Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)アブシジン酸の異化による種子休眠の制御

2020-12-30 09:24:06 | 読んだ論文備忘録

The H3K27me3 Demethylase RELATIVE OF EARLY FLOWERING6 Suppresses Seed Dormancy by Inducing Abscisic Acid Catabolism
Chen et al. Plant Physiology (2020) 184:1969-1978.

doi:10.1104/pp.20.01255

シロイヌナズナRELATIVE OF EARLY FLOWERING6(REF6)はヒストンH3K27me3を脱メチル化するJumonji(JMJ)ドメインを有するタンパク質で、当初はFLOWERING LOCUS CFLC )のリプレッサーとして見出された。しかし、ref6 変異体は葉の老化抑制や側根形成の抑制といった様々な表現型を示していた。そこで、中国 中山大学のLi らは、ref6 変異体の種子発芽遅延に着目して解析を行なった。REF6 は種子の発達、貯蔵、発芽の各過程で発現が見られ、種子発芽の際にアブシジン酸(ABA)処理によって発現が誘導された。ref6 変異体種子はABA含量が高く、ABA欠損をもたらすaba2 変異をref6 変異体に導入してABA含量を低下させることで種子休眠が低下した。よって、REF6は種子の内生ABA量を低下させることで種子休眠を抑制していると考えられる。ref6 変異体と野生型との間で種子発達および種子発芽過程においてABA生合成遺伝子の転写産物量に差は見られなかったが、ABA異化遺伝子のCYP707A1 およびCYP707A3 の転写産物量がref6 変異体で低下していた。よって、ref6 変異体でのABA含量の増加は、ABA異化に関与るする遺伝子の発現低下が関連していると考えられる。ChIP-qPCRの結果、REF6はCYP707A1CYP707A3 の第2イントロンに多く結合することが確認された。また、ref6 変異体ではCYP707A1CYP707A3 のH3K27me3量が野生型よりも高くなっていた。これらの結果から、REF6は種子発達過程でCYP707A1CYP707A3 のH3K27me3量を低下させることで遺伝子発現を促進していると考えられる。CYP707A1CYP707A3 の単独もしくは二重変異体にref6 変異を導入することで、さらに種子発芽率が低下し、内生ABA含量が増加した。また、ref6 変異体でCYP707A1 を過剰発現させることで種子休眠表現型が改善された。以上の結果からヒストンH3K27デメチラーゼのREF6は、アブシジン酸の異化を制御することで種子休眠を抑制していると考えられる。

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論文)種子発芽におけるアブシジン酸とジャスモン酸のクロストーク

2020-12-28 06:52:49 | 読んだ論文備忘録

Molecular Mechanism Underlying the Synergetic Effect of Jasmonate on Abscisic Acid Signaling during Seed Germination in Arabidopsis
Pan et al.  Plant Cell (2020) 32:3846-3865.

