Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)LEAFY COTYLEDON1による胚発生過程以降の成長制御

2016-01-21 05:30:37 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis LEAFY COTYLEDON1 mediates postembryonic development via interacting with PHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR4
Huang et al. Plant Cell (2015) 27:3099-3111.

doi:10.1105/tpc.15.00750

LEAFY COTYLEDON1(LEC1)は、シロイヌナズナの胚発生過程や種子成熟過程の重要な制御因子として機能している。暗所で育成したlec1 変異体芽生えは胚軸が短く、茎頂フックの屈曲が弱いことから、胚発生過程以降の発達過程にも関与していることが知られているが、詳細は明らかとなっていない。中国 華南植物園Hou らは、LEC1 は暗所での芽生えの成長制御に関与しているのではないかと考えて解析を行なった。芽生えにおけるLEC1 の発現は明所で育成した場合も暗所で育成した場合も同等であり、ロゼット葉においても弱い発現が見られた。芽生えを明所から暗所に移した際の胚軸伸長に関与する4つの遺伝子IAA19YUC8ATHB-2IAA29 の発現を野生型とLEC1 遺伝子のイントロンにT-DNAが挿入されて発現量が低下したlec1-4 変異体との間で比較したところ、野生型では4遺伝子とも劇的に発現量が増加するのに対して、lec1-4 変異体では発現量の増加が抑制されていた。また、薬剤誘導プロモーターでLEC1 を過剰発現させた芽生えにおいて胚軸の伸長と4遺伝子の発現誘導が観察された。LEC1は Nuclear Factor Y(NF-Y)転写因子に属しており、他の因子と複合体を形成して転写制御を行なっていることが推定される。暗所での胚軸伸長はフィトクロム相互作用因子(PIF)転写因子による制御を受けており、暗所での胚軸伸長に関与している4遺伝子はPIFによって直接に発現が制御されている。LEC1とPIFとの相互作用を酵母two-hybrid法で試験したところ、LEC1とPIF4との間で強い相互作用が見られ、PIF3とも弱い相互作用が見られたが、PIF1とPIF5については相互作用を示さなかった。LEC1とPIF4は核内で相互作用をすることが確認された。PIFはターゲット遺伝子のG-boxやE-boxに特異的に結合することで暗所でのの成長を促進している。LEC1とPIF4はヘテロ二量体を形成してターゲット遺伝子のG-boxに結合して転写を活性化していた。PIF4PIF3 の過剰発現個体やphyb 変異体は明所での脱黄化応答が抑制されて胚軸が伸長するが、これらにlec1-4 変異を導入すると胚軸伸長が抑制され、胚軸伸長に関与している遺伝子発現量も減少した。lec1-4 変異体ではPIF4のG-boxへの結合能力が低下していることから、LEC1はPIF4のターゲット遺伝子との親和性を高めることでPIF4による胚軸伸長を促進していると考えられる。PIF4 の機能喪失はLEC1によって誘導される胚軸伸長や胚軸伸長に関与している遺伝子との相互作用とそれらの発現を抑制した。したがって、LEC1とPIF4は胚軸伸長の制御において相互依存して機能していると考えられる。以上の結果から、LEC1はPIFのコアクティベーターとして転写調節をすることで胚発生過程以降の成長を制御していると考えられる。

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論文)サイトカイニン応答因子によるPIN遺伝子発現制御

2016-01-18 05:51:03 | 読んだ論文備忘録

Cytokinin response factors regulate PIN-FORMED auxin transporters
Šimášková et al.  Nature Communications (2015) 6:8717.

