Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)ヒストン修飾によるカルス誘導

2018-10-19 22:52:47 | 読んだ論文備忘録

JMJ30‐mediated demethylation of H3K9me3 drives tissue identity changes to promote callus formation in Arabidopsis
Lee et al. The Plant Journal (2018) 95:961-975.

doi:10.1111/tpj.14002

植物の器官を培養することによって誘導されたカルスは、側根原基に似た物理的、遺伝的な特徴を有している。このような組織分化はエピジェネティックなプログラム機構によって起こると考えられるが、詳細は明らかとなっていない。韓国 成均館大学校のSeo らは、ヒストン脱メチル化酵素のJUMONJI C DOMAIN-CONTAINING(JMJ)タンパク質をコードするJMJ30 がシロイヌナズナ葉片からのカルス形成過程で発現量が増加することに着目して詳細な解析を行なった。T-DNA挿入jmj30 変異体の葉片は、野生型と比べてカルス形成能が低下しており、JMJ30はカルス形成を正に制御していると考えられる。カルス形成に関与している遺伝子の発現をjmj30 変異体と野生型のカルスで比較したところ、jmj30 変異体カルスではLATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAIN(LBD)転写因子をコードするLBD16LBD17LBD18LBD29 の転写産物量が減少していることがわかった。JMJ30タンパク質はLBD16 遺伝子およびLBD29 遺伝子のプロモーター領域に結合し、LBD16LBD29 の発現を促進することがわかった。野生型植物では、LBD16 、LBD29 遺伝子プロモーター領域のH3K9me3量はカルス誘導初期段階に一過的に減少するが、jmj30 変異体カルスではLBD16LBD29 遺伝子のH3K9me3量が野生型よりも高くなっていた。したがって、JMJ30はカルス形成初期過程にLBD 遺伝子のH3K9me3を除去することで遺伝子発現を活性化していることが示唆される。JMJ30が特異的な領域のヒストンを脱メチル化するためにはDNA結合因子と相互作用をする必要がある。LBD 遺伝子の発現はAUXIN RESPONSE FACTOR 7(ARF7)やARF19によって制御されていることから、これらの転写因子とJMJ30との関係をBiFC解析やCo-IPアッセイで調査したところ、JMJ30はARF7やARF19と物理的に相互作用をすることが確認された。arf7 arf19 二重変異体では、jmj30 変異体と同様に、カルス誘導初期段階でのLBD 遺伝子プロモーター領域のH3K9me3量が増加し、JMJ30タンパク質のプロモーター領域への結合量が減少していた。よって、JMJ30とAFRは協働してカルス形成を制御していることが示唆される。LDB16 を過剰発現させた形質転換体(LBD16-ox )はカルス形成能が向上しており、LBD16-ox/jmj30 のカルス形成能はLDB16-ox と同等であった。このことから、カルス形成においてLBD はJMJ30よりも上位に位置していると考えられる。ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼのARABIDOPSIS TRITHORAX-RELATED 2(ATXR2)は、LBD16LBD29 遺伝子のプロモーター領域でのH3K36me3の蓄積を促進してカルス形成を誘導することが報告されており、ATXR2はARF転写因子と結合し、JMJ30とATXR2のLBD 遺伝子プロモーターへの結合能力は同等であることが知られている。酵母two-hybridアッセイから、JMJ30とATXR2は物理的に相互作用をすることが確認された。jmj30 変異体ではカルス形成過程の間のLBD16 、LBD29 遺伝子プロモーター領域のH3K36me3 の増加が抑制された。また、atxr2 変異体カルスではLBD16 およびLBD29 プロモーター領域でのH3K9me3の減少が阻害された。jmj30 atxr2 二重変異体は、それぞれの単独変異体よりもさらにカルス形成が抑制された。したがって、JMJ30とATXR2はカルス形成において相乗的に作用していることが示唆される。以上の結果から、ARF-JMJ30-ATXR2複合体は、LBD 遺伝子の2つのエピジェネティックマーカーH3K9me2とH3K36me3を制御することでLBD 遺伝子を活性化し、カルス誘導に関与していると考えられる。

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論文)新たな「緑の革命」

2018-10-13 10:51:23 | 読んだ論文備忘録

Modulating plant growth-metabolism coordination for sustainable agriculture
Li et al. Nature (2018) 560:595-600.

