Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)春の北海道バイケイソウ調査 旭川

2016-04-30 19:18:54 | 植物観察記録

今日は旭川のバイケイソウ群生地へ行きました。昨日、今日と気温が低く、時折霰が降る生憎の天気でした。この群生地ではカタクリが丁度良い塩梅に成長していましたが、天気が悪いため花弁は閉じたままでした。バイケイソウは葉の展開が始まったところでした。展開している葉数から推測すると、今年も開花はなさそうな感じです。一部の個体ですが、葉が透けたようになっているものがありました。ここのところの低温で葉が凍結して障害が生じたのかもしれません。

 

この群生地では葉の展開が始まりました

 

低温障害でしょうか 葉の一部が透けたようになっています

 

何らかの理由(低温障害?)で出芽初期に先端部が死んでしまい、そこが被さったままになって葉の展開を妨げている

 

食害を受けたバイケイソウの葉 カタツムリが食べた?

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植物観察)春の北海道バイケイソウ調査 道北

2016-04-29 20:33:21 | 植物観察記録

道北へバイケイソウ観察に行ってきました。稚内の海岸草原の群生地で各ジェネットの株数を調査しました。昨年は花成したジェネットは殆どありませんでしたので、大部分のジェネットで株数は昨年と同じ、一部で減少(枯死もしくは出芽前?)していました。昨年9株が花成したジェネットでは株数が51個体から54個体に増加していました。単純計算(昨年未花成の株がすべて出芽したとして)すると9個体が12個体になったということになり、花成個体の1/3が子ラメット(わき芽)を2つ形成したことになります。今年から、豊富町(兜沼近辺)のバイケイソウ群生地も調査地として加えようかと下調べをしてきました。ここも結構バイケイソウはあるのですが、ミズバショウやエゾノリュウキンカが混生する湿地の生育環境で、草原や林床とは少し異なります。ここでは、生育環境の違いと花成同調との関係が見れればと思いっています。

 

稚内海岸草原のバイケイソウ群生地

 

ここの群生地では葉の展開や偽茎の抽だいはまだ始まっていない

 

豊富町のバイケイソウ群生地 ミズバショウやリュウキンカが混生している

 

エゾノリュウキンカ

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論文)青色光照射による孔辺細胞でのデンプン分解と気孔の開口

2016-04-28 13:31:11 | 読んだ論文備忘録

Blue Light Induces a Distinct Starch Degradation Pathway in Guard Cells for Stomatal Opening
Horrer et al. Current Biology (2016) 26:362-370.

