んでいるところです。
そして、その最中の6月13、14日、同じプラハで、プラハ響レジデント・アーティストとしての最後のコンサートに臨みます。

その様子もまとめたいと思っていますが、今回は、まだ記事にしていなかった、その前の3月のコンサートの様子を紹介します。

3月21、22日のコンサートでは、クーラは指揮者として登場しました。
公演の表題は「ホセ・クーラと展覧会の絵」。ムソログスキーの「展覧会の絵」や、ビュッシーの作品を指揮しました。
ちょうどこの2018年3月が、ドビュッシーの没後100周年なのだそうです。ドビュッシーと印象主義音楽の流れで、ラヴェルの編曲による「展覧会の絵」がとりあげられたようです。











≪ホセ・クーラと展覧会の絵≫

ドビュッシー 
「プレリュード 第1集『沈める寺』」 編曲レオポルド・ストコフスキー
「管弦楽のための映像」

ムソログスキー
「展覧会の絵」(編曲:モーリス・ラヴェル) 

指揮 ホセ・クーラ
プラハ交響楽団



●クーラによるこのコンサートへのお誘い動画

コンサートの紹介をするとともに、レジデント契約終了後も、プラハ響との関係が続くことが決まったと伝えています。
英語です。

José Cura - Obrázky z výstavy




●公演翌日、クーラがSNSにアップした写真とメッセージ

“昨日のコンサートは大成功だった!
 音楽の美しいひと時をありがとう、プラハ交響楽団!”











●レビューより(抜粋)

「カラフルな夜」

プラハ交響楽団のレジデントアーティスト、ホセ・クーラは、オーケストラが幅広い印象派のキャンバスを描くのを手助けした。
この夜の演劇的なライン・・それはカラフルな夜だった。

クーラは、指揮台の上で非常にリラックスしていた。しばしば、踊り、感情を確かめながら、音楽を解釈した。彼は、オーケストラとともに、今年没後100年のドビュッシーを思い起こさせる本当に良いプログラムを立ち上げた。
・・
壮大な音楽は幅広い管弦楽法で爆発し、スメタナホール全体を完全に埋めつくす。その大きさにもかかわらず、ゆっくりと変化する個々のラインを明確に調和させる感覚の演奏だった。
2番目のパートでの強烈な低音は振動効果があり、すべてが倍増した。コンサートの初めに、本当に広大で壮観な作品だった。
・・
すべてがキエフの大門のラストのシーンで終わった。ファンファーレの響き、上昇する感情、言い表せないほどの音楽エネルギー。オーケストラは細部まで洗練され、すべての色とその色合いを使って、音楽が成長し、感情が与えられる。彼が何1つ見逃さなかったと確信している。

(「OPERA PLUS」)








「クーラはドビュッシーを称えるコンサートをリード」

プラハ交響楽団のレジデントであるテノールのホセ・クーラは、プラハの市民会館で行われた本日のコンサートで、指揮者の地位を確立した。

混雑したスメタナホールで、彼は3月末の没後百年になるドビュッシーを称えるコンサートを演奏した。ドビュッシーと相まって、ムソルグスキーの展覧会の絵が展示された。
勇敢なクーラとオーケストラは大きな喝采を受けた。

"数分間、目を閉じて、そして美しい音楽がどのようにあなたをとらえているのか、感じてほしい"
コンサートの前のスメタナホールでの懇談会で、クーラは参加者にアドバイスした。

クーラは前回のプラハでの公演で、彼のオラトリオ「この人を見よ」を初演し、指揮者の役割を果たした。
世界的に有名なミュージシャンであるクーラは、作曲、歌手、指揮者としての3つの役割を果たしている。
クーラは55歳、アルゼンチン出身。チェコ共和国へ戻ってきた。

(「Blesk.cz」)







●恒例のクーラとの懇談会

コンサートの初日の前に、クーラを囲んでの交流・懇談の会が開かれました。恒例になっています。
いくつかの写真をプラハ響がHPで公開してくれています。


とても楽しそうに説明しているクーラ。


毎回、間近で、アーティストの話が直接聞けるというのは、本当にうらやましいことです。


プラハ響のFBに掲載されたスライドショー。音声はありません。









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プラハ交響楽団レジデントアーティストとしての契約終了後も、年に1回のコンサートを行うなど、クーラとプラハ響は、継続的な関係をもつことを確認したそうです。

すでに来年2019年3月、クーラのオペラアリア・コンサートが、プラハ響の2018/19のシーズンプログラムに明記されています。とても楽しみです。

クーラの指揮者として作曲家としての新しい側面、というより、もともと持っていた才能と経験、作品を発表するユニークな場を提供してくれたプラハ交響楽団。この関係は、本当に素晴らしい実りをもたらしたと思います。
私もぜひ一度、プラハ響のコンサートに行きたいと願っています。またDVDなど何らかの形でレジデントとしての成果がまとめてリリースされることをお願いしたいと思います。






*写真はプラハ交響楽団のHPからお借りしました。
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(レビュー編)2018年ホセ・クーラ、ボロディナとマリインスキーでサムソンとデリラ / Samson et Dalila /Jose Cura & Olga Borodina in Mariinsky

2018-06-01 | サンクトペテルブルクのサムソンとデリラ




遅くなりましたが、2018年5月5日のマリインスキー劇場でのサムソンとデリラに関するレビューを紹介したいと思います。

もっとたくさん出ていると思うのですが、ロシア語がままならないために、5月8日付のspbvedomosti.ruに掲載された記事から抜粋して、その一部を訳してみました。
劇場内の熱狂ぶりを伝えてくれていると思いました。

