Linking PHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR to Histone Modification in Plant Shade Avoidance
Peng et al. Plant Physiology (2018) 176:1341-1351.
doi:10.1104/pp.17.01189
日陰に応答した成長の変化(避陰反応)は、bHLH型転写因子のPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR(PIF)によるターゲット遺伝子の発現活性化によってもたらされている。中国 復旦大学のShen らは、シロイヌナズナの転写に関連した変異体の避陰反応の変化を調査し、トリメチル化したヒストンH3K4/H3K36(H3K4me3/H3K36me3)に結合するMorf Related Gene(MRG)ファミリータンパク質のMRG1およびMRG2の二重変異体mrg1 mrg2 は日陰に対する応答性が欠失していることを見出した。mrg1 変異体およびmrg2 変異体の表現型は野生型と同等であることから、MRG1 とMRG2 は冗長的に機能していると考えられる。mrg1 mrg2 二重変異体にpif7 変異を導入した三重変異体は、日陰条件でmrg1 mrg2 二重変異体よりも胚軸が僅かに短くなり、pif7 変異体とほぼ同程度であった。よって、避陰反応においてMRG1/MRG2はPIF7を介して機能しているものと思われる。mrg1 mrg2 二重変異体での日陰誘導遺伝子(YUCCA8 、PRE1 、IAA19 、YUCCA9 、GH3.3 、PAR1 )の発現誘導は、野生型よりも低くなっていたが、pif7 変異体ほど低くなってはおらず、pif7 mrg1 mrg2 三重変異体での発現誘導はpif7 変異体と同程度であった。よって、pif7 変異はmrg1 mrg2 変異よりも上位にあると考えられる。PIF7 およびPIF1 、PIF3 、PIF4 の発現量はmrg1 mrg2 二重変異体と野生型との間で同等であり、MRG1 、MRG2 の発現もpif7 変異や日陰処理によって変化することはなかった。各種アッセイからMRG2と脱リン酸化されたPIF7が物理的に相互作用をすることが確認され、日陰処理によるPIF7の脱リン酸化がMGR2との相互作用を調節していることが示唆される。PIF7とMRG2のターゲット遺伝子への結合をクロマチン免疫沈降(ChIP)解析によって調査したところ、PIF7は日陰条件に応答してプロモーター領域にあるG-box(CACGTG)シスエレメント領域への結合が増加することが判った。一方、MRG2は、日陰に応答してPIF7結合領域よりも下流のコード領域で結合量が増加した。また、ヒストンのメチル化状態をYUCCA8 遺伝子で調査したところ、H3K4me3とH3K36me3は5'-末端と遺伝子領域内に多く見られ、MRG2結合領域と重複していた。白色光条件と日陰条件でH3K4me3とH3K36me3の量に有意差は見られないことから、日陰条件に応答したMRG2の増加はH3K4me3とH3K36me3の量的変化によるものではないと思われる。H3K4-メチルトランスフェラーゼの変異体atx1-2 とH3K36-メチルトランスフェラーゼの変異体sdg-8 では日陰処理によるMRG2のYUCCA8 遺伝子への結合量が僅かに減少しており、基底レベルのH3K4me3とH3K36me3がMRG2の結合促進を引き起こしているものと思われる。pif7 変異体ではYUCCA8 遺伝子へのMRG2の結合が大きく減少しており、MRG2の結合にはPIF7の関与が大きいことが示唆される。MRG2はヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)ファミリータンパク質のHAM1/HAM2と相互作用をしてターゲット領域のヒストンH4K5のアセチル化(H4K5ac)をもたらし、転写を活性化させることが知られている。日陰処理1時間後のYUCCA8 遺伝子の幾つかの領域においてH4K5acが増加し、他にもH3K9acとH3K27acの増加も観察された。しかし、日陰処理によるH4K5acの増加はmrg1 mrg2 二重変異体で大きく減少し、pif7 変異体、pif7 mrg1 mrg2 三重変異体では完全に失われた。以上の結果から、以下のモデルが考えられる。日陰に応答して脱リン酸化されたPIF7がターゲット遺伝子プロモーター領域のG-boxに結合し、このPIF7がH3K4me/H3K3meに結合するMRGと相互作用をし、MRGは更にHATと相互作用をして日陰応答遺伝子のヒストンのアセチル化、そして転写の活性化が引き起こされる。