Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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HP更新)バイケイソウ考 その14 2022年度北海道バイケイソウ花成個体調査

2022-08-08 10:33:11 | ホームページ更新情報

私のHP「Laboratory ARA MASA」の「バイケイソウプロジェクト」に「バイケイソウ考 その14 2022年度北海道バイケイソウ花成個体調査」を追加しました。これは、2022年6月に実施した北海道でのバイケイソウ花成個体数調査の結果をまとめたものです。今年は私が調査している礼文島、ベニヤ原生花園、旭川、野幌の4地点で多数の花成個体が確認できました。特に、旭川と野幌は2013年以来の9年ぶりの一斉開花となりました。これらの結果をまとめ考察を加えました。ご意見、コメント等ありましたらお願い致します。

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論文)エチレンを介した圧縮土壌に対する根の適応

2022-08-02 13:31:05 | 読んだ論文備忘録

Ethylene inhibits rice root elongation in compacted soil via ABA- and auxin-mediated mechanisms
Huang et al.  PNAS (2022) 119:e2201072119.

doi:10.1073/pnas.2201072119

圧縮された土壌は、根端周辺でのエチレンの拡散を抑制し、蓄積したエチレンは根の伸長を抑制すると同時に根の膨張を促進する。しかしながら、エチレンによる根の成長変化の機構は明らかとなっていない。英国 ノッティンガム大学Pandey らは、圧縮土壌で育成したイネの一次根の根端組織のアブシジン酸(ABA)量は圧縮されていない土壌で育成したイネの根端よりも3倍高いことを見出した。また、圧縮土壌で育成したイネの根端はABA生合成酵素遺伝子の発現量が増加しており、発現量はエチレン処理によっても増加した。野生型イネをエチレン処理すると皮層細胞が径方向に膨張して根の径が倍加するが、エチレン非感受性のoseil1 変異体、osein2 変異体の根ではそのような変化は見られなかった。一方で、ABA処理をすると野生型もエチレン非感受性変異体も、エチレン処理をした際と同じように、皮層細胞が膨張した。このことから、ABAは皮層細胞の径方向の膨張を引き起こしており、このシグナルはエチレン経路の下流で圧縮土壌に応答した根の成長変化として作用していることが示唆される。ABA生合成酵素遺伝子MHZ5 の機能喪失変異体mhz5 は、根の成長変化に対してエチレン非感受性であり、圧縮土壌に応答した皮層細網の膨張が見られなくなっていた。しかし、mhz5 変異体をABA処理することで皮層細胞は膨張した。これらの結果から、圧縮土壌に応答した根の径方向の膨張にはABA生合成が必要であると考えられる。圧縮土壌では根の伸長が阻害されるが、mhz5 変異体の根の伸長阻害の程度は野生型植物の根よりも低くなっていた。よって、圧縮土壌に応答したABAによる皮層細胞の膨張は根の貫通能力を助けるものではなく、むしろ根の伸長を低下させていると思われる。他のABA生合成変異体の根も圧縮土壌で野生型よりも高い貫通性を示した。エチレンはオーキシン量を増加させて根の伸長を阻害することが知られている。オーキシンレポーターDR5:VENUS を用いた解析から、圧縮土壌で育成したイネの根の分裂領域、伸長領域の表皮細胞はオーキシン応答性が高いことが判った。一方、osein2 変異体の根では圧縮土壌によるオーキシン応答性の変化は見られなかった。そして、osein2 変異体、oseil1 変異体の根は圧縮土壌での根の伸長阻害の程度が野生型よりも低くなっていた。これらの結果から、オーキシンは圧縮土壌での根の伸長阻害においてエチレンの下流で作用していることが示唆される。osein2 変異体、oseil1 変異体に合成オーキシンアナログの1-ナフタレン酢酸(NAA)処理をすると圧縮土壌での根の伸長阻害が見られ、エチレンは圧縮土壌においてオーキシンを介して根の伸長を阻害していると考えられる。しかしながら、NAA処理をしても皮層細胞の径方向の膨張は誘導されなかった。OsEIL1はオーキシン生合成酵素遺伝子OsYUC8 のプロモーター領域に結合して発現を活性化することが知られている。OsYUC8 の発現は圧縮土壌で育成した根で高くなっており、このような変化はosein2 変異体、oseil1 変異体では見られなかった。また、圧縮土壌で育成したosyuc8 変異体の根は伸長阻害の程度が野生型よりも低下していた。これらの結果から、エチレンによる圧縮土壌に対する根の応答はOsYUC8を介したオーキシンの生合成に依存しているものと思われる。OsEIL1OsYUC8 は根端の内部組織で発現しているが、圧縮土壌で育成した根でのオーキシン応答は表皮で高まっている。このことから、圧縮土壌でのオーキシン応答の変化にはオーキシン輸送が関与しているのではないかと考え、オーキシン流入キャリアAUX1の機能喪失変異体osaux1 について調査した。osaux1 変異体の根はエチレン感受性が低下しており、圧縮土壌での根の伸長阻害が見らず、分裂領域、伸長領域の表皮細胞のオーキシン応答性も変化しなかった。野生型植物の根の表皮細胞は圧縮土壌で育成すると短くなるが、osaux1 変異体ではそのような変化は見られなかった。したがって、OsAUX1に依存した圧縮土壌での根の伸長阻害は、根端から伸長領域表皮細胞へのオーキシン輸送の増加と関連していると考えられる。osaux1 変異体では圧縮土壌に応答した皮層細胞の変化は見られなかったが、ABA処理により皮層細胞は径方向に膨張した。しかしながら、ABA処理はosaux1 変異体の根の径方向の膨張を完全には回復させないことから、OxAUX1を介したオーキシンの供給はABAに応答した皮層の膨張に関与している可能性がある。以上の結果から、圧縮土壌が誘導するエチレン応答は、オーキシンとABAを下流シグナルとしてイネの根の伸長と径方向の拡張を制御することで、根端を膨張させ圧縮土壌を貫通する能力を低下させていると考えられる。

