Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)エチレンとアブシジン酸のクロストークに関与するACC合成酵素

2011-10-30 18:06:36 | 読んだ論文備忘録

Loss of ACS7 confers abiotic stress tolerance by modulating ABA sensitivity and accumulation in Arabidopsis
Dong et al.  Journal of Experimental Botany (2011) 62:4875-4887.
doi:10.1093/jxb/err143

シロイヌナズナにはエチレン生合成の鍵酵素であるACCシンターゼ(ACS)をコードする遺伝子が9つ(ACS124 -911 )あり、ACSタンパク質はC末端領域の違いから3種類に分類される。タイプ1 ACSはC末端が長く、カルシウム依存タンパク質キナーゼ(CDPK)リン酸化部位が1箇所、マイトジェン活性タンパク質キナーゼ(MAPK)リン酸化部位が3箇所ある。タイプ2 ACSはCDPKリン酸化部位が1箇所あり、タイプ3 ACSはC末端が短く、リン酸化部位が存在しない。シロイヌナズナタイプ3 ACSのACS7 は植物の成長・発達過程の様々な局面で発現しており、エチレン、アブシジン酸(ABA)、ジベレリン(GA)といった植物ホルモンや光、塩といった環境要因によって発現が制御されていることが知られている。中国 南開大学のWang らは、ACS7の機能を解析するために、T-DNA挿入acs7 変異体を用いて様々な解析を行なった。acs7 変異体黄化芽生えのエチレン生成量は野生型の1/3程度であり、AtACS7は黄化芽生えのエチレン生成において重要であると考えられる。ACS 遺伝子の発現はエチレンによるフィードフォワード制御を受けていることから、acs7 変異体における他のACS 遺伝子の発現を見たところ、殆どのACS 遺伝子の発現量が低下しており、特にACS7とヘテロ二量体を形成するACSをコードする遺伝子の発現量低下が大きかった。また、エチレン応答遺伝子の発現量も低下していた。acs7 変異体は種子発芽が野生型よりも僅かに早く、子葉や本葉が大きくてクロロフィル含量が高く、一次根の伸長も早くなっていた。acs7 変異体芽生えは高温(43℃)に対する耐性があり、高温処理による熱ショック転写因子(HSF)、熱ショックタンパク質(HSP)やエチレンシグナルの上流において高温耐性を制御している転写コアクチベーターのMBF1cをコードする遺伝子の発現誘導が野生型よりも早くなっていた。エチレンはシロイヌナズナの塩耐性を高めることが知られており、etr1-1ein4-1ein2-1 といったエチレンシグナル経路が欠損した変異体は塩に対する感受性が高くなるが、acs7 変異体は野生型よりも塩耐性や浸透圧耐性が高くなっていた。acs7 変異体では、液胞膜に局在するナトリウムイオン-水素イオンアンチポーターをコードするNHX1 や浸透圧ストレス応答遺伝子の発現を誘導する転写因子をコードするDREB2A の塩処理による発現量の増加が野生型よりも早く、このことがacs7 変異体の塩耐性に関連していると思われる。また、ABAによって発現が制御されるRD29ARD29BRAB18MYC2RD22 やABA生合成の鍵酵素をコードするNCED3 の塩処理による発現誘導量が野生型よりも高くなっていた。acs7 変異体は塩ストレス下での内生ABA量が野生型よりも高く、ABA生合成の阻害剤であるノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)処理をすると塩ストレスに対する感受性が野生型よりも高くなった。以上の結果から、ACS7 の機能喪失による塩ストレス耐性の向上は、ABAに関連したストレス応答経路の促進と内生ABA量に増加によるものと考えられる。acs7 変異体種子は通常の条件では野生型よりも早く発芽するが、ABAを添加した培地では発芽が野生型よりも遅くなった。また、acs7 変異体芽生えでは、ABA処理によって蓄積量が増加するプロリンや可溶性糖類の量が通常の栽培条件下でも野生型よりも高くなっており、プロリン生合成の鍵酵素をコードするP5CS1 の発現量も増加していた。acs7 変異体ではABAの異化に関与しているCYP707A2 の発現量が低く、ABA生合成に関与するABA1ABA2NCED3ABA3AAO3 の発現量がわずかに高くなっていた。以上の結果から、ACS7 はストレス条件下でのABA感受性やABA蓄積に対して負の制御因子として機能し、エチレンとABAのクロストークに関与しているものと考えられる。

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論文)サイトカイニンシグナル伝達に関与するAP2/ERF型転写因子

