miR156-Regulated SPL Transcription Factors Define an Endogenous Flowering Pathway in Arabidopsis thaliana
Wang et al. Cell (2009) 138:738-749.
doi:10.1016/j.cell.2009.06.014
The Sequential Action of miR156 and miR172 Regulates Developmental Timing in Arabidopsis
Wu et al. Cell (2009) 138:750-759.
doi:10.1016/j.cell.2009.06.031
The MicroRNA-Regulated SBP-Box Transcription Factor SPL3 Is a Direct Upstream Activator of LEAFY, FRUITFULL, and APETALA1
Yamaguchi et al. Developmental Cell (2009) 17:268-278.
doi:10.1016/j.devcel.2009.06.007
Repression of Flowering by the miR172 Target SMZ
Mathieu et al. PLoS Biol (2009) 7:e1000148.
doi:10.1371/journal.pbio.1000148
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Plant Phase Transitions Make a SPLash
Fabio Fornara and George Coupland Cell (2009) 138:625-627.
doi:10.1016/j.cell.2009.08.011
シロイヌナズナが幼植物から成熟個体へ、栄養成長から生殖成長へと転換する際には様々な形態変化を示す。このような成長過程の変化の過程において、SQUAMOSA PROMOTER BINDING-LIKE (SPL )転写因子の転写産物量増加とSPL のターゲットとなるマイクロRNAのmiR156 量の減少が確認されており、成長の転換に関与していると考えられている。miR156は幼植物での発現が強く、植物体が成熟するにつれて弱くなる発現パターンを示し、シロイヌナズナに16個存在するSPLのうちの10個をターゲットとしている。このmiR156 の発現パターンと逆の挙動を示すマイクロRNAとしてmiR172が知られており、このmiRNAは6個のAP2様転写因子(APETALA2、TARGET OF EAT1、2、3、SCHLAFMÜTZE、SCHNARCHZAPFEN )をターゲットとしている。最近、SPL転写因子とマイクロRNAによる成長転換に関する論文がペンシルバニア大学とマックスプランク発生生物学研究所の4つのグループから発表された。
ペンシルバニア大学のPoethig らのグループは、SPL9とSPL10がmiR172 前駆体をコードする遺伝子の発現を活性化し、SPL9がこの前駆体遺伝子のプロモーター領域に結合することを見出した [Wu et al. Cell (2009)138:750-759.]。また、SPL9とSPL10はmiR156 前駆体の転写も促進しており、自らの発現に対して負のフィードバックループを形成していることもわかった。よって、SPL9とSPL10は直接miR172 の発現を活性化することで、幼植物期から成熟期への転換を促進しているものと考えられる。
シロイヌナズナを短日条件から長日条件へ移すと葉においてFLOWERING LOCUS T (FT )が発現する。FTタンパク質は茎頂へと輸送され、bZIP型転写因子のFLOWERING LOCUS D (FD)と複合体を形成して花成に関与するMADS box転写因子のAPETALA1 (AP1 )、SUPPRESSOR OF CONSTANS OVEREXPRESSION (SOC1 )、FRUITFULL (FUL )の発現を誘導する。マックスプランク発生生物学研究所のSchmid らのグループは、miR172のターゲットとなるSCHLAFMÜTZE(SMZ)によるFT 発現の制御について調査し[Mathieu et al. PLoS Biol (2009) 7:e1000148.]、SMZは直接FT の発現を抑制し、さらに茎頂部においてFT のシグナル伝達の下流に位置するAP1 、SOC1 の発現も抑制していることを明らかにした。また、SMZがFT の発現を抑制するためには花成を抑制するMADS box転写因子であるFLOWERING LOCUS M(FLM)が必要であることがわかった。よって、miR172/SMZは複数の花成誘導転写因子の発現を制御することで花成の微調整を行なっているものと考えられる。
マックスプランク発生生物学研究所のWeigel らのグループは、miR156 を過剰発現させた個体ではSLP3 とSLP9 の転写産物量が減少してFUL、SOC1 の発現誘導に遅れが生じること、誘導型プロモーターの制御下でSLP9 を発現させると誘導とともにFUL の発現誘導が起こること、SLP3がFUL のプロモーター領域に、SPL9がSOC1 およびSOC1 ホモログのAGAMOUS-LIKE42 (AGL42 )のプロモーター領域に結合することを見出した[Wang et al. Cell (2009) 138:738-749.]。このことから、SLPはFT/FD複合体とは独立して自ら直接花成に関与するMADS box転写因子の発現を制御しているものと考えられる。
ペンシルバニア大学のWagner らのグループは、花成の際にSPL3がFUL、AP1、LEAFY (LFY )の発現を直接活性化してしており、SPL4とSPL5もSPL3と機能重複していることを見出した[Yamaguchi et al. Developmental Cell (2009) 17:268-278.]。よって、SPL転写因子はFT/FD複合体の経路と並行して花成を制御する調節ネットワークにおいて中心的な役割を果たしていると考えられる。