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論文)酵素活性によるオーキシン生合成の調節機構

2022-07-27 12:09:05 | 読んだ論文備忘録

Indole-3-pyruvic acid regulates TAA1 activity, which plays a key role in coordinating the two steps of auxin biosynthesis
Sato et al.  PNAS (2022) 119:e2203633119.

doi:10.1073/pnas.2203633119

植物ホルモンのオーキシン(インドール-3-酢酸 [IAA])は、植物の成長・発達の調節において中心的な役割を果たしており、内生IAA量は厳密に制御されている。IAAはトリプトファン(Trp)から2つのステップを経て生合成される。まず、ピリドキサール5'-リン酸(PLP)依存性Trpアミノトランスフェラーゼ(TAA1/TAR)を介してTrpからインドール-3-ピルビン酸(IPyA)が生成され、次に、YUCCA(YUC)がIPyAをIAAに変換する。YUC 遺伝子を過剰発現させた植物はIAAを過剰生産するが、TAA1 の過剰発現ではIAAの過剰蓄積は起こらない。横浜市立大学 木原生物学研究所嶋田らは、TAA1活性はIPyAおよびIPyAアナログのKOK2099によって阻害されることを見出した。したがって、TAA1は生成物のIPyAによるフィードバック阻害を受けている。IPyAによる阻害の形式が判別できなかったので、IPyAを基質とするYUCの存在下でTAA1活性を調査し、阻害形式が拮抗阻害であることが判った。これらの結果から、TAA1 の過剰発現は増加した内生IPyA量によりTAA1がフィードバック阻害を受けてIAA量の変化は見られないこと、YUC の過剰発現は内生IPyA量を低下させるためにTAA1活性がIPyAによるフィードバック阻害から解放されるのでIAA量が増加することが推測される。一般的に、アミノトランスフェラーゼは逆反応も触媒しており、TAA1もIPyAを基質とすることが確認された。TrpのKm値は43.6 µMでIPyAのKm値は0.7 µMであったが、通常、生体内のTrp量はIPyA量よりも多いことから酵素反応はIPyA生成へ向いていると考えられる。このTAA1活性の可逆性が、IPyAによるフィードバック阻害の分子基盤の1つであると思われる。IPyAのKm値は、既知の他の植物アミノトランスフェラーゼのKm値よりもはるかに低く、IPyAの生体内での望ましくない蓄積を防いでいると思われる。TAA1は、Trp以外にもフェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、アラニン(Ala)といった複数のアミノ酸を基質としており、PheとTyrは天然オーキシンの前駆体となりうる。解析の結果、AlaはTAA1の逆反応における基質として適していることが判った。これらの機構から、IPyAのTAA1阻害剤として2つの作用機作が考えられる。1つは、IPyAが逆反応、すなわちAlaアミノトランスフェラーゼ活性の基質として作用する可能性、もう1つは、IPyAがTrpの模倣体として拮抗阻害剤として機能する可能性である。これらのことから、IPyAはTAA1/TAR活性に対して混合阻害活性を有していることが示唆される。以上の結果から、TAA1はIPyAの過剰および過少蓄積を回避する役割を担っており、オーキシン生合成の調節機構として重要であると考えられる。