2011-10-26 21:33:04 | 読んだ論文備忘録

CRFs form protein-protein interactions with each other and with members of the cytokinin signalling pathway in Arabidopsis via the CRF domain
Cutcliffe et al.  Journal of Experimental Botany (2011) 62:4995-5002.
doi:10.1093/jxb/err199

サイトカイニンのシグナル伝達は、シロイヌナズナ等を用いた研究から、受容体ヒスチジンキナーゼ(AHK)、リン酸基転移メディエーター(AHP)、タイプAおよびタイプBレスポンスレギュレーター(ARR)からなるリン酸リレー系の情報伝達によってなされることが知られている。これとは別にAP2/ERF型転写因子のサイトカイニン応答因子(CRF)が情報伝達に関与していることが報告されており、CRFはAHPの下流に位置し、おそらくタイプB ARRと並行して機能していると考えられている。米国 オーバーン大学Rashotte らは、シロイヌナズナの8つのCRFタンパク質がホモ二量体とヘテロ二量体の両方の形状をとりうることをプロトプラストを用いた蛍光タンパク質再構成(BiFC)アッセイと酵母two-hybrid(Y2H)アッセイによって確認した。ただし、BiFCアッセイではCRFの全ての組み合わせで相互作用が確認できたが、Y2Hアッセイでは相互作用の確認されなかった組み合わせがあった。このことから、CRF-CRF相互作用には、実際に機能しているリン酸リレー系の存在かCRFタンパク質の植物特異的な転写後修飾といった酵母の系には存在しない要因が関与しているものと思われる。CRFタンパク質には、中央部分にAP2/ERF DNA結合ドメイン、N末端側に機能未知のCRFドメイン、C末端側にMAPKリン酸化サイトモチーフが含まれている。CRF1~CRF6タンパク質にはこれら3つのドメイン・モチーフが含まれているが、CRF7(At1g22985.1)とCRF8(At1g71130.1)は他のCRFタンパク質よりもC末端が短く、MAPKリン酸化モチーフが含まれていない。しかし、CRF7とCRF8はホモ二量体を形成し、他のCRFタンパク質とヘテロ二量体を形成する。よって、MAPKリン酸化モチーフを含むC末端領域はCRF-CRF相互作用に必須ではないと考えられる。CRF2タンパク質を欠損させてCRFドメインのみとしたポリペプチド(CRFD)もホモ二量体を形成し、完全長CRF2を含む他のCRFタンパク質とヘテロ二量体を形成することから、AP2/ERFドメインは二量体形成に必須ではなく、CRFドメイン単独であってもCRF-CRF相互作用を示すことがわかった。CRFタンパク質とサイトカイニンシグナル伝達リン酸リレー系との関係を見るために、CRF1~6タンパク質とAHK2、3、AHP1~5、タイプA ARR5、7、タイプB ARR10、12との相互作用を見たところ、CRF2、3とAHP2の組み合わせ以外のCRFタンパク質とAHPタンパク質との相互作用が確認され、CRFタンパク質は直接サイトカイニンシグナル伝達経路に関連していることが示された。多くのCRFタンパク質はタイプA ARRとは相互作用を示さなかったが、ARR7とCRF1、2との相互作用は検出された。タイプB ARRに関しては、ARR12とCRF1、2、ARR10とCRF6との間の相互作用が確認された。MAPKモチーフのないCRF7、CRF8もAHP1~4と相互作用を示し、CRF2のCRFモチーフのみで構成されたCRFDもAHP1~5およびARR7と相互作用を示した。よって、CRFドメイン自身がサイトカイニンシグナル伝達リン酸リレー系タンパク質との相互作用に関与していると考えられる。

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論文)FLOWERING LOCUS T による塊茎形成誘導

2011-10-24 22:37:06 | 読んだ論文備忘録

Control of flowering and storage organ formation in potato by FLOWERING LOCUS T
Navarro et al.  Nature (2011) 478:119-122.
doi:10.1038/nature10431

