Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)アルミニウムによる根の伸長阻害機構

2010-01-31 18:26:06 | 読んだ論文備忘録

Aluminium-induced inhibition of root elongation in Arabidopsis is mediated by ethylene and auxin
Sun et al.  J. Exp. Bot. (2010) 61:347-356.

doi:10.1093/jxb/erp306

アルミニウム(Al)は酸性土壌においてAl3+として可溶化すると植物毒性を示し、植物の成長が抑制される。Al3+毒性の引き起こす症状の1つとして根の伸長阻害がある。中国科学院のZhang らは、Al3+による根伸長阻害機構を解明することを目的に、シロイヌナズナの芽生えを用いてAl3+の誘導する根伸長阻害と根の伸長を制御している植物ホルモンのオーキシン、エチレンの役割について調査した。シロイヌナズナ芽生えをAlCl3処理すると根の伸長が阻害され、その際エチレンの急激な放出が観察される。エチレンシグナルの変異体であるetr1-3ein2-1 、オーキシン極性輸送体の変異体であるaux1-7pin2 の芽生えでは根の伸長阻害の程度が野生型よりも弱くなっていた。また、AlCl3処理前にエチレン生合成のアンタゴニストであるアミノエトキシビニルグリシン(AVG)や塩化コバルト、エチレン作用阻害剤の硝酸銀の前処理を行なうと伸長阻害の低減が見られた。オーキシン輸送の阻害剤であるナフチルフタラミン酸(NPA)の前処理では根の伸長が抑制されるが、AlCl3による伸長阻害は低減された。AlCl3処理やエチレンの前駆体であるACC処理をするとエチレンレポーターとして導入したEBS:GUS やオーキシンレポーターとして導入したDR5:GUS の根での発現が増加した。AlCl3処理によるDR5:GUS の発現増加はAVGにより抑制されたが、EBS:GUS の発現増加はNPAの影響は受けなかった。aux1-7pin2 変異体は基底レベルのエチレン生成量が少ないが、AlCl3処理によりエチレン生産が増加した。また、AlCl3処理によりエチレンの生合成に関与する酵素をコードしているAtACS2AtACS6AtACS8 の発現量が増加し、それにやや遅れてAtAUX1AtPIN2 の発現量が増加した。以上の結果から、Al3+はエチレンの放出量を増加させることでAUX1やPIN2を介したオーキシン極性輸送に変化をもたらし、これがAl3+による根の伸長阻害を引き起こしているものと考えられる。

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植物観察)冬の八重山 西表島

2010-01-25 21:33:37 | 植物観察記録

今日は西表島に渡りました。天気は相変わらずで、予報では「曇りのち雨」ということでした。西表でもナガバイナモリの花が見られましたが、生育環境の違いか、石垣に比べると個体数は少ないように感じられました。むしろツワブキを見る機会のほうが多かったように思います。イリオモテソウは完全に花期を終えてしまっていました。他の花は大体石垣と同じ状況でした。季節、気温の所為でしょうか、昆虫や小動物の類は、雨に打たれてちょっと傷ついたようなクロツバメを写真に収めた程度で、僅かしか見られませんでした。午後からは雨が結構強く降り始めましたので、次回のための下見をするにとどめて無理せず撤収としました。


