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Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)オトメスミレ

2025-05-04 10:20:57 | 植物観察記録

オトメスミレ(乙女菫)
Viola grypoceras A.Gray f. purpurellocalcarata (Makino) Hiyama ex F.Maek. 
キントラノオ目スミレ科スミレ属

タチツボスミレ(V. grypoceras)の白色種で、花弁が白色または微かに紫色のかげりがあり、距だけが紫色を帯びる。距まで完全に白いものはシロバナタチツボスミレ(V. grypoceras f. albiflora)として区別される。牧野富太郎博士が箱根乙女峠で記載したもので、箱根に多いが、他にも広く生育地が知られている。

乙女峠は、静岡県御殿場市と神奈川県足柄下郡箱根町の境に位置する箱根外輪山にある峠の名称。箱根仙石原に住んでいた親思いの「とめ」という名前の娘が、病に苦しむ父を助けるため、毎夜御殿場竹之下の地蔵尊に祈願の参拝にこの峠を越し、満願となった日に娘は父の身代りとなってこの峠で倒れたという悲話によって乙女峠と呼ばれるようになったという伝承が残ってる。牧野先生がこの伝承を知っていたかわからないが、白い花と薄紫の距が乙女を連想させる和名だ。

 

2025年5月1日 神奈川県箱根三国山

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植物観察)ヤセウツボ

2025-04-30 09:28:54 | 植物観察記録

私が散歩道で出会うヤセウツボ(Orobanche minor ; ゴマノハグサ目ハマウツボ科ハマウツボ属)は、大抵ムラサキツメクサ(Trifolium pratense ; マメ目マメ科シャジクソウ属)を宿主としているが、今回見かけたヤセウツボはドクダミ(Houttuynia cordata ; コショウ目ドクダミ科ドクダミ属)の中に生えていた。他の草はないかと株元を探ってみたが、ムラサキツメクサやマメ科の草はなかった。調べてみると、ヤセウツボは、マメ科、キク科、セリ科の植物に寄生するとのこと。寄生された植物は栄養を吸収されて矮小化するので、確認できなかったマメ科植物が近くにあったのだろうか。この後、ヤセウツボが枯れたら宿主の生長が回復してドクダミの中から出現するかもしれない。それともドクダミが宿主となっているのか?何かご存じの方がいらっしゃましたらご教示ください。

 


2025年4月29日 神奈川県横須賀市走水

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植物観察)シロノヂシャ

2025-04-16 09:53:53 | 植物観察記録

シロノヂシャ(白野萵苣)
Valerianella radiata(synonym Valeriana woodsiana
マツムシソウ目スイカズラ科ノヂシャ属

北アメリカ原産の1年生または越年生の草本。茎は柔らかく、直立して二分枝し、茎頂に頭状に固まった集散花序を出し純白の花を付ける。葉はへら形で茎の節ごとに2枚ずつ対生する。花冠は漏斗状で、先は不同に5裂し、裂片は楕円形で先は円い。1993年に神奈川県綾瀬市深谷厚木飛行場附近で採集され、その後も県内各地で採集されている。外観はヨーロッパ原産の外来種ノヂシャ(Valerianella locusta)と似ているが、ノヂシャの花が淡青色であるのに対してシロノヂシャの花は純白で、果実の形も異なる。
古い図鑑ではノヂシャ属はオミナエシ科(Valerianaceae)となっているが、APG植物分類体系からオミナエシ科はスイカズラ科(Caprifoliaceae)に統合された。

 

2025年4月14日 神奈川県横須賀市三春町

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植物観察)ヒゲスゲ

2025-03-22 10:08:34 | 植物観察記録

ヒゲスゲ(鬚菅)
Carex wahuensis var. robusta
Carex oahuensis var. robusta
Carex boottiana
イネ目カヤツリグサ科スゲ属
別名:イソスゲ(磯菅)

海岸の岩場や砂地に生える強壮で常緑の多年生草本。匐枝がなく、葉が多数密に集まって叢生し大きな株をつくる。葉は硬くて光沢があり、花茎より長く伸び、深緑色で葉幅は5-10mm、縁はざらつきがあり、外側に反る。花序は頂小穂が雄性、下方に2-4個ある側小穂は原則的に雌性で、まれに先端部に雄花を着けることがある。雌花の鱗片の先端は長い芒となり、果胞は倒卵形。本州の太平洋岸では千葉県、日本海側では石川県より南、四国、九州、対馬、南西諸島、伊豆諸島、小笠原諸島に分布。小笠原諸島では山中でも見られる。神奈川県内では三浦半島、江ノ島、真鶴などで見られるが少ない。