横浜市立大学のプレスリリース

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論文)CLEペプチドによる葉の老化制御

2022-07-24 12:14:34 | 読んだ論文備忘録

CLE42 delays leaf senescence by antagonizing ethylene pathway in Arabidopsis
Zhang et al.  New Phytologist (2022) 235:550-562.

doi: 10.1111/nph.18154

CLAVATA3 (CLV3)/ENDOSPERM SURROUNDING REGION (ESR)(CLE)ペプチドファミリーは、植物ペプチドホルモンの中で最も大きなファミリーの1つである。CLEファミリーは複数の組織で発現しており、植物の発達の様々な局面を制御している。中国 北京林業大学のLi らは、CRISPR/Cas9技術で作出したシロイヌナズナCLE変異体コレクションを長日条件で栽培し、cle42 変異体の葉が早期老化表現型を示すことを見出した。また、CLE4235S プロモーター制御下で過剰発現させた形質転換体CLE42ox の葉は老化が遅延した。CLE42 およびCLE42 と近縁で維管束木部細胞分化阻害因子(TDIF)をコードするCLE41/44 の転写産物量は、葉の老化が進むにつれて減少していった。CLE42ox の葉は、植物ホルモンや塩ストレスで老化誘導処理をしても老化遅延表現型を示した。これらの結果から、CLE42は葉の老化の負の制御因子であることが示唆される。CLE42およびCLE41、CLE44は、ロイシンリッチリピート受容体キナーゼ(LRR-RK)のPHLOEM INTERCALATED WITH XYLEM(PXY)に結合し、維管束分裂組織の細胞分裂の制御に関与していることが知られている。cle41 cle42 cle44 三重変異体の葉はそれぞれの単独変異体の葉よりも早く老化した。また、cle42 変異体の老化表現型はcle41cle44 各変異体よりも強く、CLE42は葉の老化制御において優先的に作用していると考えられる。pxy 変異体も葉の老化が促進されることから、CLE41/CLE42/CLE44はPXYに依存して葉の老化を制御していると考えられる。合成した12アミノ酸のCLE42成熟ペプチド(CLE42p)を野生型植物に噴霧すると葉の老化が遅延し、cle42 変異体では早期老化表現型が回復した。一方で、pxy 変異体にCLE42pを噴霧しても早期老化表現型は僅かしか改善されなかった。また、pxy 変異体でCLE42 を過剰発現させても早期老化表現型の改善は見られなかった。このことからも、CLE42による葉の老化制御は主にPXY受容体を介していると考えられる。合成したCLE41/44ペプチドもcle42 変異体の表現型を改善させた。トランスクリプトーム解析の結果、CLE42ox では防御応答関連遺伝子、ジャスモン酸、サリチル酸、エチレンといった植物ホルモンのシグナル伝達に関与する遺伝子、老化関連遺伝子の発現量が低下していることが判った。暗所で育成したCLE42ox の芽生えはエチレン対する応答性が低下しており、cle42 変異体芽生えは応答性が高くなっていた。このことから、CLE42はエチレンシグナル伝達に関与していることが示唆される。解析の結果、CLE42はエチレンシグナル伝達経路上の転写因子で葉の老化を正に制御しているETHYLENE-INSENSITIVE 3(EIN3)量を減少させることが判った。CLE42p処理した葉はEIN3をターゲットとしているF-boxタンパク質のEIN3-binding F-box 1(EBF1)の蓄積量が増加することから、CLE42はEBFタンパク質の蓄積を促進することでEIN3の安定性と機能を低下させていると考えられる。CLE42ox やCLE42p処理はACC合成酵素遺伝子ACS2 の発現を抑制し、エチレン生産量が低下していた。このCLE42による内生エチレン生産の抑制がEBFタンパク質の蓄積を促進していると考えられる。ein3 eil1 二重変異およびEBF1 の過剰発現はcle42 変異体の早期老化表現型を抑制した。また、ACS の八重変異をcle42 変異体に導入したところ、早期老化表現型が抑制された。以上の結果から、CLE42はACS-EBF-EIN3のエチレンカスケードの制御を介して葉の老化を制御していると考えられる。