ツワブキ 西表ではピークの個体が多かった


イリオモテソウ 残念ながらすべての個体で花は終わっていた


クロツバメ


西表島でよく見かける「動物注意」の道路標識
残念ながら今年も既に1月3日にイリオモテヤマネコが車に轢かれた

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植物観察)冬の八重山 石垣島

2010-01-24 21:27:23 | 植物観察記録

うまい具合にバーゲンの航空券が入手できたので八重山(石垣、西表)へ行ってきました。1月下旬から2月上旬にかけての沖縄は一年を通して最も寒い時期にあたります。丁度この頃(旧暦の12月8日)に、邪気払いのために月桃やビロウの葉で包んだ平たい餅(オニムーチー;鬼餅)を食べるならわしがあり、沖縄の人はこの時期の寒波をムーチービーサー(餅寒さ)と呼んでいます。この日の石垣は雨こそ降りませんでしたがどんよりとした曇り空で風が冷たく、最低気温16.5℃、最高気温21.5℃でした。またこの日は第8回石垣島マラソンの日でもありました。山ではナガバイナモリの花がピークを迎え、渓流沿いで白い花を咲かせた群落が見られました。樹上では、ヤブツバキ、ヒメサザンカ、エゴノキの花が咲いていました。他にも、ピークは過ぎていましたがツワブキ、アリモリソウ、オキナワテイショウソウの花が見られました。


ナガバイナモリ


ウチワタケ


オキナワテイショウソウ


アオミオカタニシ

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論文)側根形成と不定根形成の制御機構の違い

2010-01-22 19:43:28 | 読んだ論文備忘録

Genetic dissection of the role of ethylene in regulating auxin-dependent lateral and adventitious root formation in tomato
Negi et al.  The Plant Journal (2010) 61:3-15.

DOI: 10.1111/j.1365-313X.2009.04027.x

側根や不定根の形成は植物ホルモンによる制御を受けており、オーキシンは多くの植物種においてこれらの形成を正に制御している。エチレンも側根形成の初期段階を抑制することが知られているが、不定根形成に関しては正の効果と負の効果が報告されており、見解が一致していない。米国 ウェイクフォレスト大学のMuday らは、各種変異体トマトの芽生えを用いて側根・不定根形成におけるエチレンの役割を調査した。様々なエチレン関係の変異体について側根形成を親系統と比較したところ、Never-ripe 変異体(Nr :エチレン受容体ETR1 の変異体)、green ripe 変異体(gr :エチレン応答の負の制御因子RTE1 の機能獲得変異体)、non-ripening 変異体(nor :エチレンシグナル伝達経路の変異体)、ripening-inhibitor 変異体(rin :ACC合成酵素LeACS2 の発現誘導等に関与するMADS-box転写因子の変異体)では側根数が増加していた。また、epinastic 変異体(epi :エチレンを過剰生産する変異体)や、野生型をエチレンの前駆体ACCで処理すると側根数が減少し、Nr 変異体をACC処理すると根の伸長は抑制されたが側根形成の抑制は見られなかった。よって、エチレンはトマト芽生えにおいて側根形成を負に制御しているといえる。次に、低光照射下で育成した芽生えを高光条件へ移した際に見られる不定根形成について調べたところ、Nr 変異体では不定根数が野生型よりも少なく、epi 変異体やACC処理した野生型では不定根数が増加した。よって、エチレンは不定根形成と側根形成とでは逆の制御をしている。また、エチレンがオーキシン輸送と関連しているかを調査したところ、Nr 変異体では根における求頂的(根端方向)なオーキシン輸送も求基的なオーキシン輸送も減少しており、野生型のACC処理およびepi 変異体では増加していた。よって、エチレンはトマト根での両方向のオーキシン輸送を促進する作用がある。下胚軸でのオーキシン輸送を見たところ、Nr 変異体では野生型よりもオーキシン輸送量が多く、野生型をACC処理するとオーキシン輸送量が減少した。よって、エチレンは下胚軸においてはオーキシン輸送を負に制御している。しかしながら、epi 変異体では下胚軸のオーキシン輸送量が野生型よりも増加していた。遊離IAA量を測定したところ、Nr 変異体の根は野生型よりも遊離IAA量が高く、ACC処理した野生型の根では無処理の根よりも遊離IAA量が減少していた。下胚軸ではNr 変異体、epi 変異体ともに遊離IAA量が野生型よりも僅かに減少しており、ACC処理した野生型の下胚軸での遊離IAA量には変化は見られなかった。よって、エチレンは根のオーキシン量を減少させるが下胚軸のオーキシン量についてはごく僅かしか影響しないと考えられる。芽生えをオーキシン処理した場合、野生型ではその濃度に応じて側根数も不定根数も増加するが、Nr 変異体では側根数には変化がなく不定根数は増加した。よって、エチレンとオーキシンは不定根形成を正に制御しており、これにはエチレンシグナルは関与していないと考えられる。以上の結果をまとめると、トマトでは側根形成と不定根形成におけるエチレンとオーキシンのクロストークに組織特異性があり、エチレンは側根形成を負に不定根形成を正に制御している。この時エチレンは根でのオーキシン蓄積を負にオーキシン輸送を正に制御し、シュートではオーキシン輸送を負に制御している。これらの違いが側根形成と不定根形成の制御の違いに関与していると思われる。