3月13日に観察した時、ちょうど頂小穂の雄花が開花(葯が裂開?)したところらしく、穂をゆすると多量の花粉が舞った。1週間後の3月20日に再び見たところ、頂小穂の花粉は無くなり、側小穂の雌花鱗片が大分大きくなっていた。

 

2025年3月13日、20日 神奈川県横須賀市観音崎公園

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植物観察)オカメザクラ

2025-03-08 08:35:01 | 植物観察記録

オカメザクラ(おかめ桜、阿亀桜)
Cerasus x incam ‘Okame’ syn. Prunus x incam cv. Okame
バラ目バラ科サクラ属

英国の鳥類学者、植物収集家、庭師で、日本の桜の権威であるCollingwood Ingramが、マメザクラ(豆桜 Cerasus incisa var. incisa)にカンヒザクラ(寒緋桜 Cerasus campanulata)の花粉を受粉して作出した栽培品種。幹は灰紫褐色、横長の皮目がある。葉は小さく、楕円形か長楕円形。花は淡い紅色の一重咲きで、マメザクラと同じように下を向く。早咲き多花性で花期は2月下旬から3月上旬ごろ。大量の花粉を出すが、雑種であるため果実はほとんどできない。地域によるがソメイヨシノより早くに開花する。樹が大きくならないので鉢植えや庭木として広く普及している。

東京都中央区日本橋本町・室町の「あじさい通り」は、約700mのオカメザクラ並木が続いている。神奈川県小田原市根府川地区ではオカメザクラを中心に桜の里作りで地域活性化に取り組んでいる(根府川おかめ桜まつり)。

 

2025年3月6日 東京都中央区日本橋室町

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植物観察)カンヒザクラ

2025-02-22 10:45:36 | 植物観察記録

カンヒザクラ(寒緋桜)
Cerasus campanulata
バラ目バラ科サクラ属
別名:ヒカンザクラ(緋寒桜)

中国南部、台湾原産の落葉低木。樹皮は暗紫褐色で横筋があり、横に並ぶ皮目がある。花は中輪の一重咲きで、釣り鐘状の下向きに閉じたような半開きの形で咲き、濃い紫紅色の花弁を付ける。花弁はばらばらに散らずにがくごと落ちる。

私が学生の頃、「サクラ属」は「Prunus」であったが、現在では「Prunus」は「スモモ属」で、「サクラ属」は「Cerasus」とするのが主流のようだ。サクラ類をサクラ属(Cerasus、狭義のサクラ属)に分類するか、スモモ属(Prunus、広義のサクラ属)に分類するかは、国や時代で相違があり、現在では両方の分類が使われている。ロシア、中国、日本ではヤマザクラやセイヨウミザクラなどの100種をサクラ属(Cerasus)として分類するのが主流で、西欧や北米では各種サクラとスモモ、モモ、ウメ、ウワミズザクラなど約400種を一括してスモモ属(Prunus)として分類するのが主流となっている。これは、比較的サクラ類の多いロシアや中国ではサクラ類を独立した属として分類していたのに対し、サクラ類の少ない西欧と北米ではサクラ類をスモモやモモやウメなどと一括して分類していたためである。日本の科学は西欧や北米の基準に合わせる事が多かったため従来はサクラ類をスモモ属(Prunus)としていたが、1992年の大場秀章氏の論文(J. Jpn. Bot. 67: 276-281.)発表以降は、実態に合ったサクラ属(Cerasus)表記が主流となっているようだ。

沖縄では冬期の低温刺激が弱いためソメイヨシノはうまく生育せず、「サクラ」と言えばカンヒザクラを指す。沖縄気象台では那覇市末吉公園の「ヒカンザクラの標本木」を開花発表の目安(5輪以上)としている(沖縄気象台は「カンヒザクラ」を「ヒカンザクラ」と表記)。今年(2025年)は、平年より11日早く1月5日に開花宣言が出たが、満開となる前に葉桜となってしまい、「満開の知らせなし」となった。「満開宣言なし」は48年ぶりの珍事。ただ、周辺のサクラは満開となっていることから標本木に何らかの原因があるのかもしれないとのこと。一方で、石垣島や南大東島の標本木でも同様の事象が起こっているらしい。

 

2025年2月18日 沖縄県那覇市首里城公園

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植物観察)ナンキョクブナ

2025-02-16 10:34:35 | 植物観察記録

パタゴニア絶景トレッキングツアー(2025年 1/23~2/3)で見た植物⑥

ナンキョクブナ(南極橅)
Nothofagus antarctica(Ñire)
Nothofagus pumilio(Lenga)
ブナ目ナンキョクブナ科ナンキョクブナ属