ジャガイモの塊茎形成は短日条件や低温によって誘導される。日長は葉で感知され、移動性のシグナル因子(塊茎形成因子、チューベリゲン)が合成されて地下茎へ輸送され、塊茎形成が起こるとされている。スペイン 国立バイオテクノロジーセンター(CNB)Prat らは、イネのFLOWERING LOCUS T(FT)のオーソログであるHd3aとGFPの融合タンパク質をrolC プロモーター制御下で絶対的短日型のジャガイモAndigenaで発現させ、この形質転換体は長日条件でも塊茎が形成されることを見出した。野生型植物との接木試験を行なったところ、接ぎ穂、台木のどちらかがHd3a を発現していれば塊茎を形成し、Hd3a の接ぎ穂を接いだ野生型の台木の匍匐枝においてHd3a-GFPタンパク質が検出された。ジャガイモのFT ホモログ遺伝子のうちStSP6A の発現は塊茎形成と強い相関が見られ、短日条件に置かれた野生型植物や、恒常的に塊茎形成するフィトクロムBアンチセンス系統の葉や匍匐枝において発現していた。StSP6A 過剰発現系統は長日条件でも塊茎形成して花成が誘導され、StSP6A を発現抑制した系統では短日条件での塊茎形成に遅れが見られた。塊茎形成が早生(Jaerla)、晩生(Baraka)、中性(Kennebec)のジャガイモ栽培品種におけるStSP6A の発現量を調査したところ、それぞれの品種においてStSP6A 転写産物の蓄積と塊茎形成に相関が見られた。よって、このFT パラログは塊茎形成制御に関与していると考えられる。中性植物であるトマトの花成はFT -ホモログのSFT /SP3D 遺伝子によって制御されており、この遺伝子の発現はCONSTANS(CO) や日長による制御を受けていないことが知られている。ジャガイモのSFT /SP3D オーソログであるStSP3D をRNAiによって発現抑制した系統は花成に遅れが見られたが、短日条件での塊茎形成は野生型と同じ時期に起こった。したがって、StSP3D は花成には関与しているが塊茎形成には関与していないことが示唆される。花性および塊茎形成の制御に関与しているこの2つのFT パラログは、発現プロファイルの変化を通して進化してきたと考えられ、シロイヌナズナのco-1 変異体やft-1 変異体でStSP6A を発現させると花成遅延の表現型に回復が見られた。StSP6A は葉だけでなく塊茎形成過程にある匍匐枝においても発現しており、葉と比較して匍匐枝での発現時期には遅れが見られる。よって、輸送されたStSP6Aタンパク質による自動調節ループが存在しているものと思われる。Hd3a を発現している接ぎ穂をStSP6A を発現抑制した台木に接いだ場合、野生型の台木に接いだものより塊茎形成が遅れ、塊茎数も減少した。これはシグナルの増幅が損なわれたことによるものであると考えられ、接ぎ穂から供給されるHd3aタンパク質によりStSP6A 発現抑制台木での塊茎形成は完全には失われなかった。イネのHd1タンパク質と同様に、StCOは長日条件下でのStSP6A の発現を抑制していた。また、StSP6A を過剰発現させた接ぎ穂をStCO を過剰発現させた台木に接ぐと、匍匐枝でのStSP6A の発現が抑制された。よって、StCOは匍匐枝でのStSP6A 発現の自動調節ループを制御していると考えられる。FTが塊茎形成のスイッチとして機能するという今回の知見は、FTは花成以外の形態形成も制御しうる移動性のシグナル物質であることを示唆している。

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論文)光シグナルによる根粒形成の制御

2011-10-20 20:07:19 | 読んだ論文備忘録

Lotus japonicus nodulation is photomorphogenetically controlled by sensing the red/far red (R/FR) ratio through jasmonic acid (JA) signaling
Suzuki et al.  PNAS (2011) 108:16837-16842.
doi: 10.1073/pnas.1105892108

多くのマメ科植物は窒素固定菌と共生し、共生の場として根に根粒を形成する。根粒形成、窒素固定、固定された窒素の輸送には光合成によって得られたエネルギーが必要であり、宿主植物が成育する場所での光条件は共生にとって非常に重要である。佐賀大学鈴木らは、ミヤコグサのフィトクロムB遺伝子(LjPHYB )の変異体を用いて、光シグナルと根粒形成との関係を調査した。この変異体は、地上部の草丈は野生型(MG20)と同等だが、根の成長量や根粒数は野生型よりも減少している。phyB 変異体とMG20との間で接木試験を行ない、シュート側のphyB 変異が根粒数減少をもたらしていることがわかった。植物に照射する赤色光(R)/遠赤色光(FR)比を変えて根粒形成数を見たところ、MG20では低R/FRの避陰反応(SAS)を起こす条件では根粒数が大きく減少するのに対して、phyB 変異体ではR/FR比に関係なく根粒数の減少が見られた。よって、phyBによるR/FR比の感受が根粒形成に影響していると考えられる。phyBを介した光シグナル応答にジャスモン酸(JA)が関与しているという報告、JAは根粒形成は根粒形成の負の調節因子であるという報告から、低R/FR比条件でのMG20におけるJA応答遺伝子(PDF1.2JAR1MYC2 )の発現量を見たところ、高R/FR比条件下よりも低下していることがわかった。また、phyB 変異体では白色光下においてもこれらの遺伝子の発現量はMG20よりも低くなっていた。MG20とphyB 変異体の間では内生JA量に差は見られなかったが、phyB 変異体では内生JA-Ile量はMG20よりも低かった。このphyB 変異体における内生JA-Ile量の低下はJAR1 発現量の低下によるものであると思われる。根粒形成におけるJAの作用を確認したところ、MG20へのJA処理はシュートや根の成長を抑制するが、単位根長当たりの根粒数は増加することがわかった。さらに、JA処理は感染糸形成や根粒原基誘導に関与しているNIN 遺伝子の発現を増大させ、単位根長当たりの感染糸数を増加させた。したがって、ミヤコグサにおいてはJAは根粒形成の正の調節因子として機能していると考えられる。以上の結果から、ミヤコグサは他の植物の陰になるなどの光条件の悪化によりR/FR比が低下するとJAR1 発現量が低下することで内生JA-Ile量が低下し、根粒形成が抑制されるものと思われる。