doi:10.1038/ncomms9717

サイトカイニンはオーキシン輸送に関与している構成要素の発現を調節することで細胞間オーキシン輸送に影響を及ぼしている。しかしながら、その詳細な機構は明らかとなっていない。オーストリア科学技術研究所(IST)Benkova らは、プロモーター欠失解析からPIN-FORMED 7 PIN7 )遺伝子のATG開始コドンから1423~1223 bp上流の200 bpのエレメント(PCRE7 )がサイトカイニンによる転写制御に関与していることを見出した。PCRE7 を欠いたPIN7ΔPIN7 )プロモーターは、根の中心柱細胞や側根原基での発現においてサイトカイニンに対する感受性が低下しており、前形成層やコルメラ細胞での通常時の発現活性も低下していた。正常なPIN7 プロモーター制御下でPIN7 を発現させたpin7 変異体とΔPIN7 プロモーター制御下でPIN7 を発現させたpin7 変異体の発芽7日後の芽生えの根の成長に差は見られないが、14日後になるとΔPIN7 プロモーター制御下で発現させた個体の根の方が長くなり、サイトカイニンによる根の伸長抑制、分裂組織の成長抑制、側根形成抑制が低下していた。したがって、PCRE7 を介したサイトカイニンによるPIN7 の発現制御は、適切な根の成長・発達にとって重要であることが示唆される。酵母one-hybridスクリーニングから、AP2/ERF型転写因子でサイトカイニンによって誘導されることが知られているサイトカイニン応答因子(CRF)のCRF2、CRF3、CRF6がPCRE7 と相互作用をする因子として選抜された。また、一過的発現試験から、CRF2とCRF6はPIN7 の発現を活性化することが確認された。CRF3はPIN7 の発現を活性化しなかったが、CRF3とCRF6を同時に発現させるとCRF6による発現活性化が抑制された。CRFsによるΔPIN7 プロモーターの発現活性化はほとんど見られないことから、CRFsはPIN7 遺伝子のプロモーター領域の特異的ドメインと相互作用をすることでPIN7 の転写調節をしていると考えられる。PIN1 遺伝子についてもPIN7 遺伝子と同様の試験を行ない、プロモーター領域にサイトカインによる発現制御に関与しているエレメントPCRE1 が見出され、この領域とCER2、CRF6が相互作用をして発現を活性化することが確認された。したがって、PIN1PIN7 はサイトカイニンにより発現制御される共通の機構を有していることが示唆される。PCRE1PCRE7 はAP2/ERFファミリー転写因子が結合するとされるGCC ボックスを含んでいないが、PCRE1PCRE7 内の特定のモチーフとCRF2、CRF6が相互作用をすることが確認された。CRF2CRF6 を過剰発現させることで前形成層でのPIN7 発現量が増加したが、CRF3 の過剰発現ではそのような変化は見られなかった。crf3 変異体、crf2crf3crf6 三重変異体ではPIN7 の発現が低下していたが、crf6 変異体では増加していた。同様に、CRF2 の過剰発現によってPIN1 の発現量が増加し、crf2crf3crf3crf6crf2crf3crf6 の各変異体でPIN1 の発現量が減少してcrf6 変異体では増加していた。これらの結果から、CRFsはPIN7 およびPIN1 の発現をそれぞれに特異的な機能によって調節していると考えられる。crf3crf6 変異体の根端のオーキシン含量は野生型よりも高くなっていた。crf2crf3crf3crf6 の各変異体の胚は異常な分裂により欠陥の見られるものが数多くあった。crf6 変異体は、PIN7 の発現量が高く、根が野生型よりも長く、根端分裂組織が大きなっていた。したがって、CRF活性の変化によって根端のオーキシン蓄積に変化が生じ、様々な形態変化が引き起こされていると考えられる。サイトカイニンは根の伸長、根端分裂組織の大きさ、側根の誘導・発達を抑制することが知られているが、CRFs の機能喪失も過剰発現も根の成長におけるサイトカイニンに対する応答性に大きな変化は見られなかった。しかし、crf3crf3crf6crf2crf3crf6 の各変異体、CRF2CRF3CRF6 の過剰発現個体では根端分裂組織のサイトカイニン応答性が低下していた。また、crf3crf3crf6crf2crf3crf6 の各変異体とCRF2CRF6 の過剰発現個体は側根の誘導・発達におけるサイトカイニン応答性が低下していた。これらの結果から、CRFsによるオーキシン輸送の調節はサイトカイニンとオーキシンによる根の成長・発達の微調整を行なっていると考えられる。

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論文)MAPKによる器官サイズの制御

2016-01-12 05:35:54 | 読んだ論文備忘録

OsMAPK6, a mitogen-activated protein kinase, influences rice grain size and biomass production
Lin et al. The Plant Journal (2015) 84:672-681.

