Strigolactones interact with ethylene and auxin in regulating root-hair elongation in Arabidopsis
Kapulnik et al. Journal of Experimental Botany (2011) 62:2915-2924.
doi:10.1093/jxb/erq464
ストリゴラクトン(SL)は側根形成を抑制し、根毛の伸長を促進することが知れている。根毛伸長はオーキシンやエチレンによっても促進されるが、根毛伸長促進におけるこれらのホルモンとSLとの相互の関係は明らかではない。イスラエル国立農業研究所ボルカニセンターのKoltai らは、シロイヌナズナSL非感受性変異体max2-1 芽生えをエチレン前駆体のACC処理をすると野生型と同様に根毛伸長が促進されることを見出した。よって、SLシグナルはエチレン応答に関与していない。しかし、エチレンシグナル欠損変異体のein2-1 やetr1-1 を合成SLのGR24処理すると、etr1-1 変異体では根毛伸長促進が抑制され、ein2-1 変異体ではGR24に対する応答性は示すがその程度は野生型よりも低くなった。また、GR24とエチレン生成阻害剤のAVGを同時に処理するとGR24による根毛伸長促進が抑制された。したがって、SLによる根毛伸長促進はエチレンシグナルが関与していると考えられる。さらに、GR24処理はシロイヌナズナの根で発現しているACC合成酵素(ACS)をコードするAt-acs2 の発現量を増加させることがわかった。以上の結果から、エチレンとSLは同じ経路によって根毛を伸長を制御しており、エチレンはSLよりも上位に位置していると思われる。max2-1 変異体のIAAに対する応答は野生型と同等であり、根毛伸長が促進された。よって、オーキシン応答にSLシグナルは関与していない。オーキシン受容体TIR1の機能喪失変異体tir1-1 はGR24に応答して根毛伸長を促進させるが、低濃度のGR24では根毛伸長の度合いが野生型よりも悪くなった。tir1-1 変異体のACC処理による根毛伸長促進は野生型と比較すると僅かに低下していることから、tir1-1 変異体の低濃度SLに対する感受性低下はACCに対する感受性低下が関連していると思われる。根毛伸長促進を起こさない濃度のIAAおよびGR24を同時に与えると根毛伸長促進が起こることから、SLとオーキシンは相加的に作用すると考えられる。オーキシンに対する感受性が低下したarf7arf19 二重変異体は根毛伸長促進においてオーキシンに応答しないが、GR24に対しての応答性は野生型よりも高まり、ACCに対しての応答性は野生型よりも低下していた。したがって、arf7arf19 二重変異体のSLに対する感受性はオーキシンシグナル伝達経路を介していないと言えるが、エチレンに対する感受性が低下していることから、この変異体ではエチレンシグナル伝達経路とは別のシグナルがSLによって活性化されて根毛伸長が促進されるものと思われる。以上の結果から、オーキシン、SL、エチレンは相互にクロストークして根毛伸長を制御しているものと思われる。