DOI:10.1016/j.cub.2015.12.036

孔辺細胞の葉緑体のデンプンは、光による気孔の開口誘導と関連していると考えられている。スイス チューリッヒ大学Santelia らは、シロイヌナズナ孔辺細胞のデンプン量の日変化を観察し、デンプンは夜の終りに見られるが、光照射により1時間以内に分解されることを見出した。興味深いことに、デンプンの減少は夜の後半から始まった。しかし減少速度は光照射による分解と比較すると緩やかであった。デンプンの合成は光照射1時間後から始まり、明期の間継続して夜まで続いた。これらの結果から、シロイヌナズナ孔辺細胞のデンプン代謝は、葉の他の細胞とは異なることが示唆される。β-アミラーゼ(BAM)は主要なデンプン分解酵素であり、葉肉細胞ではBAM3が主なアイソフォームだが、孔辺細胞ではBAM1 が強く発現していた。また、bam1 変異体では日内周期を通して孔辺細胞のデンプン含量が野生型よりも高くなっていた。よって、孔辺細胞のデンプン代謝においてはBAM1が特異的に機能していると考えられる。デンプンを完全に分解するためにはBAM以外の酵素も必要である。α-AMYLASE 3 (AMY3 )は孔辺細胞での発現量が高く、amy3 変異体は孔辺細胞のデンプン含量が高くなっていた。また、amy3 bam1 二重変異体はbam1 変異体よりもデンプン含量が高くなっていた。枝切り酵素をコードするLIMIT DEXTRINASE (LDA )は、孔辺細胞での発現量は高くはないが、lda 変異体孔辺細胞のデンプン含量は幾分か高くなっていた。夜間の葉でのデンプン分解における主要な枝切り酵素をコードするISOAMYLASE 3ISA3 )は孔辺細胞での発現量が高く、isa3 変異体では光照射後のデンプン分解は起こるが、デンプン含量は野生型よりも高くなり、isa3 lda 二重変異体ではデンプン含量が更に高くなった。これらの結果から、気孔開口時の孔辺細胞でのデンプン代謝においてはBAM1、AMY3、LDA、ISA3が機能していると考えられる。bam1 変異体は野生型と比較して光に応答した気孔開度が低く、気孔伝導度の増加が緩やかであった。しかしながら、炭酸同化に関しては殆ど野生型との差異は見られなかった。amy3 bam1 二重変異体は光照射による気孔開口が十分になされず、そのために気孔伝導度、葉の細胞間二酸化炭素濃度、炭酸同化が低く、通常の光強度条件下で育成した場合、野生型よりも小さくなった。これらの結果から、孔辺細胞のデンプン分解は、気孔開口を介した植物の光適応において非常に重要な要因であると考えられる。孔辺細胞葉緑体でのデンプン分解と気孔の開口は、光合成活性には不十分な光量子密度の青色光下でも起こった。一方、高い光量子密度の赤色光を照射した場合は、孔辺細胞でのデンプン合成が促進され気孔も開口した。したがって、孔辺細胞でのデンプン合成/分解は光の波長による制御を受けていると考えられる。また、赤色光下での気孔開口は、孔辺細胞葉緑体でのデンプン分解とは独立したものであると考えられる。孔辺細胞ではフォトトロピン1および2(PHOT1/PHOT2)によって青色光が受容され、BLUE LIGHT SIGNALING 1(BLUS1)タンパク質キナーゼやタンパク質フォスファターゼ1(PP1)によってシグナルが伝達され、細胞膜上のプロトンATPアーゼが活性化される。phot1 phot2 二重変異体やblus1 変異体の孔辺細胞は、光照射1時間後も多くのデンプンを含んでいた。一方、これらの変異体の葉肉細胞ではデンプン合成/分解は正常に起こっていた。PP1の阻害剤であるトートマイシンは、デンプン分解と気孔開口を抑制した。細胞膜プロトンATPアーゼの変異体aha1 は、光照射後のデンプン含量が高く、プロトンポンプの活性化物質であるフシコクシン(Fc)処理をすると孔辺細胞のデンプンは消失した。これらの結果から、プロトンATPアーゼ活性とデンプン分解は正の相関があると考えられる。bam1 変異体の気孔は、野生型と同様に、塩素イオンによって気孔を開口するが、amy3 bam1 二重変異体の開口度は低かった。これらの変異体にFc処理をしても気孔の開口やデンプン分解の回復は見られなかった。したがって、プロトンATPアーゼはデンプン分解過程の上流で機能しており、この過程は青色光によって誘導される気孔開口に最も必要であることが示唆される。

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論文)タイプBヘテロ三量体Gタンパク質γサブユニットによるホルモンシグナル伝達制御

2016-04-22 14:06:49 | 読んだ論文備忘録

Type B Heterotrimeric G Protein γ-Subunit Regulates Auxin and ABA Signaling in Tomato
Subramaniam et al. Plant Physiology (2016) 170:1117-1134.