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論文)暗所での胚軸からの不定根形成

2022-07-17 11:34:43 | 読んだ論文備忘録

Phytochrome-interacting factors orchestrate hypocotyl adventitious root initiation in Arabidopsis
Li et al.  Development (2022) 149:dev200362.

doi:10.1242/dev.200362

不定根形成は様々な内的および環境要因によって制御されている。光はシロイヌナズナ芽生えの胚軸からの不定根(HAR)の形成を抑制することが報告されおり、これは光受容体がAux/IAA14タンパク質を安定化することでAUXIN RESPONSE FACTORS(ARF)7/ARF19、LATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAIN(LBD)16/LBD29、WUSCHEL-RELATED HOMEOBOX(WOX)5/WOX7といったHAR形成の正の制御因子の活性を阻害することにより引き起こされる。しかしながら、HAR形成の誘導と光シグナルとの関係については明らかとなっていない。中国科学院 上海生命科学研究院 植物生理生態研究所Chao らは、暗形態形成の促進因子として作用するphytochrome interacting factor(PIF)ファミリー転写因子の機能喪失変異体および過剰発現個体の解析から、PIFはHAR形成において促進因子として冗長的に作用することを見出した。この促進作用にオーキシンの関与が示唆されたこと、PIFはオーキシン生合成酵素のYUCCA(YUC)ファミリー遺伝子の発現を制御していることから、yuc 変異体のHAR形成を観察した。その結果、yuc2 変異体、yuc6 変異体ではHARが有意に減少することが判った。YUC2YUC6 は冗長的にHAR形成に作用しており、PIFはYUC2YUC6 両遺伝子のプロモーター領域に結合して発現を活性化していた。野生型植物、yuc6 変異体、yuc26 二重変異体にインドール-3-酢酸(IAA)を添加するとHAR形成が促進されるが、pif1 pif3 pif4 pif5pifq )四重変異体ではそのような効果は見られなかった。そこで、CRIPR/Cas9技術によりSUPERROOT1SUR1 )をノックアウトして内生IAA量を増加させたsur1 pifq 五重変異体を作出したところ、sur1 変異体と同程度に不定根が形成された。したがって、PIFはオーキシン流入を介してもHAR形成を制御していると思われる。pifq 変異体暗所育成芽生え胚軸では、オーキシン流入キャリアをコードするAUX1LAX3 の発現量が野生型よりも少なく、野生型芽生えをオーキシン流入阻害剤の1-ナフトキシ酢酸(1-NOA)処理をするとHAR数が減少した。aux1 変異体やlax3 変異体はHAR数が減少しており、AUX1LAX3 は冗長的にHAR形成に作用していた。PIFはAUX1 遺伝子やLAX3 遺伝子のプロモーター領域のE-boxやG-boxに直接結合して両遺伝子の発現を活性化していた。AUX1 を過剰発現させたpifq 変異体は部分的にHAR欠損が回復したが、この個体にIAAを添加してもHAR数に変化は見られなかった。また、IAAアナログで受動拡散によって細胞内に侵入できるナフタレン酢酸(NAA)をpifq 変異体に添加してもHAR数の増加は見られなかった。これらの結果から、PIFはHAR形成においてオーキシンの生合成と輸送以外の過程にも関与していると考えられる。そこで、HAR形成に関与している転写因子とPIFとの関係を調査したところ、PIFはLBD16LBD29WOX5WOX7 の各遺伝子のプロモーター領域に結合して発現を活性化していることが判った。以上の結果から、PIFは、オーキシンの生合成酵素と輸送体、HAR誘導に関与する転写因子の転写活性化といった複数の過程を調整して暗所でのHAR形成を誘導していると考えられる。