doi: 10.1038/s41586-018-0415-5

News & Views
Improved nutrient use gives cereal crops a boost
Wang & Matsuoka Nature (2018) 560:563-564.

doi: 10.1038/d41586-018-05928-x

コムギやイネの緑の革命品種(GRVs)は、DELLAタンパク質が蓄積することで半矮性となり、倒伏による収量低下に対して抵抗性となる。しかしながら、GRVは窒素利用効率が低く、窒素肥料を大量に投入することで環境に悪影響を及ぼしている。イネのGRV変異体であるsd1 は、ジベレリン(GA)生合成酵素遺伝子の変異によって生物活性のあるGAの蓄積量が減少し、DELLAタンパク質SLR1の蓄積量が増加する。中国科学院 遺伝与発育生物学研究所のFu らは、sd1 を含んでいるインディカイネ36品種のうち、最もアンモニウムイオンの取込み効率の良いNM73とSD1 を含んでいるNanjing6(NJ6)を交雑して得たBC1F2集団のQTL解析を行ない、アンモニウムイオン(NH4+)取込みについての2つのLODスコアピーク(qNGR1qNGR2 )を見出した。NM73のqngr1 対立遺伝子は、地図上の位置がsd1 と一致していたが、NM73 qngr2 は未知であったのでマッピングを行なったところ、GROWTH-REGULATING FACTOR 4GRF4 )に位置することがわかった。NJ6とNM73のGRF4 を比較すると複数のSNPがみられ、そのうちの2つ(エクソン3のg.1187T>Aとg.1188C>A)はmiR396を介したGRF4 mRNAの分解を妨げることがわかった。sd1 を含んでいる品種RD23は、エクソン3の塩基置換は見られないが、高いNH4+取込み効率を示し、RD23にはGRF4 遺伝子のプロモーター領域に3つのSNPがあった。イネ各品種のGRF4 遺伝子プロモーター領域には3つのハプロタイプ(A、B、C)があり、NM73を含むRD23と同じハプロタイプBの品種ではGRF4 mRNA量が多く、NH4+の取込み効率が高くなっていた。したがって、NM73はGRF4 遺伝子のプロモーターのハプロタイプとエクソン3の塩基置換によるmiR396抵抗性の組合せによって高いNH4+取込み効率を示していると考えられる。NJ6のGRF4 mRNA量は窒素量が増加するにつれて減少していた。これは、おそらくGRF4 の転写の減少によるものと考えられる。したがって、低窒素条件では窒素量を維持するためにGRF4量を増加させるフィードバック制御がかかることが示唆される。低窒素に応答したGRF4 mRNA量の増加は、ハプロタイプBプロモーターの品種で大きくなっていた。CRISPR-Cas9で作成したgrf4 変異体は、半矮性で、NH4+の流入や窒素低下に応答したNH4+の取り込みが減少し、窒素に応答したバイオマスの増加も低下した。したがって、GRF4は窒素に応答してNH4+の取込みや成長を促進する転写因子で、SLR1の阻害効果に対して拮抗的に作用すると考えられる。GRF4は、硝酸イオンの取込みや窒素同化関連酵素(グルタミン合成酵素、硝酸還元酵素)の活性を高める作用があり、SLR1はこれらを阻害した。GRF4は窒素代謝に関連する遺伝子のプロモーター領域の特異的な配列(GCCCをコアとするモチーフ)に結合して転写活性を高める転写活性化因子として機能していることがわかった。GRF4はコアクティベーターのGIF1(GRF-interacting factor 1)と相互作用をしてターゲット遺伝子の転写を活性化するが、SLR1はこの相互作用を阻害していた。また、GRF4は自身の遺伝子のプロモーター領域に結合して自己発現誘導していた。したがって、SLR1はGRF4-GIF1の相互作用を妨げることで、GFR4の蓄積量を減少させ、窒素代謝遺伝子のGFR4-GIF1による転写活性化を低下させ、窒素代謝の促進に対して拮抗的に作用している。GRF4は光合成、糖代謝、糖輸送関連遺伝子の発現も直接促進しており、細胞分裂に関与する遺伝子の発現も促進していた。したがって、GRF4とSLR1の拮抗作用は、窒素同化と炭素同化、さらに植物の成長を制御していると考えられる。GRF4 プロモーターハプロタイプBは一部のインディカ品種に見られるが、現在のエリート品種にはない。sd1 を含んでいる高収量インディカ品種9311にGRF4ngr2 を導入した同質遺伝子系統は、半矮性を維持しつつ収量や窒素利用効率が高くなった。よって、GRF4ngr2 導入によるGRF4量の増加は、窒素代謝制御とGAによる草丈伸長を切り離している。また、GRF4ngr2 を過剰発現させたコムギGRVのKN199は、草丈を伸長させずに窒素利用効率や収量を高めた。したがって、GRF4量の増加は適度な窒素条件でイネやコムギの収量を増加させることができる。