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論文)ヒストン脱アセチル化酵素による発芽調整

2011-10-18 19:46:02 | 読んだ論文備忘録

Role of HD2 genes in seed germination and early seedling growth in Arabidopsis
Colville et al.  Plant Cell Rep (2011) 30:1969-1979.
DOI 10.1007/s00299-011-1105-z

グルコースは遺伝子発現の制御や植物ホルモンとのクロストークを介して植物の成長や環境応答に関与している。カナダ農務・農産食品省 東部穀物・脂肪種子研究センター(ECORC)Miki らは、シロイヌナズナマイクロアレイデータから、グルコース処理によって誘導されるヒストン脱アセチル化酵素遺伝子はHD2ファミリーに属するHD2AHD2BHD2CHD2D のみであることを見出した。芽生えを用いてこのデータを検証したところ、これらのHD2ファミリー遺伝子はショ糖、グルコース、フラクトースによって誘導され、マンニトールや代謝されない糖アナログの3-O -メチルグルコースでは誘導されないことが確認された。個々の遺伝子ついてグルコースによる誘導量を3-O -メチルグルコース処理時の転写産物量との比で比較すると、HD2D (3.5倍)、HD2A (2.2倍)、HD2B (2.0倍)の順に高くなっており、HD2C は殆ど誘導されないことがわかった。gin2-1 変異体でもHD2DHD2AHD2B の発現誘導が野生型と同等に起こることから、この誘導はヘキソキナーゼ1(HXK1)を介したグルコースシグナル伝達経路によってなされているのではないと考えられる。機能損失変異体の得られたhd2ahd2c を用いて、発芽時のHD2ファミリーの機能を調べたところ、hd2a 変異体は野生型よりも発芽が早く、グルコース添加による発芽阻害も低減されること、hd2c 変異体は野生型よりも発芽が遅く、グルコースによる発芽阻害も強く現れることがわかった。したがって、HD2A はグルコースシグナルを介して発芽を抑制し、逆にHD2C は発芽を促進していると考えられる。発芽後のグルコースによる根の伸長阻害はどちらの変異体も野生型と同等であった。hd2a /hd2c 二重変異体の発芽は野生型と同等になったが、二重変異体は貯蔵中の種子発芽率の低下が早く、HD2AHD2C は種子の発芽力もしくは成熟過程にも関与しているものと思われる。アブシジン酸(ABA)による発芽阻害に対してもhd2c 変異体は野生型よりも感受性が高く、hd2a 変異体は弱くなっていた。また、NaClによる発芽阻害においても同様の傾向が見られた。しかしながら、発芽後の芽生えに根の伸長に対するABAやNaClの阻害効果に関しては野生型、hd2a 変異体、hd2c 変異体、hd2a /hd2c 二重変異体とも同等であった。以上の結果から、HD2ファミリーヒストン脱アセチル化酵素はグルコースに対する制御において異なる応答を示し、HXK1やABAのシグナルとは独立して発芽の微調整を行なっているものと考えられる。

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HP更新)バイケイソウ群落写真、沖縄の花の写真を追加

2011-10-16 12:47:08 | ホームページ更新情報

私のHP「Laboratory ARA MASA 」を更新しました。

バイケイソウ群落の変遷」に2011年7月3日8月8日9月23日の群落写真を追加しました。7月3日には全てのバイケイソウが枯れて消えています。定点観察している範囲内に花成した個体が数個体ありましたが、バイケイソウハバチの食害によって開花せずに枯死してしまいました。