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論文)KAI2による芽生え成長の制御

2022-07-13 12:03:39 | 読んだ論文備忘録

KAI2 regulates seedling development by mediating light-induced remodelling of auxin transport
Hamon-Josse et al.  New Phytologist (2022) 235:126-140.

doi: 10.1111/nph.18110

シロイヌナズナのカリキン受容体でα/β加水分解酵素のKARRIKIN-INSENSITIVE2(KAI2)が機能喪失したkai2 変異体の芽生えは、光照射下で育成すると胚軸が伸長して子葉の一部が展開しないことから光形態形成が欠損していると考えられている。しかしながら、芽生えの光形態形成におけるKAI2の役割については明らかとなっていない。英国 リーズ大学Bennett らは、発芽4日目まで暗所育成を延長した芽生えに光照射して光形態形成の開始を観察した。野生型植物では光照射によって胚軸伸長が一度止まり、その後僅かに伸長するが、kai2 変異体では光照射後の伸長停止が見られなかった。光照射は側根や不定根の形成を誘導するが、kai2 変異体は野生型よりも誘導量が多くなっていた。光照射は根毛の数や密度を増加させるが、kai2 変異体は野生型よりも根毛形成誘導が劣っていた。KAI2がターゲットとしているSUPPRESSOR OF MAX2 1-LIKE(SMXL)タンパク質が欠損しているsmax1 smax2s1s2 )変異体の芽生えは、光照射後の胚軸伸長が全く見られず、不定根の誘導は見られなかったが側根数は増加した。これらの結果から、光形態形成におけるKAI2の役割は、光に対する応答そのものよりも、成長の正しい空間的応答に関係しているように思われる。胚軸や根の成長にはオーキシンが関与していることから、オーキシンレポーターDR5v2:GFP の発現を観察したところ、kai2 変異体芽生えでは胚軸、不定根原基、発達中の側根でのオーキシン応答性が増加していることが判った。暗所育成芽生えのオーキシン含量は野生型とkai2 変異体で差異は見られなかったが、光照射後ではkai2 変異体の胚軸と根のオーキシン含量が増加した。s1s2 変異体のオーキシン含量は野生型と同等であることから、kai2 変異体やs1s2 変異体で観察された表現型はオーキシン量だけでは説明できない。茎頂部を切除した芽生えの光照射後の胚軸伸長、不定根や側根の形成は野生型とkai2 変異体で同等となることから、kai2 変異体の表現型は茎頂から根へのオーキシン転流量が増加していることが関連していると思われる。そこで、オーキシン排出キャリアPINファミリータンパク質の光照射による変化を調査した。その結果、胚軸では光量照射によってPIN3、PIN4、PIN7が大きく減少すること、根では光照射によってPIN2が増加、根分裂組織でPIN1、PIN3、PIN7が増加することが判った。この変化をkai2 変異体で見たところ、光照射による胚軸や根でのPINタンパク質量の変化が野生型よりも遅いことが判った。また、KAI2はPIN 遺伝子の発現には関与していなかった。したがって、kai2 変異体では光照射後のオーキシン輸送系の再構築が緩慢なために芽生え各組織でのオーキシン応答の変化が遅延しており、これがkai2 変異体で観察された表現型につながったと推測される。そこで、kai2 変異体芽生えをオーキシン輸送阻害剤1-N-ナフチルフタラミン酸やオーキシン生合成阻害剤キヌレニンで処理したところ、光照射後の表現型が野生型と同等になった。また、kai2 変異体にpin3 pin4 pin7 三重変異を導入することで胚軸や不定根の表現型が野生型と同等になった。以上の結果から、KAI2は光照射によるオーキシン輸送系の再構築に関与することで芽生えの成長を制御していると考えられる。