doi:10.1104/pp.15.01675

ヘテロ三量体Gタンパク質は、α、β、γの3つのサブユニットから構成されており、刺激に細胞が応答する際のシグナル伝達因子として機能している。植物のGγサブユニットは、構造の異なる3つのタイプに分類され、C末端のイソプレニル化モチーフが欠けているタイプB Gγサブユニットは顕花植物のみに見出されている。オーストラリア クイーンズランド大学Botella らは、シロイヌナズナのGγサブユニットをクエリーとしてトマトプロテオームのBLAST検索を行ない、4つのGγ様タンパク質を同定した。4つのうち1つはタイプAで、タイプBが2つ、残りはタイプCに分類され、それぞれの遺伝子をSlGGA1SlGGB1SlGGB2SlGGC1 と命名した。これら4つの遺伝子の組織毎の発現を見たところ、SlGGA1SlGGB1 は類似した発現プロファイルを示し、調査した全ての組織で発現していたが、SlGGC1 の発現量は低く、SlGGB2 の発現はさらに低かった。SlGGB1 の発現量は花や果実といった生殖組織で高くなっていた。SlGGB1 遺伝子プロモーターでGUS レポーター遺伝子を発現するコンストラクト(SlGGB1:GUS )を用いてSlGGB1 発現パターンを調査したところ、花芽や開花した花では花柄の離層部分、花弁、葯、花粉粒で発現が見られた。未熟果実および緑熟期の果実では萼との接続部や柄の部分で発現しており、催色期の果実では種子のついた胚柄や維管束で発現が強くなっていた。そして登熟中は果皮で強い発現が見られ、萼から果軸かけて発現部位が広がり、個々の種子の珠柄においても発現が見られた。発芽種子では胚乳の珠孔の部分のみで発現していた。しかし、GUS発現は葉や根では見られなかった。SlGGB1、SlGGB2はGβサブユニットのSlGB1と相互作用をすることが確認された。SlGGB1 をRNAiで発現抑制(slggb1 )した芽生えは側根数と側根原基が増加していた。また、slggb1 はオーキシン処理による側根と側根原基の誘導や不定根形成に対して感受性が高くなっていた。よって、SlGGB1はオーキシンシグナル伝達の負の制御因子であるものと思われる。slggb1 の果実は先端が尖っており心臓型の形をしていた。このような形のトマト果実はオーキシン感受性が高い場合に形成されることが報告されており、尖った先端やオーキシンシグナルの上昇は単為結実と関連している。slggb1 果実の種子は野生型よりもやや小型だが形状や種子数は正常であり、正常に発芽した。オーキシン早期応答遺伝子のINDOLE-3-ACETIC ACID INDUCIBLE8 (IAA8 )やGRETCHEN HAGEN3 (GH3 )のトマトホモログはslggb1 では定常状態で野生型よりも高い発現を示していたが、オーキシン処理をすると発現量が低下した。slggb1 の葉、根、果実の内生オーキシン量は野生型と同等もしくは減少していた。植物のGタンパク質はアブシジン酸(ABA)のシグナル伝達に関与していることが知られている。野生型植物をABA処理するとSlGGB1 の発現量が増加した。slggb1 の発芽率は野生型と同等だが、ABA添加による発芽阻害の程度は低くなっていた。しかしながら、ABAによる側根形成阻害の程度は野生型とslggb1 で差異は見られなかった。トランスクリプトーム解析の結果、24時間ABA処理をした野生型とslggb1 の種子で54遺伝子の発現量に差異が見られ、このうち52遺伝子はslggb1 の発現量が野生型よりも低くなっていた。発現量に変化の見られた遺伝子には、LEAタンパク質遺伝子、ABA関連遺伝子、浸透圧ストレス関連遺伝子、熱ショックタンパク質遺伝子、低温誘導遺伝子があった。また、PYR/PYL/RCAR型ABA受容体PLY4MEDIATOR OF ABA-REGULATED DORMANCY1MARD1 )といったABA応答遺伝子の発現量が減少していた。種子発芽にはジベレリン(GA)も関与しているが、slggb1 ではGA生合成遺伝子やGA応答に関与する転写因子遺伝子のABA処理に対する応答性が低下していた。ABAと直接関連していない遺伝子としては、種子貯蔵やオイルボディに関連したもで発現量の変化が見られた。水に浸漬した種子の解析では、野生型と比較して19遺伝子がslggb1 で発現低下し、2遺伝子のみが発現増加してしていた。これらの遺伝子は、細胞壁修飾、種子貯蔵、脂肪酸流動に関与するものあった。発現量が変化した遺伝子は、水浸漬とABA処理の間で重複はしていなかった。以上の結果から、トマト タイプB GγサブユニットのSlGGB1は植物の成長過程におけるオーキシンシグナル伝達と種子発芽時のアブシジン酸シグナル伝達に関与していると考えられる。

