Daytime temperature is sensed by phytochrome B in Arabidopsis through a transcriptional activator HEMERA
Qui et al. Nature Communication (2019) 10:140.
doi:10.1038/s41467-018-08059-z
フィトクロムB(PHYB)は短日条件下での温度による胚軸伸長制御に関与していることが知られている。夜間の気温上昇は、PHYBのPfr型からPr型への暗反転を促進し、PHYBによる胚軸伸長抑制が解除される。PHYBの暗反転は、明所でも温度による影響を受けるので、理論的にはPHYBは連続光を含む長日条件下の日中の温度変化も感知しているはずである。米国 カリフォルニア大学リバーサイド校のChen らは、これまでに行われてきた明所での温度に応答した胚軸伸長実験は白色光下で行われてきたためにクリプトクロムの影響を受け、PHYBによる温度感知効果をマスクしてしまうことを突き止めた。そこで、赤色光下で実験を行なった。シロイヌナズナ芽生えを21℃もしくは27℃の短日、長日、連続の赤色光下で育成し、胚軸伸長を見たところ、連続および長日赤色光は短日赤色光よりも温度上昇による胚軸伸長効果が高くなっていた。そして、変異体を用いた解析から、この伸長促進はPHYBによって制御されていることが確認された。PHYBシグナル伝達の初期過程に関与しているHEMERA(HMR)の変異体hmr-5 は、短日条件よりも長日条件や連続光での温度上昇による胚軸伸長促進を強く抑制した。したがって、明所でのPHYBによる温度感知において、HMRは重要なシグナル伝達因子であると考えられる。HMRの酸性転写活性化ドメイン(TAD)がアミノ酸置換(D516N)したhmr-22 変異体も短日条件よりも長日条件や連続光での温度上昇による胚軸伸長促進を強く抑制することから、この過程にはHMRのTADが必要であると考えられる。bHLH型転写因子のphytochrome-interacting factor(PIF)は胚軸伸長を促進し、その中でもPIF4は温度形態形成に関与していることが知られている。PIF1、PIF3、PIF4、PIF5の変異体を用いた解析から、赤色光下での温度形態形成には、PIF4のみが関与し、この応答にはHMRが必要であることがわかった。HMRはPIF4 の転写を制御しているのではなく、PIF4タンパク質の安定化に関与していた。さらにプルダウンアッセイからHMRとPIF4が物理的に相互作用をすることが確認された。温度上昇によって発現量が増加するマーカー遺伝子(YUC8 、IAA19 、IAA29 )の解析から、これらの遺伝子の発現活性化にはHMRのTADが関与していることがわかった。以上の結果から、フィトクロムBは日中の温度上昇による胚軸伸長も制御しており、これにはHMRによるPIF4の活性および安定性の制御が関与していると考えられる。