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論文)側根原基形成におけるPUCHIの役割

2022-07-09 11:41:26 | 読んだ論文備忘録

PUCHI represses early meristem formation in developing lateral roots of Arabidopsis thaliana
Bellande et al.  Journal of Experimental Botany (2022) 73:3496–3510.

doi:10.1093/jxb/erac079

シロイヌナズナAP2/ERFファミリー転写因子のPUCHIは、側根原基(LRP)発達の初期過程に関与しており、puchi 変異体はLRPの発達が遅延する。また、PUCHIはLRP形成過程で超長鎖脂肪酸生合成を制御していることが知られている。しかしながら、LRP形成におけるPUCHIの詳細な分子機構については明らかとなっていない。フランス モンペリエ大学のGuyomarc'h らは、シロイヌナズナの野生型およびpuchi 変異体芽生えに重力刺激を与えて側根形成を誘導し、組織を経時的にサンプリングしてRNA-seq解析を行なった。過去知見通り、脂質代謝関連遺伝子はPUCHIに依存して発現していたが、興味深いことに、根の発達に関連する遺伝子がpuchi 変異体で大きな比率を占めており、その中にはPLETHORA 1PLT1 )、PLT2PLT4/BBM といった根端分裂組織の確立や維持に関連する遺伝子も含まれていた。一方で、PLETHORAファミリーのPLT5PLT7puchi 変異体で発現量が低下していた。よって、PUCHIはLRP形成の初期過程においてPLT1PLT4 の発現抑制、PLT5PLT7 の発現誘導に関与していると考えられる。LRP発達過程での静止中心(QC)のマーカー遺伝子(OC25WOX5 )の発現を見ると、puchi 変異体では野生型よりも早い段階でLRPの広い領域で発現していることが判った。よって、PUCHIはLRP発達初期過程にPLT1PLT4 の発現を抑制することでQCマーカー遺伝子の発現活性化を遅延させていると考えられる。LRP形成にはオーキシンが関与しており、オーキシン応答遺伝子やオーキシントランスポーターをコードするPIN 遺伝子はpuchi 変異体の側根形成初期過程で発現量が高くなっていた。また、野生型と比較してpuchi 変異体ではオーキシンレポーターDR5::GFP の発現領域やPIN1タンパク質の分布がLRPの基部側にまで広がっていることが判った。したがって、PUCHIはLRP発達過程においてオーキシンシグナル勾配を確立させるために必要であると考えられる。PIN1の分布にサイトカイニンが関与しているとされていることから、LRPでのサイトカイニンレポーターpromTCSn::GFP の発現を見たところ、野生型では発現が検出されなかったが、puchi 変異体では内層の細胞で発現が検出された。よって、PUCHI の機能喪失は、LRP発達過程でのオーキシンやサイトカイニンの応答パターンに異常をもたらしていると考えられる。以上の結果から、PUCHIは、正しい時期に側根原基が確立するために必要であり、特に原基発達の初期過程において主要な根端分裂組織関連遺伝子の早すぎる発現を抑制していると考えられる。

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論文)B-boxタンパク質によるブラシノステロイドシグナルの制御

2022-07-06 12:10:10 | 読んだ論文備忘録

The photomorphogenic repressors BBX28 and BBX29 integrate light and brassinosteroid signaling to inhibit seedling development in Arabidopsis
Cao et al.  Plant Cell (2022) 34:2266-2285.