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植物観察)箱根

2016-04-16 21:45:30 | 植物観察記録

先週に引き続き箱根にバイケイソウ調査に行ってきました。新しい調査地なので、なるべく頻繁に通いたいと思っています。バイケイソウは偽茎が抽だいを始めました。まだ判断時期としては早いのですが、花成が確認できた個体はありませんでした。今年も開花個体はほとんど無いのか。それから、バイケイソウハバチを目撃しました。この山でもハバチは発生しているようです。花としては、今週新たにヤマルリソウとエイザンスミレが見られました。

 

新しい調査地のバイケイソウ群落

 

バイケイソウは偽茎の抽だいが始まりました

 

この山でもバイケイソウハバチを目撃しました

 

ヤマルリソウ

 

エイザンスミレ

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論文)PIN1型ペプチジルプロリルイソメラーゼによる根の重力応答性の制御

2016-04-14 23:00:18 | 読んだ論文備忘録

Pin1At regulates PIN1 polar localization and root gravitropism
Xi et al. Nature Communication (2016) 7:10430.

DOI: 10.1038/ncomms10430

PIN1型ペプチジルプロリルイソメラーゼ(PPIase)は、Pro残基の前にあるSer/Thr残基のリン酸化を認識してプロリンペプチド結合のシス/トランス立体構造変化を触媒する。この反応はタンパク質の安定性、細胞内局在、リン酸化状態、酵素活性、タンパク質-タンパク質相互作用を変化させる。シンガポール国立大学Liou らは、シロイヌナズナのPPIaseをコードするPin1At を35Sプロモーターで恒常的に発現させた形質転換体(35S:Pin1At )の芽生えの根は重力応答性に異常が見られ根の成長が幾分低下することを見出し、詳細な解析を行なった。35S:Pin1At の根端はコルメラ細胞の数が減少しており、このことが重力応答性の低下をもたらしているものと思われる。人工マイクロRNAでPin1At をノックダウンした個体(AmiR-Pin1At )は正常に重力に応答して根を伸長させコルメラ細胞数も野生型と同等であったが、重力屈性応答が低下し根の伸長速度が速くなっていた。重力屈曲試験を行なうと、AmiR-Pin1At 個体は屈曲角度が50~70°であるのに対し、35S:Pin1At 個体は90°以上屈曲して変則的にループを形成した。これらの結果から、Pin1At は根の重力屈性の制御において重要な役割を担っていることが示唆される。GUS レポーター遺伝子の発現調査から、Pin1At は根の分裂組織領域と伸長領域で強く発現していることがわかった。根の重力応答はオーキシン排出キャリアPIN-FORMED(PIN)細胞膜上の局在が関係している。PINタンパク質の局在はSer/ThrキナーゼのPINOID(PID)とタンパク質フォスファターゼA2(PP2A)によるタンパク質のリン酸化状態によって変化する。また、根におけるPin1At の発現パターンはPP2A複合体の調節Aサブユニットをコードする遺伝子のうちの1つPP2AA1 の発現パターンと類似していた。3つあるPP2AAPP2AA13 )の機能喪失変異体のうち、pp2aa1-6 単独変異体では根の伸長と重力屈性応答の低下が見られた。pp2aa2-1 変異体、pp2aa3-1 変異体の根は正常であったが、両変異を集積すると重力応答性が低下し、pp2aa2-1 変異、pp2aa3-1 変異をpp2aa1-6 変異と集積すると重力応答性はpp2aa1-6 単独変異よりも強く低下した。これらの結果から、PP2AA1~3は機能重複しており、その中でもPP2AA1は根の発達制御において重要な役割を担っていることが示唆される。pp2aa2-1 pp2aa3-1 二重変異体の重力応答性の低下はPin1At を過剰発現させることによって悪化した。一方、Pin1At のノックダウンによってpp2aa1-6 単独変異体やpp2aa 二重変異体の根の異常が緩和された。したがって、Pin1AtとPP2AAは根の重力応答において相反効果を示すことが示唆される。PID の過剰発現個体(35S:PID )は、PP2AA の機能喪失変異体に類似した表現型を示すが、35S:Pin1At 35S:PID は、重力応答性の低下に加え、主根の根端分裂組織が更に崩壊して根長が長くなった。