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論文)気孔形成を正に制御する因子

2010-01-19 23:36:14 | 読んだ論文備忘録

Stomagen positively regulates stomatal density in Arabidopsis
Sugano et al.  Nature (2010)463:241-244.

doi:10.1038/nature08682

気孔の形成に関してのこれまでの研究から、分泌タンパク質EPIDERMAL PATTERNING FACTOR(EPF1)、EPF2 とその受容体のTOO MANY MOUTHS(TMM)、およびスブチリシン様プロテアーゼのSTOMATAL DENSITY AND DISTRIBUTION 1(SDD1)による負の制御が知られている。気孔形成を正に制御するシグナルも存在するはずだが、詳細は明らかとはなっていない。京都大学の西村らは、シロイヌナズナトランスクリプトームデータベースATTED-Ⅱによるin silico スクリーニングを行ない、TMMSDD1EPF1 とともに発現する遺伝子の探索を行なった。そして、EPFファミリーに属する機能未知のタンパク質EPFL9をコードする遺伝子At4g12970を見出した。At4g12970を過剰発現させたシロイヌナズナは気孔形成する様々な器官において気孔密度が増加し、人工マイクロRNAにより遺伝子サイレンシングを起こさせた個体では気孔密度が減少した。この気孔形成活性から本遺伝子をSTOMAGEN (ストマジェン)と命名し、さらに解析を行なった。STOMAGEN は未成熟な葉、茎、花芽で主に発現しており、詳細に発現部位を観察すると葉原基では葉肉細胞で発現が見られた。よって、ストマジェンは葉肉細胞で生産されアポプラスト経由で表皮細胞へ移行し気孔形成を誘導していると考えられる。STOMAGEN 遺伝子は102アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、生体内でアミノ末端側のシグナルペプチドが切断されて6つのシステイン残基を持つ45アミノ酸のペプチドが形成される。ストマジェン様ペプチドをコードする遺伝子は様々な植物種に分布している。植物体をストマジェン処理すると、その濃度に応じて気孔密度が高まった。よって、ストマジェンは気孔形成を誘導する分泌性の因子であると考えられる。気孔分化の最初のステップはSPEECHLESSSPCH )遺伝子のコードするbHLH型転写因子によるTMMEPF1EPF2 の発現制御が引き金となっている。spch 変異体でSTOMAGEN を過剰発現させてもストマジェン処理をしても気孔形成は誘導されないことから、ストマジェンによる気孔形成誘導はSPCH 経路を介して行なわれている。また、tmm 変異体でSTOMAGEN を過剰発現させても発現抑制させても気孔密度に変化が見られないことから、ストマジェンによる気孔形成にはTMMが必要である。したがって、ストマジェン、EPF1、EPF2の三者はTMMを介して気孔形成を制御していると考えられる。

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論文)硝酸銀をエチレン作用阻害剤として用いる際には注意が必要

2010-01-16 22:06:14 | 読んだ論文備忘録

Silver Ions Increase Auxin Efflux Independently of Effects on Ethylene Response
Strander et al.  Plant Cell (2009) 21:3585-3590.
doi:10.1105/tpc.108.065185