doi:10.1105/tpc.19.00838

アブシジン酸(ABA)は、シロイヌナズナの種子発芽と発芽後の成長を抑制し、ジャスモン酸(JA)はABAの抑制機能を強める。しかしながら、ABAとJAのシグナル伝達経路間のクロストークの分子機構はほとんど解明されていない。中国 雲南大学のYu らは、JA受容体のF-boxタンパク質COI1の機能喪失変異体coi1 は種子発芽と発芽後成長におけるABA感受性が低下していること、JAシグナル伝達の抑制因子として作用するJAZタンパク質をコードする遺伝子の多重集積変異体(jazQjazD )はABA感受性が高いことを見出した。JAZ を恒常的に過剰発現させた形質転換体種子の発芽や芽生え子葉の緑化はABAの有無に関係なく野生型と同等だが、Jasドメインが欠失してJA非感受性となったJAZ-ΔJas を過剰発現させた形質転換体はABA非感受性となった。これらの結果から、JA経路は種子発芽におけるABAシグナル伝達に積極的に関与していると考えられる。JAZタンパク質はABAシグナル伝達を正に制御している転写因子ABSCISIC ACID INSENSITIVE3(ABI3)と物理的に相互作用し、乾燥種子はJAZ1JAZ5JAZ8 の転写産物が多く含まれていた。ABI3とABI5は種子発芽と芽生えの成長の際のABAシグナル伝達を制御しており、abi3 変異体、abi5 変異体はABAやJAアナログのコロナチン(COR)およびABAとCORの同時処理をしても野生型よりも発芽成長が早くなった。よって、JAによるABAシグナル伝達の活性化にはABI3、ABI5が関与していると考えられる。coi1 変異体やJAZ1-ΔJas 発現系統の種子休眠の程度は野生型と同等であることから、COI1/JAZによるJA経路自体は種子休眠に関与していないことが示唆される。JAZはABI3やABI5と直接相互作用をしてこれらの転写因子の転写活性化機能を抑制していることが確認された。coi1 変異体やJAZ1-ΔJas 発現系統はJAZタンパク質がABI3やABI5の転写活性化活性を抑制するために種子発芽でのABA感受性が低下しているが、ABI3 を過剰発現させることによってABA感受性が高まった。以上の結果から、JAはABI3/ABI5と相互作用をするJAZタンパク質を分解することでABAシグナルを高めていると考えられる。

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論文)側根原基誘導と小胞輸送

2020-12-21 21:30:58 | 読んだ論文備忘録

Cell wall remodeling and vesicle trafficking mediate the root clock in Arabidopsis
Wachsman et al.  Science (2020) 370:819-823.

DOI: 10.1126/science.abb7250

シロイヌナズナの側根は、「root clock」として知られている約6時間周期の遺伝子発現によって誘導が調節されている。米国 デューク大学Benfey らは、DR5::LUC の発現を指標にして将来側根原基(LRP)が形成される部位(prebranch site)を特定し、RNA-seq解析で遺伝子発現の変化を観察した。その結果、遺伝子発現が周期変動している領域で発現している遺伝子で最も一般的なGO termは、細胞壁生合成と小胞輸送に関連するもので、特に、ペクチンリアーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ(PME)、およびそれらのインヒビター(PMEI)といったペクチン代謝プロセス関連の遺伝子が含まれていた。この領域で発現量の高いもう1つの遺伝子群としてオーキシンの輸送とシグナル伝達に関連するものが含まれていた。発現量の高い第三のグループは、窒素関連化合物の輸送、代謝、応答に関与しており、これらは側根の密度と成長に影響していることが知られている。さらにシステインリッチ受容体様キナーゼサブファミリーや側根形成関連の遺伝子が含まれていた。これらの結果から、周期変動領域は側根原基形成に必要な様々な経路の転写中心として機能していることが示唆される。次に側根形成とPMEとの関係を明らかにするために、PME5 もしくはPME13 を過剰発現させたところ、prebranch siteが減少して側根数も減少した。また、pme2 変異体、pme3 変異体および両者の二重変異体も側根数が減少した。したがって、ペクチンのエステル化と脱エステル化のバランスがroot clockの機能を支えていることが示唆される。次に、DR5:LUC種子を変異原処理をしてroot clockに異常の見られる変異体を単離した。得られた変異体は、ROOT HAIR DEFECTIVE 3RHD3 )、GNOMSHORTROOT 、GLUTHATIONE REDUCTASESECA1 に変異があり、RHD3とGNOMは小胞輸送に関連するタンパク質として知られている。そこで、芽生えを小胞輸送阻害剤のブレフェルジンA(BFA)で処理したところ、gnom 変異体と同じように側根形成が見られなくなり、root clockマーカー遺伝子の発現にも異常が生じた。さらに、BFA処理をしても側根が発達する2つの変異体を単離した。そのうちの1つは、ADENOSINE PHOSPHATE RIBOSYLATION FACTOR GTPase ACTIVATING PROTEIN DOMAIN 3AGD3 )の変異体であった。AGD3は小胞形成における出芽・分離過程に関与しており、GNOMとは逆の作用がある。gnom 変異体にagd3 変異を導入することでroot clock機能や側根の表現型が部分的に回復した。これらの結果から、GNOM-AGD3回路による小胞輸送はroot clockと側根原基誘導に必要であることが示唆される。ペクチンの成分であるホモガラクツロナンは、ゴルジ体内でエステル化された状態で合成され、細胞壁に分泌され、そこでPMEによって脱エステル化される。gnom 変異体の根は脱エステル化したホモガラクツロナンを含む細胞壁領域が減少しており、内鞘と内皮の接合部で脱エステル化したホモガラクツロナンの密度が野生型よりも高く、これが側根の出現を妨げている可能性がある。側根原基出現部位近傍では細胞壁の剛性の増加に関連する脱エステル化ホモガラクツロナンが減少していた。以上の結果から、GNOM小胞輸送によってもたらされる細胞壁内でのペクチンのエステル化と脱エステル化のバランスが、適切にroot clockが機能して側根原基が誘導されるために重要であると考えられる。