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論文)ブラシノステロイドの虫害に対する効果

2018-10-03 22:35:24 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroids mediate susceptibility to brown planthopper by integrating with the salicylic acid and jasmonic acid pathways in rice
Pan et al. Journal of Experimental Botany (2018) 69:4433-4442.

doi:10.1093/jxb/ery223

ブラシノステロイド(BR)は、病原菌に対する免疫応答を負に制御していることが知られているが、虫害、特に吸汁性害虫に対する役割は明らかではない。中国 南京農業大学のWan らは、イネのトビイロウンカ(Nilaparvata lugens )に対する抵抗性におけるBRの役割について解析を行なった。ウンカの加害を受けたイネでのBRに関連した遺伝子の発現を見たところ、BR受容体のBR INSENSITIVE 1BRI1 )、BRシグナル伝達因子のBRASSINAZOLE RESISTANT 1BZR1 )、内生BR量を正に制御するSLENDER GRAINSLG )、BR生合成に関与しているD11D12 の発現量が、加害24時間後に減少していることがわかった。また、ウンカの加害を受けたイネの茎のBR量は対照よりも減少していた。これらの結果から、イネはウンカの摂食によってBR関連の経路が阻害されることが示唆される。植物の虫害に対する防御応答にサリチル酸(SA)やジャスモン酸(JA)の経路が関与していることが知られており、ウンカ加害後にSAの生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子の発現量が一過的に増加し、JAの生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子はSA関連遺伝子の活性化後に誘導されていることがわかった。BRを過剰生産するslg-D 変異体の幼苗は、野生型イネに比べてウンカ加害後の枯死率が高く、slg-D 変異体を摂食したウンカの生存率は野生型イネを摂食した場合よりも高くなっていた。同様の傾向は、他のBR過剰変異体のm107 においても観察された。BR欠損変異体のlhdd10 は、野生型イネに比べてウンカの生存率が低く、摂食するウンカの数も少なくなっていた。よって、lhdd10 変異体は野生型よりもウンカに対する抵抗性が高い。予めBR(24-エピブラシノライド)を添加した幼苗のウンカ加害後の枯死率は対照よりも高く、ウンカの生存率も高くなっていた。よって、BRはウンカに対するイネの感受性を促進していることが示唆される。BR処理したイネではSA生合成酵素遺伝子の転写産物量が減少しており、このような傾向はBR過剰生産変異体においても見られた。また、BR処理した幼苗やBR過剰生産変異体ではSA量が対照よりも少なくなっていた。逆に、lhdd10 変異体ではウンカ加害後のSA生合成酵素遺伝子の転写産物量やSA量が野生型よりも多くなっていた。SA処理したイネを摂食させたウンカは対照よりも生存率が低く、SA処理したイネの枯死率は対照よりも低くなっていた。一方、サリチル酸分解酵素遺伝子(NahG )を発現させたイネは、野生型よりもウンカ加害に対する感受性が高くなっていた。これらの結果から、BRはイネのSA経路を抑制することでウンカに対する抵抗性を負に制御していることが示唆される。BR処理はJA関連遺伝子の発現量を増加させ、内生JA量も増加させた。また、BR過剰生産変異体ではウンカ加害後にJA関連遺伝子の発現が誘導され、BR欠損変異体では抑制された。したがって、BRはウンカ加害後にJA経路を誘導していると考えられる。JA経路とSA経路は相互に拮抗的に作用することが知られている。今回の研究からBRはSA経路を抑制してJA経路を活性化することが示されたので、BRによるSA経路の抑制にJA経路が関与しているかを調査した。JA欠損変異体og1 やJA非感受性coi1-18 変異体では、ウンカ加害後のSA経路のBRによる抑制が見られず、SA量の減少も起こらなかった。よって、BRによるSA経路の抑制はJA経路を介してなされているものと思われる。以上の結果から、ブラシノステロイドは、ジャスモン酸経路を正に制御し、サリチル酸経路を負に制御することで、イネのトビイロウンカによる加害を増加させていると考えられる。

