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論文)ジャスモン酸シグナル伝達に関与する転写因子

2010-03-08 05:39:10 | 読んだ論文備忘録

The NAC transcription factor RIM1 of rice is a new regulator of jasmonate signaling
Yoshii et al.  The Plant Journal (2010) 61:804-815.
DOI: 10.1111/j.1365-313X.2009.04107.x

農業生物資源研究所の廣近らは、イネ萎縮ウイルス(RDV)に対して抵抗性を示す突然変異体rim1-1 を単離し、RIM1 遺伝子はNACドメインを持つ転写因子コードしていることを明らかにしている。rim1-1 変異体はRDVに抵抗性を示す他に、半わい性、根が短いといった形態異常が見られる。そこで、RIM1の機能を分子レベルで解析することを目的に、rim1 変異体と野生型の実生における遺伝子発現の違いをアジレントイネ44Kオリゴアレイ解析によって調査した。その結果、変異体において759遺伝子が野生型と異なる発現(716遺伝子が発現上昇、43遺伝子が発現低下)をしていることを突き止めた。これらの遺伝子のうち、84遺伝子は防御/ストレス応答に関連したものであり、145遺伝子は代謝関連遺伝子であった。また、発現上昇する遺伝子の中にはジャスモン酸(JA)により発現誘導される遺伝子が含まれていた。この結果や変異体の形態から、rim1 変異体はJAシグナルが恒常的に活性化状態にあることが考えられたので、JA処理した野生型個体とrim1 変異体との間のマイクロアレイ解析を行ない、63遺伝子が両者で共通して発現が変化していることがわかった。rim1 変異体の内生JA量は野生型と変わりないが、JA生合成経路の酵素をコードする遺伝子(LOXAOS2OPR7 )の発現が通常状態で増加しており、傷害処理で野生型よりも早くJAが蓄積された。また、RIM1タンパク質はJA処理によって26Sプロテアソームにより分解されることがわかった。RIM1はJAZタンパク質をターゲットとしているCOI1とは相互作用を示さず、rim1 変異体ではJAZ-MYC2の負のフィードバックループが正常に機能していた。以上の結果から、RIM1はJAシグナルの転写抑制因子として機能し、一部のJA応答遺伝子の発現制御に関与していると考えられる。

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