Wild Flowers 沖縄編」に「ユウコクラン」と「トキワヤブハギ」の写真を追加しました。ユウコクランの写真は3月下旬に西表島で撮りました。個体数は少なく、私が歩いた森の中ではこの写真以外にもう1株見られただけでした。トキワヤブハギは9月末に西表島で撮りました。以前にもこの花の写真を掲載しましたが、今回の写真では葉(卵状楕円形の三出複葉の葉)もしっかり写っています。

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論文)根端分裂組織におけるA型レスポンスレギュレーターの役割

2011-10-15 17:44:14 | 読んだ論文備忘録

Type-A response regulators are required for proper root apical meristem function through post-transcriptional regulation of PIN auxin efflux carriers
Zhang et al.  The Plant Journal (2011) 68:1-10.
doi: 10.1111/j.1365-313X.2011.04668.x

シロイヌナズナのサイトカイニンシグナル伝達に関与しているレスポンスレギュレーター(ARR)にはA型とB型があり、A型はサイトカイニンシグナルの負の制御因子として機能いている。系統樹解析から、10のA型ARRは5つの遺伝子ペア(ARR3 /ARR4ARR5 /ARR6ARR7 /ARR15ARR8 /ARR9ARR16 /ARR17 )に分類され、このうち3つのペア(ARR3 /ARR4ARR5 /ARR6ARR8 /ARR9 )については根で発現し、サイトカイニンに対する根の応答に対して機能重複して負の制御を行なっていることが知られている。米国 ノースカロライナ大学Kieber らは、未調査のペアの1つであるARR7ARR15 も根端で強く発現し、T-DNA挿入変異体を用いた解析から機能喪失したA型ARR の数が増えるにつれてサイトカイニンに対する感受性が高まり根の成長抑制を引き起こすことを明らかにした(ARR16ARR17 についてはT-DNA挿入変異体が得られなかったので解析を行なわなかった)。A型ARR の変異体における根の表現型にオーキシン輸送が関与しているか、オーキシン輸送阻害剤のN -1-ナフチルフタラミン酸(NPA)による側根形成阻害を指標として調査したところ、A型ARR の変異が増えるにつれてNPAに対する感受性が高まり、arr345678915 八重変異体で最も感受性が高くなった。arr 八重変異体の根でのオーキシン排出キャリアの発現をGFPとの融合タンパク質を用いてみたところ、根端でのPIN4のタンパク質量が大きく減少し、中心柱でのPIN1、PIN3も僅かに減少していた。PIN7は中心柱で僅かに減少していたが、根冠部での発現は増加していた。サイトカイニンによるPIN1、PIN3量の減少はarr 八重変異体では野生型よりも強く現れた。しかしながら、根冠コルメラ細胞で発現しているPIN3はサイトカイニンに対する感受性が見られなかった。PIN7の発現は野生型ではサイトカイニン処理によって僅かに増加するが、arr 八重変異体ではサイトカイニン処理による発現量変化は見られなかった。以上の結果から、A型ARR の機能喪失はPINの基底レベルのタンパク質量とサイトカイニン処理による変化を改変させることがわかった。サイトカイニンはオーキシンシグナルの抑制因子をコードするSHY2 の発現を介してPIN 遺伝子の転写を負に制御している。そこで、arr 八重変異体の根端部でのPINSHY2 の発現を見たところ、PIN2 の発現は減少していたが、他のPIN 遺伝子やSHY2 の発現は野生型との違いが見られなかった。野生型植物においてPIN1-GFPタンパク質量はサイトカイニン処理によって減少したが、PIN1 転写産物量のサイトカイニン処理による変化は見られなかった。arr 八重変異体ではサイトカイニン処理によってPIN1 転写産物量が減少した。内生PIN4 転写産物量は野生型、arr 八重変異体ともにサイトカイニン処理によって増加し、PIN4-GFP 転写産物量はサイトカイニン処理による変化は受けなかった。サイトカイニンによるSHY2 の発現誘導は、arr 八重変異体で発現誘導量が増加するといったことはなく、野生型と変異体で同じように見られた。したがって、野生型植物やarr 八重変異体でのサイトカイニンによるPIN1、PIN3、PIN4タンパク質量の減少は転写後になされており、変異体のサイトカイニン感受性の増加はSHY2 発現量増加によるものではないことが示唆される。arr 八重変異体ではPIN4タンパク質量が減少しているために根端部でのオーキシン分布が変化し、通常は細胞分裂をしない静止中心細胞が分裂をし、コルメラ幹細胞の一部がコルメラ細胞へと分化していた。以上の結果から、A型ARRは根端部におけるサイトカイニンによるPINタンパク質量の負の制御に関与しており、このPINタンパク質量の制御は転写後になされること、A型ARRはPINタンパク質量を制御することで根端部幹細胞の維持に貢献していることが明らかとなった。