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論文)ジベレリンによる葉緑体の形成制御

2018-09-28 22:30:13 | 読んだ論文備忘録

Chloroplast Biogenesis Controlled by DELLA-TOC159 Interaction in Early Plant Development
Shanmugabalaji et al. Current Biology (2018) 28:2616-2623.

doi:10.1016/j.cub.2018.06.006

発芽の際には、プロプラスチドに葉緑体タンパク質膜透過装置を介して多くの前駆体タンパク質が輸送され、葉緑体が形成される。葉緑体外包膜の透過装置は、膜透過チャネルのTOC75と、レセプターのTOC33とTOC159で構成されている。発芽はジベレリン(GA)によって制御されており、GA濃度が低い場合にはDELLAタンパク質によって発芽が抑制される。シロイヌナズナの5つのDELLAタンパク質の中では、RGL2が発芽に対して抑制的に作用する主要な因子となっており、RGL2は種子浸漬24時間以降にGA含量が増加するに連れて消失していく。そしてRGL2が消失した後にTOC159タンパク質の増加が観察される。スイス ヌーシャテル大学Kessler らは、GA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)を添加した培地で発芽させた種子はRGL2が多量に蓄積し、TOC159量が減少して緑化が阻害されること、rgl2 変異体やrgl2/gai/rga 三重変異体ではPAC処理によるTOC159の減少が見られないことを見出した。PAC処理はTOC159 mRNA量には影響していなかった。DELLAの変異体では内生アブシジン酸(ABA)量が減少することから、PACと同時にABAを処理したが、PAC処理の効果に変化は見られなかった。また、RGL2が高蓄積するsly1-2 変異体においてもTOC159量が減少していた。これらの結果から、DELLAタンパク質はTOC159タンパク質の蓄積を転写後に直接抑制していることが示唆される。酵母two-hybridアッセイやベンサミアナタバコを用いた共免疫沈降やBiFCアッセイから、TOC159はDELLAタンパク質と相互作用をすることが確認された。TOC159はユビキチン化のターゲットであり、プロテアソーム系によって分解されることが知られている。PAC処理の際に、同時にプロテアソーム阻害剤MG132を処理するとTOC159量が増加した。したがって、DELLAはユビキチン/プロテアソーム系によるTOC159の分解を促進していると考えられる。葉緑体タンパク質膜透過装置をターゲットしてユビキチン化するE3リガーゼとしてSP1が知られているが、DELLAによるTOC159の分解にはSP1は関与していなかった。低GA条件では、葉緑体へ輸送されなかった光合成関連前駆体タンパク質のユビキチン/プロテアソーム系による分解も起こっていた。以上の結果から、ジベレリンは、DELLAを介したTOC159レセプターのユビキチン/プロテアソーム系による分解を制御することで、発芽時のプロプラスチドから葉緑体への発達に関与していると考えられる。

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論文)病原菌による罹病性促進機構

2018-09-23 08:50:13 | 読んだ論文備忘録

Plant pathogen effector utilizes host susceptibility factor NRL1 to degrade the immune regulator SWAP70
He et al. PNAS (2018) 115:E7834-E7843.