doi:10.1111/tpj.13025

中国科学院 遺伝与発育生物学研究所Chen らは、ジャポニカイネZhonghua11の突然変異体dwarf and grain1dsg1 )を単離した。dsg1 変異体は、全ての節間が均一に短くなって矮化し、葯や籾を含めて生殖器官が小型して籾千粒重が減少していた。dgs1 変異体の各器官の細胞の大きさは野生型と同等であることから、この変異体は細胞分裂の異常によって各器官の細胞数が少ないために矮化していると考えられる。dsg1 変異体では細胞周期を正に制御するCYCD4;1 の発現量が減少しており、DGS1 は細胞分裂の制御に関与していることが示唆される。マップベースクローニングの結果、dsg1 変異体ではOs06g0154500 遺伝子の第6エクソンに1塩基欠損があり、フレームシフトにより未成熟終始を起こしていた。DSG1 はMAPKをコードしており、シロイヌナズナのAtMAPK6との類似性が高いことから、OsMAPK6 と命名した。OsMAPK6 は調査した全ての器官で恒常的に発現しており、特に小穂や小穂外皮での発現が強くなっていた。酵母two-hybridアッセイの結果、OsMAPK6はOsMKK4と強い相互作用を示し、OsMKK6とも弱い相互作用を示した。よって、OsMAPKK4がOsMAPK6の上位に位置していると考えられる。dsg1 変異体は、葉が直立し、葉色が濃く、矮性で籾が小さいことからブラシノステロイド(BR)関連の変異体と表現型が類似している。そこで、dsg1 変異体のBR応答性を試験したところ、dsg1 変異体はBR感受性が低下していることがわかった。このことから、OsMAPK6 はBRシグナル伝達に関与しているのではないかと考え、dgs1 変異体のBR関連遺伝子の発現量を調査したところ、OsBAK1OsMPD1OsLIC の発現量が減少し、OsILI1 の発現量が増加していた。したがって、dsg1 変異体はこれらの遺伝子の転写産物量が変化したことによってBR感受性が低下したものと考えられる。dsg1 変異体では内生BR量が減少しており、BRによるフィードバック阻害を受ける遺伝子の発現に異常が見られた。以上の結果から、OsMAPK6はブラシノステロイドのシグナル伝達やホメオスタシスに関与することで細胞分裂を制御して器官の大きさを調節していると考えられる。

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論文)ジャスモン酸シグナルによるクロロフィルの分解

2016-01-08 23:37:41 | 読んだ論文備忘録

Jasmonic acid promotes degreening via MYC2/3/4- and ANAC019/055/072-mediated regulation of major chlorophyll catabolic genes
Zhu et al. Plant Journal (2015) 84:597-610.
DOI:10.1111/tpj.13030

急速なクロロフィルの分解による脱緑は、緑色器官の老化や成熟において特徴的に見られる現象である。Phosphorbide a oxygenase 遺伝子(PAO )はクロロフィル分解の鍵酵素をコードしているが、この遺伝子の転写制御機構については明らかとなっていない。中国 復旦大学Kuai らは、酵母one-hybrid(Y1H)スクリーニングによって、シロイヌナズナPAO 遺伝子プロモーター領域とMYC2、MYC3、MYC4が強く相互作用をすることを見出した。MYC2/3/4はジャスモン酸(JA)シグナル伝達に際してG-boxと呼ばれる6-merのコアモチーフからなるDNA配列に結合することが知られているが、PAO 遺伝子のプロモーター領域にもG-boxモチーフが存在し、MYC2/3/4が相互作用を示すことが確認された。JAは成熟したシロイヌナズナの葉の脱緑を促進することが知られている。MYCs 遺伝子の機能喪失変異体はJA処理をしても野生型よりも葉の緑色が維持されることから、MYCsはJAによるクロロフィル分解に関与していると考えられる。PAO 転写産物量はJA処理によって増加するが、myc2 myc3 myc4 三重変異体ではそのような変化は見られず、MYC2/3/4 過剰発現系統ではJA処理によるPAO 転写産物量の増加とクロロフィル含量の減少が高まった。したがって、MYC2/3/4はJAが誘導るするクロロフィル分解においてPAO の発現を正に制御していることが示唆される。PAO以外のクロロフィル異化遺伝子(CCG )のNYE1NYE2NYC1PPH はJA処理によって転写産物量が増加し、myc2 myc3 myc4 三重変異体やcoi1-1 変異体ではそのような変化は見られなかった。よって、MYCsはPAO 以外のCCGs の発現も正に制御していることが示唆される。NYE1NYC1 のプロモーター領域にはG-boxが存在し、MYC2が両遺伝子のプロモーター領域と相互作用をすることが確認された。したがって、MYC2/3/4は、PAO 以外にもNYE1NYC1 の発現も活性化することでJAの誘導するクロロフィル分解に関与していることが示唆される。NACファミリー転写因子をコードするANAC019ANAC055ANAC072 はJA処理によって転写が誘導されるが、myc2 myc3 myc4 三重変異体ではそのような誘導は見られず、ANAC019 はMYC2の直接のターゲットとなっていた。anac019 anac055 anac072 三重変異体は、JA処理をしても葉の緑色が維持され、NYE1NYE2NYC1PPHPAO の発現誘導も見られなかった。NYE1NYE2NYC1 のプロモーター領域にはANAC019/055/072が結合する配列が見られ、実際に相互作用をすることが確認された。MYCsとANACsは、NYE1 およびNYC1 のプロモーター領域のほぼ同じ領域に対して相互作用を示し、MYC2とANAC019は生体内において相互作用をすることが確認された。一過的供発現アッセイから、MYC2とANAC019はNYE1 の発現を相乗的に増幅させることが確認された。以上の結果から、MYC2/3/4はANAC019/055/072と相乗的に作用してジャスモン酸によるクロロフィル分解酵素遺伝子の発現誘導を直接に制御していると考えられる。