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論文)RAC/ROP GTPaseによる根幹細胞の維持

2011-10-12 19:40:19 | 読んだ論文備忘録

RopGEF7 Regulates PLETHORA-Dependent Maintenance of the Root Stem Cell Niche in Arabidopsis
Chen et al.  The Plant Cell (2011) 23:2880-2894.
doi: 10.1105/tpc.111.085514

RAC/ROP GTPaseは植物に特異的なRHOファミリーGTPaseであり、様々な生理作用でのシグナル伝達に関与している。RHO GTPaseはGTPが結合すると活性化型となり、GDPが結合すると不活性化型となるが、この変換はGTPase活性化タンパク質(GAP)とグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)によってなされる。GEFはGTPaseからのGDPの解離とGTPの結合を促進してGTPaseを活性化型にする作用がある。RAC/ROPは植物特異的なRopGEFによって活性化され、シロイヌナズナゲノムには14のRopGEFをコードする遺伝子が存在する。中国 華南農業大学のTao らは、シロイヌナズナRopGEF7 について詳細な解析を行なった。RopGEF7 プロモーターでGUS を発現させるコンストラクトを導入したシロイヌナズナを用いてRopGEF7 の発現部位を調査したところ、GUS活性は胚発生過程において静止中心(QC)の前駆体細胞で特異的に見られた。芽生えではQCで最も発現が強く、根の分化領域の維管束や側根原基においても発現が見られた。その他にも胚軸の維管束走向、子葉のメリステモイドや孔辺細胞、花柱での発現が検出された。RopGEF7 の発現パターンから、この遺伝子は胚発生過程において重要な役割を担っていると考え、RIBOSOMAL PROTEIN S5ARPS5A )プロモーターを用いてRopGEF7 のRNAiを胚発生過程特異的に起こして形態を観察したところ、原根層のQCやコルメラ細胞が形成される領域での細胞分裂に異常が見られ、胚柄細胞の並層分裂にも異常が見られる場合があった。このような胚基部での細胞分裂異常は、根の幹細胞分化決定因子をコードするPLETHORAPLT )のplt1 plt2 二重変異体、plt1 plt3 bbm 三重変異体、pin4 変異体で観察される異常と類似していた。以上の結果から、RopGEF7 は胚発生の際のパターン形成、特にQCとその周囲の幹細胞の特性に影響していることが示唆される。RopGEF7 RNAi 植物の芽生えは根が短く、根分裂組織領域での細胞分裂が抑制され、コルメラ細胞層に異常が見られた。RopGEF7およびC末端が欠けて恒常的に活性化型となっているRopGEF7ΔCは、どちらもAtRAC1と相互作用をすることがシロイヌナズナプロトプラストを用いたBiFC法によって確認された。RopGEF7の機能をさらに解析するために、完全長RopGEF7 もしくはRopGEF7ΔCRPS5A プロモーター制御下で発現させた形質転換を作出した。完全長RopGEF7 を発現させた芽生えは形態異常は見られなかったが、RopGEF7ΔC を発現させた芽生えは子葉や茎頂部の脇に根のような白い組織が形成された。このような形態変化は、PLT2 を過剰発現させた芽生えにおいて見られるものと類似している。RopGEF7ΔC を発現させた胚では子葉の領域においても異所的にPLT1PLT2 の発現が見られ、このことが芽生えでの根様組織の形成に関与していると思われる。RopGEF7 RNAi 植物の胚や芽生えではPLT1PLT2 の発現量が減少していたが、SHORTROOT(SHR)タンパク質の局在パターンやSCARECROWSCR )の発現パターンに異常は見られなかった。よって、RopGEF7SHR /SCR の系には関与していないと考えられる。RopGEF7 RNAi plt1-4 plt2-2 個体の根長と分裂組織のサイズは plt1-4 plt2-2 二重変異体と同じであることから、RopGEF7 はPLT経路において作用していると考えられる。 plt1-4 plt2-2 二重変異体ではRopGEF7 の発現量に変化が見られないことから、RopGEF7 は根の幹細胞群の維持においてPLT よりも上流で機能していると考えられる。RopGEF7 RNAishr-2 変異は根の伸長抑制に対して相加的に作用することから、両者は異なる経路で作用していると考えられる。RopGEF7 の発現はオーキシンによって誘導されることが確認された。RopGEF7 RNAi 植物の胚や芽生えではPIN1 の発現量が減少しており、RopGEF7 RNAi 植物の胚や根で見られる形態異常はオーキシン分布と応答の異常によってもたらされていると考えられる。以上の結果から、RAC/ROPの活性化因子であるRopGEF7は、オーキシンを介した位置情報をフィードフォワード制御によって統合し、PLT の発現を制御することで根幹細胞群の維持に関与しているものと思われる。