一方、Pin1At のノックダウンは35S:PID の根の異常を抑制した。よって、Pin1At はPIDとPP2Aフォスファターゼの相反する相互作用の調節に関与して根の重力応答性に影響をおよぼしていることが示唆される。オーキシン輸送阻害剤1-N-ナフチルフタラミン酸(NPA)は、刺激による屈曲応答を抑制し、pp2aa1-6 変異体、35S:Pin1Atpp2aa1-6 35S:Pin1At の重力応答性低下を強めたが、AmiR-Pin1At や野生型では効果は弱かった。よって、Pin1At の過剰発現はオーキシン輸送阻害剤に対する感受性に影響していると考えられる。オーキシンレポーターDR5:GUS を用いて根端部のオーキシン分布を見たところ、pp2aa1-6 変異体と35S:Pin1At ではレポーター活性が野生型よりも低く、pp2aa1-6 35S:Pin1At ではさらに低くなっていた。NPA処理は全ての遺伝子型でレポーター活性を低下させたが、IAA処理では野生型のみでレポーター活性を示す細胞の数が増加した。また、AmiR-Pin1At35S:PID の根端部のレポーター活性を回復させた。IAA処理はオーキシンシグナルセンサーDⅡ-VENUSの分解を促進するが、35S:Pin1At では分解が幾分か抑制された。これらの結果から、Pin1At は根端部方向へのオーキシン輸送に対して負の効果を示すことが示唆される。根端組織においてPIN1タンパク質は中心柱細胞の根端側の細胞膜に局在している。pp2aa1-6 変異体ではPIN1の局在に変化は見られないが、PIN1タンパク質量が減少していた。35S:Pin1At ではPIN1の局在性と絶対量が低下し、pp2aa1-6 35S:Pin1At ではさらにPIN1量が減少していた。35S:PID では中心柱細胞のPIN1タンパク質の根端側局在性が低下するが、35S:PID AmiR-Pin1At ではPIN1タンパク質の局在性が幾分回復した。これらの結果から、Pin1At はPIN1タンパク質の細胞内局在に影響し、オーキシン極性輸送を負に制御していることが示唆される。Pin1At はPIN2、PIN3、PIN7の細胞内局在には影響しなかった。PIN1タンパク質の中央部の親水性ループ内にはSer/Thr-Proモチーフが4つ含まれているが、Pin1Atはこれらのモチーフのシス/トランス立体構造変化を触媒した。4つのモチーフのうち、Ser337/Thr340のリン酸化はPIN1タンパク質の細胞内局在とオーキシン極性輸送を変化させることが報告されている。このSer337/Thr340をリン酸化されないAla残基もしくはリン酸化状態を模倣するAsp残基に置換したところ、PIN1(Ala)は35S:Pin1At で細胞内局在に変化は見られなかったが、PIN1(Asp)は野生型での異常な細胞内局在がAmiR-Pin1At によって抑制された。したがって、Pin1AtによるPIN1の細胞内局在の変化は、Ser/Thr-ProモチーフのうちのSer337/Thr340のリン酸化状態を認識したPin1AtによるPIN1のシス/トランス異性化を介していなされていることが示唆される。以上の結果から、Pin1AtはPIN1タンパク質のシス/トランス立体構造変化を触媒することで、PIDとPP2Aを介してなされる根の中心柱細胞におけるPIN1の局在を制御しており、このことは根の重力屈性応答の制御に関連していると考えらる。

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植物観察)箱根

2016-04-10 20:54:53 | 植物観察記録

大涌谷周辺の火山活動により、バイケイソウの調査をしていた神山・駒ケ岳のハイキングコースが立入禁止となってしまい、昨年5月から長年定点観察していた調査地での観察を中断している状態です。今年になっても立入禁止が解除されないことから、新たに別の調査地として箱根外輪山のバイケイソウ群生地で調査を始めることにしました。新たな調査地は、芦ノ湖西側の古期外輪山で、バイケイソウはかなりの高密度で生えていました。今後は、気分一新してこちらのフィールドで観察・調査を行なっていきたいと思います。咲いている花としては、ミヤマカタバミ、ハルトラノオ、エンレイソウ、スミレ類、アセビ、キブシが見られました。

 

箱根外輪山のバイケイソウ 30cm程に成長していました。

 

1枚葉の個体 2013年の一斉開花の種子由来か?

