RGF1 controls root meristem size through ROS signalling
Yamada et al. Nature (2020) 577:85-88.
doi: 10.1038/s41586-019-1819-6
根の分裂組織の幹細胞ニッチやサイズは、細胞間相互作用やペプチドホルモンであるRGF1(root meristem growth factor 1)によって制御されている。RGF1シグナルは根の幹細胞維持に関与しているAP2/ERFファミリー転写因子のPLETHORA(PLT)1/2の安定性を制御しているが、その詳細は明らかではない。米国 デューク大学のBenfey らは、シロイヌナズナの根をRGF1処理し、583の発現量の変化する遺伝子を見出した。これらの遺伝子には、「グルタチオントランスフェラーゼ活性」や「酸化還元酵素活性」といったGOのものが含まれており、RGF1は活性酸素種(ROS)を介してシグナル伝達していることが推測される。そこで、RGF1処理した根でのO2-とH2O2の分布を見たところ、分裂組織領域、伸長領域でのH2O2量は減少し、分裂組織領域のO2-量は増加していることがわかった。トランスクリプトーム解析から、RGF1処理で発現量が約2倍増加するPLANT AT-RICH SEQUENCE AND ZINC-BINDING TRANSCRIPTION FACTOR(PLATZ) ファミリータンパク質をコードする遺伝子(AT2G12646) が見出され、RGF1-INDUCIBLE TRANSCRIPTION FACTOR 1 (RITF1 ) と命名した。RITF1 は分裂組織領域で特異的に発現しており、RGF1受容体が機能喪失したrgfr1/2/3 変異体では発現量が低く、RGF1処理による発現量変化が見られなかった。よって、RITF1 の発現はRGF1経路によって制御されている。誘導性プロモーター系でRITF1 を過剰発現させた根では、H2O2量が減少してO2-量と根分裂組織の大きさが増加した。このことから、RITF1 はRGF1経路の下流でROSシグナル伝達と根分裂組織の大きさを調節していることが示唆される。ritf1 変異体は、野生型よりも根分裂組織が小さく、根の成長が悪く、RGF1処理によるO2-量の増加が少なくなっていた。根をH2O2処理もしくはO2-量を減少させるためにNADPHオキシダーゼ阻害剤のジフェニレンヨードニウム(DPI)処理をすると、PLT2の安定性が低下し、RGF1処理による根分裂組織の細胞数増加が抑制された。plt2 変異体をRGF1処理もしくはRITF1 を過剰発現させると、O2-量は増加するが根分裂組織の大きに変化は見られなかった。以上の結果から、RGF1はRITF1 を発現誘導してROSシグナル伝達を調節し、PLT2の安定性を高めて根の成長を制御していると考えられる。