いつものように、語学力がないため、誤訳などあるかと思います。ご了承ください。



Samson et Dalila
opera in three acts (concert performance)

PERFORMERS:
Dalila: Olga Borodina
Samson: José Cura
High Priest of Dagon: Vladimir Moroz
Abimélech: Oleg Sychov
Old Hebrew: Yuri Vorobiev

The Mariinsky Orchestra
Conductor: Emmanuel Villaume




08.05.2018 spbvedomosti.ru




マリインスキー劇場で、オリガ・ボロディナの記念日の「サムソンとデリラ」
 


マリインスキー劇場のソリストであるオルガ・ボロディナ(Olga Borodina)は、30周年を記念して、サン=サーンスによるオペラ「サムソンとデリラ」のコンサート演奏を行った。
彼女とそのシーンを共有するために、有名なアルゼンチン人テノールのホセ・クーラと、フランスのマエストロ、エマニュエル・ヴィヨームが招待された。


最後のシーンの後、観客からは、耳をつんざくような爆発的な拍手だけでなく、まるで待望のゴールを決めた時にサッカーファンが吠えるような轟音が鳴り響いた。
オーケストラ、合唱団、ソリストは、一体となって、その意味を根底まで知り尽くしているかのようにスコアを実行した。
この効果を達成するために、メゾソプラノとドラマチックなテノールの2人のスーパースターの存在に加えて、指揮者は、オーケストラ自身が熱心に語った集中的なリハーサルにも成功した。
細心の注意を払ったエマニュエル・ヴィヨームの手によるマリインスキー劇場のオーケストラは、矛盾する感情、味わい、リズム、エネルギーで満たされた、聖書の世界そのもののように見えた。







ボロディナの記念日にリリースされたパンフレットには、「弱い男性が好きではない」と書いてある。彼女は舞台上の弱いパートナーも好きではない。彼女は、同じパートのなかではるかに輝いているからだ。

彼女はダリラをコヴェント・ガーデンとメトロポリタン歌劇場でプラシド・ドミンゴと一緒に歌い、ホセ・クーラとこのオペラを録音した。
彼女は2003年にマリインスキー劇場でのオペラのプレミアでこの役を演奏した後、このオペラのコンサート式のパフォーマンスに定期的に登場してきた。
オリガは、この旧約聖書のダリラ(カミーユ・サン=サーンス作曲)が「彼女のために書かれた」と信じている。

観客は、彼女の声に完全に惹きつけられるだけでなく、ボロディナの芸術的な才能のスケールにも反応する。ボロディナは、人生、恋愛、権力のすべてを愛している、複雑で矛盾した性格を持つヒロインを崇拝している。







コンサート形式のパフォーマンスに勝るものがないと言うとき、その夜、マリインスキー劇場で起こったことが念頭に思い浮かぶだろう。
オリガ・ボロディナとホセ・クーラにとって、舞台装置は本当に不必要だった。

この2人のオペラのタイトルロールは、さまざまなスケールとカテゴリーで考えられた、その声、ジェスチャー、イントネーションによって、偉大なオペラの時代の精神をもたらした。彼らは完全に、現代の世紀を無慈悲に襲っている虚栄心とは無縁だった。








オルガ・ボロディナが誘惑的な舞台を演奏しただけでなく、招待されたゲストも巧みに演じた。
メゾソプラノが放出する誘惑の毒の蜜は、特に低コントラストのレジスタでは、ステージ上のパートナー、リスナーなどのすべての毛穴に浸透した。
 
ホセ・クーラは、ドラマティックなテノールの芸術を実証し、メロディー・ラインの規則のなかでは窮屈であるかのように、アクセントを劇的なものに大きくシフトさせた。歌手であり俳優であるクーラは、サムソンが既に敵に盲目にされたシーンで、非常に視覚的にそのオペラの一場面を演じた。 

彼のすすり泣く歌声は、サムソンが告白する「致命的な苦悩」を煽り、支えた。
寺院の破壊の場面では、クーラが非常な精度で急激に振り上げた手、その簡潔なジェスチャーによって、ダゴンの異教の寺院は破壊された。
そして耳をつんざくような拍手が爆発した。

(「spbvedomosti.ru」より抜粋)


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この舞台の録画がまだ視聴可能です。マリインスキー劇場の公式サイトがアップしたものです。以前の記事でも紹介しましたが再掲します。

Самсон и Далила



以前の記事でこの公演の感想を書きましたが、まさにこのレビューが書いているように、観客は爆発的な拍手と轟音のようなブラボーと歓声で、ソリスト、指揮者、オケ、合唱による素晴らしい舞台に喝さいを送りました。非常に熱狂的な夜でした。

またこの2人の舞台には舞台装置は必要がなかった、というのも、私の感じた通りです。
オペラ業界では若いスターに注目が集まりますが、またそうやって若い歌手を育てていくことはもちろん大切ですが、このボロディナとクーラのような、演目を知り尽くし、長年の経験と蓄積、深い声と解釈によって、何もなくても、役柄そのものを舞台の上で表現できる熟達したアーティストというのは、本当に格別な存在なのだと痛感しました。

ボロディナはもうあまり国外では演奏しないようですし、マリインスキーでもそうたびたび出演するわけでもなさそうです。クーラもまた、オペラ出演の回数を減らし、指揮や作曲、演出などの活動の比重を高めつつあります。この2人が共演する機会が、今後また再びあるのかどうか・・。

一期一会のその舞台を見ることができたことに、感謝の思いでいっぱいです。






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