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論文)ジャスモン酸による不定根形成の抑制

2020-12-16 05:53:30 | 読んだ論文備忘録

ETHYLENE RESPONSE FACTOR 115 integrates jasmonate and cytokinin signaling machineries to repress adventitious rooting in Arabidopsis
Lakehal et al.  New Phytrologist (2020) 228:1611-1626.

doi: 10.1111/nph.16794

ジャスモン酸(JA)は不定根の誘導に対して抑制的に作用するが、その作用機作については明らかとなっていない。スウェーデン ウメオ大学Bellini らは、シロイヌナズナの様々なjaz 変異体の不定根誘導を調査し、jaz7jaz8jaz10jaz13 四重変異体は野生型と同等だが、jazQ 五重変異体(jaz1jaz3jaz4jaz9jaz10 )では不定根数が僅かに減少することを見出した。また、JAZと相互作用をしないMYC2を生成するmyc2-322B 機能獲得変異体も不定根数が減少した。MYC転写因子を不活性化するNINJAアダプターの変異体ninja においても不定根数の減少が見られたが、野生型との差は少なく、NINJAとは独立した経路が存在するものと思われ、ninjamyc2-322B 二重変異体では不定根誘導が完全に阻害された。NINJAタンパク質は芽生え胚軸で広く分布しているが、ninjamyc2-322B 二重変異体でNINJA を道管側内鞘(xpp)細胞特異的に発現させることで不定根誘導が回復した。MYC2のターゲットとなっている因子の候補としてninjamyc2-322B 二重変異体で発現量が増加しているサブグループXのERFファミリー(ERF113、ERF114、ERF115)に着目した。その結果、このERFファミリーの三重変異体rap2.6erf114Cerf115 では不定根数が増加することが判った。よって、ERF113ERF114ERF115 は冗長的に不定根誘導を制御していることが示唆される。ERF115 を過剰発現させた形質転換体は不定根数が大きく減少した。芽生えを合成オーキシンのナフタレン酢酸(NAA)処理をすると不定根の発達が促進されるが、ERF115 過剰発現系統をNAA処理しても不定根形成に殆ど効果は見られなかった。よって、ERF115 はオーキシンシグナルの下流において不定根形成に対して抑制的に作用していると考えられる。サイトカイニンは不定根の発達に対して抑制的に作用し、ERF115 過剰発現系統は野生型よりもサイトカイニン応答遺伝子ARR5ARR7 やサイトカイニン生合成関連遺伝子IPT3 の転写産物量が多く、活性型サイトカイニン含量が高くなっていた。また、ERF115 過剰発現系統へのipt3ipt5ipt7 サイトカイニン欠損三重変異の導入もしくはサイトカイニン分解酵素CYTOKININ OXIDSE1CKX1 )の過剰発現によって不定根誘導が回復した。したがって、ERF115 による不定根誘導の阻害はサイトカイニンを介してなされていると考えられる。以上の結果から、ジャスモン酸はERF115 の作用を介してサイトカイニン量を調節することで不定根形成を阻害していると考えられる。