硝酸銀がエチレン作用を阻害する現象は1976年に発見され、以来、多くの基礎研究、応用研究に利用されてきた。例えば、オーキシン(IAA)による根の伸長阻害において硝酸銀を添加することによりIAAがより高濃度必要となるが、これは、IAA処理によって生成されたエチレンが根の伸長阻害をさらに強めているためであると解釈されてきた。米国 ライス大学のBartel らは、この仮説を検証するために幾つかの実験を試みた。シロイヌナズナ芽生えの根がIAAにより伸長阻害される際にエチレン生合成阻害剤のアミノエトキシビニルグリシン(AVG)もしくは硝酸銀を添加してオーキシンに対する応答の変化を見たところ、硝酸銀はAVGよりもIAA応答の抑制効果が高かった。しかし、合成オーキシンである2,4-Dによる根の伸長阻害に対する抑制効果は硝酸銀もAVGも同等であった。よって、硝酸銀とIAAの相互作用は2,4-Dとの相互作用とは異なることが示唆される。次にエチレン応答変異体ein2 に同様の実験を行なったところ、ein2 変異体はエチレン非感受性であるのもかかわらず、硝酸銀添加によりIAAによる根伸長阻害が抑制された。よって、硝酸銀はエチレン応答の阻害とは別のところでIAAに対する応答を抑制していると考えられる。オーキシンキャリアの変異体であるeir2/pin2aux1 においても硝酸銀はIAA感受性を低下させていることから、硝酸銀はオーキシンキャリアに作用してIAA感受性を低下させているのではない。また、硝酸銀はその濃度に応じてAux/IAAタンパク質のIAAによる分解を抑制したが、2,4-Dによる分解には影響しなかった。これらの結果から、硝酸銀のIAA感受性に与える影響はオーキシンシグナルのかなり上流でIAA特異的に影響していると考えられる。そこで、硝酸銀がIAAの蓄積に与える影響をトリチウム標識したIAAを用いて調査したところ、硝酸銀はAUX1、EIR1/PIN2などによるオーキシン輸送やエチレンシグナルによる抑制に関係なくIAAの蓄積量を減少させることがわかった。以上の結果から、硝酸銀(銀イオン)は未知の機構を介してオーキシンの細胞外への排出を促進していると考えられる。よって、硝酸銀をエチレン作用阻害剤として実験に利用する際には注意が必要である。

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論文)遺伝子発現の温度感受性とヌクレオソームの関係

2010-01-15 20:11:59 | 読んだ論文備忘録

H2A.Z-Containing Nucleosomes Mediate the Thermosensory Response in Arabidopsis
Vinod Kumar & Wigge  Cell (2010) 140:136-147.
DOI: 10.1016/j.cell.2009.11.006