DOI:10.1073/pnas.1808585115

ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans )は、植物の免疫を抑制するためにRXLRエフェクターを分泌している。RXLRエフェクターのPi02860は、ジャガイモの感受性(S)因子NPH3/RPT2-LIKEタンパク質(StNRL1)と相互作用をして病徴を広げることが知られているが、詳細な機構は明らかではない。英国 ダンディー大学Birch らは、StNRL1と相互作用をする因子を酵母two-hybrid(Y2H)スクリーニングで探索し、イネやシロイヌナズナに見られるグアニンヌクレオチド交換因子SWAP70と相同性の高いタンパク質が見出された。SWAP70はパターン誘導性免疫(PTI)やエフェクター誘導性免疫(ETI)の制御において正に機能することが知られている。さらに、StNRL1はホモ二量体を形成することがわかった。ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)でSWAP70 の発現を抑制したベンサミアナタバコは、疫病菌による病害が対照よりも拡大し、疫病菌由来のエリシターINF1によって誘導される細胞死(ICD)が低下した。また、SWAP70 を過剰発現させたベンサミアナタバコは、疫病菌の病害が縮小し、ICDが促進された。さらに、SWAP70 の過剰発現は、Pi02860によるICDの抑制を低下させた。これらの結果から、SWAP70はICD免疫応答の正の制御因子であり、疫病菌の感染抑制に関与していると考えられる。NLR1はBTB-ドメインタンパク質で、CULLIN3ユビキチンリガーゼの基質アダプターコンポーネントであると推測されている。ベンサミアナタバコにおいて、Pi02860とStNRL1を共発現させるとStSWAP70量が減少し、この効果は26Sプロテアソーム阻害剤のMG132を添加することで抑制された。したがって、StSWAP70はプロテアソーム系による分解を介してPi02860とStNRL1によって不安定化されていると考えられる。StNRL1の二量体形成に関与しているアミノ酸残基を置換した変異型StNRL1は、Pi02860と相互作用をするが、StSWAP70とは相互作用をせす、StSWAP70の分解を引き起こさなかった。変異型StNRL1は、正常なStNRL1と比較して、INF1が誘導するICDを抑制する効果が低下し、疫病菌の病害が縮小していた。したがって、StNRL1の二量体形成とStSWAP70との相互作用は、IDC免疫応答の抑制と疫病菌の感染拡大にとって必要であることが示唆される。C末端側のアミノ酸残基を欠失させた変異型Pi02860は、StNRL1と相互作用ができず、StSWAP70の分解を促進せず、疫病菌の病徴拡大やICDの抑制が低下した。また、共免疫沈降(co-IP)アッセイから、変異型Pi02860はStNRL1とStSWAP70との相互作用を強化できないことが確認された。以上の結果から、ジャガイモ疫病菌のRXLRエフェクターのPi02860は、ジャガイモのS因子StNRL1と植物免疫の正の制御因子であるStSWAP70との相互作用を強めることでStSWAP70の分解を促進し、菌の病徴拡大を促進していると考えられる。

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学会)日本植物学会第82回大会(広島)2日目

2018-09-15 21:46:54 | 学会参加

大会2日目の午後は学会賞授賞式と授賞講演が行われた。各賞の受賞者は以下のとおり。


大賞
東京大学名誉教授 法政大学名誉教授
長田 敏行

学会賞
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所
東山 哲也
「ライブセル解析による被子植物の生殖機構の解明」

奨励賞
横浜市立大学 木原生物学研究所
丸山 大輔
「新奇の細胞融合現象による花粉管誘引停止メカニズムの解明」

Institute of Plant and Microbial Biology, Academia Sinica
中村 友輝
「植物の生長および発生における脂質多様性に関する研究」

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所
吉田 啓亮
「植物オルガネラ機能を支えるレドックス制御ネットワークの包括的解析」

若手奨励賞
琉球大学 理学部 海洋自然科学科
小林 峻
「哺乳類媒ウジルカンダの送粉者の地域変異」

国立遺伝学研究所
小林 優介
「葉緑体核様体構造の進化と遺伝機構の分子生物学的解析」

理化学研究所 環境資源科学研究センター
福島 健児
「食虫植物のゲノム・形態・機能の進化」

特別賞
該当なし

2018年度JRP論文賞
Best Paper Award
Kaori Takemura, Hiroyuki Kamachi, Atsushi Kume, Tomomichi Fujita, Ichirou Karahara, Yuko T. Hanba (2017) A hypergravity environment increases chloroplast size, photosynthesis, and plant growth in the moss Physcomitrella patens. Journal of Plant Research 130: 181-192

Kotaro T. Yamamoto, Masaaki K. Watahiki, Jun Matsuzaki, Soichirou Satoh, Hisayo Shimizu (2017) Space-time analysis of gravitropism in etiolated Arabidopsis hypocotyls using bioluminescence imaging of the IAA19 promoter fusion with a destabilized luciferase reporter. Journal of Plant Research 130: 765-777