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論文)ストレスによる花成誘導機構

2011-10-10 17:50:57 | 読んだ論文備忘録

Stress tolerance to stress escape in plants: role of the OXS2 zinc-finger transcription factor family
Blanvillain et al.  The EMBO Journal (2011) 30:3812-3822.
doi:10.1038/emboj.2011.270

米国 カリフォルニア大学バークレー校/米国農務省植物遺伝発現センター(PGEC) (現 中国科学院華南植物園)のWo らは、シロイヌナズナのストレス耐性に関与する遺伝子を単離することを目的に、酵母を用いたcDNA発現ライブラリーをカドミウム、ジアミドもしくはtert-ブチルヒドロペルオキシド(t -BOOH)を添加した培地でスクリーニングし、酸化ストレスに耐性を示すcDNAを得た。このcDNAは716アミノ酸からなるタンパク質をコードするAt2g41900のC末端側領域であった。At2g41900にT-DNA挿入されたシロイヌナズナのホモ系統はこれらの化学物質に対する耐性が低下しており、このシロイヌナズナ酸化ストレス耐性にとって重要であると考えられる遺伝子をOXIDATIVE STRESS 2OXS2 )と命名した。OXS2は、C2H2-Znフィンガー、2つのC3H-Znフィンガー、2つのankyrinモチーフを含んだZnフィンガータンパク質で、他に4つの類似したタンパク質(OXS2-Like;O2L)が存在している。しかしこれらO2L 遺伝子の機能喪失個体はストレス対する感受性に変化が見られないことから、OXS2 のみがストレス耐性に関与していると考えられる。シロイヌナズナマイクロアレイデータベースによると、OXS2 は低温、塩、アブシジン酸(ABA)、浸透圧ストレス、老化過程による発現量の緩やかな上昇が認められている。OXS2とGFPとの融合タンパク質をタマネギ表皮細胞で発現させて細胞内局在を見たところ、ストレスを与えていない条件ではOXS2融合タンパク質は細胞質に局在しているが、低温、ABA、レプトマイシンB(LMB)処理をすると融合タンパク質は核に局在した。LMBは核外輸送因子エクスポーチン1(XPO1)の阻害剤であることから、OXS2はXPO1による局在制御を受けるタンパク質であると考えられ、OXS2タンパク質のC末端にはXPO1-タイプの核排出シグナル(NES)が見られた。しかし、OXS2タンパク質には明確な核局在シグナル(NLS)がなく、N末端側にあるankyrinモチーフがその役割を果たしていることが確認された。核排出シグナルをアミノ酸置換したOXS2を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナは花成が早まり、ankyrinモチーフを欠いたタンパク質を発現させた場合ははOXS2タンパク質が細胞質に蓄積して花成が遅延した。これらの形質転換体における花成時期の変化は日長や低温処理による影響を受けなかった。oxs2 機能喪失変異体はストレスを与えない条件では野生型よりも花成が早くなることから、OXS2はストレスのない条件で花成を遅延させる作用があると思われる。OXS2は我々がBOXS2と命名したCT-リッチなモチーフに結合し、このBOXS2はSOC1LFYAP1FUL といった花成に関与している因子をコードしている遺伝子のプロモーター領域に見られ、SOC1 遺伝子のCT-リッチ領域にOXS2が結合することが確認された。BOXS2はOXS2 遺伝子のコード領域に見出されることから、OXS2 遺伝子は自己賦活化作用があると考えられる。oxs2 変異体はストレスを与えても花成の遅延が見られないことから、OXS2と機能重複している因子が存在するものと考えられる。4つのO2Lのうち、O2L1はOXS2と同様にストレスのない条件では細胞質に局在し、ストレスを与えると核に局在することか確認された。o2l1 変異体は野生型よりも花成が僅かに遅延し、oxs2 o2l1 二重変異体では花成遅延が強くなり、これにo2l4 変異とo2l2o2l3 変異が加わるとさらに花成遅延が強くなった。oxs2 o2l1 o2l3 o2l4 四重変異体ではt -BOOH処理によるSOC1 の発現誘導が見られなくなることから、OXS2タンパク質ファミリーはストレスによるSOC1 の発現誘導、花成誘導に必要であると考えられる。また、OXS2タンパク質ファミリーはストレスのない条件でのSOC1 の発現にも関与していると思われる。以上の結果から、以下のモデルが考えられる。ストレスのない条件ではOXS2はXPO1の作用によって核外に局在し、未知の作用機作によって花成を遅延させる。ストレス条件に曝されるとOXS2は核に局在して転写促進因子として作用してストレス耐性を誘導する。さらにストレスが強くなるとOXS2 の自己賦活化によってさらにOXS2の核蓄積が増加し、SOC1 等の花成に関与する因子の発現を誘導してストレスによる花成が引き起こされる。