ナンキョクブナ科(Nothofagaceae)は、ナンキョクブナ属(Nothofagus)のみの単型科で、南アメリカ大陸南部(チリ、アルゼンチン)、オーストラリア東部および南東部、ニュージーランド、ニューギニア、ニューカレドニアに43種が分布している。南極大陸には現生しないが、化石が発見されている。ブナ科(北半球中心に分布)に似ており、かつてはブナ科に含められたこともあるが、分子系統的には近縁ながら別系統であるため、APG植物分類体系でも別科としている。現地ガイドの話では、「パタゴニアの森にはÑire(Nothofagus antarctica)とLenga(Nothofagus pumilio)の2種類のナンキョクブナが生えており、Ñireは樹の幹が曲がっているが、Lengaは真直ぐ直立している」と言っていた。確かに樹形の異なる2種類のナンキョクブナが生えていたが、両者の葉の形態に差異は見つけられなかった。

ナンキョクブナ属の「Nothofagus」はラテン語で「偽のブナ」属という意味である。ナンキョクブナ属の命名者のカール・ルートヴィヒ・ブルーメ (Carl Ludwig Blume)は、「南のブナ」属(Notofagus)と命名するつもりだったが、何らかの間違いで発表文献において"t"と"o"の間に"h"が入ってしまい「Nothofagus」になったとされている。ちなみに、Notofagus 属の英名は「Southern beech(南のブナ)」であり、和名も「ナンキョクブナ」。

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植物観察)Azorella trifurcata(Nana)

2025-02-15 09:16:27 | 植物観察記録

パタゴニア絶景トレッキングツアー(2025年 1/23~2/3)で見た植物⑤

Azorella trifurcata(Nana)
セリ目セリ科Azorella

 扁平なマットを形成し、直径は大きいもので数メートルに達する生育の緩やかな多年生の常緑植物。葉は濃緑色で光沢があり、互生、披針形から卵形の3つの線状裂片があり、通常は鋭角。夏に小さな房状の黄色い花を咲かせる。Azorella 属は、南アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア南東部、南洋の島々に自生しており、山地や亜南極の海岸の露出度の高い場所に生育する低生長の矮性クッション植物。いくつかの種はロックガーデンの観賞用植物として栽培されている。

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植物観察)Embothrium coccineum(Notro、Ciruelillo、Chilean firetree)

2025-02-14 07:59:49 | 植物観察記録

パタゴニア絶景トレッキングツアー(2025年 1/23~2/3)で見た植物④

Embothrium coccineum(Notro、Ciruelillo、Chilean firetree)
ヤマモガシ目ヤマモガシ科Embothrium

チリとアルゼンチンの温帯林に生育する常緑樹。高さ4~15m、直径50cmに達する。樹皮は濃い灰色に明るい斑点があり、木部は淡いピンク色。葉は革のようで互生し、大きさ、形は変異があり、狭披針形から卵形で無毛。春に深紅色(時に淡黄色)の房状の花を咲かせ、先端が4つに反り返り、柱頭が突き出る。果実は乾燥した卵胞で、中に10粒ほどの種子が入っている。非常に変異の多い種であり、花の形態や色だけでなく、特に習性や葉の形にも大きな変異がある。パイオニア種として発生し、攪乱後の植生の隙間に植生することが多い。ヤマモガシ科は、南米、南アフリカ、インド、オーストラリア、ニューカレドニア、ニュージーランドなどかつてのゴンドワナ大陸に分布していることから、本科はゴンドワナ大陸で発展した「ゴンドワナ植物」と考えられる。

 

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植物観察)Berberis microphylla(Calafate)

2025-02-13 08:56:42 | 植物観察記録

パタゴニア絶景トレッキングツアー(2025年 1/23~2/3)で見た植物③

Berberis microphylla(Calafate)
キンポウゲ目メギ科メギ属

アルゼンチン南部とチリに自生し、パタゴニアのシンボルとなっている常緑低木。ボックスリーフ・バーベリー(box-leaved barberry)、マゼランバーベリー(Magellan barberry)、スペイン語ではカラファテ(calafate)、ミカイ(michay)などと呼ばれる。アルゼンチン サンタ・クルス州のアルヘンティーノ湖に面した風光明媚な町エル・カラファテ(El Calafate)の町の名は、この植物に由来する。高さは1.0~1.5メートル、多くのアーチ状の枝があり、それぞれが多くの三節棘で覆われている。春に黄橙色の花を咲かせ、秋には青黒い実をつける。食用の青黒い実はジャム用に収穫されるが、生食もされる。カラファテの実を食べた者は必ずパタゴニアに戻ってくるという伝説がある。

 

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