Most-Cited Paper
Yasutaka Chiba, Takafumi Shimizu, Shinya Miyakawa, Yuri Kanno, Tomokazu Koshiba, Yuji Kamiya, Mitsunori Seo (2015) Identification of Arabidopsis thaliana NRT1/PTR FAMILY (NPF) proteins capable of transporting plant hormones. Journal of Plant Research 128: 679-686

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学会)日本植物学会 第82回大会(広島)1日目

2018-09-14 21:41:35 | 学会参加

日本植物学会第82回大会が9月14日(金)~16日(日)に広島国際会議場(広島市中区)で開催された。広島での大会は、第62回大会 (1998年)を広島大学 東広島キャンパスで開催して以来となる。今回は、参加者の利便性を考え、広島市内の平和記念公園内にある広島国際会議場が大会会議場となった。

会場となった広島国際会議場

 

大会のシンボルマークは、広島県の県木・県花となっているモミジをモチーフとしたもの

 

広島国際会議場に隣接する広島平和記念資料館の本館は耐震工事中であった

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論文)時計因子による葉の老化制御

2018-09-11 05:55:36 | 読んだ論文備忘録

Circadian control of ORE1 by PRR9 positively regulates leaf senescence in Arabidopsis
Kim et al. PNAS (2018) 115:8448-8453.

doi:10.1073/pnas.1722407115

概日時計が生物の老化に関与していることが動物において知られており、コア時計遺伝子の変異体は老化が促進される。しかしながら、植物においては老化と概日時計との関係は明らかではない。韓国 大邱慶北科学技術院(DGIST)のNam らは、シロイヌナズナの9つのコア時計遺伝子の変異体について葉の老化過程を観察し、EARLY FLOWERING 3 (ELF3 )、ELF4LUX ARRHYTHMOLUX )の変異体は対照と比較して葉の黄化が促進され、CIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1CCA1 )、PSEUDO-RESPONSE REGULATOR 7PRR7 )、PRR9TIMING OF CAB EXPRESSION 1TOC1 )、GIGANTEAGI )の変異体は黄化が遅延し、LATE ELONGATED HYPOCOTYLLHY )の変異体では変化が見られないことを見出した。また、elf3elf4lux の各変異体は、暗処理で誘導される葉の老化においても促進が見られ、prr9 変異体は老化が遅延した。よって、PRR9 は暗処理誘導と齡依存の両方の葉の老化を促進している。シロイヌナズナの老化過程はNAC転写因子やWRKY転写因子によって制御されていることから、老化に関与していると推測される8つのNAC 遺伝子と4つのWRKY 遺伝子の発現パターンを見たところ、3つのNAC 遺伝子(ANAC029ANAC083ANAC092 )と2つのWRKY 遺伝子(WRKY22WRKY54 )が概日周期の発現パターンを示すことが確認された。ANAC092/ORESARA1ORE1 )は老化の正の制御因子であり、miR164 によって転写後の負の制御を受けている。miR164 の3つのアイソフォーム(miR164amiR164bmiR164c )のうちの1つMIR164B は、ORE1 とは逆位相の概日周期発現パターンを示した。miR164abc 変異体では、ORE1 転写産物の概日変動量が野生型よりも2倍程度高くなり、miR164b を過剰発現させた系統はORE1 転写産物量が大きく減少していた。よって、概日時計はmiR164 の逆位相発現を介してORE1 転写産物量を負に制御していることが示唆される。次にORE1 の概日発現を促進する因子を探索したところ、コア時計因子PRR9がORE1 プロモーター領域に結合して発現を活性化することが確認された。prr9 変異体は葉の老化が野生型よりも遅延したが、ore1 変異体やprr9 ore1 二重変異体はprr9 変異体よりも葉の老化が遅くなった。また、prr9 変異による老化遅延はORE1 を過剰発現させることで打ち消された。したがって、葉の老化制御においてORE1PRR9 よりも上位にあると考えられる。prr9 変異体ではMIR164B の発現量が増加しており、PRR9はMIR164B プロモーター領域に直接結合することが確認された。よって、PRR9はmiR164 の転写抑制因子としても機能している。以上の結果から、時計因子のPRR9はORE1 の転写を直接活性化することと、miR164 の転写を直接抑制することでORE1 の転写後制御を間接的に行うことで、ORE1 の発現を二重に制御して葉の老化を正に制御していると考えられる。