 

エンレイソウ

 

ハルトラノオ

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論文)高温時の成長促進における熱ショックタンパク質90の役割

2016-04-05 20:10:53 | 読んだ論文備忘録

HSP90 regulates temperature-dependent seedling growth in Arabidopsis by stabilizing the auxin co-receptor F-box protein TIR1
Wang et al. Nature Communication (2016) 7:10269.

DOI: 10.1038/ncomms10269

Heat shock factor 90(HSP90)は植物および動物の様々なシグナル伝達に関与している。米国 カリフォルニア大学サンディエゴ校Estelle らは、HSP90が高温条件での植物の成長における役割について調査した。シロイヌナズナ芽生えを高温(29℃)で育成すると胚軸伸長が促進されるが、HSP90の阻害剤であるゲルダナマイシン(GDA)処理をすると伸長促進が見られなくなった。高温処理は芽生えの側根形成と主根の伸長を促進したが、GDAはこれらの根の成長変化も阻害した。GDA以外のHSP90阻害剤であるラディシコールや没食子酸エピガロカテキン(EGCG)も高温による芽生えの成長促進を阻害した。高温処理をするとオーキシンレポーターDR5:GUS の発現が根とシュートの両方で上昇するが、GDAはこれを強く阻害した。また、GDA処理は高温によるオーキシン応答遺伝子GH3.17IAA19IAA5 の発現誘導も抑制した。これらの結果から、HSP90はオーキシン作用に影響することによって高温が制御する植物の成長に対して重要な役割を担っていることが示唆される。GDAはオーキシン生合成遺伝子YUCCA8 の高温による発現活性化には影響しないことから、HSP90は温度に応答した成長制御をオーキシン生合成を介してではなくオーキシンシグナル伝達等の他の過程をを通して制御していると思われる。GDAはオーキシンによる胚軸伸長促進、側根形成促進、主根伸長阻害、根の重力屈性応答を阻害することから、HSP90はオーキシンによる成長制御の多くに関与していることが示唆される。芽生えをGDA処理すると、オーキシンコレセプターのTIRやAFB2が大きく減少した。よって、HSP90はTIR1やAFB2の安定性に関与しており、HSP90の活性低下によるオーキシン応答の変化はオーキシンコレセプター量の減少によるものと考えられる。GDA処理の際にプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブを同時に添加するとTIR1の減少が見られなくなることから、HSP90の阻害はTIR1のプロテアソーム系による分解を引き起こしていると考えられる。TIR1AFB2AFB3 の転写産物量は高温処理をしても大きな変化を示さないが、高温処理によってTIR1タンパク質量は増加し、HSP90阻害剤を処理することによって増加は抑制され、HSP90阻害剤とボルテゾミブを同時に処理すると増加が回復した。シクロヘキシミド処理した芽生えではTIR1の安定性は22℃よりも29℃で高く、GDA処理をすると高温でのTIR1安定性が低下した。よって、高温下でのTIR1の安定性の増加はHSP90によるものと考えられる。HSP90量は22℃では比較的少なく、29℃に温度を上げることで1時間以内に増加した。免疫沈降(co-IP)試験から、HSP90はTIR1と複合体を形成することが確認された。SUPPRESSOR OF G2 ALLELE SKP1(SGT1)はオーキシン応答に関与しているHSP90のコシャペロンで、co-IP試験やプルダウン試験からTIR1と相互作用をすることが確認された。また、BiFCアッセイからSGT1bとHSP90は細胞質と核において相互作用をしていること、TIR1とSGT1bは核において相互作用をするが、TIR1とHSP90は相互作用をしないことがわかった。SGT1b の変異体enhancer of tir1 auxin resistance 3eta3 )は22℃でのTIR1量が野生型よりも少なく、高温処理によるTIR1量の増加が起こらなかった。このことは、SGT1-HSP90複合体がTIR1の安定性に関与していることを示している。以上の結果から、HSP90はオーキシンコレセプタータンパク質を安定化させることで高温条件での成長促進を引き起こしていると考えられる。

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