植物は僅かな温度変化に敏感に応答して成長や形態を変化させる。しかしながら、温度変化を受容して遺伝子発現等を変化させる機構については明らかとなっていない。英国 ジョン・イネスセンターのWigge らは、12℃で発芽・育成したシロイヌナズナを27℃の温度条件へ移した際の遺伝子発現の変化を解析し、2454遺伝子の発現が上昇し、2880遺伝子の発現が減少することを見出した。この時、ヒートショックタンパク質をコードするHSP70 (At3g12580)の発現が大きく上昇していることから、この遺伝子発現の変化を指標として温度変化受容機構の解析を行なった。HSP70 プロモーターにルシフェラーゼ(LUC )遺伝子を繋いだコンストラクトを導入したシロイヌナズナに中性子線を照射して作出した突然変異体2600個体の中から温度変化によるLUC 発現誘導の高い2つの変異体entr1entr2 を選抜した。これらの変異体ではどちらもARP6 遺伝子の転写産物が見られず、花成が早くなった。ARP6 は以前に花成時期を制御する遺伝子として同定されており、entr 変異体にARP6 ゲノム遺伝子を導入することでHSP70::LUC の発現や花成時期が対称と同等になった。このことから、entr1entr2apr6 の新たな対立遺伝子apr6-10apr6-11 であるとし、これらの変異体を用いて更に詳細な解析を行なった。apr6-10 変異体では12℃から27℃へ昇温すると発現量が上昇する遺伝子が12℃でも常に発現しており、昇温により発現量が低下する遺伝子は常に発現が抑制されていた。したがって、apr6-10 変異体は常に高温状態にあるような遺伝子発現を示し、APR6 は外部温度に対する応答に関与していると考えられる。APR6 はクロマチン再構築複合体SWR1のサブユニットをコードしており、SWR1はヌクレオソーム中のヒストンH2Aを変異型ヒストンH2A.Zに交換する機能がある。一般にH2A.Zを含むヌクレオソームは転写開始点+1付近に多く存在し、静止している遺伝子のプロモーターの転写準備状態を維持する作用がある。H2A.Z特異抗体を用いたクロマチン免疫沈降試験の結果、apr6-10 変異体ではHSP70 プロモーター領域でのH2A.Zの占有割合が大きく減少しており、このことがHSP70 の発現増加と関連しているものと思われる。また、H2A.Zの占有は温度により変化し、HSP70 の発現量が低い温度(17℃)で育成した芽生えでは占有割合が高く、その後の2時間の高温(27℃)処理により占有割合が大きく減少した。これらの結果は、H2A.Zを含むヌクレオソームは温度変化に対して特異的に応答することを示している。しかも、温度上昇によるH2A.Zの占有割合の減少は遺伝子の温度に対する転写応答の方向に関係なく、調査したすべての遺伝子で見られた。以上の結果から以下のモデルが考えられる。低温時にはH2A.Zヌクレオソームの占有割合が高くなり、これがRNAポリメラーゼⅡの進行を物理的に妨げるか転写活性化因子が結合する個々の遺伝子に特異的なシスエレメントを塞ぐことで転写が妨げられる。低温で発現する遺伝子の場合は、H2A.Zヌクレオソームの占有がリプレッサーの結合もしくはDNAのメチル化を抑制することで転写が起こる。高温になるとH2A.Zヌクレオソームの占有割合が減少してHSP70 のような遺伝子は発現量が増加し、高温で発現が減少する遺伝子ではリプレッサーの結合が促進されて転写が抑制される。

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論文)アンチセンス鎖3'末端プロセシングとFLOWERING LOCUS C のサイレンシング

2010-01-13 22:45:25 | 読んだ論文備忘録

Targeted 3' Processing of Antisense Transcripts Triggers Arabidopsis FLC Chromatin Silencing
Liu et al.  Science (2010) 327:94-97.
DOI: 10.1126/science.1180278