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論文)イネ分けつ角度制御の分子機構

2018-09-05 21:56:38 | 読んだ論文備忘録

A Core Regulatory Pathway Controlling Rice Tiller Angle Mediated by the LAZY1-Dependent Asymmetric Distribution of Auxin
Zhang et al. The Plant Cell (2018) 30:1461-1475.

doi:10.1105/tpc.18.00063

イネの分けつ角度は、収量に影響する重要な農業形質である。分けつ角度に影響する幾つかの遺伝子が同定され特徴づけられているが、それらの遺伝子による分けつ角度の制御経路についての詳細は明らかとなっていない。過去の研究から、イネの分けつ角度は重力刺激応答性と強く関連していることが示されている。そこで、中国科学院 遺伝・発育生物学研究所Wang らは、イネ幼苗を横に倒して重力刺激を与え、基部のトランスクリプトームの変化を12時点、8時間にわたって経時的に解析した。その結果、重力刺激を与えていない対照と比較して、少なくとも連続する2時点で発現量が異なる遺伝子(DEG)を4204見出した。これらのDEGを発現時期によって、初期に発現している98DEG、後期に発現している3246DEG、初期‐後期ともに発現している860DEGにグループ分けし、さらにこれらのDEGを発現プロファイルによってクラスターに分け、初期DEGを2つのクラスター(EC1、EC2)、初期‐後期DEGを4つのクラスター(DC1~DC4)、後期DEGを4つのクラスター(LC1~LC4)に分類した。EC1、DC1、DC2、LC1、LC3は発現量が増加する遺伝子で、他は発現が抑制される遺伝子のクラスターとなっている。EC1 DEGの遺伝子オントロジー(GO)は、「小胞体でのタンパク質プロセッシング」に分類されるものが多く含まれており、重力刺激応答にはタンパク質プロセッシングが関与していものと思われる。DCクラスターには「植物ホルモンシグナル伝達」や「転写調節活性」に分類されるものが多くなっていた。LCクラスターのGOの種類はECやDCよりも多いことから、重力刺激応答後期は様々な生物学的過程が起こっているものと思われる。重力屈性応答にオーキシンが関与しているが知られている。重力刺激で発現誘導されるDC1、DC2、LC1、LC3クラスターにはオーキシンによって活性化される遺伝子が多く含まれており、重力刺激で発現抑制されるDC4、LC2、LC4クラスターにはオーキシンによって発現抑制される遺伝子が多く含まれていた。しかしながら、ECクラスターではオーキシン応答遺伝子は多く含まれていなかった。このことから、重力刺激の初期応答ではオーキシンは関与していないものと思われ、EC1クラスターには重力屈性においてオーキシンの上流で機能する遺伝子が含まれていると考えられる。EC1クラスターにおいて3つの転写因子遺伝子HEAT STRESS TRANSCRIPTION FACTOR 2DHSFA2D )、MADS57EARLY PHYTOCHROME RESPONSIVE1EPR1 )が重力刺激によって直ちに発現誘導されることが判明したので、その中のHSFA2D のノックアウト変異体hsfa2d について表現型を観察したところ、分けつ角度が野生型よりも大きくなっていた。また、hsfa2d 変異体の幼苗は重力刺激に対する応答性が低下していた。したがって、HSFA2D は重力刺激応答を介して分けつ角度の調節に関与していることが示唆される。野生型イネをオーキシン処理してもHSFA2D の発現は誘導されないことから、HSFA2D はオーキシン作用よりも上流において分けつ角度を制御していると考えられる。標識したオーキシンを用いた実験の結果、hsfa2d 変異体では幼苗に重力刺激を与えた際に見られるオーキシンの不均等分布が起こらないことがわかった。よって、hsfa2d 変異体ではオーキシンの側方向輸送が低下していることが示唆される。以前に見出されたイネの分けつ角度を制御する因子LAZY1(LA1)は、オーキシン輸送に関与してオーキシン不均等分布を誘導していることが報告されている。hsfa2d 変異体ではLA1 の発現量が減少しており、la1 変異体ではHSFA2D の発現量に変化は見られなかった。la1 変異体とhsfa2d la1 二重変異体の分けつ角度の大きさは同等であり、hsfa2d 変異体でLA1 を過剰発現させることで分けつ角度の回復が見られた。これらの結果から、HSFA2DLA1 によるオーキシン不均等分布の正の制御因子として機能して分けつ角度を調節していると考えられる。オーキシン不均等分布形成後に分けつ角度制御に関与する遺伝子として、DCクラスターに含まれるオーキシン応答転写因子遺伝子について解析し、WUSCHEL RELATED HOMEOBOX6WOX6 )とWOX11 が重力刺激に応答していることを見出したので、詳細な解析を行なった。その結果、WOX6WOX11 はオーキシンによって発現誘導され、重力刺激後の発現が下側に偏り不均等になることを見出した。CRISPR/Cas9(CR)を用いて作成した変異体の表現型を解析したところ、wox6 およびwox11 の単独変異体は分けつ角度に異常は見られなかったが、wox6 wox11 二重変異体は分けつ角度が広がり、重力刺激応答が低下していた。また、hsfa2d 変異体、la1 変異体では重力刺激後のWOX6WOX11 の不均等な発現誘導が低下していた。以上の結果から、HSFA2DLA1 の発現を調節することでオーキシンの不均等分布をもたらし、このことによって誘導されるWOX6WOX11 の不均等発現がイネの分けつ角度を制御していると考えられる。