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論文)ブラシノステロイドによるセルロース合成の制御

2011-10-07 19:19:10 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroids can regulate cellulose biosynthesis by controlling the expression of CESA genes in Arabidopsis
Xie et al.  Journal of Experimental Botany (2011) 62:4495-4506.
doi:10.1093/jxb/err164

ブラシノステロイド(BR)は細胞の伸長や大きさを制御する植物ホルモンであり、BRに関連する機能が喪失した突然変異体は細胞が小さくなりわい化する。細胞の伸長・拡張は細胞壁の形成と関連しているが、BRが細胞壁の合成に関与しているかは明らかではない。中国 復旦大学Wang らは、シロイヌナズナのBR受容体をコードするBRI1 の弱い変異体であるbri1-301 、BR生合成の変異体であるdet2-1 、およびBRI1 の過剰発現形質転換体、BRシグナル伝達に関与しているBES1 の過剰発現形質転換体の各成長過程における乾物重を野生型と比較し、花序が形成される成長後期になるとbri1-301 変異体、det2-1 変異体の地上部の乾物重は野生型よりも減少し、BRI1BES1 の過剰発現個体では野生型よりも増加していることを見出した。そしてこの乾物重の差はセルロース含量の差と対応していた。したがって、BRはセルロース生合成に関連していることが示唆される。シロイヌナズナゲノムにはセルロース合成酵素触媒サブユニットをコードするCESA 遺伝子が10あり、2つのグループに分類されている。このうちの1つに属するCESA1CESA3CESA6 は主に拡張過程にある組織で発現し、他のグループに属するCESA4CESA7CESA8 は二次細胞壁の形成に関与していることが知られている。det2-1 変異体の10のCESA 遺伝子の発現量は野生型の50%程度であり、det2-1 変異体を2,4-epi-ブラシノライド(epiBL)処理をすると処理2時間後にCESA2CESA3 の発現量が僅かに増加し、他のCESA 遺伝子の発現は大きく誘導された。しかしながらBR非感受性のbri1-301 変異体ではepiBL処理によるCESA 発現量の増加は見られなかった。よって、BRはBRシグナルを介してCESA 遺伝子の発現を素早く誘導すると考えられる。BRI1 過剰発現個体の芽生えではCESA1CESA2CESA5CESA6CESA9CESA10 の発現量が野生型よりも高く、二次細胞壁を多く含む一次花序の茎ではCESA4CESA8 の発現量が野生型よりも高くなっていた。よって、BRシグナルは一次細胞壁形成に関与するCESA と二次細胞壁の形成に関与するCESA の両方に対して発現を高める効果があると考えられる。CESA 遺伝子の発現がBRシグナルによって直接誘導されるか、BRシグナル伝達に関与している転写因子BES1とCESA 遺伝子プロモーター領域との結合をクロマチン免疫沈降(ChIP)試験で調査したところ、CESA7 以外の9つのCESA 遺伝子のプロモーター領域がBES1と結合することがわかった。CESA 遺伝子の機能喪失単独変異体は野生型よりも僅かに小さくなるが、bri1-301 との二重変異体は非常にわい化した表現型となり、bri1-301 の表現型を強めた。また、CESA 遺伝子の機能喪失単独変異体でBRI1 を過剰発現させると植物体が大きくなり葉柄が伸長したが、BRI1 過剰発現形質転換体と比較すると小さいことがわかった。よって、BRシグナルの強化はCESA 遺伝子の機能喪失を完全には相補せず、BRシグナルによるCESA 遺伝子の発現誘導は植物の成長にとって必要であることが示唆される。以上の結果から、BRはCESA 遺伝子の発現を誘導することでセルロース合成を制御し、植物の成長過程での細胞伸長をもたらしているものと考えられる。

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