シロイヌナズナの花成は、花成抑制因子であるFLOWERING LOCUS CFLC )の発現抑制によって誘導されるが、その抑制に関与する因子としてRNA結合タンパク質のFCAとFPA、切断・ポリアデニル化特異的因子(CPSF)RNA3'末端プロセシング複合体のメンバーであるFY、ジメチル化されたヒストンH3リジン4(H3K4me2)の脱メチル化を触媒するデメチラーゼのFLDが知られている。英国 ジョン・イネスセンターのDean らのグループは、FCA経路によるFLC 発現抑制に関与する因子を単離することを目的に、FCA を35Sプロモーターで過剰発現させたシロイヌナズナ種子をEMS処理して作出した突然変異体の中からFLC の発現抑制が失われた変異体suppressor of FCA sof )の単離を行なっており、今回新たにsof2sof19 についてマッピングを行なった。sof2sof19 は、それぞれRNA3'末端プロセシング複合体である切断促進因子(CstF)の3つのコンポーネントのうちの2つ、CstF77(At1g17760)とCstF64(At1g71800)をコードする遺伝子に変異の入ったものであった。cstf64 変異体、cstf77 変異体ではFLC 遺伝子のRNAポリメラーゼⅡ結合量が多く、転写の活性化に関与しているヒストンH3K4のトリメチル化量が多いことからFLC の新生転写産物量が増加していた。CstF複合体はmRNAの3'末端の形成に必要なのだが、これらの変異体ではFLC mRNAの3'末端のプロセシングは影響を受けていなかった。よって、CstF64、CstF77、FCA、FYのターゲットとなっているものはFLC 遺伝子座に由来する他の転写産物である可能性がある。著者らは先に、FLC の3'領域から転写される2種類の非コードアンチセンス転写産物が存在することを見出しており、この転写産物の3'末端プロセシングがcstf64 変異体、cstf77 変異体では減少していることがわかった。また、FCAとFPAは独立した機能を持っているが、どちらもFLC の3'領域から転写される短いほうの非コードアンチセンス転写産物の3'末端プロセシングに関与していることが確認された。したがって、FCAはFLC アンチセンス転写産物の3'末端プロセシングを誘導し、これがFLDによるFLC 遺伝子座のH3K4me2脱メチル化を引き起こしてFLC の発現抑制をしているものと考えられる。

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論文)オーキシン受容体TIR1/AFBファミリーの役割分担

2010-01-11 19:45:01 | 読んだ論文備忘録

Complex regulation of the TIR1/AFB family of auxin receptors
Parry et al.  PNAS (2009)106:22540-22545.
doi:10.1073/pnas.0911967106

TIR1はオーキシン受容体として機能するF-boxタンパク質で、シロイヌナズナには同じファミリーに属するタンパク質AFBが更に5つ存在する。これらのうち、TIR1、AFB1、AFB2、AFB3についてはオーキシン受容体として機能することが確認されている。米国 インディアナ大学のEstelle らは、陸上植物のTIR1/AFBタンパク質の系統樹解析を行ない、種子植物のTIR1/AFBタンパク質は4つのクレイドに分けられ、非維管束植物のヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens )のTIR1/AFBタンパク質はこれらとは別のクレイドを形成することを見出した。よって維管束植物の祖先種のゲノムには1種類のTIR1/AFBタンパク質がコードされており、被子植物と裸子植物が分離したおよそ3億年前よりも以前に2回の重複が起こってTIR1/AFB2、AFB4、AFB6が形成されたと考えられる。TIR1とAFB2の分離はそれよりも新しく、単子葉植物と双子葉植物が分離する前に起こったと思われる。AFB6ホモログはアブラナ科とイネ科では早い段階で消失したと考えられる。このような進化の歴史をみると、TIR1/AFBタンパク質のそれぞれのクレイドは機能が異なっていることが推測される。そこで、シロイヌナズナの各TIR1/AFBタンパク質の単独、二重、三重機能喪失変異体を作出し、表現型の解析を行なった。芽生えの根の2,4-Dによる伸長抑制について各遺伝型での応答を見たところ、tir1 変異体が2,4-D非感受性が最も強く、tir1afb2 二重変異体ではtir1 単独変異体よりも2,4-D非感受性が高まったが、tir1afb1tir1afb3tir1afb1afb3 変異体の応答はtir1 変異体と同等だった。また、tir1afb2afb3 変異体はtir1afb2 変異体より2,4-D非感受性が高まり、tir1afb1afb2 変異体では相加効果が見られなかった。よって、根におけるオーキシン応答にはTIR1がもっと大きな貢献をしており、次いでAFB2、AFB3の順で、AFB1は殆ど貢献していないと考えられる。次に各TIR1/AFBタンパク質のC末端にGUSタンパク質を繋いだ融合タンパク質を各々のプロモーターの制御下で発現させて植物体を染色したところ、TIR1-GUSAFB2-GUSAFB3-GUS では主根と側根の根端、若い葉、若い花芽といった活発に成長している領域のみ染色され、各プロモーターによりGUS のみ発現させて染色した領域よりも限定いることがわかった。ただし、AFB1-GUS融合タンパク質では植物体全体が染色された。このことから、TIR1AFB2AFB3 は転写後制御を受けていると考えられ、これには以前に見出されているマイクロRNAmiR393 が関与していると考えられる。AFB1miR393 認識部位に1塩基置換があるため、miR393 によるmRNAの分解に対して耐性があり、そのために植物体全体で発現が観察されるものと思われる。tir1 変異体でAFB1 もしくはAFB2TIR1 プロモーター制御下で発現させても、TIR1の機能を相補しないことから、TIR1/AFBタンパク質はその活性においても差異があると考えられる。