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論文)ジャスモン酸による側根形成の阻害

2018-08-29 22:58:10 | 読んだ論文備忘録

Jasmonic Acid Inhibits Auxin-Induced Lateral Rooting Independently of the CORONATINE INSENSITIVE1 Receptor
Ishimaru et al. Plant Physiology (2018) 177:1704-1716.

doi:10.1104/pp.18.00357

東北大学上田らは、シロイヌナズナをジャスモン酸(JA)の鏡像異性体で処理すると側根数が減少し、その効果は(+)-JAの方が(-)-JAよりも強いことを見出した。また、JA処理による側根数の減少はcoi1 変異体においても観察されることから、JAによる側根形成の阻害はCOI1とは独立した現象であることが示唆される。生物活性のある他のJA誘導体での処理では側根数の減少は見られなかった。マイクロアレイ解析の結果、JA処理はオーキシンが発現を誘導する側根形成関連遺伝子のPUCHILATERAL ORGAN BOUNDERIES DOMAIN 29LBD29 )の発現量を減少させることが判った。JAによる側根形成阻害はオーキシンを同時処理することによって抑制された。オーキシン処理によるDR5::GUS レポーターの発現はJA処理によって阻害された。したがって、JAはオーキシンシグナル伝達を低下させていると思われる。そこで、オーキシンシグナル伝達センサーDII-VENUSを用いて解析を行なったところ、(-)-JAもしくは(+)-JA処理は根の成熟領域でのDII-VENUS蛍光の蓄積を引き起こすことがわかった。また、JAのJA-Ileへの転換を抑制してJA濃度を高める効果のあるjarin-1を同時に添加することで蛍光は強まり、オーキシン(IAA)を同時に添加すると蛍光は減少した。よって、JAはAux/IAAを安定化させる作用があると考えられる。オーキシン受容体の変異体tir1 afb2-3 およびafb5-5 を(-)-JAもしくは(+)-JAで処理すると、tir1 afb2-3 変異体は側根数が減少したが、afb5-5 変異体は(-)-JA処理による側根数の減少が弱まり、(+)-JA処理では側根数の減少が見られなかった。Pseudomonas syringae が生産するコロナチンは、 メチルジャスモン酸(MeJA)のアナログの1つであるコロナファシン酸(+)-CFAとコロナミン酸が縮合した構造をしている。野生型植物を(+)-CFA処理すると側根形成が劇的に抑制された。(+)-CFA処理は、根の重力屈性、オーキシンによる根毛形成誘導に影響を及ぼさなかった。また、(+)-CFA処理によってDII-VENUS蛍光の蓄積が起こった。さらに、JAの場合と同様に、(+)-CFA処理によってtir1 afb2-3 変異体の側根数が減少し、afb5-5 変異体では側根数の減少に対して抵抗性を示した。以上の結果から、JAおよび(+)-CFAは、Aux/IAAを安定化させることで、COI1を介したシグナル伝達とは独立して側根形成を阻害していると考えられる。

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