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論文)キュウリ雌花の発達とエチレンとの関係

2010-03-10 05:32:11 | 読んだ論文備忘録

Ethylene perception is involved in female cucumber flower development
Wang et al.  The Plant Journal (2010) 61:862-872.
DOI: 10.1111/j.1365-313X.2009.04114.x

エチレンはキュウリの雌花の発達を促進することが知られている。中国 北京大学のBai らは、以前に、キュウリ雌花の花芽において葯の原基特異的にDNAの分解が起こっていることを見出した。エチレンはプログラム細胞死を誘導することが知られていることから、DNA分解とエチレンとの関係を調査した。キュウリ子葉から調製したプロトプラストをエテホン処理すると、その濃度と時間に応じてDNaseが活性化してDNAの分解が起こった。この分解はエチレン作用阻害剤である硝酸銀を添加することによって抑制された。そこで雄花と雌花の花芽においてACCオキシダーゼ(CsACO2)やエチレンシグナル伝達に関与する因子をコードする遺伝子の発現量を見たところ、雌花の花芽の雄ずい原基においてエチレン受容体構成分子の1つである膜貫通型ヒスチジンキナーゼをコードするCsETR1 の発現量が低下し、エチレンシグナル伝達の下流に位置する因子をコードする遺伝子の発現量が増加していることが確認された。雄花および雌花の雄ずい原基、雌花の雄ずい原基と雌ずい原基においてCsACO2 の発現量に差が見られないことから、それぞれの器官における内生エチレン量には差はないと考えられる。CsETR1AP3 プロモーターの制御下でシロイヌナズナで発現させたところ、雄ずいと花弁の発達が悪くなり、雄性不稔となった。よって、シロイヌナズナにおいてもエチレン受容体の発現を器官特異的抑制することで雌花を作り出すことが出来る。発達の悪くなった雄ずいでは染色体の凝集が観察され、DNAの分解が起こっていることが示唆される。CsETR1の減少は、ETR1と相互作用を示すエチレンシグナル伝達経路の負の制御因子のRaf様MAPKキナーゼキナーゼ(MAPKKK)CTR1の活性型複合体の減少を引き起こし、局所的にエチレン応答が活性化された状態となるためにDNA分解が起こり、雄ずいの発達が抑制されて雌花が形成されるものと考えられる。

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