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論文)加齢による花成へのWRKY転写因子の関与

2020-12-14 06:05:38 | 読んだ論文備忘録

WRKY transcription factors WRKY12 and WRKY13 interact with SPL10 to modulate age‐mediated flowering
Ma et al.  JIPB (2020) 62:1659-1673.

doi: 10.1111/jipb.12946

シロイヌナズナWRKY転写因子のWRKY12とWRKY13は短日条件下でのジベレリンによる花成誘導に部分的に関与しており、WRKY12は花成に対して促進的に作用し、WRKY13は抑制的に作用する。両転写因子遺伝子の発現プロファイルを見ると、WRKY12 は植物が成長するにつれて転写産物量が増加し、WRKY13 は減少していった。このことから、中国 雲南大学のYu らは、WRKY12/13は加齢による花成にも関与しているのではないかと考え解析を行なった。栄養成長から生殖成長への移行に関与しているマイクロRNAmiR156を過剰発現させた形質転換体では、WRKY12 転写産物量が減少し、WRKY13 転写産物量が増加していた。miR156はSQUAMOSA PROMOTER BINDING–LIKE(SPL)転写因子遺伝子をターゲットとしており、WRKY12/13 プロモーター領域にはSPLが結合するGTACモチーフが見られ、SPL10が直接相互作用をすることが確認された。SPL10はWRKY12 の発現を活性化し、WRKY13 の発現を抑制しており、spl2/9/10/11/13/15 六重変異体ではWRKY12 の発現が抑制され、WRKY13 の発現量が増加していた。また、miR156耐性SPL10(rSPL10)を発現させた系統ではWRKY12 の発現が誘導され、WRKY13 の発現が抑制された。rSPL10 を発現させた系統は短日条件下でも花成が促進されるが、wrky12 変異を導入するかWRKY13 を過剰発現することで促進効果が失われた。これらの結果から、WRKY12/13 はSPL10の下流で作用し、SPL10による花成制御に関与していることが示唆される。WRKY12、WRKY13はSPL10を含むSPLタンパク質と相互作用をした。SPLは加齢による花成をmiR172b の発現を制御することで調節している。miR172b プロモーター領域にはWRKY転写因子によって認識されるW-boxが含まれており、WRKY12/13が直接結合することが確認された。また、miR172b の転写はWRKY12/SLP10によって活性化され、WRKY13によって抑制された。wrky12 変異体やWRKY13 過剰発現系統での花成遅延はmiR172b の過剰発現によって部分的に改善された。一過的遺伝子発現解析の結果から、WRKY12はmiR172b プロモーター上でSPL10と複合体を形成してSPL10の転写活性化活性を増加させ、WRKY13はSPL10と相互作用をしてSPL10によるmiR172b 発現活性化を阻害することが判った。以上の結果から、WRKY12/13はSPLと物理的相互作用をしてSPLのターゲット遺伝子mir172b の発現を制御することで加齢による花成の調節に関与していると考えられる。

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論文)イネ種子発芽におけるアブシジン酸とジャスモン酸の関係

2020-12-08 21:30:51 | 読んだ論文備忘録

Abscisic acid promotes jasmonic acid biosynthesis via a ‘SAPK10-bZIP72-AOC’ pathway to synergistically inhibit seed germination in rice (Oryza sativa)
Wang et al.  New Phytologist (2020) 228:1336–1353.