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論文)イネトビイロウンカ抵抗性遺伝子の同定

2010-01-09 09:27:07 | 読んだ論文備忘録

Identification and characterization of Bph14, a gene conferring resistance to brown planthopper in rice
Du et al.  PNAS (2009) 106:22163-22168.

doi:10.1073/pnas.0912139106

トビイロウンカ(Nilaparvata lugens )はイネに深刻な被害を与える害虫で、口吻で師管液を吸汁したり病原ウイルスの媒介をしたりする。栽培イネや野生イネの中にはトビイロウンカに対して抵抗性を示す種が存在し、これまでに19の抵抗性遺伝子の存在が報告されている。中国 武漢大学のHe らは、イネ第3染色体長腕上にあるトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph14 のマップベースクローニングを行なった。同定された遺伝子は1323アミノ酸からなるコイルドコイルドメイン、ヌクレオチド結合部位、ロイシンリッチリピート(CC-NB-LRR)を有したタンパク質をコードしており、他の幾つかの病害抵抗性遺伝子と類似性が見られた。Bph14 遺伝子がコードするアミノ酸配列を本遺伝子による抵抗性を持たないイネ品種との間で比較すると、CCとNBはすべての品種においてよく保存されていたが、LRRドメインでは抵抗性遺伝子に特異的な54アミノ酸残基と2アミノ酸残基の欠失が見られた。Bph14 遺伝子の発現とトビイロウンカの摂食による発現量の増加はすべてのイネ品種において観察されることから、抵抗性の差はアミノ酸配列の違いによって生じているものと思われる。Bph14 遺伝子は葉鞘、葉身、根において恒常的に発現しており、主に維管束組織で発現していた。Bph14 遺伝子を導入した形質転換イネとトビイロウンカ抵抗性のない野生型イネがトビイロウンカの摂食を受けると、野生型では茎のクロロシス、葉の萎れ、稔実率の低下を示し、死んでしまう個体もあったが、形質転換体は健全だった。トビイロウンカの宿主選択性と産卵数に野生型と形質転換体との間で大きな差は見られなかったが、形質転換体で摂食するウンカは吸汁している時間が短くなり、分泌液の量が減り、成長が悪くなった。そしてこれらのことから生存率の低下が見られた。また、形質転換体ではカロースの沈着とBowman-Birkトリプシンインヒビターの発現量が多くなっていた。植物の防御応答に関与するホルモンの生合成やそれらのシグナル伝達因子について野生型と形質転換体との間で比較すると、形質転換体ではトビイロウンカ摂食後のジャスモン酸生合成酵素遺伝子(LOXAOS2 )とエチレン受容体EIN2 遺伝子の発現誘導が少なく、サリチル酸(SA)合成酵素遺伝子(EDS1PAD4PALICS1 )とSAシグナル伝達に関与するNPR1 遺伝子イネホモログの発現誘導が野生型よりも高かった。ただし、SAにより誘導され全身獲得抵抗性(SAR)に関与しているPR1b の発現は形質転換体では誘導されていなかった。よって、Bph14 によるトビイロウンカ抵抗性にはSAシグナルが関与していると思われる。

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