doi:10.1093/plcell/koac092

シロイヌナズナB-BOX PROTEIN 28(BBX28)とBBX29はB-boxを有する転写調節因子で、光形態形成の抑制因子として作用する。BBX28/29は、暗所ではCONSTITUTIVELY PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)を介して26Sプロテアソーム系によって分解されるが、明所ではELONGATED HYPOCOTYL 5(HY5)と相互作用をすることでHY5がターゲット遺伝子のプロモーターへ結合することを妨げている。中国 蘭州大学Lin らは、bbx28 bbx29 二重変異体やBBX28 もしくはBBX29 の過剰発現形質転換体の芽生えにブラシノステロイド(BR)やBR生合成阻害剤のブラシナゾール(Brz)を添加して成長を観察し、BBX28とBBX29はBRシグナルの正の制御因子として機能することを見出した。変異体を用いた解析から、BBX28とBBX29はBRシグナル伝達に関与しているBR-INSENSITIVE 1(BRI1)、BR-INSENSITIVE 2(BIN2)、BRASSINAZOLE RESISTANT 1(BZR1)の下流でBRシグナルを制御していることが判った。酵母two-hybridスクリーニングにより、BBX28と相互作用する因子としてBRシグナル伝達に関与しているbHLH型転写因子のBR-ENHANCED EXPRESSION 2(BEE2)が同定され、その後の解析から、BBX28/29は生体内においてBEE1/2/3と相互作用をすることが確認された。bee1 bee2 bee3 三重変異体やBEE1BEE2BEE3 の過剰発現形質転換体の芽生えの解析から、BEE1/2/3は光形態形成の負の制御因子として機能していることが判明し、BEE1/2/3BBX28/29 の上位に位置することが判った。bbx28 bbx29 変異体、bee1 bee2 bee3 変異体と野生型の芽生えを用いたトランスクリプトーム解析から、BBX28/29によって発現制御を受ける遺伝子として890遺伝子、BEE1/2/3によって発現制御を受ける遺伝子が545遺伝子が見出され、423遺伝子はBBX28/29とBEE1/2/3の両方による制御を受けていた。両者の制御を受ける遺伝子には、細胞壁、転写、細胞表面、細胞成長、ホルモンに関連した遺伝子が含まれていた。BBX28/29は、BEE1/2/3と相互作用をすることでBEE1/2/3のターゲット遺伝子プロモーターへの結合を高め、転写を活性化していることが判った。また、BBX28/29とBEE1/2/3はBZR1の核蓄積に対して促進的に作用していた。BRはBBX28/29の蓄積に対して促進的に作用しており、BRが誘導するBBX28の蓄積に対してBRI1は促進的にBIN2は抑制的に作用し、BBX29の蓄積についてはBRI1が部分的に促進していた。以上の結果から、光形態形成の抑制因子BBX28とBBX29は、BEE1/2/3と物理的相互作用をしてBEE1/2/3のターゲット遺伝子への結合能を高め、転写活性化活性を向上させてBR応答を促進させていると考えられる。この機構は、光とBRシグナル伝達経路のクロストークにおいてBBX28/29とBEE1/2/3を介して芽生えの成長を微調整する役割を担っていると思われる。

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論文)ABI3による胚発生過程のFLC遺伝子の再活性化

2022-07-01 14:04:21 | 読んだ論文備忘録

Embryonic reactivation of FLOWERING LOCUS C by ABSCISIC ACID-INSENSITIVE 3 establishes the vernalization requirement in each Arabidopsis generation
Xu et al. Plant Cell (2022) 34:2205-2221.