doi: 10.1111/nph.16774

イネのアブシジン酸(ABA)のシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼSAPK(osmotic stress/ABA-activated protein kinase)10は、シロイヌナズナにおいてABAによる種子発芽阻害に関与しているとされるSnRK2.2、SnRK2.3、SnRK2.6との類似性が高い。中国水稲研究所(CNRRI)のZhang らは、SAPK10 過剰発現系統(OxSAPK10 )およびCRISPR/Cas9ノックアウト変異体(crsapk10 )を作出して種子発芽を観察した。crsapk10 種子の発芽はABAの有無に関係なく野生型と同等であり、SAPK10 は他のSAPK と機能重複していると考えられる。OxSAPK10 種子はABA無処理条件で野生型よりも発芽が遅れ、ABA処理によって発芽遅延がさらに強くなった。ABAによって誘導されるSAPK10の自己リン酸化が起こらないSAPK10S177Aを過剰発現させた種子のABA感受性は野生型と同等であった。Y2Hシステムスクリーニングから、転写因子のbZIP72はSAPK10と相互作用をすることを見出した。bZIP72SAPK10 は、発達中の種子で転写産物量が比較的多く、種子発芽時にABA処理によって発現誘導された。SAPK10はbZIP72のSer71をリン酸化し、SAPK10S177Aはリン酸化活性を失っていた。生体内でのbZIP72のリン酸化はABA処理によって高まり、リン酸化によってbZIP72の安定性が高まった。bZIP72 およびbZIP72 と類似性の高いTRAB1/OsbZIP66 の二重変異体bzip72/trab1 は種子発芽の際のABA感受性が失われ、bZIP72 過剰発現系統(OxbZIP72 )は発芽遅延しABA感受性が高まった。OxbZIP72 ではジャスモン酸(JA)生合成関連遺伝子LOX1LOX2AOS1AOS2AOCOPR7 の発現量が増加し、ジベレリン(GA)異化遺伝子CYP714B-1GA2ox6 の発現量が減少していた。疑似リン酸化したbZIP72S71DAOC プロモーター領域のG-boxに結合した。よって、ABAはSAPKによるbZIP72のリン酸化を誘導することでAOC の転写を促進していると考えられる。イネAOC 変異体cpm2 の種子発芽はABA感受性が低下しており、野生型よりも成長が向上していた。発芽種子胚のJA含量は、ABA処理をすることで増加した。JA生合成阻害のイブプロフェン(IBU)処理をすると、ABAによる種子発芽や発芽後成長の抑制が緩和された。また、JA受容体変異体coi1 は、種子発芽や幼苗成長におけるABA感受性が低下していた。OxSAPK10OxbZIP72 の発芽種子胚はJA含量が高く、OxSAPKS177AOxbZUIP72S71A ではJA含量の増加は低く、bzip72/trab1 二重変異体ではJA含量が低く、JA生合成関連遺伝子の発現量が低下していた。OxSAPK10OxbZIP72 の発芽や幼苗成長の遅延はIBU処理によって緩和された。以上の結果から、イネではSPAK10-bZUP72-AOC 経路によりアブシジン酸がジャスモン酸生合成を促進し、両植物ホルモンが相乗的に種子発芽を阻害していると考えられる。

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論文)不稔小穂の役割

2020-12-03 05:48:53 | 読んだ論文備忘録

Sterile Spikelets Contribute to Yield in Sorghum and Related Grasses
AuBuchon-Elder et al.  Plant Cell (2020) 32:3500-3518.

doi:10.1105/tpc.20.00424

ソルガム(Sorghum bicolor )とその近縁種の小穂は、稔実する無柄の小穂(SS)と柄のある不稔もしくは雄性の小穂(PS)の対で構成されている。小穂は花苞(包穎と護穎)で覆われており、SSからは芒が出ている。しかしながら、PSや芒にどのような機能があるのかは明らかではない。米国ドナルドダンフォース植物科学センターKellogg らは、14CO2を用いたパルス‐チェイス実験を行い、PSはSSや芒よりも多くの14Cを取り込み、PSが取り込んだ14CはSSに移行していることを見出した。同様の実験を近縁種のThemeda triandraAndropogon schirensis の小穂を用いて行ったところ、類似した結果を得た。三種の植物のPSの包頴には気孔が見られるが、SSの包頴表面や芒には気孔はなかった。これらの結果から、PSはSSに光合成で貢献している可能性が示唆される。PSは炭素同化の中間代謝産物を生産していたが、SSや芒ではそのような生産は見られなかった。光合成関連遺伝子は葉とPSで発現していたが、SSと芒では発現していなかった。PSを除去すると三種植物とも種子重量(収量)が9 %程度減少した。以上の結果から、不稔/雄性小穂は光合成を行って固定した炭素を稔実小穂に供給し、収量に貢献していることが示唆される。

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