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論文)CONSTANSタンパク質のリン酸化

2016-01-06 21:15:55 | 読んだ論文備忘録

Phosphorylation of CONSTANS and its COP1-dependent degradation during photoperiodic flowering of Arabidopsis
Sarid-Krebs et al. The Plant Journal (2015) 84:451-463.

doi: 10.1111/tpj.13022

CONSTANS(CO)転写因子は、長日条件での花成を促進する因子として機能している。ドイツ マックス・プランク植物育種学研究所Coupland らは、35Sプロモーター制御下で恒常的にCO を発現させたシロイヌナズナ粗抽出液をウェスタンブロッティングに供試し、移動度の異なる2つのタイプのCOタンパク質を見出した。この2つのタイプのCOタンパク質は、COSUC2 プロモーター制御下で師部コンパニオン細胞特異的に発現させても、CO プロモーター制御下で本来の発現部位で発現させても観察された。粗抽出液をλフォスファターゼ処理することで移動度の低いCOタンパク質が消失すること、in vivo ラベリング試験で移動度の低いCOタンパク質が[γ-32P]ATPで標識されることから、移動度の低いCOタンパク質は生体内でリン酸化されたものであると考えられる。COの暗所での分解にはCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC 1(COP1)E3ユビキチンリガーゼが関与している。リン酸化型COはCOP1が活性化された暗所において急速に分解されたが、cop1-4 変異体ではそのような分解促進は見られなかった。したがって、COP1は暗所でのリン酸化型COの急速な分解に関与していることが示唆される。光受容体は長日条件でのCOタンパク質量の増加に関与していることが知られている。phyA cry1 cry2 三重変異体は野生型よりも花成が遅延するが、phyA cry1 cry2 cop1-4 四重変異体は野生型やphyA cry1 cry2 三重変異体よりも早く花成し、cop1-4 単独変異体と同等になった。また、FLOWERING LOCUS TFT )mRNA量が、cop1-4 変異体と同様に、大きく増加していた。したがって、cop1-4 変異はFT 転写産物量の制御において光受容体の変異よりも上位にあると考えられる。phyA cry1 cry2 三重変異体ではCOタンパク質量が減少しており、リン酸化型COは非リン酸化型COよりも大きく減少していた。phyA cry1 cry2 cop1-4 四重変異体では2つのタイプのCOタンパク質とも大きく増加していた。したがって、光受容体はCOP1の活性を抑制してリン酸化型CO量を間接的に増加させていると考えられる。COタンパク質は赤色光下においてもPHYBによって活性化された経路を介して分解されるが、この分解においてもリン酸化型COが優先的に分解された。また、青色光照射はCOタンパク質を安定化させるが、その際にはリン酸化型COの量が増加した。COタンパク質は、N末端側のジングフィンガーB-boxドメイン、中央領域、C末端側のCCTドメインの3つのドメインで構成されており、CCTドメインはCOP1との相互作用に関与していることが知られている。CCTドメインを含むC末端側領域(297-373 aa)を恒常的に発現させたが、明所と暗所で量的な差は見られず、暗所での分解は見られなかった。よって、CCT領域を含むC末端領域だけでは暗所での分解には不十分であると思われる。しかしながら、リン酸化はこの領域で起こっていることが確認され、実際にリン酸化されうるアミノ酸残基がこの領域内に存在していた。したがって、COタンパク質のC末端領域はリン酸化部位を含んでいるが、暗所での分解においてはこの領域だけでは不十分であると考えられる。以上の結果から、COタンパク質のリン酸化は、COP1ユビキチンリガーゼ活性を介したCOタンパク質の代謝回転を高めることで日長に応答した花成制御に関与していることが示唆される。

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