doi:10.1093/plcell/koac077

シロイヌナズナは、長期の低温曝露(春化処理)を受けると、ポリコーム群タンパク質によるクロマチン修飾を介してMADS box転写抑制因子遺伝子FLOWERING LOCUS CFLC )のサイレンシングが誘導される。この抑制状態は暖かい環境に戻った後も維持されて花成を可能にするが、胚発生過程でリセットされFLC 発現が再活性化する。シロイヌナズナの種子発生は、LAFLと呼ばれている4つの主要な転写因子LEAFY COTYLEDON1(LEC1)、ABSCISIC ACID-INSENSITIVE 3(ABI3)、FUSCA3(FUS3)、LEC2のネットワークによって制御されており、LEC1、LEC2、FUS3はFLC の春化状態消去に関与していることが示されている。中国 北京大学のHe らは、胚発生過程でのLAFLの発現とFLC 発現の再活性化を経時的に調査し、ABI3FLC の発現パターンが類似していることを見出した。そこで、FLC 発現再活性化におけるABI3の役割について解析を行なった。abi3 機能喪失変異体芽生えはFLC 発現が抑制されており、ABI3 は胚発生後期のFLC 発現の再活性化に関与していることが判った。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイから、ABI3は胚発生後期から成熟期にかけてFLC 遺伝子の第1イントロンにあるcold memory element(CME)領域との相互作用が高まることが判った。さらに、ABI3は胚成熟期にFLC 遺伝子プロモーター領域にあるアブシジン酸(ABA)応答シスエレメント(ABRE)を含む領域との相互作用も高くなり、ABI3は胚成熟過程でABA含量の上昇に応じたFLC の活性化に関与していると考えられる。LEC1はNUCLEAR FACTOR Y転写因子複合体(NF-YLEC1)を形成してFLC 遺伝子プロモーター領域のCCAATモチーフに結合するが、ABI3が結合するCMEやARREとは相互作用しない。lec1 機能喪失変異体ではABI3のFLC 遺伝子との相互作用が低下していることから、LEC1はABI3のCMEやABREへの接触性を高めて転写を活性化するよう機能していると考えられる。足場タンパク質のFRIGIDA(FRI)は複数のクロマチン修飾因子と複合体を形成してFLC の発現を活性化している。ABI3はFRIと相互作用し胚発生後期にFRIをCMEやABREにリクルートしていることが判った。よって、ABI3は胚発生後期にFRI複合体をリクルートすることで低温によって発現抑制されたFLC を再活性化していると考えられる。ABI3と同じように、LEC2とFUS3もFLC 遺伝子のCMEに結合して胚発生過程のFLC の活性化に関与している。これら3つの転写因子の発現パターンを解析したところ、LEC2 の発現は主に胚発生後期にABI3 の発現と重なり、FUS3 の発現は胚発生後期から胚成熟中期にかけてABI3 の発現と重なり、さらに両者は胚成熟期に大きく空間的発現パターンが重なることが判った。RNAiによってFUS3 の発現をノックダウンしたabi3 変異体はFLC の発現がabi3 変異体よりも強く抑制されることから、ABI3はFLC の活性化においてFUS3と部分的に機能重複していると考えられる。ABAシグナル伝達に関与しているSnRK2.2/2.3/2.6タンパク質キナーゼが機能喪失したsnrk2.2/2.3/2.6 変異体では胚成熟期のFLC の活性化が部分的に抑制されていた。また、成熟初期の種子にABA処理をすると、野生型ではFLC の発現が強く誘導され、snrk2.2/2.3/2.6 変異体ではほんの僅かな誘導が見られたが、abi3 変異体では誘導が見られなかった。したがって、ABI3 はABAによるFLC 活性化に必要であると考えられる。ABI3はbZIP転写因子のABI5とヘテロ二量体を形成してABA応答遺伝子の発現を制御している。ABI3はABREを認識できないがABI5は結合する。解析の結果、ABI3とABI5はABREでヘテロ二量体を形成してFRI複合体と相互作用をし、胚成熟後期のFLC の活性化に関与していることが判った。以上の結果から、ABI3は、胚発生過程において、低温によって誘導されたFLC 発現抑制のリセットと胚成熟期のFLC 発現のさらなる活性化に関与していると考えられる。

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植物観察)箱根バイケイソウ花成個体数調査

2022-06-28 18:54:43 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウ花成個体数調査に行ってきました。この時期の箱根のバイケイソウは、開花が始まったところで、標高の高い所や日当たりの悪いところの個体ではまだ開花していませんでした。花成しなかった個体は、全て朽ちて倒れていました。2022年の花成個体数ですが、今年は昨年の1/3程度に減っており、2020年の一斉開花時に比べると大きく減少しています。箱根調査地での花成個体数の変動周期については、2020年レベルの開花がこの次いつ起こるのかが1つの目安となると考えられます。

箱根のバイケイソウの開花が始まった

 

花成しなかった個体は朽ちて倒れ始めた

 

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